「あなた達、知り合いなの?」
「前にテンガン山を抜ける時に、初めて会ったばかりですけど……」
「顔を合わせるのは今日で二度目だ」
「へぇ、珍しい。
あなたが、覚えてるんだ……」
アカギと旧知の関係にあるシロナは、彼がパール達と知り合いであるという事実に、意外や意外という顔である。
加えて、今日で二度目という言葉を聞けば、口元に手を持っていくほどびっくりした様子。
そんなに? と思われるかもしれないが、そんなに、である。
「シロナさんのリアクションが気になる」
「なんて言うかアカギって、ほんと他人に興味を持たないタイプでね。
あたし、アカギに名前覚えられるまでに5回ぐらい自己紹介した記憶あるわ」
「余計なことは言わなくていいぞ」
「当時あたし既にチャンピオンよ?
別にかさに着るつもりないけど、初対面、二回目、三回目と、誰だお前って言われたのはけっこう衝撃的だったわ」
「チャンピオンの顔も名前も覚えないって、なんか凄いですね」
「アカギさん、大物だっ!」
「興味が無い相手の名前や顔はどうしても覚えられんタチでな。
シロナのことは、考古学の造詣という点で共通点を感じられた時に覚えた」
「あなたさ、綺麗な大人の女性を見て顔や名前を覚えるとか、そういうのって無いの?」
「お前はそうではないからな」
「ひどいわ。きらい」
むっすーとして見せるシロナ、冗談交じりでいらっしゃるものの、結構お綺麗な女性であるはずなのだが。
アカギにはそう評価されていないらしい。タイプじゃないのかも。
シロナもアカギも、パール目線ではどちらも大人っぽくて素敵な人だと見えるし、仮に男女の関係であってもお似合いだなぁと感じるぐらいなのに。
「え、でも私達、アカギさんに覚えられてる?」
「そうよ、だからびっくりしてるの。
あなた達、アカギから見ればチャンピオンより興味深い二人みたい。
まだバッジ集めきってもいないのに既にあたしに勝つとは。やるなおぬしら」
「そういう勝ち負けってあるんです?」
「そんなにアカギ、この子達のこと興味あるの?
覚えてる時点でかなり強い興味持ってるでしょ」
「まあまあ、な。
特にパール、君はなかなか興味深い。
どうも、何故か他人のような気がしないのだ」
「えっ? えっ?
私いまコクられてる?」
「またうちの子がバカなこと言いだした」
「プラッチだまらっしゃい」
100パーセント冗談でそんなこと言ってるパールなのは確かだが、抽象的ながら特別視を強く示唆する言葉に、少々戸惑い気味でもある。
真意がよくわからない発言だ。シロナも興味深げに首をかしげる。
「あなたにしては珍しい表現ね。
感情論は極力避けて、理知を以って理解するのが好みでしょ?」
「感情的と直感的は別物だがな。
まあ、確かに私にしては珍しい感覚ではある。
君の何が私のこう感じさせるのか、未だ結論も出ていない。
それも含めて、興味深くもある」
「わわわ、近いです近いです」
パールに歩み寄り自分の顎をつまみながら、彼女と目線を同じ高さに顔を下げて近付けてくるアカギだ。
じっと観察する眼差しでしかないが、パールも思わず一歩下がってどぎまぎする。
こういう興味の持たれ方はされたことが無い。する側も珍しそうだが。他ならぬアカギ自身も、こんな感覚は珍しいと公言するぐらいである。
「君もだ。
正直、パールに対するような不思議な感覚を君に覚えることは無いのだが……
一目見ただけで、君とパールは隣り合うピースのように噛み合うほどの相性の良さを感じさせる。
君に興味を抱いたのは、それが最たる理由だな」
「あ、相性ですか……?
それはなんかこう、嬉しいですけど……」
「あははっ、なんか嬉しいね、プラッチ!
私達、ラブラブだもんね!」
「あらあら、あなた達もしかしてもうそういう関係?」
「あ、それは違いますけど。
親友なんです。友達じゃなくってその上。
だよねプラッチ。そう言って?」
「ん……そう、だね、うん。
大事な親友だよ、パールは。友達以上のね」
「やったー! 勇気出して聞いてみてよかった!
