ポケットモンスター・パールストーリー   作:ましゅ

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第81話   銀河色のモンスターボールのかけら

 

「おはよ~! プラッチ!」

「おはよう……って、パールすっごいテンション高いね。

 元々こんなんだっけ?」

「何だろ、今日はもう朝からエネルギー有り余ってる感じ!

 なんでかわかんないけど今日の私はすんごい元気だよ!」

「う~ん、どうしてなんだろう。

 考察してみる価値あるかも……」

「こらっ! ポケモンを観察するみたいな目で私を見るな~!」

 

 トウガンに勝利した翌朝、ポケモンセンターで一夜を明かしたパールとプラチナである。

 朝一番からパールのテンション高さが尋常じゃない。プラチナとの会話でも、身振り手振りがやたら多くて声も大きめ。

 異様に元気である。当人も、なんでこんなに元気なのかわかってない。

 

 真相を明かすと、一週間ほど鋼鉄島で過ごしてきた日々は、不快ではなかったけど快適でもなかったということである。

 寝床は寝袋、シャワーのみのお湯浴み、シャンプーは安物でねとねと、外界との通話も無いので夜長のお電話も無し。

 そんな環境から昨日はミオシティに帰ってきて、ジム戦を攻略し、余った時間で街をプラチナと一緒に楽しく歩いて、ポケモンセンターにお泊まり。

 美味しいごはん、お風呂を満喫、夜は一週間ぶりにナタネお姉さんに電話、ジム戦で勝ったことを嬉しく報告して、褒めて貰えて幸せ幸せ。

 最高の気分でふかふかのベッドですやすや。そりゃあ寝て覚めたら、久しぶりに体力120%まで回復というものだ。

 今は元気が爆発している。明日の朝はきっと普通に戻る。

 

「さぁ~て、今度はキッサキシティのキッサキジムだっ!

 この調子で7つ目のバッジ獲得するぞ~!」

「あ、ちょっと待ってパール。

 今日はちょっと用事があるんだ」

「がくっ。

 いきなり出鼻挫いてくるねプラッチ」

 

 さあ行くぞーのテンションでコトブキシティ方向へと歩き出したパールだが、ちょっと待ってと言われてガクッ。

 そのリアクションもいちいち大きい。元気あり余りすぎ。

 

「で、どんな用事?」

「うーん、僕一人で行ってこようかなとも思ってるんだけど。

 パールを待たせちゃうけど」

「え~、何それ水くさいやつだ。私も一緒に行く~。

 あ、それとも私いない方がいい系のちょっと複雑な用事?」

「いや、ついてきてくれても別に僕は困らないけどさ」

 

 絡む、甘える、でも遠慮も少しは考える。頭の回転が早い。

 本当に健康的な朝起きぶりである。よほど昨晩が快眠だったと見える。

 

「ナナカマド博士が今日、ミオシティに来るんだ。

 図書館で待ち合わせることになってる。パールも来る?」

「うっ、緊張しそう。

 コワい人じゃないのはもうわかってるんだけど」

「まあ、それはわかる。

 博士のしかめっ面、ちょっと委縮するよね」

「あ、言いつけてやろ~っと。

 プラッチがそんなこと言ってましたよって」

「やめて。

 っていうか何なのパール、テンション狂ってない?」

「狂っ……そ、そこまで言われるぐらいオカしい?

 や~、まあ、昨日は嬉しかったし、ナタネさんとも電話したし、よく寝たし、なんか今日もご機嫌なのですよ」

 

 流石に指摘されると少し恥ずかしくなってきたか、少々程度に顔を赤くしてパールが少しおとなしくなる。

 ご機嫌で元気だった自覚はあったようだ。ようやく普通程度のテンションに。

 

「まあ冗談はさておいて、パールどうする?

 ほんと、緊張するなら僕一人でもいいかなって」

「ううん、私も行く。

 せっかく一週間ぶりに一緒なんだよ? 単独行動なんて時間もったいないよ」

「もったいない、って」

「プラッチは私と一週間別行動になって、ちょっとも寂しくなかったというのかね。

 私はちょ~っとぐらい、プラッチにも会いたいな~とか思ってたんだぞ?

 ピョコ達がいるからほんとに寂しくはなかったけどさ」

「ま、まあ……そりゃ……」

「というわけで一緒に行動するのだっ!

