「わひゃああっ!?!?
パッチっ、パッチぃっ、よろしくぅっ!!」
「ね、凄いでしょう」
「なるほどな。
余程に苦手なのがよくわかるよ」
鋼鉄島のより深くを目指す足取りの中、ゴルバットが出てくれば大慌てで叫び散らし、ノータイムでパッチを呼び出して追い払って貰うパールである。
そんな彼女を後ろで見守る二人。プラチナともう一人いる。
ほんの少し前の話であるが、たまたまこの鋼鉄島で初対面の青年と、パール達は同行して深い階層を目指して歩いている。
「うぅ……こういうとこあんまり、人に見られたくないのに……」
「む、そうか……それで同行は少しだけ渋っていたんだな。
いや、すまない。疑って悪かった」
「あ~、まあ、もういいんですけどね……
一回見られちゃったら二回見られても十回見られても一緒ですし。
私はいっつもこんな感じです。ズバットもゴルバットもダメなんです」
パールやプラチナと共に歩く、青いスーツと帽子の青年。
彼の名は"ゲン"というそうだ。
感情が素直に出やすいパールは、出会って数分のゲン相手にも、胸の内が一目でわかる表情と仕草が良く出ている。
恥ずかしいところを見られてしまい、いつもこうなので別に気にしないで下さいね、と言い訳混じりの苦笑いは、言葉以上にものを語る。
ゲンも同行を求めた身として、少々だが申し訳ない気分である。
鋼鉄島は今や野生のポケモンが棲みついた廃坑だが、ミオシティは鋼鉄島を、ポケモン達にとって住みよい場所として保護せんとする方針だ。
地元のトレーナー達の修行場所として良いというのも理由の一つだが、ミオシティの人々にとってここのポケモン達は、海を隔てた隣人のようなもの。
決して島の外まで出てきて迷惑をかけてくることもないポケモン達、まして時々、人間側の都合でトレーナーの修行にも付き合ってくれる相手なのだ。
ミオシティも、鋼鉄島のポケモン達の生息環境を悪しからぬものにするための配慮は、役所を挙げてでもしばしば施行している。
鋼鉄島のポケモン達も、ミオの人々に対する心象は良いもので、後述するが修行に訪れたトレーナーへの対応もどことなく優しい。
形は違うが、ノモセシティと大湿原のポケモン達の関係によく似て、ミオシティと鋼鉄島のポケモン達の関係もまた良好なのだ。
鋼鉄島にはミオの調査員が駐在しており、ポケモン達に異変が起こればすぐ本土へと連絡が入る。
もっと極端な例を語れば、病気と見える野生ポケモンを発見した場合、医療班を島へ呼ぶことさえするのだ。力を入れている。
そして今回、調査員の報告によると、鋼鉄島の野生ポケモンがどこか落ち着かず、気が立っているようにも感じられる、とのこと。
調査員はポケモンブリーダー経験者であり、そうした判断に秀でる人物でもあるのだ。
杞憂に済めばいいが、出来れば調査を入れて欲しい、という要請がミオシティに届けられたのが、今回ゲンが鋼鉄島を訪れた理由である。
鋼鉄島のポケモン達はそこそこに能力が高い。
並のトレーナーなら返り討ちだし、バトルに秀でない調査員が、ぴりぴりしているポケモン達の住処を進んでいくのは万が一を考えると危ない。
役所の腕利きトレーナーが派遣される流れであったところ、たまたまその話を聞いたゲンが、皆様も忙しいでしょうし、とその役目を買って出たそうである。
それで役所が彼を信頼して仕事を預けるのだから、ゲンはトレーナーとしての実力も、人間性も信頼される人物というところだろう。
果たしてこの島に訪れたゲンだったが、まず目についたのは騒がしい女の子。
最初はうるさいこの子がポケモン達の気を立たせているのかと思ったが、これも後述するが恐らくそうではないとゲンは考えたようだ。
