ポケットモンスター・パールストーリー   作:ましゅ

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第149話  VSレントラー

 

 

「レントラー! わかってるな!?」

「さぁいくよ! パッチ!」

 

 具体性の無い両者の指示。多くは要らぬ相棒同士なのだから。

 接近戦に持ち来んでこそ本領を発揮するパッチだ。パールの声にも待ち切れなかった勢いで敵へと駆け迫っていく。

 一方でレントラーは、速度で勝れどいっそう確実性を増すため、地に足着けて身を震わせ"でんじは"を放っている。

 敵へと迫る中で強い電磁波を浴びたパッチが、痺れを感じた足と走りに支障を得かけるが、その脚の勢いが止まることは無い。

 迎え撃つ側のレントラーも、身動きとらずに電磁波を放つことを選んだ決断に伴う、真っ正面からこの難敵が迫る現実には緊張感が増す。

 

「よし……!」

「パッチ後ろ! 逃がさないで!」

 

 "かみくだく"牙を迫らせたパッチの第一撃を、レントラーは寸前の跳躍で躱してみせた。"しびれてうごけない"一瞬があったのは小さくなかった。

 着地点はパッチの後方離れた場所、振り返ったパッチが迫ろうとしても、俊足のレントラーは素早いバックステップでまずは距離を稼ぐ。

 "バトンタッチ"を経てエテボースから引き継いだ、"こうそくいどう"の足遣いがここで活きる。容易に接近戦を許さぬ下地と共に、無傷で開戦を迎えている。

 まずはレントラーがアドバンテージ面で一歩リードだ。2対4の現実があるデンジとしては、それを取れただけでもかなり大きい。

 

「レントラー、わかるな!?

 お前のスマートさを見せろ!」

「――――z!」

 

「!!

 パッチ、こっちも撃って! 捕まえるのは最後でいいから!」

 

 ここからデンジが選ぶのは安定策。何せ残りポケモン数でビハインドだ。

 何としてもエースのレントラーで挑戦者のレントラーを打ち破り、それも余力を残し、次なる刺客も撃破していくだけの必要がある。

 流石にこの年若き挑戦者とて、そうしたデンジの狙いを指示とレントラーの行動から察せる程度には、ここまで来られた精鋭だ。

 速い自らと麻痺した相手の速度差を活かし、"チャージビーム"による遠距離攻撃を主軸としたレントラーの戦い方に、パールもパッチへの指示を一新する。

 そう簡単には捕まえさせてくれない相手だとはっきりわかっている以上、まずは一撃当てて元気な脚を奪うことから始めていかねばどうにもならない。

 

 レントラーが鼻先に電気エネルギーの塊を作り、そこから発せられるチャージビームを撃つに対し、パッチは真っ向から躱しもせず突っ込んでいく。

 効果は今一つの電気技だ。ノーダメージとはいかないけれど。

 それを受けつつも駆けながら放つ"10まんボルト"は、大差こそ無くともレントラーにこちらより大きなダメージを与えられるはず。

 サイドステップでそれを躱そうとするレントラーだが、放射状に放たれた地を這う10万ボルトは相手に無傷を許さない。

 麻痺させられることこそ免れたレントラーも、足先を焼かれてステップが鈍る兆候を感じている。そして今なお自らへの直進を止めぬ敵の姿が厄介だ。

 

「捕まるなよ!」

「パッチ焦らないで! 撃てばいいんだあっ!」

 

 とにかく今一つでない強撃、噛み砕く牙を突き立ててこそ勝機の始まりとするパッチの攻撃はやや直線的だ。

 プレッシャーを与えられてはいる。だが、噛まれてはまずいと感じている切実さはレントラーこそ最もだ。

 ぎりぎりまで引き付けて跳ぶ、がちんと牙を鳴らすパッチの決死の一撃を躱す、距離を稼ぐことは難しくても構わない。

 すぐさまチャージビームを撃つ構えを取るレントラーは、触れられることを極力避けた戦い方を徹底している。

 

「構うな! 撃て!」

 

