ポケットモンスター・パールストーリー   作:ましゅ

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第31話   お久しぶり

「~~~~♪」

 

「うーん、機嫌良くなってくれてるのはいいんだけど……

 なんだか複雑な気分だなぁ……」

 

 広場をぴょんぴょん跳ねながらお散歩するミーナは上機嫌だった。

 追いかけっこでパールをくったくたにしてやって、それで溜飲でも降りたかのようにご機嫌というところ。

 並んで歩いても邪険にされないほど機嫌良くしてくれるのは結構なのだが、私をいじめてすっきりしてご機嫌、とでもいうこの態度はパールももやっとする。

 仲良くしたいし可愛がってあげたいミーナだけど、流石にそういう関係は歪んでいると思うし、パールは新しいアプローチが出来ないか考え中。

 

「――――♪」

 

 しばらく広場を散歩していると、ミーナが一本の木に目をつけて駆け寄っていく。

 ぴょんぴょんと跳ねた後、幹に手をかけぎゅっと力を入れて、そのままよじよじと上っていくではないか。

 腕力自慢には見えない手だが、軽い体で木登りするぐらいの力は出せるのだ。

 

「――――、――――」

「ええっ? 私も来いって?」

「――――」

 

 二階ぶんぐらいの高さに生えた太い枝まで到達すると、ミミロルはそこに立って地上のパールを見下ろし、来い来いとばかりに手招きする。

 登って来いということらしい。まあ、パールには出来るけれど。

 そんな想定はしていなかったパール、近くには誰もいないとは言ってもスカートで木登りはちょっと抵抗があったりも。

 小さい頃からダイヤに連れ回されていたパール、木登りぐらいは何てこともないのだが、そういうことをするんだったら下は履き替えたいのが本音である。

 

 とはいえ珍しく、ミーナが機嫌良く一緒に遊ぼうと言ってくれているのだ。

 誰にも下から覗かれたりはしなさそうだし、パールも木の足元にまで行き、手のかけられそうな場所を探して。

 昔はこんなことしてよく遊んだなぁ、というのを思い出しながら、ミーナが立っている枝にまで登り切る。

 

「――――♪」

「あははっ、良い眺めだよね。

 ミーナも楽しんでくれてるみたいで私も楽しいよ」

 

 パールとミーナ、太くて折れそうにない枝部分にお尻を乗せて座り、ちょっと高いこの場所から広場の遠景を眺めている。

 二階のベランダから外を見る程度の景色でも展望は良く、まして小さなミーナにとってこの高さは、地上よりも相当に目線の高さが変わるはず。

 眺めの良さにミーナが目を細めて笑っている横顔を近くで見られて、それがパールにとっては何よりも良い眺めだったものだ。

 

 あんまりべらべら話しかけて、景色を堪能しているであろうミーナの邪魔をするまいと、パールもミーナが眺める遠方を共に見つめていた。

 まったりとした時間である。しかし、それなりに楽しい。

 高い場所では、吹く風が肌を撫ぜる心地良さも、地上とは一風変わった感覚で味わえて、それもまた趣のあるお楽しみ。

 ミーナが飽きて降りるまでは、何も言わずにただただこの景色を楽しもうとするパール、充分満足できる心地である。

 

 目先の眺めしか見えていなかったパールは、後ろから近付いている何かに気付くことなど全く出来なかった。

 それはふわふわと、音も無く、そーっとパールの後ろから近付いて、彼女の顔のそばまで接近し。

 結果的のそのポケモンは、パールの耳元に口元を添える形にまで至り、その瞬間にパールがほんの少しだけ、気配を察した程度である。

 

「――――」

 

「へぁうっ!?!?!?

 っ、はわ!? ちょっ、やっ、あわわわわわっ!?!?!?」

 

 パールの耳元で小さな鳴き声を発したそのポケモンだが、声よりその口元から溢れた吐息めいたもので、パールは不意打ちで耳をくすぐられる形に。

 超びっくりしてあわあわばたばたしたパールだが、ここは木登りした枝の上。

 そんな所で暴れたら、バランスを崩して落ちちゃう。さあ大変。

 

 いや、パールは膝の裏を自分が座っていた枝に辛うじて引っかけて、頭から真っ逆さまに落ちそうだった危機を自力で免れた。

 結果、逆さまに宙ぶらりん。スカートがめくれてその下が大変なことに。

 いや、この緊急事態でも左手でスカートを押さえ、太ももの付け根が見えないように押さえている反射神経はなかなか凄い。

 別にそばに誰もいなくたって、宙ぶらりになって恥ずかしい下半身丸出しなんて絶対にさせない。ウルトラCである。

 

「ちょちょちょ、やばやばやばっ!?

