「ん~っ、楽しかった!
また来たいね」
「……うん」
癖になりそうなふかふかのベッドに、朝はカーテンの隙間から差し込む光に目を起こして貰える最高の目覚め。
リッシ湖のほとりのホテルで目を覚ましたパールは、旅に出て以来最高に気持ちがいい寝覚めだった。
ポケモンセンターのお泊り部屋も快適だが、やはりきちんとお金を払って泊まるお宿の心地良さは、それを大きく上回るものだ。
これでもプラチナは高くないホテルを選んでくれた方である。その中でも、特に良いものをきちんと選んでくれたようだが。
寝る前のナタネとの電話でも、プラッチがすっごくいいホテルを見付けてくれて、と彼を褒めちぎるパールの姿があったものだ。
今朝に限っては、今後も日課になっていきそうなスモモとのお電話を楽しんだパールも、プラチナを待たせてはいけないと思って長電話しなかった。
気持ちのいい朝を、今の一番の友達プラチナにおはようを言う最高の始まりで迎えたパールは、彼と一緒にリッシ湖に赴いて。
まだ観光客が集まっていない、朝の静かな湖畔は、二人きりでのどかに過ごすには最適だ。
同じことを考えた観光客もいたようだが、お年寄りの夫婦が二組ほどいた程度。
そんな人達を見かけたら、いい天気ですね、空気がおいしいですよね、とご挨拶もするパールだが、基本的に談笑の時間も短めである。
ご挨拶こそするものの、相手の時間を邪魔するのは控えめに、同時にプラッチと一緒のこの時間をあまり使い過ぎず。
とりわけああした優しそうな老夫婦とのお喋りは好きなはずのパールだ。
プラチナとの時間を大事にしたがっているのは、なんとなくだがプラチナにも感じ取れて嬉しかった。
朝方の湖畔は涼しく、ともすれば少し肌寒くもあったが、仲良しの友達とお喋りしながら歩く楽しい時間の中では些細なことである。
むしろ、少しぶるっと肌を震わせたパールに、寒くない? とプラチナが気遣ってくれた時に、パールは内心で喜んでいたぐらいだ。
彼が優しいのは以前からだが、自分だけであんな素敵な宿を見付けてくれて、自分に自由な時間を作ってくれたのが昨日の今日。
改めてそうだと意識して触れると、常に一緒にいる人の優しさはいっそうのこと温かい。肌寒さなんて本当に忘れてしまえるぐらいに。
今日はなんだかいつも以上にパールの機嫌が良さそうだな、と感じたプラチナだったが、流石にその本当の理由までは察せるものではなかった。
人が少々は増える昼以降にくらべ、いっそう静かな湖畔歩きは、湖周りの歩き方を知っているパールのリードもあって、二人にとってとても楽しい時間だった。
どういう場所から湖面を眺めれば一番綺麗な水鏡を見られるか、どうやらパールは無意識にわかっている。シンジ湖に親しみ育ってきた強みだろう。
元より観光名所と名高いリッシ湖を、最も絶景たる場所から一望できたのは、プラチナにとっても素敵な経験だっただろう。
綺麗な湖の煌めく姿に、静かに目を輝かせてプラチナの横顔もまた、パールにとっては湖の美しさにも劣らない絶景だ。
佇む朝の湖の前、はしゃぐことはなくも胸を躍らせる二人、パールも思わず気持ちに任せて、プラチナの手を引いて次はあっちだよと案内した。
楽しさのあまり距離の近い行動に出たパールの無意識さと、そうした些細な行動にどきっとするプラチナで、抱いた感情はまた別物ではあったけど。
きっと後から思い出せば、パールも私あんなことしてたんだなぁと、頬さえ赤らめてしまいそうな金色の思い出ともなろう。
二人で湖畔を楽しんだら、レストランで遅めの朝食とも早めの昼食とも取れる時間を過ごし、昼過ぎにリッシ湖のほとりを出発である。
213番道路を通り、ノモセシティを目指す旅の再開だ。
トバリからノモセへの旅はもう半分。とはいえ213番道路は、214番道路ほど長くない。空が赤くなる前にはノモセシティに着くだろう。
「プラッチ、疲れちゃった?