ちょっとどきどきした!」
どうやらアカギがプラチナに興味を抱いたのは、パール個人に対する強い興味に付随する形で、彼女と不思議な好相性を感じさせるという点に依るらしい。
忌憚ない言い方をしてしまうと、パールのおまけみたいな覚え方とも。プラチナ単体と出会ったとしても興味は持っていなかったととれる。
それはそれとして、プラチナとしては複雑なところであったりも。
パールと相性がいいと評されるのはなんだか嬉しいし、それをきっかけにパールに親友認定されているのを改めて聞けるのも嬉しい。
それより上ならもっと嬉しいのだけど、この際贅沢は言わない気分。
そういう関係じゃないですよ、と言ったパールの態度に、照れ一つ無かったのは少し寂しく感じるところでもあるが。
一方で、親友だよって言ってあげれば、本当に嬉しそうに笑ってくれるパールの姿を見られたので、これはこれで嬉しいところ。
好きな子が、自分が好意を伝えたことで喜んでくれるというのは、ただそれだけで胸が満たされるものだ。
「ねえアカギ、あなたここに来るのは初めてじゃないわよね?
一度見たものをもう一度見に来るって、それもあなたにしては珍しくない?」
「確かに、そう多いことではないな。
ただ、少し気になることがあって、もう一度この壁画を見に来た」
「なにか新しい発見はあったの?」
「いや、元々あった仮説を再認識するに留まった程度だ。
無駄足だったかもしれんな」
「でも、あなた楽しそうよね」
「そう見えるか?
まあ、悪くないものを見られたとは思っているがな」
アカギはずっと無表情である。声にも抑揚は無い。
それを見て楽しそうだと言えるシロナにだけ、付き合いがあったがゆえに見えているものがあるのだろう。
「この壁画、どういう意味なんですか?
なんだか、三角形の真ん中に点がある感じですけど」
「あっ、ほらアカギ、パールが興味を持ってくれてるわよ?
解説してあげなさいよ」
「ふむ……
まあ、拙い説明でよければ説いてやっても構わんが」
「プラッチ! アカギさんの壁画講座だよ!
正座して聞こ!」
「座る気配が無い」
アカギの背後には、この遺跡の最奥であるここに刻まれた、大きな壁画のようなものがある。
それがどういうものなのか解説してくれるというアカギに、パールは肩ごとぴょこぴょこ揺らして大はしゃぎ。
とりたて勉強好きでもないパールだが、尊敬してくれる人が何か教えてくれるというだけで、ちょっと気分が浮つくらしい。
ひとえにその解説内容に興味津々のプラチナとは、また違う感情である。
一方シロナは、こうしたアカギの態度にも驚きを禁じ得なかった。
解説してあげなさいよ、なんて冗談のつもりだったのだ。
普段の彼なら、面倒だ、お前が話してやればいいとでも言う想定だった。
それに対して、もうちょっと愛想よくしてあげなさいよ、なんて軽いやりとりを挟んで、解説役は自分が受け持つというところまで考えていたシロナである。
アカギが快諾した時点で、シロナからすればそれ自体が想定外すぎる。
先の言葉に偽り無く、どうやらアカギは相当に特別視している。
いったい何が彼をそこまでさせるのか、シロナの一番の興味はもはやそれに移りつつあるほどだった。
「君達は、ハクタイシティに祀られている神の像を見たことはあるか?」
「はい、"パルキア"の像ですよね?
