ポケットモンスター・パールストーリー   作:ましゅ

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第5話    コトブキシティと203番道路

 202番道路を抜けて、コトブキシティに到着したパール。

 時間は夕方頃であったこともあり、この日はパールもポケモンセンターにお泊まりした。

 預けたポケモンの体力を回復させてくれることで最も有名なポケモンセンターだが、旅するポケモントレーナーを泊めてくれる場所でもあるのだ。

 おうちよりもちょっと硬いベッドだとパールは感じたりもしたが、シャワールームもあって、さっぱりすることの出来る施設である。

 故郷を離れての夜、ちょっとした寂しさはあったりしたものの、パールは安らいだ眠りを明け、次の朝を迎えたものである。

 

 さて、明るくなってポケモンセンターを出れば、通い慣れていない新天地。

 パールは小さい頃にお母さんに連れられて、何度かはコトブキシティに来たこともあるが、こうして一人で訪れるのは初めてだ。

 フタバタウンやマサゴタウンと比べるべくもなく、コトブキシティはシンオウ地方全土の中でも都会的な街である。

 高層ビル、噴水、何よりもインパクトがあったのはテレビ局。

 テレビの向こう側にしか見たことのないようなものが沢山ある街は、歩いて見回すたびにきらきらした景観を見上げられる。

 

 ついついきょろきょろしてしまう首の動きも多く、ちょっと田舎者っぽい仕草が増えるパールだったが、それだけ楽しくてしょうがなかった。

 自分の足で歩く新天地とは、何もかもがわくわくする。

 小さい頃にお母さんに手を引かれて歩いた時と比べても、その高揚感はずっと上だった。

 

 

 

 

 

 コトブキシティには、トレーナーズスクールという施設がある。

 学校と言うよりは図書館のような解放された施設であり、大人の先生の案内のもと、色んなことを教えて貰える。

 ポケモントレーナーになるような子は、元々ポケモンについて自分で色々知っていることも多いので、教える先生もあまり苦労しないらしい。

 パールも興味本位で行ってみたが、だいたい知ってるようなことばかり教えて貰うばかりで、概ね復習作業みたいなものである。

 元々思い出の人を探すために旅に出ることを夢見ていたパールなので、知識はそこそこ豊富な方である。

 

 そこで居合わせた他の子供と、ちょっとポケモンバトルなんかもしたりして。

 ピョコが頼もしいもので、二戦ほどやって二戦とも勝てたことはパールも嬉しかった。

 負けた方の子も、ピョコを撫でたいと言ってくれたりして、和やかなバトル後の時間を楽しく過ごしたものだ。

 ピョコは誰に頭を撫でられても喜ぶ。人懐っこい子のようだ。

 

 街を歩いていると、変なおじさんに声をかけられた。

 ちょっと警戒したパールだったが、このおじさんはどうやらこの街に会社を構える"ポケッチカンパニー"の人だそうで。

 この街のどこかに三人のピエロがいるから、探してポケッチ引換券を貰って来れば、ポケッチをあげるよなんて言われたり。

 新製品なので、色んなポケモントレーナーに持って歩いて使用感を宣伝して欲しいそうな。

 ピエロ探しは、初めてこの街に来た子に楽しんでもらうための、レクリエーション的なお遊びらしい。

 なんで自分が初めてこの街に来たのかわかったのか、パールは不思議がっていたが、おじさんからすればそんなの仕草を見ればわかるという話で。

 初めての街で足取り軽くきょろきょろ。そんな姿を見られていたのだと知ったパールは、ちょっと恥ずかしくなったりもして。

 さておき、街を見歩きながらピエロさん三人を探し、引換券を三枚集めておじさんの所に持っていけば、ポケッチと交換して貰えた。

 時計も付いているし便利そうで、けっこう素敵な貰い物だったはず。

 

 街の西側には218番道路に繋がっており、行ってみるとそこは知る人ぞ知る釣りスポットらしいと話を伺えた。

 釣り好きのおじさんが"ボロのつりざお"を譲ってくれて、やってみたらどうだいと誘われたりも。

 地元にシンジ湖があることもあり、パールは水辺に慣れたものである。

 せっかく貰ったものなので、試しに釣り竿を釣りをしてみたら、まあまあよく釣れること釣れること。

 コイキングばっかり。嫌というほど釣れた。

 釣り上げたところで襲いかかってくるわけでもなく"はねる"ばかりなので、パールもピョコを呼んで応戦することもせず、水に返すばかりだった。

 まあまあ重いし、何がしたかったのかわからない釣りタイムである。

 ただ、パールは楽しんでいた。初めての釣りだったので。

 

 こうして初めてのコトブキシティを観光気分で堪能したパールは、また一日ポケモンセンターにお泊まりした。

 旅足は一日ぶん止まってしまったが、急ぐ旅でもなく、こんな日があってもいい。

 街を出発するのは明日に回し、ゆっくり休んでパールは明日に備えていた。

 

 

 

 

 

「くそ~、負けた!

 ジム挑戦にはまだ早いってことか……」

 

 翌日、パールはコトブキシティを出発して、街の西にある203番道路を進んでいた。

 道中には、何人かのポケモントレーナーがいて、みんなパールと同じ年頃か、あるいは年下というところ。

 コトブキシティのトレーナーズスクール通いの子供が多く、みんなあそこで勉強してから203番道路で、野生のポケモン相手に実戦経験を積んでいるようだ。

 

 実戦経験を積みたい子供達は、トレーナーを見付けると勝負を挑むことに旺盛だ。

 もっともこれは、ポケモントレーナーの皆々様みんなに言えることで、ここに集う子供達に限ったことではない。

 パールも第203番道路を歩く中で、何度か勝負を挑まれており、結果的に彼女もポケモンバトルを数度経験することになっていた。

 

「俺のワンリキー、トレーナーズスクールじゃ一番強かったんだぜ!

