ポケットモンスター・パールストーリー   作:ましゅ

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第105話  VSサターン&ジュピター

 

 

「グレイシア、まずはわかるわね!?」

 

 スズナがグレイシアに暗喩して伝えたのは"こごえるかぜ"だ。

 相手は二体、しかも片方はスズナのユキメノコを単身撃破し、今なお体力の有り余る超強敵。

 まずはどうにか、その体力や能力を削ぎ落とし、確実に撃破しなければならないというスズナの意図を、グレイシアは理解して技を発している。

 

 対するジュピターのドータクンは甘んじてそれを受けるが、問題はサターンとドクロックである。

 グレイシアが凍える風を放つ前から、ふいと手を一振りする仕草を見せたサターンは、回避に徹しろと命じている。

 ドクロックもまたそれに応え、前方広範囲に放たれるグレイシアの凍える風の、範囲外まで素早く逃れるのだ。

 初動の早さからして、状況から完全に相手の初手を読み切っている動きだ。

 

「行って!」

 

「打ち返せ」

 

 "でんこうせっか"で飛びかかるグレイシアの直進攻撃を、ドクロッグは両腕でガードする形で受け止める。

 踏ん張り、食い止めさえすれば、ぎらりと眼を光らせたドクロッグがその拳を振り上げて、グレイシアに毒針付きの打撃で反撃しようとする。

 グレイシアも引き下がるのが早い。あわや殴られるか毒針で肌を傷つけられるかの瀬戸際、跳び退いたグレイシアは無傷だ。

 ドクロッグは舌打ちしながらも、サターンを振り返ってぽりぽり頭をかく仕草。

 ゴメンこいつ素早いからカウンター難しいっすわ、と苦笑い気味に失態を弁護するその表情、戦いの真っ只中にあって余裕を見せ過ぎだ。

 

「まあ気にするなドクロッグ。

 最後に勝ってくれればそれでいい。難しい話ではないだろう?」

「――――♪」

 

「二人とも! こっちは……」

「パールいくよ! ニルルとエンペルトで!」

「オッケー! ニルルっ、ドータクン狙って、いっけえっ!」

 

 ドクロッグはこちらが何とかするから、あなた達はジュピターのドータクンを。

 そんなスズナの意図を理解していたようで、パールとプラチナがニルルとエンペルトに指示したのは"なみのり"だ。

 水ポケモン二人、大量の水を湖水を招き寄せつつも自ら生み出して、相乗効果で高め合った二人ぶんの波乗りは高波を作ってドータクンに襲いかかる。

 少し離れた場所で戦っているグレイシアを巻き込まないようにしてだ。ドクロッグも攻撃対象に含められないが、器用に水を操る二人である。

 "ふゆう"するドータクンもこれを躱せず、波の上にニルルとエンペルトが乗る波をもろに受ける形となる。

 

「ったく……! ドータクン、光の壁よ!

 今からでも遅くはないわ!」

 

 初手の重い一撃を受けはしたものの、波から飛び出してきたドータクンには、それでも致命的なほどのダメージは入っていない。実に頑丈だ。

 まだまだ余力のある中で、今後もいくらでも飛んでくる水の技に対する、防御を固める価値は充分にある。

 耐性の多い鋼タイプのドータクン、だがその多い耐性を掻い潜る水技を多用してくるであろう相手に、"ひかりのかべ"は非常に有用だ。

 

「まずはエンペルトよ!

 あなたの十八番、見せてあげなさい!」

 

 返じる声を発さないドータクンだが、ジュピターの声には敏感に反応し、エンペルトの方を振り向いて目を光らせる。

 当然エンペルトもドータクンの方を見ている中でだ。目を合わせた相手を惑わす特殊な光により、まずはエンペルトがくらついたように一歩たじろぐ。

 

「"あやしいひかり"か……!」

「ニルル、焦って泥爆弾は駄目だよ! 水の波動!」

 

「まったく、小賢しいわ……!」

 

 "ひかりのかべ"で守備力を高めたドータクンには、物理的な攻撃方法で攻めたいところである。

 泥爆弾の一撃でも当てれば、光の壁を貫通してドータクンに大きなダメージを与えられるはず。相性的にも最も効く技の一つ。

 だが、"ふゆう"能力に秀でるドータクンに、泥爆弾は当てにくい。重い塊を発射する技なので、相手を見上げる形で撃っても威力が落ち、そもそも当てにくい。

 光の壁で威力を半減されようが、確実なダメージを与えるべきだというパールの判断は正しい。あわよくばミスを誘うジュピターの手には乗らないのだ。

 