空間を司る神様だって聞いてます」
「プラッチ詳しいね」
「いや、これでも学者志望だから……
これぐらいは知ってるよ、シンオウ地方で学者を目指す人なら」
「空間とは、この世界すべてのことを指す。
空間を司る存在とは言わずもがな、途轍もない力を持つ存在だ。
例えるなら、ここに扉を作り、別の場所へとあっという間に移動するような、絵空事のようなことも叶えられるということだ」
「な、なんか凄いですね……
もし私にそんな力があったら、行きたい所に好きな時にワープし放題、的な?」
「そういうことだ。
もっと壮大なことを叶えることも出来るだろうな」
学者志望のプラチナは色々知っていそうなので、アカギの語り口は一般的な知識しか持っていない子供、パール向けの説明を添えている。
こういう所も、妙にアカギはパールに優しいな、とシロナが感じる姿である。
「一方で、この遺跡の入り口にあった壁画は見たか?」
「はい。
パルキアと対になるかのような古文が刻まれていましたよね」
「え? そんなのあったんだ。
っていうか、プラッチ見てたんだ?」
「見てたっていうか、元々知ってたからね。
それで、入る前にちらっと見てただけ」
「よく勉強しているな。
学者志望というだけのことはある」
カンナギ遺跡の入り口両脇には、壁画とそれに添えた文が彫られている。
この遺跡にはそういうものがあるのだとは、普段色々なことを勉強する中でプラチナも既に知っていたようで。
シロナとじゃれ合いながら遺跡の中へとなだれ込んだ二人なので、パールはそこまで見ていなかったが、プラチナはちゃっかり見てきている。
実際に見るのは初めてなので。帰りにでもじっくり見る気満々。
「片側に刻まれた文言、"空間とはすべての広がり、そして、心も空間"。
これが、パルキアのことを示しているのは間違い無いだろう。
もう一方は、なんと刻んであった?」
「"時間とは止まらないもの、過去、未来、そして今"……でしたっけ。
そして、そこには誰も見たこともないようなポケモンの姿もまた刻まれている」
「シンオウ神話において、神と崇められる唯一神と思われていたパルキア。
それと同列に語られる存在があったかのように、ここカンナギ遺跡入り口の壁画は、パルキアと対を為した存在を示唆している。
神話を通じて現代に伝わる神とはまた別に、もう一つ、神と呼ぶに値する存在があったのでは、というのが、カンナギ遺跡の壁画から得られる有力説だ」
「神様って、二人もいたりするものなんですか……?」
「決して珍しいことではない。
異なる地方では、神と崇められる存在が2つに限らず3つ以上であることもある。
信仰の対象は、同じ地方であってすら、場所によっては異なることさえあるほどだ」
「んむむむ……パルキアだけじゃなく、もう一人神様が……?」
「パルキアの壁画には"空間"にまつわる文言が添えられていることに対し、もう片方の壁画には"時間"にまつわる文言が添えられている。
ここから推察するならば、パルキアに並び立つ神が実在するなら、それは"時間"を司る神であったのではないか、と推測される。
果たしてその名さえ現代にははっきりと伝わっていないが、数々の古書を読み解く限りでは、候補に挙がるものも実在する。
この辺りはシロナ、お前が詳しかったな?」
「ええ、"ディアルガ"と呼ばれる存在であることが、私の中では最有力説。
カンナギタウンに古くからある書物にしか確かめられない名で、しばしばパルキアについて語る書物にこそその名を現す。
どうやら余所の町の古書にもその名が出ないことから鑑みるに、パルキアほど高名ではなく、あるいは古代の人々も多くを知り得なかった神なのかもね」
シンオウ地方の考古学に携わる人々の間では、これが現在、未解決かつ最も多くの人々の興味を惹く命題だ。
シンオウ全体の神話に名を残すパルキアについても謎は多いが、限られた数少ない資料にて、まるでパルキアと対等に語られる存在、ディアルガ。
神と呼ばれた存在は二人いたのか?
だとすれば、どうしてディアルガに対する情報はかくも少ないのか?
神と神が争い、勝利したのがパルキアで、ディアルガは歴史の深き場所に葬られるか、忘れ去られていくかでもしたのだろうか?
それとも対等な存在であったという説が誤りで、パルキアとは同列ではない存在でしかない、例えば眷属などでしかない存在に過ぎなかったのだろうか?
だとして、カンナギの遺跡の入り口壁画に、対等を示唆するように並べて刻まれるのだろうか?