 だがパッチの放つ10万ボルトがレントラーのチャージビームより早いのは、躱されることも視野に入れたパールの声が引き出した最速の追撃だ。

 溜まった電気エネルギーを放つより早く、我が身をパッチの雷撃で焼かれるレントラーも歯を食いしばる。

 チャージビームを撃つべきか、それともせっかく溜めた電気エネルギーを捨ててでも、すぐに迫ってくるであろう敵の回避に徹するべきか。

 デンジの声が、レントラーの迷いを吹き飛ばす。駆け迫り始めたパッチの鼻っ柱めがけて撃ったレントラーのチャージビームは直撃だ。

 

「行けレントラー! お前の方が強いぞ!!」

「――――z!!」

 

 安定策を捨てた時点で、チャージビームの直撃にも怯まなかった敵の迫撃を躱せるかどうかなど大博打だ。

 ならば裏切れ、敵の予想するであろうこちらの動きを。

 レントラーは向かい来るパッチへと、真っ向からぶつからん勢いで前進する。

 そうした自分の行動に対し、来るなら来いよ私が勝つと、いっそう眼光を鋭くするパッチの表情が、レントラーの闘争心を掻き立てる。

 

「パッチいけるよぉっ!」

 

 まるで刀を持つ者同士の交錯の如く、牙を開いた二匹のレントラー達は微かな接点を経てすれ違う。

 血飛沫が飛んだ。パッチの牙が空を切って音を鳴らすのと対極、すれ違いざまにパッチの耳の根元を牙で抉ったレントラーの舞わせた血。

 傷を負ったのはパッチだけだったのだろう。関係あるものか、こんな逆境何度目だ。

 噛みはずしたことにもめげず次にいけぇ、と叫ぶパールの声が、相手を捕らえられられなかったあの瞬間より早かったからこそ、パッチの助けになっている。

 

 振り返るより早く打つ10万ボルトの電撃は、コンマ1秒その発射が遅ければ躱せていたはずのレントラーを逃がさない。

 決して大ダメージではない。だが足にくる痺れと焼きだ。

 それに一瞬でも足が鈍れば、振り返りざまに飛びかかってくるパッチから後退するように跳ぶレントラーも、相手の勢いに勝れない。

 喉元めがけて牙を突き立てにくる相手に対し、顎を引いて額を突き出し、その鼻先に頭突きめいた迎撃をするので精一杯だ。

 

「パッチいけえっ! 決めにいっちゃええぇっ!!」

 

「いいぞ、パッチ……! それでいいんだ……!」

 

 硬い相手の額に鼻先をぶつけても、その眼に宿る闘志を微塵も衰えさせず、かっと口を開くパッチが前脚で相手の顔を掴みかかる。

 ぐいと力任せに相手の顔をどけ、首元に深々と"かみくだく"牙を突き立てる一撃が入る。

 それがパッチの必勝の型だと信じて突き進ませたパールも、それが果たされた一幕に劣勢の覆りを想起するプラチナも、握り拳に力が入らずにいられない。

 噛みついた勢いそのままに、相手のレントラーを押し倒したパッチが敵を組み伏せ、速度による逃亡を叶えさせない状況を形成する。

 

「舐めるな!!

 レントラー! お前はそんなものじゃない!!」

「ッ、ッ――――――――z!!」

 

 毛皮の下まで貫通する牙と溢れる血の激痛を耐えきって、レントラーは強引に身体を捻る。突き立てられた牙による傷が広げられようともだ。

 そうしてレントラーが開いた口は、パッチの右足の付け根に深々と"かみくだく"牙を突き立てる行動へと繋がる。

 どんな相手も牙で捕らえれば離さぬパッチ、きっと彼女は同じことをされても怯まず戦い抜くほど強い。

 それが出来るのがお前のレントラーだけだと思うな、というデンジの叫びに呼応して、彼のレントラーも痛苦に怯まぬ強さを見せ示す。

 

「パッチ……!」

「~~~~~~ッ、ッ――――!」

「い……いけるよおっ! あなたの方が絶対強いんだあっ!