 ミーナたすけてぇ!? 引っ張り上げてぇ!?」

 

 スカートを押さえる左手が全く使い物にならない上で逆さ吊り、脚だけで枝にしがみついているパールは大ピンチ。

 見下ろすミーナに右手を伸ばし、お願い引っ張り上げてと訴えるパールだが、この期に及んでたいそう楽しそうなミーナである。

 な~にやってんの、とばかりにくつくつ笑い、口元を隠すことに両手を使うミーナに助けてくれる気配はゼロ。

 パールの絶望感ったら凄い。このままじゃこの高さから、頭から地面に落ちちゃいそう。でも左手は使えない。右手を引いてくれる人もいない。

 腹筋に力を入れて体を起こして枝を右手で握れれば何とかなるかもしれない。流石にか弱い女の子のパールに、そんな筋肉はありません。

 運動神経と反射神経でここまで何とかしているのは凄いが、どうしたってここまでである。

 

「お願いミーナ~!

 しんじゃう、しんじゃうから~!」

 

 ミーナが助けてくれないと頭から落ちちゃいそうなパールは、必死で叫んで訴えるしかない。

 流石にここまで必死にお願いされると、ミーナもこれは放置するのも心苦しくなって、太い枝にお腹をつけて、パールに向けて頭を下げる。

 長い耳を垂らして、これでも握れというサインらしい。

 これはいいんだろうかとパールも一瞬思ったが、彼女の中では命さえ懸かってる気がしているので、四の五の言っていられない。

 ごめんなさい助かります、と心の中で唱えて、ミーナの耳をぎゅっ。

 

 ミーナは頭を上げて、首の力でパールを引き上げつつ、自分の両手は耳のパールが握っている場所の近くを握っている。

 これをしないと大事な耳がびぃんと伸びて痛いからだ。

 こうしてなんとか枝を掴めたパールは、逆さ吊りの状態からなんとか座る姿勢まで戻ることが出来た。

 心臓ばくばく、死ぬかと思ったの心境の中、パールはいそいそと木から降りていくのだった。

 

 

 

 

 

「もぉ~、あんな危ないイタズラするなんて良くないよ!

 まあ、反省してるみたいだからいいけど……」

「――――……」

 

 高所のパールに背後から近付き、声あるいは吐息をかけたのは一匹のフワンテだった。

 木から降りたパールは腰に両手首を当て、自分の目線より少し低い位置まで降りてきたそのフワンテに、ぷんすかしながらお叱りだ。

 フワンテもしょんぼりしているので、パールも怒るのもほどほどに、溜め息を吐いてこれぐらいでいいかとお説教を打ち切る。

 ダイヤのような、怒っても悪びれなく笑うような相手ならぎゃんぎゃん行くパールだが、しょぼんとした相手にはあまり強く出られないようだ。

 

 その横では、ミーナがなるほどとその様子を眺めていた。

 もし本当にパールをこれぐらい怒らせてしまう日が来ても、こうしてしょんぼりして見せれば怒られずに済みそうだと学習中。

 パールの知らない所で悪女が知恵を蓄えている。今後もミーナに手を焼かされそうな予感がたいそう強まる光景だ。

 

「あなたのトレーナーさん、どこ?

 近くに誰もいないけど、トレーナーさんからあんまり離れちゃダメだよ」

「――――、――――」

 

 ここはトレーナーが自分のポケモンとお散歩するふれあい広場であり、野生のポケモンなんて生息していない。

 このフワンテにもトレーナーがいるはずだと思うパールの言葉に反し、フワンテはぷるぷると身体を振る。

 まるで、首を振って否定するかのように。

 

「えっ、あなたトレーナーは……

 ……………………あ、あれ? もしかして、もしかしてだけど……

 あなた、もしかして前に私に会ったことある?」

「――――!」

 

 じーっとフワンテを見ていると、なんだかこのフワンテ、見覚えがあるような。

 ポケモンの個体ごとの顔つきの違いなんて流石にわからないが、このフワンテのサイズ、目つき、パールにどこかで見たようなという直感は得させてくれる。

 パールがテレビ越しでなく、生でフワンテを見たのはかつて一度きりだ。

 もしかしてわかってくれた、と表情を明るくしたフワンテは、パールの胸元にダイブしてきてむぎゅ~すりすりする。

 

「ちょっ、あはは、やめてやめて、くすぐったいから!