そして一度疑ってしまったことを軽く謝罪し、ゲンは二人に事情を説明。
話を聞いたパールとプラチナは、そんな異変があるなら解決した方がいいと、むしろ自分達から協力を申し出たほどだ。
ただ、ちょっとだけパールの歯切れが悪かったのは事実である。事件解決への協力はしたいけど、ゲンさんと一緒に行くのは少し引っかかるという複雑な顔。
要はゴルバットに遭遇した時の情けない自分の姿を、見慣れられているプラチナ以外に見られるのは恥ずかしい、という話だったのが今しがた判明したところ。
コウモリ恐怖症も難儀なものである。持ち前の正義感の強さにさえ、こうした余計な感情がついて回り、煮え切らない態度を見せたりしてしまうのだから。
とはいえ一度見られてしまえば、そしてわかってくれるなら、笑わずいてくれるならもういい、とパールは割り切ったようである。
気を取り直して、島に起こった何らかの異変があるなら、それの解決という一つの目的を掲げて並び進んでいく三人だ。
向かは鋼鉄島の最深部まで一直線。何事も無かった取り越し苦労、そんな拍子抜けする結末でも結構結構。
事件なんてのは、はなから起こらない方がいいのである。
「ニルル、みずのはどう!」
進んでいく三人だが、立ちふさがる野生ポケモンとバトルして退ける役目は、すべてパールが担っている。
元々修行目的でここを訪れたパールだ。ゲンにもその事情は説明済。
余程もう駄目だと思わない限り、プラチナもゲンも手を出さない方針である。
ゴローンやイワークの生息数が多い鋼鉄島、パールが最も繰り出すことの多いポケモンは、水ポケモンのニルルに偏る。
しばしばミーナを繰り出すこともあるが、彼女も格闘タイプの技、跳び蹴りが使えるので岩タイプのポケモン相手には相性も良い。
パッチはゴルバット撃退専門である。ゴローンやイワーク相手ではそもそも相性が悪すぎるのもあるが、これはこれで非常に頼られる立ち位置だ。
「ありがと、ニルル。やっぱり頼もしいね。
ずっと一撃で岩ポケモン達を追い返せてるよ」
「~~~~♪」
「あっ、わわっ、ごめんごめん、ミーナも頑張ってくれてるよね。
頼もしいのはニルルだけじゃなくって、ミーナだってそうだよ」
ここの野生のゴローンは、初心者お断りレベルには強いのだが、ニルルの水の波動は一撃でそれらが逃げ出すほど威力が高いようだ。
相性が良過ぎるのも確かだが、それだけのレベルは備わっているということである。
パールもそんなニルルを褒めてあげるのだが、ニルルのようには一撃でゴローンらを退けられないミーナが、鞄の中で、ボールの中でがたがた。
これだけで、鞄の中身も見ず、誰が騒いでいるのかわかってフォローして、鞄越しに中のミーナを撫でるパールである。
身内のことがよくわかっている証拠だ。
「ゲンさんから見て、ここのポケモン達は気が立ってるように見えますか?」
「ああ、かなりぴりぴりしているな。
パール君は腕が足りているから危なげなく済んでいるが、本来ならば今日はここでの修行が勧められる日ではなさそうだ。
万が一、自分のポケモン全員が戦闘不能にされ、抗う力を失ってしまったら、トレーナーにまで襲い掛かってきて大怪我をさせてきかねない。
それほどには、どのポケモンも気が立っているように見える」
「わ、怖……
ゴローンやイワークに襲いかかられたら、骨折じゃ済まないんじゃ……」
「今日は、って仰いますけど、普段は違うんですか?」
「違うな。
仮に未熟なトレーナーが、鋼鉄島のポケモン達に敗れ、打つ手が無くなっても、普段はただ攫われるだけだからな」
「さ、攫われ?
