4月。
それは高校生活において、それなりに多めのイベントが詰め込まれている月だ。
月の頭には新入生の入学式があり、少し遅れて在校生の始業式があり1学期が始まる。その後には身体計測や体力テスト、部活の勧誘や生徒会選挙と行事は目白押しだ。
それは我らが高校でも変わらず、トラブルシュートの頻度も上がるのが予想出来ている……が、あくまでそれは学校としての動き。
「〜〜で、あるからして。組み合わせの問題は解けるようになります。安心して下さい、先生はこの方法で計算をして10万ほど馬券に溶かしました」
「数学の石田……!?」
「まさか14番人気が来るとは思わないじゃないですか!!!」
学期初めの授業である以上、最初はオリエンテーションから緩やかに立ち上がっていく。先生の授業も割と適当で、俺たち生徒側も大概やりたい放題な時期が今になる。
「キエエエ‼︎」
何せほら、前を見れば古戦場周回。右を見れば因子周回、左を見れば危機契約が立てた教科書の裏で行われている。後ろからは早弁ならぬ追弁の気配。序でに俺自身も、さっきまで計算機として使っていたスマホでSNSを眺めている。
悪質なインペリアルクロスが完成してしまったなァァ〜!!
「ですが問題ありません。今日のGⅢで一発逆転を──」
「センセー。センセーの軸馬、出遅れで掲示板外みたいですよ」
「──成せなかったので、先生は所持金が底をつきました。
「数学の石田ァーッ!!」
廊下では6本足の馬っぽい生物とウマソウル号が並走し、燃え尽きた石田は風化しながら教室の空気に溶けていく。うーん実に平和。
「だいじょうぶだよ、セーンセ。私が明日からお弁当、作って来てあげるから」
「お前は──調理部の小松!」
粉状になって浮遊していた数学の石田が、教卓の上に積もっていく。謎のクラスメイト女子の小松氏、風化した先生のエリート粉回収してるんだけど……
「アリガトウ......アリガトウ......」
「ヒソヒソ……ヒモよ……まごうとなきヒモだわ……」
「きっとベーシストよ……」
しかし随分と思い切った生態してるなぁ、何類だろ。
「いよっ! クズ網ヒモ目音楽科ベーシスト属」
これか!
「女子高生にたかって食う飯は美味いか石田ァッ!」
「美味い!!!」
「無敵か石田ァ!」
「授業しろ石田ぁ!」
「謝罪!!」
などと虚無から発声しながら、小松女氏の手元の桶へ塵が集まっていく。そこに女氏の手により水が振られて、いい感じに固まり始め──
「弱みを握って伸ばして綿棒で練る!!」
「調理部の小松……!?」
机の引き出しから出てきた綿棒で練られ、艶とこしが生まれていく。
「長所と短所が表裏一体なのと同じで、弱みもまた強みと表裏一体ともなる」
「調理部の小松……?」
そしてきれいに裁断され、後ろのロッカーから出てきた寸胴鍋に叩き込まれて。
「つまり弱み(強み)を伸ばし強く捏ねることで、コシのある上手いうどんができるのよ!!!」
「調理部の小松ゥゥゥゥ!!」
大改造! 悲劇的ビフォーアフター!
空気中に漂っていたエリート粉(先生)が、美味しそうなうどんに!!?
ナンデ!?
「決まったわ……今年のフリースタイルU-DONバトル、四国代表にだって私は負けない!!」
「その根拠は!」
無論、こんな特ダネを新聞部が逃すはずもなく。窓からガラスをぶち破りターザンスタイルで新聞部の面子が教室内へ。ネタに飢えたピラニア達のエントリーだ!
「いいえ、ないわ。根拠なんてどこにもないわ」
「……? では、どうして先ほどのような宣戦布告を?」
「──ふっ、みなまで言わずとも十分でしょう」
とは言いながらもマイクを奪取。
ダン、と椅子に足をかけ天高く指を掲げ──
「なぜなら私は、先生のクズさを信じている!
私たちは選ばれしうどん粉、私立稀世学園高校生よ!!」
「「「うおォォォォォッ!!!」」」
フロアが熱狂した。
「ではここで、材料となった先生より一言どうぞ!」
「この時、ふと閃いた!