パルキア自体すら謎が未だ多く、どういった存在だったのか本質は解き明かされていないというのに、ディアルガという名も加わればそこは謎の宝庫。
並々ならぬ好奇心ゆえに学者となった者達にとって、何としても自分が生きているうちに、その真実を解き明かしたくなるほどのものがそこにある。
神話、歴史、そこにあった真実。知ることそのものが究極の実利たる学者達にとって、謎深きこの命題は底知れぬほどの浪漫であろう。
「さて、神と呼ばれる存在が単一ではないというのは、この遺跡の入り口の壁画が語る有力説だ。
その一方で、この壁画を見てみるといい」
カンナギ遺跡の最奥に刻まれたこの壁画を、目線で指してパールとプラチナの視線を促すアカギ。
妖精のようなものを描いたものが三角形に位置し、その中心に光るものを一つ描いたような壁画である。
これが何を意味するのかもまた、現代の学者達にも解明されていない、大きな謎の一つである。
「シロナ。
これについては、お前の方が詳しかったな」
「ええ。カンナギタウンには、古くから伝わる昔話がある。
"そこには神がいた。
それは強大な力を持っていた。
その力と対になるように3匹のポケモンがいた。
そうすることで、鼎の如く均衡を保っていた"
それを象徴するのが、この壁画なんだとあたしは思ってるわ」
「えぇと……
この3つが、その3匹のポケモンで、真ん中にいるのが神様、みたいな?」
「そう思ってるんだけどね。学説としてはあまり支持されないのよ。
確かに私も、矛盾を孕んでいるのかもとは感じてる」
「どうしてですか?
けっこう説得力あると思うんですけど」
三匹のポケモンが神を中心とした図に描かれ、さながら唯一神を囲う壁画だというのが、シロナの掲げる仮説である。
プラチナも、今の話を聞く限り、そうと思えるという想いなのだろう。
だが、神話から解き明かさんとする史実や歴史とは、なかなか一筋縄では"真実"に辿り着けないものだ。
考古学の徒であるシロナもアカギも、それをよくわかっている。
「この3匹のポケモンが囲う存在は、壁画が語る限り一つしかない。
一方で、シンオウ地方で神と崇められた存在が、パルキアのみならずディアルガもそうであった可能性も今は有力視されている。
そうだとすれば、この壁画の中心に描かれたものがたった一つなのは何故?
神が唯一ではないとすれば、どうして壁画の中心に描かれるものが"一つ"なのか説明がつかないわ」
「むう……」
「それに、もう一つ説がある。
この3匹のポケモン達には、あたしなりにも持論を持っている。
色々調べてそれらの情報を総括した結果、この3匹のポケモン達は、それぞれが"知識"を、"意志"を、"感情"を司るものだとあたしは思ってる。」
これ自体は、それなりに支持もして貰えてる仮説なのよ」
「知識、意志、感情……?」
「プラッチ君、気付いてるんじゃない?
この3匹のポケモン達は、神の力と対となる存在と伝えられている。
では、知識・意志・感情、この3つと対になる力とは?
空間、あるいは時間が、その答えだとは考えにくくないかしら?」
「この3匹のポケモン達、名をユクシー、アグノム、エムリット。
彼らか、あるいは彼女らか、この3匹が囲い支えるとされる存在は、パルキアであれ、ディアルガであれ、神話と照らし合わせればそれらしくない。
あたし自身、それらしく説を挙げてはいるのだけど、その矛盾からも目を逸らせないのが実状よ」
自分なりに考え至った結論というのは、余所の誰かが考え付いた幾多の説より、当人にとっては一定の特別性を持ちがちだ。
客観視するだけでもそれなりの意識が必要となる。
自説の矛盾と向き合い、立ち上げつつもそれが不正解である可能性の高さから目を逸らさないのも、学者にとっては必要な素養だ。
プラチナにとっては、良い勉強になっているのではないだろうか。
「この3匹が囲う一つの光は、パルキアとディアルガを一纏めに描いたもので、3匹が2匹を囲うものなのか。
そうだと考えれば合点はいくが、その一方で3対2というアンバランスな数も、均衡を保つための存在として相応しいものなのか? という疑問が残る。
であれば、一つの光に纏められた存在は、2つではなく3つ、すなわち未だ誰も知らぬもう一体が存在するのだろうか、という仮説も立つ」
「い、いっぱい仮説があるんですね……
私、そろそろ頭パンクしそう……」
「あるいはやはり、神とされるのはパルキアのみで、ディアルガはこの壁画に無関係なのか。
だとして、先程シロナが言ったとおり、3匹のポケモンが司るものが、空間を司るパルキアの力の対極に位置するものとは、感覚的には受け入れ難い。