それはそれで怖……」
「島の入り口までだ」
「あっ、え……そ、送迎?」
「ミオシティの人々による、何十年にも渡る付き合いにより、鋼鉄島のポケモン達は基本的に人間に対して友好的だ。
訪れるトレーナーに対し、立ちはだかって勝負しようと仕掛けてくるポケモンは多いが、勝利してもそうして丁重に送り返してくれるほどだぞ。
普段はそうなんだ」
単なる似たようなものではなく、本質的にもノモセと大湿原のポケモン達との関係性に共通点が見られる。
鋼鉄島のポケモン達は、島を訪れる者達を外敵として認識しないのだ。むしろ、隣人のように迎え入れる。
トレーナーが訪れれば、バトルして遊ぼうぜと勝負を持ち掛けてくるだけなのだ。
たとえ自分達が未熟なトレーナーのポケモンを撃破したとしても、トレーナーをいじめたりせず、入り口まで送り返してくれるだけなのである。
勝ち誇った顔で人を運ぶ辺りは、勝者として『出直してきな』とでも言いたげな愛嬌の範疇であろう。
とはいえポケモン達だって馬鹿じゃない。敵意には敏感だ。
純粋な修行ではなく、乱獲や憂さ晴らしといった、悪意ある目的で島を訪れた人間に対しては、丁重な態度で応じるとは限らない。
邪な意図で島を訪れた悪辣な者がどれだけ好漢を演じようが、ポケモン達の目を欺けるとは限らない。
この辺りは不思議なようにも聞こえるが、たとえ人間同士であろうとも、悪意を潜めた好青年の裏の顔を見抜ける慧眼を持つ者も世の中にはいる。
むしろ虚言や虚飾そのものによる欺きに縁遠い、野性の環境で生きているポケモン達は、悪意への鼻の利かせ方が人とは違う。
ノモセ大湿原でも言えることだが、基本的に友好的だからといって、野生のポケモン達が人類にとって都合がいいばかりの存在だとは思わない方がよい。
「だが、今はそうしてくれる保証が無い。
それだけ気が立っているのは確かだ。
人もそうだがポケモン達だって、機嫌次第でいつも優しいとは限らない」
ぴりぴりしているとゲンが称した、今の鋼鉄島のポケモン達は、そんな前例のとおりに接してくれるとは限らない。
むしろそうだから、それをよくわかっている調査員は、バトルの腕に自信が無い以上、自分の手で原因究明が出来ないのだ。
普段なら、トレーナー以外の害意無き人間が島を訪れても、ここのポケモン達は邪魔をしてこない。
バトルしようぜ、と立ちはだかったとしても、こちらが遠慮する姿勢を見せると、そうか残念だなとばかりに去ってくれるのみである。
今はわからない。機嫌の悪いここの住人は、こちらが交戦の意志無きと表明しようが、お構いなしに人の体に攻撃を浴びせてくるかもしれない。
普段は温厚な人が、たまたま虫の悪い日に、たいしたことのないことに対して声を荒げたりしたら、それは失望されるべきようなことだろうか。
誰にだって、機嫌というものがある。それさえ微塵も加味されない世界は極めて冷たい。ポケモン達がそうであったとしても、責められる謂れはあるまい。
「あのぅ……
私の騒ぎ声がうるさくて、ここのポケモン達が機嫌を悪くしてるなんてことは、あったりしますか……?」
「それは心配しなくていい。
確かにズバットを前にした君の声は甲高く響くほど大きいが、それでここのポケモン達がいらつくようなことは無いだろう」
「そ、そうなんですか?
だったら、よかったけど……」
ふと、大きな声を出している自覚のあるパールは不安になってしまったが、それは鋼鉄島のポケモン達の腹の虫を騒がせるものではないらしい。
騒音によるストレスを与えているのが自分だとしたら、パールにとってはへこむほど申し訳ない話なので。
「君の叫び声は……まあ、その、覇気とは無縁だからな。
ここのポケモン達に、害意と取られることは絶対に無いだろう」
「うっ、なんか言葉を選ばれた気がする」
「ダサい、情けない、みっともない」
「うるさいぞプラッチー!