 お姉ちゃんのナエトル強いな!」

「ありがとう。

 よかったね、ピョコ。褒めて貰えてるよ」

「――――♪」

「へー、ピョコっていう名前つけてるんだ。

 俺も自分のポケモンに、ニックネームつけてみようかな」

 

 ピョコだけで何戦もこなしてきたパールだが、今のところ負けていない。

 今しがた勝った、二つ年下そうに見える男の子が繰り出すワンリキーはそこそこに強く、ピョコも少々押されそうになる場面もあったのだが。

 それでも力押しだけで勝ちきってしまうぐらいには、力強く戦えるピョコのポテンシャルは高いようだ。

 今のところ、しばしば遭遇する野生のポケモンとの戦いも含めて、パールとピョコは負け無しである。

 

「ピョコ、傷薬いらないの?

 ほんとに大丈夫?」

「――――♪」

 

 少年と別れたパールは、ピョコをボールから出したまま、一緒に歩いて第203番道路を進んでいく。

 ここまでもずっとそうだ。ピョコはパールと一緒に歩くことを好む。

 そんな中で、パールはコトブキシティを出発前に買っておいた傷薬をピョコに与えようとするが、ピョコは首を振って微笑んで、大丈夫だよと意志表示。

 

 まだまだ大丈夫、もったいないから使わないで、と言わんばかりの態度だ。

 ワンリキーにけたぐりをかまされて痛そうな顔をしていたのに、こうしてパールの限られた道具を使わせないよう気遣いまでしてくれる。

 強いだけじゃなくて優しいピョコのことを、パールはどんどん好きになるのだけど、それはそれでいっそう傷薬を使ってあげたくなるのだから困りもの。

 好きになればなるほど、大変なことになって欲しくない気持ちが強くなるんだから、優しいピョコもなかなか罪作りな男の子である。

 

「ピョコと一緒なら、初めてのジム戦も勝てちゃったりするかなぁ」

「――――?」

「あぁ、えーっと……

 ジム戦のこと、何て説明したらいいかな」

 

 つい口をついて思ったことを言ったパールに、ピョコは首をかしげるリアクション。

 203番道路を西に向かって進めば、クロガネゲートという山の中を行くトンネルがあり、そこを抜ければクロガネシティに辿り着く。

 クロガネシティにはポケモンジムがある。パールが目指しているのはそこ。

 彼女はシンオウ地方の8つのジムを回り、ジムリーダーに勝利して得られるバッジを8つ集め、ポケモンリーグに挑みたいと思っている。

 そうして有名になれば、顔も知らぬ"憧れの人"に呼びかけられるかもしれない、というのが、彼女が旅をするそもそもの目的だからだ。

 

 ジムリーダーというのは強いポケモントレーナーであり、バトル初心者の自分がそんな人に勝てるのかな、というのはパールも考える。

 ピョコが頼もしいので、頑張れば何とかなるかもしれない、とも前向きに考えやすくなっているようだが。

 しかし、ピョコに諸々の事情を説明しようとするとどう説明したものか。

 とりあえず、ポケモンバトルで勝ちたい相手がいっぱいいて、みんな強い人達なんだよ、という砕いた説明をする。

 

「――――♪」

「ありがとう、ピョコ。

 やる気満々でいてくれるんだね」

 

 説明をどこまで理解してくれたかはわからないが、ピョコは自信に満ちた目で、任せろとばかりに頷いてくれた。

 強い相手だと聞かされても物怖じしないこの態度、まして協力的な姿で、パールは嬉しくなる。

 そんな強い相手との戦いなんてちょっと……なんて顔をされようものなら、無理強いするのも気が引けてしまうところ。

 目指したいことなら力を貸すよ、と前向きな回答を見せてくれるピョコの姿に、一緒に歩くパールの表情もいっそう明るくなる。

 

「でも、ピョコ一人だけだと大変だろうし……

 やっぱり、もう一人ぐらいポケモンを捕まえた方がいいよね」

「――――?」

「ピョコの新しいお友達」

「――――♪」

 

 さて、パールもまさか今後ずっとピョコ一人で戦い続けるとも考えておらず、新しいポケモンを捕まえることははじめから考えている。

 傷薬を買った時に、新しいモンスターボールも買ってきているのだ。

 それを見せて、新しい仲間がもうすぐ出来るよ、と示唆するパールの行動に、ピョコも喜んだ顔を見せてくれる。

 やっぱりポケモンのピョコには、ポケモンのお友達がいた方がいい。そう思っていたパールにとって、このピョコの反応にはやっぱりと思わせられる。

 

「どんなお友達がいいかな?」

「――――、――――」

「あ~、えぇと……

 聞いておいてなんだけどよくわかんない」

「――――~~」

 

 すっかりピョコと仲良くなって、お友達感覚で普通に話しかけてしまうパール。

 鳴き声と表情である程度の感情表現を見せてくれるピョコだが、具体的な会話は流石に無理。

 ピョコなりに何か伝えようと声を出してくれたが、具体的な内容が理解できず自嘲気味に苦笑いするパール。ピョコはふへっと乾いた笑い。

 呆れられたのはわかる。ちょっと恥ずかしい。

 

「っ、よーし! ピョコ、友達探しだよ!

 草むら歩くから、お友達になりたい子がいたら教えてね!」

「――――!」

 

 とりあえずパールは押し切っておいた。

 呆れられている恥ずかしさを誤魔化すように、大きな声を出して気合を入れる。

 合わせてうなずいてくれるピョコである。話のわかる子だこと。苦笑いしながらだもの。

 パールの気持ちを察してくれる、やっぱり優しいピョコである。

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