 ジムリーダーさんのレントラーにだって、絶対、ぜったい負けないいっ!!」

 

 ああわかってる、あなたより私の方がずっと。

 こいつ強いよ、わかってるよ。でも、もっともっと強い奴を私は知ってる。

 こんな所で躓いてられるか、私が最強、あなたにとってのマジの切り札になり得る唯一の"もう一匹"だ……!

 ニルルやミーナやララやプーカにだって、絶対譲れないものが私にはある。もしかしたらあなたは知らないかもしれないけど! わからせてみせる!

 

「なに……!?」

「いっけえーーーっ!! パッチぃーーーーーっ!!」

 

 牙を突き立て返されて尚、パッチは相手に食らい付いた牙を抜かず、相手を振り回すように頭と体を振り回す。

 横倒れになっても構わない。体全部を使って引きずり回す。

 パッチが突き立てた牙の端、レントラーの首元から吹き出す血は抉る牙が相手への傷を深めている証左。

 同時に、食らい付いて離さないレントラーの牙の端からも、パッチの血が噴き出して止まらない。

 互いに相手の肉を貫いたまま離さぬ獣が、組み合ったままフィールド上を激しく転がる中、血痕だけが痛々しく地面に刻み付けられていく。

 親に連れられてこのバトルを観ている観客の女の子が目を覆い、震える男の子の目を母親が覆う姿さえ観客席には散見される地獄の様相。

 開けぬ口から呻き声めいた闘志の声を漏らす二匹の眼光と失われぬ闘志を、パールとデンジだけが目を逸らさずはっきり見逃さない。

 

「まだだ! レントラー!!」

「パッチぃっ! 思いっきりやれえっ!!」

 

 痛苦に喘がん口を塞いで意地をぶつけ合い転がる両者に、これ以上を求めるのは残酷だろうか。いいや、信じろ。

 デンジの声に、パールの声に、くわっと目を見開いたレントラーとパッチが、相手の皮膚下まで食い込んだ牙先から力を流し込む追撃を果たす。

 パッチの"かみなりのキバ"。そしてレントラーの"ほのおのキバ"。

 身体の内側から神経まで焼き切る電撃にレントラーも両目をぎゅっと閉じたが、体内に炎を流し込まれるパッチのダメージはそれを上回る。

 たまらず顎から力が抜けた、絶叫めいた口を開いたパッチの牙を抜かれたレントラーは、ここしか無いとばかりに両前脚に力を込める。

 そのままぐっと押し込むように踏み込んで、牙を抜かぬままパッチの背中を下にして組み伏せる形へ押し込んでいく。

 

「あぁ、っ……」

「ッ~~~~、――――――z!!」

「!?」

 

 ちくしょう不覚、だけどだけど、負けてたまるか。

 牙を抜いて組み伏せられてしまった、パールにあんな不安そうな声を、こんな私でいいはずがない!

 なりふり構わず構わず両足をレントラーの顔面に突き出すパッチは、相手の両眼をその足で殴る反則級の一撃に打って出ている。

 あわやで目を閉じ目を潰されずに済んだレントラーも、パッチの爪でまぶたの上をざくりと抉られ、たまらず牙を抜いて後方に飛ばざるを得ない。

 やっと追い詰めかけと思ったら一寸の間も置かずにこれだ。パッチと呼ばれる俺の同種、マジでおっかないほど勝利への執念が只ならない。

 

「っ、っ……! パッチ……!」

「レントラー!! 来……」

 血走った眼で襲いかかるパッチの姿を真っ正面に目の当たりにしたレントラーの戦慄は、きっとこの戦いを観る者達には一抹も真に理解できまい。

 避けることも出来たか。いや間に合わない。

 それを本能的に一瞬で判断したレントラーは、牙を突き立てに迫る相手へ自ら頭を突き出して跳びかかり、額をぶつけ合う対抗策に打って出る。

 双方後ずさりかけた足を一歩も退かせない。閉じそうになる目を見開いたまま。

 霞む瞳に映る相手の姿をはっきりと目の当たりにすることだけに、この一瞬は全身全霊を投じる。映れば、闘志は蘇る。

 