「だったらまずは賢い子を追放しましょうか! ドータクン!」

「エンペルト! バブル光線……!」

 

 追放のキーワードに応じて、水の波動を受けつつもドータクンがニルルを睨みつける。

 それに伴いニルルの身体が浮き上がったのは、ドータクンが"サイコキネシス"を発動させたからだ。

 敵を念動力で操る力で、ニルルを空高くまで放り投げるような攻撃を為すドータクンに、それをやめさせるべくプラチナも指示を出す。

 だが、妖しい光で目を眩まされたエンペルトのバブル光線は、しれっと自分が狙われる位置から身をずらしたドータクンに当たらない。

 しかも、自らが放った技の反動に足が耐えられず、尻餅をついて体を痛めたほどだ。前後不覚の"こんらん"状態の怖いところである。

 

「撃って! グレイシア!」

「む……!?」

 

「ドクロッグ、叩き割れ」

 

 遮られぬ限り、いくらでもニルルを念動力で振り回していたはずのドータクンだが、離れた位置でドクロッグと戦っていたグレイシアから思わぬ狙撃を受ける。

 その"れいとうビーム"がドータクンに与えるダメージは小さいが、ニルルを操っていた念動力がそれにより途切れ、宙で解放されたニルルが落ちてくる。

 それがなければ、もっと高い場所まで放り上げられていたのだ。地面に叩きつけられたニルルへのダメージは大きいが、それでもマシな程度に収まっている。

 

 ドクロッグとの交戦中の脇見、隙を見せたグレイシアに駆け迫ったドクロッグの振り下ろす手刀が、グレイシアの脳天に直撃だ。

 重く鋭い"かわらわり"の一撃は、グレイシアが耐えきれず顎から地面に叩きつけられるほどのインパクトを残している。

 そんなグレイシアの名を強く呼ぶスズナに応じ、失神も力尽きもせず後ろに跳び退がるグレイシアは、こんな時に撃ち返すべき技をわかっている。

 やや近い位置のドクロッグに向け、躱しようもない"ゆきなだれ"を放つのだ。

 すぐさま後退するドクロッグだが、その全身を雪が埋め立て、僅かでも動きを封じた上でダメージを与えることには成功している。

 

「っ……!

 エンペルト、水鉄砲だ!」

「んん……!?」

 

 ふらつく頭で立ち上がったエンペルトに、プラチナが指示した技にはジュピターも怪訝にならざるを得ない。

 確かに水鉄砲。エンペルトが発射したそれはドータクンに直撃するが、ハイドロポンプには明らかに劣る、水鉄砲と表向きに指示された大技でもない。

 ドータクンに通ったダメージは小さい。なぜその選択なのか。

 プラチナがパールをじっと見て、パールと目を合わせたそこに、口にせぬ何らかの疎通がありそうだという様相の方がジュピターには重要である。

 

「ニルル! もう一回波乗り行くよ!」

「ドータクン! 撃墜するわよ!」

 

 果たしてパールはプラチナの意図を受け取ったのだろうか。

 この場で波乗りを指示したパールの行動は、命中率を重視した高い威力を示唆するものでしかなく、プラチナにも不安が残る動向である。

 ジュピターも、躱し難い波をドータクンに迫らせられる中、ただでそれを受けるだけとはしない。

 ドータクンが眼前に生み出した、球状エネルギーの塊を、波の上に乗るニルルに発射する。

 

 ドータクンの数少ないアグレッシブな攻撃手段として名高い"ジャイロボール"が、波の上にいたニルルに直撃して叩き落とす結果に繋がる。

 だが、ニルルが生み出した大量の水と波はドータクンを襲い、こちらにも大きな水圧によるダメージが入る。痛み分けと言える結果か。

 ただ、光の壁でダメージを抑えているドータクンと、鉄の塊たる砲弾めいたエネルギーの直撃を受けたニルルでは受けたダメージにも差はある。

 着地したニルルは苦しそうに頭を上げるが、波を耐えて姿を見せたドータクンの浮遊する姿にはまだまだ余力がある。

 

「ニルルっ、水鉄砲!」

「また!? 何なのよあんた達!」

「よし……っ!」

 

 通じていれば。そう祈っていたプラチナは、しれっとエンペルトをボールに戻しながら、逆の手でガッツポーズ気味に拳を握りしめていた。

 ニルルが発射する水鉄砲がドータクンに直撃する。強い水圧だが、本来ドータクンに有効だとは思えぬほどの攻撃。水の波動にも劣るはず。

 だが、それを受けるドータクンが、苦手な炎を受けたかのように身をよじり、ぶんぶんと身を振りながらその水鉄砲から逃げようとする。

 誰の目にも効いていることが明らかで、ただの"みずでっぽう"でないことは瞬時にジュピターも察したが、その正体まではわからない。

 

「く……!