 あなたやっぱり、発電所で会った子だね?」

「――――♪」

 

 たまらないぐらいこそばゆいので、パールもフワンテを両手で持って胸から引き離す。

 顔を合わせて尋ねたパールにフワンテは、わかってくれた喜びいっぱいの笑顔と声で応えてくれた。

 谷間の発電所に乗り込んだ時、屋上に迷い込んできた傷ついたフワンテを、パールが傷薬で癒してあげたことがある。

 どうやら本当に、このフワンテはあの時の子らしい。

 

「えぇ~、うそぉ、信じられない。

 あそこからここまで結構あるよ?

 こんなところで再会だなんて運命感じちゃうよ」

 

 運命じゃなくてこのフワンテ、ず~っとパールについて来て、離れた場所から見つめていたのだが。

 彼女らがハクタイの森に入った時からずっとついて来ており、街に入られたらそれ以上追えないので、野生の暮らしで暇つぶし。

 やがてパール達が街から出たら、再び追跡開始である。

 今日のように近付いてコンタクトを取ればパールも喜ぶばかりなのだが、なかなか今日までそれが出来なかったのは、このフワンテが内気だからだろうか。

 人間にも、好意を持った女の子に、なかなか積極的に声をかけるのが難しくなっちゃう子はいるものだ。多分、プラチナ辺りもそういう男の子だし。

 

「――――、――――」

「あははっ、なになに?

 言葉が通じないからよくわかんないけど可愛い!

 待ってね待ってね、何が言いたいのか今考え……いたっ!?」

 

 パールに何か言いたげに、浮かせた体をふりふりと揺らすフワンテの仕草は、意志疎通を目的としたものだがパールにはそれ以前の問題。

 すごく可愛い。一生懸命に揺れるフワンテ。

 何か伝えたいことがあってそうしているのはわかるけれど、言葉が通じない人とポケモンなので、パールもフワンテの言いたいことを考える。

 しかし、そうしてフワンテに目を輝かせるパールのお尻を、ミーナがべっちんと平手打ちする。

 

「ちょ、なに!?

 ミーナっ、乱暴なのは……」

「――――、~~~~♪」

 

 振り返ったパールにお尻を向け、それをふりふりする仕草を見せると、ぱちんとウインクしてみせるミーナ。

 何がしたいのかよくわからない。ウインクから察するに、自分を可愛く見せようとしている意図はパールにもわかった気がしなくもないが。

 これは何なんだろう。私の方が可愛いでしょ、的な?

 

「あ、えと……か、可愛い、よ?」

「――――!」

 

 実際、ミミロルは可愛らしい姿かつ、ミーナは自分を可愛く見て貰える仕草を直感的にわかっているタイプ。

 "かわいさコンテスト"なんかに出れば、きっと天性の才能を発揮するだろう。

 しかし、今いきなりこんな場面でそんなもの見せられたって、パールも戸惑いながら返事することしか出来ない。

 嘘は言っていないが半ば棒読みみたいな声使いになってしまうパールに、ミーナは本心でないお世辞を言われた気がしてしまって拗ねる。

 ほっぺたぷくーと膨らませ、顔を真っ赤にしてむかつくやら恥ずかしいやら。

 確かに、ぶりっ子仕草を作って見せて空振ったら恥ずかしいものだが。

 

「――――」

「あっ、ごめんね。

 あなたも可愛いよ~、すごく抱きしめたい!

 ね、ね、ぎゅってしていい? よかったらうなずいて?」

「――――♪」

「ゆるされた! えへへっ、ぎゅ~!」

 

 今のパールの興味はフワンテに全振りである。

 ハグしていいかという問いに快諾を得られたら、フワンテを胸元に抱きしめる。

 可愛い可愛い愛らしいの想いが強い抱きしめでありながら、相手が苦しくない程度に力を加減できている辺りは、パールも根っから優しいものである。

 

 そのそばでは、蚊帳の外にされたミーナが、むぎぎぎと顔を真っ赤にして拗ねまくっているが。

 パールが自分から興味を離してしまっているのが、なんだかたまらなく悔しいらしい。

 あんなにパールのことを態度にも表すぐらいなのに、相手にされないとむかむかしてしまうらしい。

 ツンデレ? いや違う、これは単なる構ってちゃん。すごく拗ねた眼でパールを見上げ、むかむかと身を震えさせている。

 

「ねえねえ、あなたも私と一緒に来ない?