いじるなっ! 私にとっては重大なんだぞー!」
最初はゲンとて、耳にしたパールの騒ぎ声が、野生のポケモン達を刺激しているのかとも推察した一瞬もあったのだが。
恐怖心のみで発せられるパールの悲鳴なんて、現住者のポケモン達からすれば、なんかビビリな人間が来たなぁという程度にしか感じられない。
そこに島への害意や悪意が無いことは明らかで、鼻で笑われこそすれ、それがポケモン達の不機嫌の種になったりはするまい。
ゲンなりに導き出した結論であり、それは実際のところ正解だ。
「とにかく、ここのポケモン達がこれほどまでに気が立っている原因が、きっとこの先にあるはずだ。
君達がそれではないことはわかっている。
ひとまず原因を究明したい。協力して貰えるかな」
「あっ……はいっ、すみません。
頑張ります! 力になってみせますから!」
プラチナとじゃれていたパールだが、畏まって頼まれれば遊ぶのをやめ、異変の解決に再び意識を戻すのも早い。
ついつい雑念に引っ張られることはあっても、間違いがあれば、それを正すために動きたいという正義感が、彼女の根幹にあるものだとよくわかる態度だろう。
この純真さは、成人したゲンにとって、大人同士の会話では滅多に見られなくなった得難いもので、ついゲンも頬を緩ませて頷いてしまう。
無言の中に、その心意気に感謝すら表すようにだ。
「あ、ゲンさん、少しいいですか?」
「ん?
プラッチ君、どうした?」
「っ……いや、あの、ちょっとしたお願いなんですけど」
いつものことだが、初対面の人に本名じゃない方で覚えられてしまったプラッチ君。
特に今回の場合は、いきなり話しかけてきたゲンに対し、人見知りする上に少々の警戒心をはじめ抱いてしまったプラチナだ。急に話しかけられたし。
互いに自己紹介する場面において、上手く口が動かないプラチナに代わり、パールが自分の名を告げるついでにプラッチの名前も紹介してしまったようで。
未だにプラチナはパールに本名を認識して貰えていない。
訂正するきっかけをいくつも経てきたはずにも関わらず、今日に至っても未だこれなので、本当にずっとこのままいくのではなかろうか。
「僕達がゲンさんに協力するって言った時、何かしらのお礼はするよって言ってくれてましたよね?」
「ああ、勿論だ。
善意から同行してくれる君達に、何一つの報いも無いというのは、私の中では考えられない」
「ちょっとプラッチ、今そんな話しなくても……」
「ゲンさんはポケモントレーナーなんですよね?
きっと、経験豊富な強いトレーナーさんなのは見てわかるんです」
歩む足を止めてゲンに話しかけるプラチナに、今そんな報酬の話なんてするのはちょっと……と咎めに入るパールである。
しかし、プラチナはパールを無視するかのように話を続けている。
閃いたこの案をゲンに伝え、出来ることなら承諾して貰い、言質を取るなら早い方がいい。そんな提案を持ち掛けようとしている。
「強い、かどうかは保証しかねるが……
この仕事に責任を意識した上で請け負う程度には自負はあるつもりだ」
「パールは、今より強くなりたいんです。
ミオジムのジムリーダー、トウガンさんに勝てるようになるぐらい」
「ん……やはりそうか。
確かに、あいつは容赦が無いからな」
「先輩トレーナーであるゲンさんにお願いしたいんです。
ここからも、出来る限りはパールが野生のポケモン達とバトルしていきます。
その中で、何か気付いたことがあったら、パールに教えてあげてくれませんか。
パールや僕が気付いていないことが、パールが今以上に強くなる何かのきっかけになるかもしれないんです」
真剣な眼差しでゲンに訴えかけるプラチナの横顔を前に、パールは彼を諫めようとしていた言葉を全て失ってしまった。
協力に対する対価を求めるプラチナ、そんな彼がゲンに求めたものは、パールのための報酬以外の何ものでもない。
自身に一粒の利をも顧みないプラチナの姿と、彼が一途にパールの成長のみを望んでくれている声明には、パールも紡げる言葉が無くなってしまうのだ。
そしてこれは、パールにはわからないけれど、プラチナにとってはなりふり構わない提案とさえ言える。