 ドータクン、押し切りなさい!」

 

 それがニルルの"しおみず"であることこそジュピターには見切れなかったものの、ジャイロボールを撃ち返すことで劣勢を打破する指示は理に叶っている。

 マキシとパールの勝負を見届けたプラチナは、エンペルトにその技を教えていたようだ。いつか、使い所があるかもしれないと見て。

 そしてそんなエンペルトと付き合いがあったからなのか、ニルルもその技を習得している。賢いニルルのポテンシャルを表す一幕だ。

 ジャイロボールの反撃を真正面から受け、首ごと体をのけ反らせながらも、ぐいと顎を引いて相手を睨みつけるニルルは体力にも秀でている。

 勝ちたい勝ちたいで必死なばかりのパールだが、賢く多芸でしかもタフなトリトドンが、どれほど頼もしいかは今の彼女の想像以上であるはずだ。

 

「ピッピ! "じゅうりょく"だ!」

「――――z!」

 

「な……!?」

「パール、今だ! 今しかないよ!」

「ニルル、泥爆弾!」

 

 プラチナが、戦闘不能に陥っていないエンペルトをボールに戻し、新たにピッピを繰り出した姿はジュピターも見ていた。

 ドータクンへの有効打を持つ炎ポケモンを出してくるかと思えばピッピで、意図を計りかねるチョイスと感じた矢先にこれ。

 ピッピの魔力が生み出す重力により、浮遊していたドータクンが、両手をばたばたさせながらも高度を下げていく姿にはジュピターも危機感を感じよう。

 位置が低くなればなるほど、高所の敵には当てにくい"どろばくだん"の射程圏内だ。

 

「ドータクン……!」

 

 光の壁を突き破ってドータクンに直撃した泥爆弾は、いかにも重々しいその体が後方に傾くほど劇的なダメージを与えた。

 "しおみず"が効くほど弱った体に弱点の一撃。それで落ちても自然なほどだ。

 それでものけ反ったドータクンが、ぐいっと体を前に傾け直し、まだまだ戦えると見せつけるタフさにはパールとプラチナもうっとなる。

 やはりギンガ団幹部のポケモンだ。二人がかりでここまで追い詰めても、まだまだ落ちない強さがある。

 

「グレイシア、ありがとう……!

 よく頑張ってくれたわ……!」

 

「スズナさん……!?」

 

 だが、状況は好転しつつあるとは言い難い。

 ドクロッグとの戦いで力尽きたグレイシアを、スズナがボールに戻している。

 パール達を助けるために、隙を見せて瓦割りの一撃を受けたのが響いたか。いや、それが無くても結末は同じであったか。

 何せ過去に、ジムリーダーをたった一匹で制圧した強いドクロッグだ。

 グレイシアやその前に戦ったユキメノコに受けたダメージに、少しは息が切れているものの、まだまだ余力充分なドクロッグがほくそ笑む表情を見せている。

 

「ごめんね二人とも、あたしも切り札を出すしかないみたい。

 あなた達に迷惑かけるかもしれないけど、ここは許容して貰うしかないわ」

 

「っ、大丈夫です!」

「頑張ろう、ニルル!

 すっごく頼もしい人が、全力出してくれるよ!」

「――――z!」

 

「いくわよ、ユキノオー!

 全力全開で畳みかけましょう!」

 

 スズナも、サターンのドクロッグ一匹にユキメノコとグレイシアを破られている。

 ジムリーダーが手塩に掛けて育てた、本気の戦いで引っ張り出すような二匹なのだ。決して三下や前座であるものか。ましてこのような許し難き相手に。

 そんなドクロッグを打ち破るには、共闘する味方にも悪影響を及ぼすことを覚悟の上で、最強の切り札を出すしかないとスズナが判断しているのだ。

 

 スズナが曇り空に向けて放り投げたボールから飛び出したのはユキノオーだ。

 それも、制限のあるジムバトルで繰り出す個体ではなく、彼女がいざという戦いの時に出す最強の個体。

 ナタネがジュピターとの戦いで、パールとのバトルで見せたロズレイドではなく、本気の勝負で出した別個体のロズレイドと同じ理屈だ。

 

「――――――――z!!」

 

「うぁ……!?」

「ピッピ、頑張れ……!