この体験は、生徒への授業に活かせるかもしれない!」
「うどんが喋ってる」
ずぞぞ。
.○.やあやあやあ我が親友よ!. 15:37
...見ておくれよ、遂に完成したんだ!. 15:37
...[ランダムで色々なモノが10000倍になる薬]が!. 15:37
...【画像】. 15:37
さよなら平和、Welcome to 混沌。
くそぅ、全方位からはちゃめちゃが押し寄せてくる。
どうしてこう、絶妙なタイミングで絶対に厄介ごとになる案件をどうして持ち込んでくるのか。この享楽主義の親友殿は。
送られてきた写真からして、今日のセルトはどうやら美少女モードらしい。アルミホイルみたいな色の髪が(物理的に)眩しい。尤もそれ以上に、手元のフラスコ内の液体がゲーミングで目を引くけど。
「いやぁ、いいマイクパフォーマンスだったね!」
「マイクパフォーマンス」
一瞬にして狂乱の坩堝と化した教室の中。あの熱狂の中にいたのか、火照った様子でうっすらと汗をかいたナギサが隣に来た。
自然に机をくっつけて、こんな状況の中ちゃんと取っていたらしいノートを広げている。但し教科書代わりのタブレットで再生されているのは去年のG1 CLIMAX。お、よし、いけ、3カウント!! ああくそ、惜しい。
「でもボクはもうちょっと
「メェェ」
「それはウール!」
「Ryder Time!」
「それもウール!」
「ガラル地方のもふもふの……」
「それはウールー! よくそれだけすぐ出て来るね!?」
などと話していた時、突如脳内に溢れ出した
何故か見せつけられる数学の石田のデートシーン
閃いたアイデアを活かしたトレーニングを受けさせられる自分達
体育館のど真ん中で眼鏡を掛けて将棋を打つイメージ
急激に読めて意味が理解できるようになっていく教科書
商店街のガラガラを回して……温泉旅行券!
怖い怖い怖い!
手元に突然出てきた文字化けしてる温泉旅行券はまあいいとして、絶対ナニカサレタヨウダ系の何かだこれ。
「な、なんか概念的な賢さが20ちょっと増えた気がする……」
「ボクもなんか、ちょっとだけ体力が戻ってきたような」
こんな現象、1年生の時は週1くらいのペースでしかなかった。それがほぼ毎日なんだから、高校2年生って凄いや。
「あとさ、その温泉旅行券どうせだったらボクと行こうよ」
「流石にそうしたいけど、流石に高校生2人で温泉旅行は……」
・鬮俶?。逕溘□縺代〒繧ら┌蝠城。
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「なんか、イケる気がする!」
「よしきた、決まりだね!」
序でに使ったが最後、何か超常的なパワーで転送されそうな気配もする。だがまあ、それくらいならほぼ毎日経験してるし無問題だ。やれるやれる。多分ゆっくり休めるだろう。
「というかさっきからL○NEうるさいなぁ!」
向こうは自習らしいけど、こっちは授業中なんだけどなぁ!
.○.ということで、ピックアップガチャを実装したんだ. 15:42
...ぜひ回して欲しいな。回せ(豹変). 15:42
...私以外のガチャを回された感覚がするんだが!?. 15:44
...既読無視はやめておくれよ……. 15:50
...ここまで袖にされては仕方ないねぇ. 15:51
...喰らえぃ巻き込み型10連ガチャ!. 15:51
「あ、見てみてコウ君。セルト君から変なガチャ画面送られてきてた」
「やりがった‼︎ やりやがったあの野郎!!」
興奮気味にナギサが見せてくれたスマホの画面には、存在感を放つ虹色に染まりドクンドクンと脈打つ謎の結晶体。
そして燦然と輝く[ TOUCH ]の文字。見覚えのあるお空のガチャ画面だ。しかも起動済み。
「面白そうだから回すね!」
「あぁ!?」
そして彼女自身がそういう
パリンと砕け散るクリスタル。
表示された破片の内、虹色は2! 黄色系は4! 青色は4!