引っ張り回し過ぎちゃったかな」
「いや、そんなことないよ。
楽しかったなぁ、って思い返してただけ」
「ふふ、そう? よかった♪」
楽しかったね、というパールの言葉に対するプラチナの返事が少し小さくて、パールもちょっと不安になったが杞憂である。
湖畔でもどきどきしたし、レストランで二人でご飯を食べている時もデートみたいで、内心そわそわしていたプラチナだけど。
過ぎてしまえば忘れられない、忘れたくない素敵な思い出だ。
胸のざわめきはおとなしくなったが、代わりに今あるのは、一日中たくさん遊んだ後のような充足感に近いもの。
それでいて今日はまだ終わっておらず、まだまだパールと一緒に歩く時間が続くんだから、寂しさめいたものさえないぶん例えにも勝る。
疲れているけど気を遣って大丈夫、と言っているわけじゃないと一目でわかるプラチナの笑顔には、パールも幸せな気分にさせれ貰えるのだった。
緑溢れるリッシ湖のほとりを離れ、213番道路を進んでいけば、次第に足元の草も短くなっていく。
植物は、塩分の沁み込んだ土壌ではすくすくとは育てない。極論、高濃度の塩水を撒かれると大抵の草は枯れる。
進むにつれて、植物の背丈が小さくなっていく光景は、この先にあるものを推察させるには充分な要素でもあったりする。
「わっ! 浜だっ!」
「海なんて久しぶりに来るなぁ」
やがて二人は、213番道路の最たる特徴であるエリアに到着だ。
広がる砂浜、そして入ったばかりのここからは見えないが、その先に広がっているのはシンオウ南の大海。
特にフタバタウン育ちのパールは、幼い頃からあまり海に触れ合う機会が無く、旅の中で自分の足で踏みしめる砂浜の感触にうきうき。
フタバタウンの隣町であるマサゴタウンの南部にも海はあり、ごくごく稀にお母さんに連れていっては貰えたのだが、頻度は高くなかったようだ。
パールは昔、シンジ湖で溺れた経験から水を怖がりがちで、お母さんも積極的に子供を海へ連れて行くことをしなかったのだろう。
今はもう泳げし、水に対する恐怖心も無いパールだが。服を着たままシンジ湖に飛び込み、プラチナのボールを拾い上げて笑っていた姿がその証拠。
「えへへ、遠くまで来たって感じがするね~。
――あっ、カラナクシだ! でも青い! 色違い!?」
「東の海のカラナクシは、西の海のカラナクシとは違って青いんだよ。
珍しい色違いのポケモン、っていうわけじゃないと思うよ」
「へ~、そうなんだ?
ピンクのニルルに見慣れてるからびっくりするよ」
「環境の違いでそうなるんだろうね。
ちなみに、西の海とも東の海とも違う、色違いのカラナクシはまだ発見すらされてないよ。
もし見付けちゃったら大発見かもしれないね」
浜を這い歩いている青いカラナクシもまた、パールをわくわくさせてくれる光景の一つだ。
毎日ニルルを見ているパールなので、東の海のカラナクシは色だけじゃなく、背中の形が少し違うのも一目瞭然。
生態からして違うのは、プラチナの解説を聞けばいっそうよくわかる。
一方、学者志望のプラチナ、解説も一言二言ばかり多め。ついつい喋り過ぎちゃうのは学者の卵の性みたいなものか。
未踏だった地を歩く経験に胸躍らせる足をいつものように進めながら、パールとプラチナは213番道路を歩いていく。
ここでもノモセの出であるポケモントレーナーの皆さんと出会い、バトルを挑まれ、あるいは自分から挑み、精力的にバトルするパールである。
ポケモンバトルはどこでも出来る。相手だってどこにでもいる。
ポケモントレーナーにとっての長旅というのは本当に、色んな相手と勝負して経験を積んでいくには最適の足運びである。
ここでは水ポケモンの使い手のトレーナーが多く、それに有利なタイプのピョコやパッチの活躍が目覚ましくもあったが、少々変わった一幕も。
浜に着地したピョコが妙にそわそわして、足元を気にしていた姿はパールも気になったものだ。
プラチナの解説によると、潮風の沁み込んだ砂浜は、ピョコにとっては気になる足元なのでは、という説。なるほど、植物は塩分が苦手だから。
岩場もコンクリート上も平然と裸足で歩くピョコだが、塩の沁み込んだ砂浜は裸足で歩くとむず痒いのだとすれば、人間目線では面白い。
ポケモンの生態は、まだまだ人間目線ではわからないことだらけだ。
「――あれ?