パールのことを一番そばで見続けてきたのは他ならぬプラチナだ。確たる事実であり、プラチナだってそれはわかっている。
だから、パールを良き方へと導ける者がいるとすれば、それは自分であるはずだという戒めをもまたプラチナは持っている。
マネージャー気質とでも揶揄されそうなほど、伸び悩みかけたパールを入念なリサーチの上で鋼鉄島に誘ったプラチナには、そうした自負が確かにある。
そんなプラチナが今、今日パールと初対面の年上の男性に、自分には無い視点からでもパールにアドバイスをして欲しいと求めているのだ。
これは、パールのことを一番よく見てきていて、パールのことを一番よく知っている"はず"だと考えるプラチナにとって、実はかなり踏み込んだ要求だ。
「…………気付けることがあれば、言うことにするよ。
パール君はどうだい? それでいいのかな?」
「えっ、あ……は、はい、出来れば……」
「よし、ルカリオ」
パールからの了承を得たゲンは、自らのボールの中からルカリオを出した。
スモモとジムでバトルした時にも見た個体だ。パールにとっては少し懐かしい。
しかしスモモのそれと比べればいくらか背が低く見え、しかし逞しくも見えるという、小柄でありながら強さを疑わせはしない風貌だ。
同じ個体でも、トレーナーの育成により、見る者に与える印象はいくらでも変わり得るという好例である。
「ルカリオと共に、君の本質を見定めさせて貰う。
君がここから先、野生のポケモン達とバトルする後ろ姿を、ここから先も見守らせて貰おう。
気付いたことがあれば言わせて貰うとするよ」
「ルカリオと、ともに……?」
「ほらパール、行くよ。
アドバイスをくれるゲンさんが乗り気になってくれてるんだから。
じゃんじゃん進んで、バトルこなして歩いていこう」
「う、うん……」
ゲンがルカリオを出した意図がわからず、パールはうろたえ気味ながら、プラチナの言葉に背を押されて歩きだす。
前を行くのはパールであり、プラチナとゲンが歩くのはその後ろ。
野生のポケモンを相手取るのはパールと決めているので、三人で歩くようになってからずっと続いている隊列である。
「――君は本当に、パール君のことを大切に思っているんだな」
「……大事な、友達ですから。
パールが強くなって、したいことを叶えてくれるんだったら、僕はそれだけでいいんです」
前を歩けば、いつゴルバットが出てくるかという意識を強め、後ろの二人のことなど気にしていられなくなるパール。
そんなパールの心境を察したかのように、ゲンは決して小さくしていない普通の声でプラチナに語りかけていた。
それが、パールの耳には届いていない声量だと確信しているかのように。
プラチナは、ゲンよりも小さな声で、パールには聞かれないように抑えた声量で返答していた。
その声には、本当は自分の力でパールを成功に導いてあげたかったという本音と、そのエゴを封じてパールへの最善を求めた男の子の感情が表れている。
自分には無い目線を持つ、付き合いが浅く客観的にパールを見られそうな先輩トレーナーに頼ることを、今のプラチナは選び抜いている。
自分の力でパールを喜ばせることが出来たという、一番嬉しい結末を放棄してでも、彼女が一番喜ぶ未来を叶えんとした少年に、ゲンは微笑みかけるのみ。
複雑な思春期の心模様だ。感じ取れてしまったら、ゲンとて男として支持したくなるではないか。
「応えてみせるよ。
君が、それほどまでに心を砕いて訴えたことだ」
「…………」
パール自身もよく言ってきたことだ。
優しいプラッチと友達になれてよかった、一緒に旅してこられてよかったって。
それでも、それでも、彼女が思う以上に、それって幸せなことだったのかもしれない。
パールが思っているより、遥かに、ずっと、プラチナはただただパールの幸せを願い、そのためだったら自分が彼女の一番であることさえ捨てきってしまう。
その献身を、あまつさえパールには隠そうとするプラチナなのだから、彼の意志を以ってパールにその決意の程は伝わらない。そして彼はそれで本望なのだ。
少年の心、少女知らず。
手を繋げるほど親しんだ親友であっても、すべてを知り尽くせる日なんてそう簡単には訪れない。