 耐えるしかないよ……!」

 

「やはり、一筋縄ではいかんな……!」

「くうぅ……!

 これほど、とは……!」

 

 姿を現したユキノオーが、湖いっぱいに響き渡るほどの咆哮を上げると共に、元よりの曇り空がいっそうの黒雲に満たされる。

 次の瞬間に生じるのは、ユキノオーの"ゆきふらし"の力により、遥か高き上天から降り注ぐ大粒のあられ。

 いや、雹の天候で言い表されるほどの生易しいものではない。雹は決して生易しくないが、自然に降り注ぐ雹さえ甘く見える苛烈な世界がそこに訪れる。

 まるで吹雪とでも言い表すべき豪風が吹き荒れる中、身体に当たれば痛いと強く感じるほどの、氷の塊が斜めに降り注ぐ世界が間もなく完成する。

 パールやプラチナ、ジュピターでさえ、散弾のように降り注ぐ"あられ"に顔を腕で覆うほどだ。

 サターンとて仮面が無ければ同様だろう。びすびすと固い雹に身を打たれながら、動じもせず立つその姿の不気味さは何ら変わりないが。

 

「なぎ倒せ!」

「――――z!!」

 

「ドクロッグ」

 

 友人二人をやられた末にこの場に喚ばれたユキノオーが、あられ降りしきる世界に降り立つや否や発するのは、敵勢に向けて放つ凄まじい"ふぶき"。

 極寒世界において敵に逃げ場を許さないその攻撃は、ドクロッグやドータクンは当然のこと、サターンやジュピターさえ巻き込むほどの氷結大気の嵐である。

 そんな中において、ドクロッグはドータクンの後ろに隠れる位置へ移り、冷気の風よけとして凌ぎきる立ち回りを見せる。

 パール達の猛攻を受け、どうにか耐えきった直後であったドータクンも、その吹雪を受けて耐えきれず後ろのめりに倒れるほどの吹雪だ。

 ドクロッグは、盾が自分に向けて倒れてくることを冷静に躱し、結果的にあれほどの吹雪を凌ぎきって、ほぼダメージの無い姿でほくそ笑んでいる。

 

「容赦の無いジムリーダー様もいたものだな。

 勝負に勝てぬと見れば、我々を殺して勝負を制することも厭わぬか」

「ええ、あたしもまだまだ未熟者。

 自分のポケモンの擁する怒りを、理解しきれずに発散させようとしてしまったことは反省すべきなんでしょうね」

 

 壮絶な吹雪を発したスズナとそのユキノオーの姿に、パールとプラチナは絶句するばかりだ。

 自分達があれほど苦戦したドータクンを、いかに弱らせてあったとはいえ、氷に強い鋼タイプのそれを吹雪で撃沈させてしまうなんて。

 ましてトレーナーである相手まで巻き込むことも厭わぬかのような指示であったことに、スズナの気の荒さをも感じて怖さすら感じるほどである。

 

「まあ、それでも甘いがね。

 真の殺意とは程遠い。所詮は正義を謳う側だ」

「一緒にしないで頂戴。

 クズと呼ばれて否定もしないような腐り果てた連中に、一緒にされちゃあ堪らないわ」

 

 勿論、本来相手のトレーナーを傷つけるようなことをしないスズナが、それだけの指示をしたことには根拠もある。

 サターンのそばにはユンゲラーがいる。ユキノオーが"ゆきふらし"をした瞬間に、勝負とは無関係に別にボールから出した一体だ。

 万一の余波に備えてユンゲラーを出したサターンの姿があったからこそ、スズナは相手のトレーナーをも巻き込む危惧のある技を容赦なく指示している。

 現に、ユンゲラーの作り出した光の壁によって、サターンとジュピターは吹雪の渦中に晒されながら凍り付かされてはいない。

 特殊な駆け引きだ。ポケモン同士のダメージの与え合いこそあっても、相手のトレーナーに傷をつけることなど潔しとしないスズナも、線は引いている。

 

「ジュピター、どうだ?