くっ、上振れとは言えないけど微妙に引きがいい。こんな時に限って微妙な幸運が仕事している。
10連ガチャ結果
Information
【期間限定】
○ ランダム10000倍変化薬(SSR)×1
【イベント】
○ 薬散布(スプリンクラー)(SSR)×1
○ 彼氏(彼女)とのアンブレラデート(SR)×1
【アイテム】
○ 高性能防毒マスク(SR)
○ ペストマスク(R)
○ 和傘(UC)
○ 学食券1000円分(R)
【システム】
○ スマホカメラ強化パッチ(SR)
○ ミスティックシールド(C)
【ポイント・その他】
○7
◇ 物品を手元に転送しました!
◇ シチュエーションを実行しました!
◇ 一部がプレゼントへ送られました!
プレゼントリスト is 何処???
いやそれはいいとして、何かすごく嫌な予感がする。主に薬散布とかいう要らないSSRからほんとに!
「アンブレラデート……って、何かワクワクするね?」
「直ちに実行しまァす!」
無邪気に首を傾げるナギサの顔に防毒マスクを投げ、自分はペストマスクを被り、大きな和傘を頭上に展開。
次瞬、勝手にスプリンクラーが作動した。
スプリンクラーは謎の液体を放出!
一瞬の濡れ透けの後、液体は蒸発!
室内にオーロラ発生!
大パニック!
授業機能がマヒ!
未曾有の事態!
「もー、いきなり彼女にする仕打ちじゃ──うわぁ」
「セーフ、せぇぇぇふ!!」
ランダムに色々なモノを10000倍にする。我が親友殿のことだからと信じてよかった。
思わずそんなことを言ってしまう程、オーロラの満ちた教室内は悲惨なことになっていた。
「「「U・DO・N!」」」
「「「U・DO・N!」」」
「「「U・DO・N!」」」
先ほどのまでの熱狂を通り越し、狂信レベルの熱を感じるうどんコール。その中心で天高く先生(うどん)の乗ったザルを掲げ、10000倍の妄想の世界へ飛んだ料理部の小松。
ざるの上でくねくねしてるうどん(先生)は……
「WIN5が……WIN5が的中している!?!?」
まあ幸運とか金運が10000倍になってるのだろう。
他にも黒板に描かれていた物の中にあった『ぬ』が増殖し黒板ぬ床や天井、壁まで侵食を始めていぬ。ヌー!!!
ボールペンのインクの質量が10000倍になったのか、黒・赤・青のスプラッシュなマウンテンが教室の至る所に出現。
どこかの海賊漫画の怪僧が持ってそうなサイズに巨大化した鉛筆が天井をぶち破り、階下の方からも出現。
一瞬すさまじいハウリングを起こして、放送用のスピーカーも爆散した。
俺たちが相合傘をしていた和傘も、生命力が倍化されたのか机に根を張り育ち始めている。双葉が飛び出し、早回しの映像並みの速度で育成完了。和傘の花が咲いたよ。かわいいね、うふふ。
「わあ、綺麗なお花。ボクたちも一輪貰っていこーよ!」
「そうだね」
マスク越しに笑いながら、別々の傘を手に取り教室を後にする。そのまま拒絶気味に入り口の扉を閉めて、これでヨシ。
「ねえコウ君。ボクたち以外に今は学校に誰がいるんだっけ?」
「元凶と、マヨイと、グラウンドにウマソウル号かな」
こんな時に限って、対人無敵のケルシーは欠席であった。Vtuberのフェスだから参加せざるを得ないのは理解できるけど、戦力的に痛手も痛手だ。
あとでリモート支援は要請しよう。
「マヨイ君は今どこに?」
「もうセルトの所へ向かってるって」
随分と怒り心頭といった様子のLI○Nが届いている。
序でに既に向かっているとの報告も。
「セルト君……今日はちゃん? の居場所は?」
「さっき起きられてきた写真の背景は、アイツが私物化してる理科準備室隣の空き教室」
「じゃあ決まりだね!」
主犯は分かっている。
居場所も分かっている。
動機もわ分かっている。
ならば、
「トラブルシュートReady Go!」
「ゴー!」
えっ、何今の掛け声。ノリで合わせたけど。