中心にあるのがパルキアと仮定し不動とするなら、3匹のポケモンが司るものが、知識・意志・感情ではない別のものであるという説も視野に入る」
「今度はそっちがおかしくなっちゃうんだ……」
「それとも、あるいは究極的な別解として、この壁画の中心にあるのは、パルキアともディアルガとも違う、別の単一神という説も考え得る。
そうだとするには、そのような存在に対する歴史的情報が無く、空想の域を逸していないがな。
そうした可能性も、決してゼロではないということだ」
太古の歴史を解き明かさんとする考古学は、当時の写真や映像も無い以上、結論を想像で描いたもので補完するしかない。
化石から当時の生き物の姿を解析する学問さえ、その発展により限りなく真実を解き明かせるようにはなっているが、未だその体色を確信する技術は無い。
歴史学の難しいところはここにある。定理や数式によって確たる法則や絶対的真実を明かさんとする、理系的学問とは対極を為すものだ。
数多の妄想めいた想像の数々が描かれ、その中からたった一つしかない真実を拾い上げ、それを幾多の資料に照らし合わせて信憑性を得て解とする。
それすらも、ある日新たな情報が加われば、長らく信じられていた説さえたちまち誤りであったと覆ることさえあろう。
確信無き暫定的な結論の数々の中から、最も信憑性のあるものを仮に真実とし、それが永遠の解答ではないと胸に誓い、新たな真実を求めてまた旅する。
考古学とは、たった一つの命題にさえ永遠の解答と真実の獲得が約束されていない、究極的な学問の一つである。
「ふふ、難しかったか?」
「だ、だいじょーぶです!」
「意地を張るな、目の焦点が定まっていないぞ。
纏まらない考えで頭がいっぱいなのだろう?」
「あぅ……
で、でも、話してくれれば一生懸命覚えますので……」
「あ、アカギ……?
あなた今、笑ってる……?」
「む? そうか?」
「笑ってたわよね? パール?」
「え、はい、まぁ……
それって、そんなに驚くことなんです?」
「いや、あたしもアカギが笑ってるとこ見るの初めてだから……
ほんと珍しいわね、今日のあなた……」
「つまらないことを随分と重く見るんだな」
素っ気ない対応を見せるアカギは、確かにシロナの言うとおり、感情的とは対極の位置にあるような人物像であろう。
それでもパールの前では、シロナも、もっと言えば彼の生まれ育ちであるナギサシティの人々の前でも見たことのない、笑顔を見せているのである。
そんな一面さえ垣間見せさせてしまうパールって、アカギにとって一体なんなんだろう。
俄然、先程まで以上に、シロナはそれが気になってしょうがない。
「まあ、これ以上語っても覚えられんか。
君は考古学に対してそこまで造詣があったわけではないようだからな。
だが、今後興味を持ったなら、多少は考えてみてもいい。
我々とは違う観点から、新たな仮説を導き出せるかもしれんしな」
「ど、どうでしょ、私そんなにアタマいいタイプでもないので……
でも、せっかくアカギさんやシロナさんがいっぱい色んなこと教えてくれたし……ちょっと、考えてみます」
「まあ、無理はしなくていい。
ただ、何か新しいことを思い付いたら教えてくれ。
そうした所から、意外な新説が生まれたりもするものだからな」
「……アカギさん、本当にパールに対しては何か見る目が違う気がしますね」
「……あなたもそう思うのね。
本当に初めて見るわ、アカギが誰かにここまで優しく接するのは……」
他者への徹頭徹尾な無興味ゆえ、冷徹あるいは不愛想が歩いているとさえ評されるアカギだ。
ここまでパールに親身にものを教える姿は、シロナに限らず、アカギの人物像を知る者達なら誰もが驚くものだろう。
このように、他者に興味を抱き、思慮を見せるアカギの姿というものは、それほどまでに類を見ぬものに相違ないからだ。
強くて、知識豊富。
尊敬する大人の一人にアカギを数えているパールだ。
だからこそ、そんなアカギが教えてくれる話についていこうと、考古学に覚えのない彼女ながら、慣れない頭を使ってでも一生懸命になっている。
そうしたパールのわかりやすい姿勢を前に、アカギは小さくながらも笑みを浮かべて、どこか満足げですらあった。
テンガン山での出会いから数えて、僅か二度目のパールとアカギの出会い。
既に二人の間には、今後も互いを忘れないであろう強い縁が、早くも、既に完成しつつあった。
その縁は、やがて二人に何をもたらすものなのだろう。シロナは、そんなことまで考えずにはいられぬほど、両者の邂逅に特別なものを無性に感じ取っていた。
アカギ自身が語る、パールへの特別な興味、それ以上にだ。