「「―――――――――z!!」」

 

 目の前の敵を屠るため、威嚇と闘志と勝利への決意を表明する獣の顎を引いた雄叫びの直後、退路を捨てたレントラー二頭が食らいつき合う。

 示し合わせたように逆の首側、逆の前脚付け根、牙を突き立て合う両者が新たな傷を作り合い、その痛みに喘ぐ神経も今だけは捨て去って。

 ジムリーダーとトップトレーナーのハイレベルな攻防を期待して集まった集客の前で再び始まるのは、新たな血を尚も流してのたうち合う原始的な攻防。

 そこにはもう、戦略的なスマートな立ち回りなど微塵も無い。逃げ場も無かった。いかに仮初めの速度の上昇があったとて。

 事あるごとに上がっていた歓声は今や静まり返り、血みどろの獅子二頭が血肉を抉り合うけだものの攻防を、誰しも絶句して見届けることしか出来ない。

 

「く……っ!

 負けるな! レントラー!!」

「頑張って、がんばって、パッチ……!

 お願い、あと少し、あと少し……っ!」

 

「っ……!

 頑張れえええっ!! パッチいっ!!」

 

「――――――――ッ!!」

「ガ…………!?」

 

 広大にして静まり返りつつある会場で、デンジもパールも祈るような声しか発せられなかった中、割って入った一つの迸る声。

 柄にもなく一番の大声でエールを送ってくれたプラチナの声が耳に入った瞬間、パッチの眼光が覚醒する。

 絶えず流し込んでいた"かみなりのキバ"の電流、返される"ほのおのキバ"に蝕まれる尋常ではない苦しみ。

 負けてたまるか、せめて刺し違えてでも、という決意で牙を離さなかったパッチの目を覚ましてくれたのは、パールの声ではなかったのだ。

 他ならぬパールが、今までに聞いたことのないプラチナの大声に、はっとして彼の方を見てしまったほど。

 

 どうかしてる、何が刺し違えてもだ、私の強さはそんなものか。

 勝つんだ、私の力で……! 中継ぎの一勝二勝をもぎ取る程度の活躍で満足してて、パールの切り札に私の名を挙げられるものか!

 こいつ、どうせ"こおりのキバ"だって使えるんだろ。マジで強いトレーナーの切り札はそんな隠し技だって持ってるさ。

 それでもピョコは、トリデプスやドーミラーを破った果てに、ハガネールまで打ち破ってみせたじゃないか!

 あいつの二番手で満足してたまるものか……! 私だって、強いんだ!

 

「レントラー!?」

 

「~~~~~~~~……ッ!!

 

 心と身体を蘇らせたパッチの牙が、めりめりぶちぶちとレントラーの首筋の肉をいっそうの力で食い千切る音に、観客席からは悲鳴すら上がった。

 意識さえ飛びそうなそれに、牙を抜くどころか口ごと開いて、目を白黒させたレントラーの隙。

 パッチは食らい付いて離さないまま、首に力を入れてレントラーの身体を振り上げると、地面に叩きつけるように振り下ろす。

 決して高さのある所からではないとて、生命の危機さえ感じたその瞬間に我が身を叩きつけられたレントラーは、立ち上がりが少し遅れてしまう。

 わずかなバックステップで距離を作ったパッチが、その短時間で溜め込んだ電気エネルギーを纏い、突き進むその姿にレントラーは対応することが出来ない。

 

 パッチの"スパーク"、電撃体当たりが力尽きかけていたレントラーを突き飛ばし、大きく吹っ飛ばしたその瞬間が決着の時そのものだったと言えよう。

 なおも腹這いで立ち上がろうとしていたレントラーも、足に力が入らず、腹を地面から浮かせることさえ叶わない。

 己の切り札が、ここまで周到な形で繰り出せたにも関わらず打ち破られたことに、デンジがショックを隠せない表情でレントラーをボールに戻していく。

 荒い息を吐くパッチは、その一幕を目の前にしてなお、最後の一匹を待つようにして膝を曲げることをしない。

 