なんか人が集まってるね」
「こういうとこに人が集まってるのって不思議な眺めだね。
何かやってるのかな?」
そうして浜を進んでいくパール達だが、いよいよ海も見えてきたというところで、何かを中心に群がった人々の姿を発見。
浜辺に人が散開しているのではなく、見世物に集まるかのように明らかに固まっている。
興味はすぐに沸く。何かやってそう。
「行ってみようよ、プラッチ」
「えっ……あっ……」
パールはプラチナの手を握り、見に行こうと誘う。
これも思わずの行動だろうか。いや、今回はパールも多少何かを意識している。
繋いだ手を少し上げ、目を合わせるお互いの視界に入るようにして、少し気恥ずかしげに笑う姿は、高いテンションに任せて手を取った子供の姿じゃない。
二人で一緒に、それを強調するパールの挙動と表情が、今朝から続く二人の楽しい一日の続きを望み、良い返事をプラチナに求めている。
「…………うん、行こうか」
「えへへへ……♪
よしっ、行こう!」
照れ隠しのように大きな声を出し、プラチナから顔を逸らして前を向いたパールはやや早歩き気味。
手を引かれるプラチナは、二歩目三歩目を速い進みに引っ張られる形で足を急がせたが、すぐに足並みの合う速さに合わせてついていく。
わざわざ誰にも見られていないそこで、繋がれた二人の手は、体温以上のぬくもりを感じ合っていた。
お互いの顔が見えない中、空に輝く太陽のように上機嫌な笑顔のパールと、むずむず口の端が上がりそうでそれを堪えるので必死だったプラチナ。
ずっと一緒に旅をしてくれば、出会った時と同じままではいられないのだ。
初めて知り合った時よりもずっと、お互いのことを好きになってきている二人はもう、特別な友達同士と言っても過言無い間柄と言えるものだった。
「何かやってるんですか?」
「お、いい所に来たんだな。
そろそろ始まるぞ」
「わ、何が始まるんです?」
「マキシマム仮面のヒーローショーだよ!
たのしいよ!」
海際近くの中範囲に向けて弧を描くように集まった人波の最後方まで来たパールは、子供連れのお父さんに尋ねてみる。
お父さんが答えてくれて、重ねて尋ねれば子供の方が元気な声で教えてくれた。
これから始まるものが楽しみで、気分が高揚しているのが声からもわかる。
知らずにたまたま居合わせた身分ながら、これは面白そうなものを見れるのかもしれない。
そんなパールの横顔も、うきうきしているのがプラチナ目線でわかりやすい。顔に出過ぎ。
「あっ、始まるよ! 海の方を見て!」
「うんうん、何が始まるの!?」
「マキシマム仮面が来るよ~!」
6歳ぐらいの男の子とパールのテンションが一緒。
流石にこれは、男の子の方に合わせてパールも、敢えて気分の乗った声を返しているのかもしれない。
わからないが。何しろパールだけに。たまに凄く子供っぽくなるから。
海の方を見れば、海面にばしゃばしゃと大きな水飛沫をあげて、こちらへ泳いでくる影がある。
体格の良さそうな男性が、バタフライで豪快に水を上げているのだ。恐らく、集まってくれた人々に自分の接近がわかるように、敢えて水を上げている。
やがて海水から陸に上がったその男性は、濡れた浜に立ち一足、二足と力強く濡れた砂を踏み、その力強さをアピールする。
「ウガアァーーーーー!! マキシマム仮面が来たぞー!
子供を攫って、意地悪しちまうぞー!!」
「わっ、強そう! 悪者なのかな!?」
「すっごいムキムキだね」
マキシマム仮面を名乗る男性は、上半身裸でマッスルポーズを取り、ただでさえ太い腕と厚い胸板をばちっと張ってみせる。
見ただけで強そうだ。あの太い腕でぐいぐっと首を絞められたら、きっと抜け出せずにきゅ~である。
とはいえ目元と口の出たマスク、その表情はよくわかるものであり、ぎらっと集まった人を睨みつける眼をしていながら、どこか楽しそうで憎めない。
本当に悪い人なんじゃなくて、"悪役"ってだけなんだな、とはプラチナにもすぐわかった。
「ガハハハハ、さぁ~、どの子を捕まえるかな!?