 あなたが友達になってくれるなら、私すっごく大歓迎だよ!」

「――――♪」

「やった! いい反応!

 それじゃボールに……」

「――――!」

 

 五人目の友達が決まってしまったパールは、バッグから空のモンスターボールを取り出したが、それを見てフワンテは表情一変だ。

 ぴゅんっ、とパールの目前位置から後方に2メートルぐらい、凄いスピードでバックして距離を取る。

 あ、あれ? とボールをフワンテに向けようとしたパールも、思わぬ反応に固まってしまう。

 

「――――、――――♪」

 

「えっと……一緒に来てくれるん、だよ、ね?」

 

「――――♪」

 

 パールの問いかけに、フワンテは笑顔でうなずく仕草を見せる。

 でも、パールの目線よりずっと高い場所に身を浮かせ、ボールを投げて当てるには一定のコントロールが要る位置へ。

 これは、自分をボールに入れて一緒に連れて行って、という位置取りとは真逆の意図を感じさせるものである。

 

「~~~~♪」

「ええっ、ちょっと!?

 どこ行くの~!?」

 

 間違いなく、パールに好意を持っているのは明らかなフワンテだが、そのまま風船のようにぷかぷかと浮いていって、そのまま空の彼方へ去っていった。

 行動と態度が噛み合っていない。何を考えているのかわからない子である。

 ボールを投げても届かない高さまで至られてなお、向こうはもっと高空へと去っていくので、パールも唖然と見送るのみである。

 

「ど、どういうことなんだろ……っ、あれ!? ミーナ!?」

 

 地上に目を向けてみたらミーナもいなくなっている。

 パールがフワンテにばかり構っていたものだから、拗ねてどっか行っちゃったらしい。

 構ってちゃんどころか困ったちゃんである。

 この後パールは、この広い広いふれあい広場で、ミーナを探すために奔走する羽目になるのである。鬼ごっこの次はかくれんぼである。

 

 ミーナの名前を呼びながら広場を探し回るパールは、結果その五分後ようやくミーナを見付けられた。

 いわポケモンが和むようにと作られた、砂地の上に作られた岩屋のような場所である。

 そこでミーナは硬い地面の上に、肩肘ついて横になるという、休日テレビを寝転がって眺めるだらしないおっさんのような寝姿で不貞腐れていたのだった。

 

「もぉ~、ミーナぁ、行くよ~。

 ごめんってば、ミーナのことほったらかしにして」

 

 パパ休日なんだから遊びに行こうよ、とでも例えられそうな感じでゆさゆさとミーナを揺さぶるパールだが、ぺちっとその手も払われる。

 すねすね。すごく拗ねてる。

 顔を覗き込んでみたら、頬を膨らませているミーナの表情。これはこれで可愛い顔なのだが。

 

「ここからは何でもミーナに付き合ってあげるから。

 追いかけっこする? 何でもやるよ?」

 

 ご機嫌取りな言葉を口にするパールだが表情は柔らかい。

 あんなに自分のことを嫌っている素振りを見せるミーナだが、無視されたらされたでこんな風に怒っちゃうのだ。

 なんとなく、構ってちゃん気質なのはわかったし、これはこれで今後も手がかかりそう。

 しかし、自分がこの子に関わることが、不快感を与えるばかりというわけでもなさそう、とも感じられる。プラス思考に考えよう。。

 何だかんだで"私のポケモン"である。だったら愛着は無くならない。

 

「ほらミーナ、抱っこ抱っこ。行こ?」

「――――!」

「はぐうっ!?」

 

 寝そべったミーナを抱いて立たせるパールに、子ども扱いするなとミーナの拳がパールのお腹にどすり。

 女の子に腹パンだなんてひどい。でもミーナも女の子である。女の子が女の子に腹パンって、ひどさ果たしてどの程度だろうか。

 男が女の子のお腹を殴ろうものなら万死に値する罪なのだが。

 

「うぐぐぐ……やったなミーナっ……!

 そんなやんちゃな子はこうだっ!」

「――――!?

 ――――ッ、――――っ!!」

 

 殴り合いになったら勝てないので、パールはミーナに組み付くようにして、こちょこちょミーナのお腹や脇腹をくすぐる。

 セクハラとはひどい。でもミーナは女の子である。女の子が女の子の体をまさぐるって、犯罪度いささかどの程度だろうか。

 男が女の子にこんなことしたら即パトカーだが。

 

「――――!」

「わひゃっ!?