「パッチ……!」

 

「っ、っ…………――――z!」

 

 脚が震えるほどのダメージと疲労、そんな中でもパッチは掠れ気味の咆哮を発して振り返り、パールに継戦の意志を突きつけた。

 わかってる、あなたがそういう心配そうな顔をすることぐらい。

 別に私が引っ込んだって、後続のみんなが上手くやるだろうとも信頼してる。

 無茶をせず、そろそろ休むべきなんだろうっていうのだって、パッチも頭では理解できているはずなのだ。

 

 ボールのスイッチに指までかけていたパールが、ぐっと堪えてその意志に応えてくれたことが、パッチには何よりも嬉しかった。

 やらせてくれるんだ、優しいあなたが。

 だったら、必ず結果を持って帰ってみせる。それが、今の私の為すべきこと。

 

「続けるんだな……!?

 いいだろう、迎え撃とう! いくぞ、エテボース!」

 

 満身創痍のパッチの前、先ほど一度引っ込んだエテボースが降臨する。

 相手にもダメージはある。一方的に不利ではない。

 それでもパッチの方が、追い詰められているのは確かなはず。

 

「か……っ、勝とうね、パッチ……!

 あなたが強いこと、信じてるから、っ……!」

「――――!」

 

「このままいいようにやられて引き下がれるかよ……!

 オレだって、オレのポケモン達だって、負けてなんていられないんだ……!」

 

 いよいよ訪れてしまった1対4の図式。敗色濃厚もいいところだ。

 勝敗はもはや、観客も見えているはず。それでも、このまま終わってたまるか。

 ジムリーダーとは負けることが仕事だ。加減したバトルとはいえ、自分達に勝って翼を広げ、チャンピオンロードへ羽ばたく若き志を見送ることこそ本懐。

 だからといって、相手の一匹も仕留められぬまま負けることなんて易々と受け入れられるものか。意地というものはある。

 それが、ジムリーダーとしてではなく、トレーナーとしてのものだと既に自覚するデンジはもう、求めたものが既に得られた実感を掴んでいる。

 今だけは、一人のトレーナーとして。かつて今ほど強くなかった自分が、格上に決死の想いで挑んだあの頃のように。

 追い詰められても逆転を信じ、疑わず、戦い抜くことを迷わず立ち向かえたあの日の情熱に近いものが、今の自らに蘇っている。

 それを形にしてくれるこの強き挑戦者に感ずる想いなど、一度は情熱を失いかけていた男には一つしかあるまい。語るべくもなし。

 

「来い、パール! パッチと呼ばれるレントラー!

 そう簡単に格好つけさせて貰えると見くびってくれるなよ!

 

「っ、いくよ、パッチ!

 あなたなら出来る! 私の、頼もしい、最高のあなたなんだから!」

 

 勝敗よりも大切なものは確かにある。

 一つ一つの勝利は、果て無き夢を追う旅路の中では通過点だ。

 ただ勝つだけでは満足せず、よりよい最高の形を目指すのはもう一つ高きレベルの意識。

 一流と超一流、そこに辿り着いた者達に何の差があったのかと問われれば、もしかすればそうした所に答えがあるのかもしれない。

 

 希望も、理想も、勝ち取ることでしか身を結ばない。結果が全てだ。

 傷ついてなお、考え得る限りの最高の勝利を獲得せんとした獅子の志が、実現世界における真か虚か問われる舞台がここにある。

 戦い抜け。そして勝て。それが何よりも重要なこと。

 真の意味でそれを理解している相棒の後ろ姿が、今のパールには、今だけはピョコにも勝るほど頼もしい。

 

 パールにとっての二番手と自称し、ダブルエースの一角であると自らを信じられないパッチは、ある意味己に自信の持てないパールに似たのかもしれない。

 だから、きっと、ここまで強くなれたのだ。パールがそうであったように。

 高みを目指して頂点を見上げ、ひたむきに戦い抜き続けてきたものの尽力は、決して志す者を裏切らず応える。

 培ってきた力はこの華舞台に間に合ったかどうか。いま問われているのは只それだ。

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