おぅら逃げろ逃げろ~! 捕まえて意地悪しちまうぞ~!
転んだりしたら、真っ先に捕まえに行っちまうからな~!」
親御さんと一緒に来た男の子も女の子も、お父さんお母さんのそばを離れて、わあきゃあ悲鳴をあげて浜辺を逃げ回り始めた。
がお~という手つきをして、子供達を走って追い回すマキシマム仮面だが、もちろん子供でも逃げ切れるよう全力でなど走っていない。
せっかく楽しみに来たのに転んで怪我して悪い思い出に、なんてことにならないよう、その念押しも抜かりなし。
逃げ回る子供達は悲鳴をあげながらも笑っており、客が演者の盛り上げを理解して楽しむ、非常に愉快なイベントの様相が完成されている。
「――おおっ!?
逃げない勇敢な子供がいるな!?」
「あわっ!?
わ、私達ですかっ!?」
「おっと、これはピンチだっ……!」
どうやら他の子供達はこのノリを最初からわかっている中、それを知らないパールとプラチナは棒立ちで展開を眺めていた。
マキシマム仮面がどすどすと駆け寄ってきて、二人の前でぐはははっと笑う。
思わぬ形でショーに深く関わる身分になりそう。パールもどきどき。
一方プラチナは、パールの前に立って盾になるようにして、この子に手を出すなよと手を広げてみたりする。
案外ノリノリではないか。頭の回転が早いだけに適応力良好だ。
「ガハハハ!
なるほど、友達を守ってみせるってか! 男らしいな!」
「くっ、来るなら来ーいっ!」
「ぷ、プラッチ頑張れっ! 勝てる気がしないけど!」
「失礼なっ! でも僕もそう思う!」
「だが、勇気だけでは勝てない相手が、マキシマム仮面という相手なのだ!
道を開けろ~い!」
「あ~れ~!」
「ああっ、負けた!
プラッチもうちょっと頑張ろうよ!?」
プラッチのアドリブをマキシマム仮面も楽しんでくれたようだが、その手でプラチナに触れると、ぐいっと横に押しのける。
力強いが、タッチしてから緩慢に優しく力を入れる、転ばない押しのけ方。
逆らっても耐えられそうにない力で、しかし転びもせずにプラチナはよろけた。
さあパールを守る者は誰もいなくなった。ピンチ。
「見ない顔だな!
よーし、今日のターゲットはお前さんだ! 意地悪しちまうぜ~!」
「ひゃあっ!?
たっ、たすけてだれか~!?」
「ぱ、パール~~~!」
のっしのっしとパールに近付いたマキシマム仮面は、あっさり軽々とパールをお姫様抱っこして、海際の浜の方へと攫っていった。
人の手でこんな簡単にひょいっと担がれることなんて初めてのパール、未経験の浮遊感にびっくりして、悪ノリして発する声も裏返り気味。
連れ去られていくパールに手を伸ばし、無力な登場人物Aを演じて遊ぶプラチナが、ショーに結構いい味を出している。
波打ち際まで辿り着いたマキシマム仮面は、パールを砂の上に優しく降ろし、まあ心配するなとにかっと笑ってみせてくれる。
降ろし方も丁寧だったし、攫われ身分のパールも危ない目に遭わせられるわけではないと充分信頼できる、でかくて優しい大人の姿。
「さぁ~て、どうしてやろうか……
海に沈めてやるか、砂浜に埋めてやるか……」
「あわわわ……」
「よーし、決めたぞ! お前さんに一日中、泳ぎの稽古をつけてやる!
背泳ぎをマスターするまでは絶対に逃がしてやらんからな!」
悪役らしいひどい行為を案に先に挙げておきながら、決まった意地悪はそれ果たして悪行? と思えるような内容。
拍子抜けしてパールはちょっと笑ってしまった。
というかむしろ、背泳ぎマスターするまで指導して貰えるならやって貰いたいぐらいである。パールはバタ足と犬かきしか出来ないので。
いやいや、悪行なんだろう。これはマスター出来ない限り、泣いても喚いても逃がして貰えない地獄の特訓を子供に強いる悪行。そう解釈しましょう。
「やっ、やだ~!