 お前の嫌う偽善者だぞ」

「……スカタンク、やるわよ。

 調子に乗った正義の味方とやら、完膚なきまでに叩き潰しましょう」

 

 ドータクンをボールに戻したジュピターを、サターンは彼女に最も効く言葉で煽っていた。

 継戦を迷いかけていたジュピターも、これを言われては引き下がれない。掌の上で転がされているとわかっていても構わない。

 彼女が放り投げたボールから飛び出したスカタンクは、出てくると同時に喉奥に頬張っていたオボンの実を、がりっとかじって呑み込んでいる。

 ここに至る前、ダイヤのポケモン達との戦いで消耗した体力を回復させるためだ。

 たった一匹でダイヤのポケモン達を軒並み叩きのめしたスカタンクだが、やはり無傷とはいかなかったという話である。

 

「スズナさん……!」

「ええ、わかってるわ。

 あいつ、火炎放射の使い手よね」

 

 出てくるや否や、オボンの実での体力回復を計るほど、既にある程度の消耗を抱えているスカタンクには違いない。

 それでも、ユキノオーがとりわけ苦手とする炎技の使い手だ。パールが心配するのも当然である。

 だが、スズナもあのスカタンクがそんな個体であることはわかっている。ハクタイビルでジュピターと交戦した親友から、その程度の話は聞き及んでいる。

 あのスカタンクが、その親友を炎で狙い撃ったことも含めてだ。

 

「ひかりのかべ!」

 

「……あたしは一人で戦ってるわけじゃない。

 ポケモン達という仲間だけじゃない、あなた達も一緒にいるんだから」

「スズナさん……」

 

 望外には違いない。

 ピッピに光の壁を指示し、ユキノオーが苦手とする炎のダメージを、少しでも緩和させようとしてくれるプラチナ。

 そして、力及びもしないひよっこの時から既に、ナタネと共に悪へと挑むことを決意して突き進んだ、正義感溢れるパール。

 自分や、自分のポケモン達の力だけで、サターンとジュピターを相手取るこの厳しい戦いを、勝利で飾れる自信はスズナも得難いものがある。

 そんな不安を補ってくれる味方がいることに、勇気を貰っているのだと宣言して笑うスズナに、パールも応えねばならぬ想いが強く湧く。

 

 はじめから強く意識していたことだ。負けられぬ戦い。

 目まぐるしい戦いの中を経る中で、その時ごとの指示や状況判断により、思考に遮られてじわじわと薄められる、心の奥から沸き立つ感情というものがある。

 スズナの言葉は、パールやプラチナの、そして彼女と彼が共に駆けるポケモン達に、原初の感情を蘇らせてくれるものだ。

 

「……ニルル! 頑張ろうね!

 絶対、ぜったい負けられない戦いなんだから!」

「――――z!」

「頼もしいわ……!

 よろしくね、ナタネの一番弟子みたいな子!」

 

「ジュピター、気を引き締め直せよ。

 よもやこいつら相手に、遅れを取ることなどあるまいな?」

「当然よ……!

 スカタンク! 世間知らずどもを八つ裂きにするわよ!」

 

 スズナも、サターンも、ジュピターまでもが切り札を繰り出した、恐らくパールがこれまでに居合わせた全ての世界の中でも、最高峰にあたる勝負の世界。

 たかだかジムバッジを7つ手にしたばかりの、トップトレーナーと呼ばれる前夜の少女には、参じるにも荷が勝ち過ぎる死闘の世界である。

 既に一度は頂点を極めたと評するに値する者達が、信念を懸けて全力でぶつかり合う世界に身を投じるには、未だパールはその境地には達していない。

 プラチナもそうだ。彼はパールより賢しいぶん、いっそうそれを感じているはず。

 

 それでも、誰も退けないのだ。パールも、プラチナも。

 負けられないと口にしたパール。ニルルに対してではなく、自分に言い聞かせるように。プラチナにさえ、そう聞こえた。

 逃げないならば、戦え。それしかないのだ。勝利はその先にしかない。 

 

 自分達では役不足なこの戦いの中、勝利のために何を為すべきか。

 真なる意味でそんな世界の渦中に身を置く、あるいは自ら身を置くことを選んだ少女と少年に、命運はそれを問うている。

 パールとプラチナが、かつてない苦闘の中、培ってきたものが信念を貫くに値するものかどうかを問われる。ここに続く死闘とはそんな戦いだ。

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