 まってまってまって、ミーナやめっ、あはははははっ!!」

 

 だけどやっぱり、力任せに勝負したらミーナの方がパワフル。

 くすぐったさに暴れてパールを振り払うと、ぐいぐいパールを仰向けにして、お腹の上に座り込む。

 マウント取ったら絶対逃がさないよう下半身でパールのお腹を強く挟み込んで、パールの脇腹をこちょこちょこちょ。

 暴れて抵抗するパールだが、そのうちパールの両手首をミーナが右手だけでぎゅっと掴み、パールの頭の横にぐいっと押さえつける。

 がら空きになった腋。あっ、これはやばい、とパールも今さら悟ったが、自由な左手をわきわきさせているミーナの悪い笑顔がいっそう怖い。

 

「ま、待ってミーナ! まいりましたっ!

 私の負けっ! だから許し……いやあああああはははははっ!?!?!?」

 

 駄目です、ギブアップなんて認めません。

 仰向けで、両手を顔の横に上げた状態で押さえつけられて、お腹に乗られて下半身は何の抵抗にも使えず、どう足掻いても弱点は無防備。

 足をばたばたさせたって、首をぶんぶん振るぐらい体をよじろうとしたって、腋をくすぐるミーナの手からどうやっても逃げられない。

 

「だめえええぇぇぇしぬうううぅぅぅあはははははは!?!?

 おねがっ、ゆるしっ、わたっ、私がわるっ、わるかった、からあっ……!」

 

 悶絶の笑顔で涙まで散らして苦しむパールを見下して、ぞくぞくするような楽しみを得ていっそうくすぐり攻撃の手を速めるミーナ。

 右の腋をくすぐったら今度は左の腋。たまらず暴れようとするパールだが、ぐっと押さえつけられて逃げられないパールをすっかりミーナが掌握している。

 蹴ったり殴ったりしてパールをいじめてきたりはしないけど、ミーナのサディスティックな性格がちょっと垣間見えているような。

 

 たいそうおっかないことに、そんなミーナの拷問が五分以上続いたのである。

 最後の方はパールも息が切れ、笑い声もかすれて出るか出ないかの状態で、体に力が入らなくなってもぞもぞ動く程度に衰弱し。

 いつの間にか、パールの手首を押さえつけている方のミーナの手に、抵抗の力が全く入っていないことに気付いて、ミーナもようやくくすぐりをやめた。

 乗っていたパールのお腹の上からどいて、立ち上がって見下ろすミーナの目には、指一本にも力が入らず、ひくひく体を痙攣させるパールの姿があった。

 

「ひっ……はひ、ぃ……

 もう、むり……ゆる、ひて……」

 

 追いかけっこで体力をゼロ以下にしてやった時とは異なる、骨抜きにされたパールが枯れた声で許しを請う姿には、さしものミーナも少し反省。

 これは流石にやり過ぎたか。涎が溢れそうになってぎりぎり口を閉じたパールを前に、ミーナもぺたんと座り込み、彼女から目を逸らして頬をかく。

 やり過ぎちゃったら少し反省するぐらいには、ミーナにも良心というものがあるようで何よりだ。

 

 結局この後、パールが立ち直るまで随分と時間がかかってしまった。

 呼吸を整え普通に息が出来るようになるまで5分、そうなっても腰に力が入らず、やっとがくがく震える足で立つことが出来るまでにさらに10分近く。

 流石にミーナも、早く行くぞとパールを急かすようなことはしなかった。自分のせいだし。

 ふれあい広場に滞在した時間もやや長くなってきており、結局パールが立って歩けるようになれば、そのまま広場から去る方へと進んでいくのであった。

 

 気難しくて、性悪で、今後もパールを振り回しそうなミーナである。

 短時間でそれを改めて痛感させられたパールだが、単に今後に不安を感じるばかりでないのが、パールの転んでも只では起きないところ。

 無視したらこうして不機嫌になる辺り、嫌われているばかりじゃないんだな、と前向きな結論を脳内で反芻するパールは本当にポジティブである。

 

 実際に滞在した時間以上に、ミーナのことをよく知り、関わり、色々今後ミーナとの付き合い方を考えていくにあたって、貴重なヒントにはなっただろう。

 それもまた、最愛のポケモンと一緒に歩ける環境として整えられた、ふれあい広場がもたらしてくれた経験の一つ。

 まあ、来てみてよかったのではないか。共に歩く友達を誰にするかで、考え抜いた末にミーナを選んだパール。

 きっと今日の経験だって、いつかは後から良い思い出になってくるはずだ。

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