だれか、たすけてぇ~!」
「ガハハハハ! 諦めろ、もう助からんぞ!
俺様にとっての強敵は海の神ぐらいのもんだ!
それがこんな所までわざわざ来るわけ……むっ!?」
ここで助けて~と叫ぶんだぞ、と教えなくても勝手にアドリブで悲鳴をあげてくれるパールなので、マキシマム仮面も楽しくなってくる。
次の展開を示唆する言葉を並べるマキシマム仮面だが、それに続いて海の方へと振り返る。
ここまでは、マキシマム仮面のショーの様式美である。子供を攫って、さあ本格的なショーのスタート。
ここからの展開は、マキシマム仮面のショーを何度も見た地元の人も、これから初めて見るものだ。
マキシマム仮面が沖の方から泳いできた時とは、段違いの水しぶきを上げて浜へと向かって泳いでくる何かがある。
それは水深が浅くなったところで海面から頭を出し、そのまま大きな体を空に浮かせてマキシマム仮面を睨みつけた。
大迫力のギャラドスが、浜の上に身を浮かせ、少し離れた場所から眺める観客の目にも抜群の存在感を示している。
「ひゃああああっ!?」
「ちっ、こんな所まで来やがったか、海の神!
俺様が悪事をはたらくたび、いつも表れて邪魔しやがって!
海と浜辺の平和を守る正義の化身だか知らないが、今日という今日は返り討ちだ!」
見事な説明口調。
つまり、マキシマム仮面が悪役で、あのギャラドスがそれを成敗するヒーロー役。それが今回のショーの趣向のようだ。
しかし、ヒーロー役にギャラドスとは、あの少し怖い顔がマッチしていないような。
現にパールでさえ、突然姿を見せた大きくて大迫力のギャラドスの姿に、演技じゃない叫び声を上げてしまっている。
観客側の子供達とて、今日のヒーロー役には少し戸惑い顔。
子供目線でのギャラドスは、強そうで格好いいのは確かだけど、この役柄らしくは感じられていなさそうだ。
男の子達でもそんな顔なので、女の子に至ってはちょっと怖がっているふしもある。
「出てこい! ブイゼル三兄弟!
偉そうな海の神を叩きのめしてやるぞ!」
さて、マキシマム仮面は三つのボールを高い場所まで放り投げて、ブイゼルを3匹も喚び出した。
1匹の相手に対し3匹がかりとは、バトルだったら目に見えて反則だが、今回はショーなのでお構いなし。
というか、子供達にもそれが卑怯なのはわかるようで、ずるいぞー! なんて叫ぶ男の子がいるぐらいである。これも悪役らしい所業の一つということか。
マキシマム仮面は自ら、わざわざ攫ったパールから離れ、誰もいない砂浜の中心に位置を移す。
ギャラドスがそちらに向き直った頃には、ブイゼル三兄弟がギャラドスを囲むようにして陣形を作っている。
マキシマム仮面&ブイゼル、VSギャラドスの構図が完成だ。
そのバトルに客を巻き込まないよう、きちんとそばには誰もいない場所を作るのだから、安全性も配慮したショーということである。
「行くぞ! 海の神!
お前を追い返して、攫った女の子も、ここに集まった子供達も俺様のものだ!」
「――――z!」
許さん、とばかりに吠えたギャラドスだが、迫力があり過ぎて子供達の多くはびくびく。
一部の男の子達は、かっこいいとばかりに興奮しているが、割とそれって少数派。
子供達の反応を見ながら、プラチナはこのショー上手く纏まるのかな? なんて考えたりもしちゃう。
取り残された位置でぽつんと立つパールは、さて自分はどうしたらいいのかな? なんてことぐらいしか考えていなかった。
プラッチのそばにしれっと戻ろうか、いやいやもしかしたらまだ何かあるかも、そんなこと考えるぐらいには、演者の立場に入り込んでいるようだ。
なんだかんだで一番楽しんでいるのはパールなのかもしれない。