 失われた一週間を取り戻すぞ~!」

 

 ミオの図書館という待ち合わせ場所を先に聞けたことを幸いに、ずいずいその方向へと率先して歩いていくパールである。

 根っから人懐っこい。一週間も親友プラッチに会えなかった、話せなかった反動で、しばらく一緒にいる時間を増やしたい症候群にかかっている。

 恐らく対プラチナに限らず、例えば何らかの形でピョコと一週間離れ離れになったりしたって、同じものを発症するのがパールという子なのだろう。

 そうだとはわかるし、男の子として意識した自分となるべく一緒にいたい、という真意ではないことは明らかなので、プラチナは苦笑いしきりである。

 本当、勘違いさせられそうで怖い。あの罪作りめ、人の気持ちも知らないで。

 

 でも、自分と一緒の時間を増やしたいと無邪気に言ってくれるパールの態度は、やっぱりプラチナにしてみればたまらない。

 男女とまでは言わない。ただの友達にしたって、あんなに好意を向けてくれるんだもの。

 恋なんてしたことのなかったもっと幼い頃は、『告白するのが怖い』なんて言うテレビドラマの役者が発する言葉の意味が、よくわからなかったプラチナだ。

 好きなら言えばいいじゃん、としか思わないのが子供なので。

 告白して、拒絶されて、今の心地良い関係が壊れてしまったらすごく嫌だな、と思って初めて、昔見たドラマの登場人物の心理がよくわかる。

 

「プラッチ~? どうしたの?」

「いや、別に。

 急いだ方がいいかもね、もう博士も着いて待ってるかもしれないし」

 

 すたすた行っちゃうパールが、色々考えてしまいながらゆったりとした足取りになっているプラチナを、立ち止まって振り返って呼びかけてくる。

 プラチナも小走りになってパールと横並びになり、いつもの二人並んで歩く形に落ち着いて。

 マイペースに歩いたらパールの方が自分より少し早足なのは知っているので、彼女に合わせた歩幅で並び歩くプラチナ。長旅の中で慣れたものである。

 

 一緒にいるだけで楽しくって、横並びに歩けばいっそうそれが実感できて。

 特に会話ひとつするわけでもないのに、なんだか楽しそうな顔をしているパールの横顔を見て、プラチナも心が弾む想いである。

 やっぱり、特別で、代わりのいない親友だ。それ以上を望みたくなるぐらい。

 自分のそれほどではないにせよ、パールも自分を大事な友達だと思ってくれているのがわかる、この空気そのものがプラチナにとってはたまらなく幸せだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「博士、お久しぶりです」

「ウム」

「えぇと……お久しぶりです、ナナカマド博士」

「ウム」

 

 行動が朝早く、図書館に着いた時間もかなり早いものだったため、しばらく図書館で待つ側となっていたパールとプラチナ。

 遅れ馳せのナナカマド博士を迎えた二人は、時間潰しに読んでいた本を置いて、立ち上がってのご挨拶だ。

 目上の人には立ってのご挨拶が推奨される、なんていう礼儀をちゃんと意識してやっているのはプラチナのみ。彼は特段しっかり者。

 子供には難しいそんな礼儀など知らぬパールでも、ついつい立ってご挨拶しちゃうのだから、ナナカマド博士の放つ貫禄はそれなりに凄いのだろう。

 怒っているわけでもないのに無表情あるいは仏頂面の普段顔。ちと怖い。

 

 プラチナが、自分がさっきまで座っていた椅子をナナカマド博士に差し出して、自分はパールの隣の席に座る。

 博士と二人が対面する形の席となった。

 しれっとパールと肩が触れ合いそうな隣り合いとなっているプラチナだが、今はそんなこと気にしない。

 博士の大事な話を聞く構えだ。今のプラチナはパールを意識してやまぬ男の子ではなく、博士の助手たる学者の卵である。

 

「概ねの話は、プラチナには電話で伝えてあったと思う。

 パール君もいるのなら、はじめから説明した方がよいかもしれんな」

「あ、そっか。

 それじゃあ博士、まずは僕が聞いてる範囲のことは説明しますね」

「ウム」

 

「あっ、プラッチによる説明タイム?

 学者さんらしくよろしく! 頑張って!」

「別にそんな……

 あぁ、でも学会の練習だとでも思ったらそうかもね。

 じゃ、ちょっとはそれっぽく頑張ってみようかな」

 

 プラチナは、今日ナナカマド博士がミオシティに来ることを知っていたことからもわかるとおり、事前にナナカマド博士と連絡を取っている。

 彼だけ先にナナカマド博士に聞いていることもあり、パールの知らないその部分については、先に話しておいてもよさそうだ。

 プラチナは隣のパールから少しだけ椅子を離し、彼女の方を向く。パールもそれに合わせてプラチナの方に向き合った。

 こほん、と咳払いするプラチナ。少し緊張してる? と感じるその態度に、パールはくすっと笑っていた。

 

「先日のリッシ湖騒動……

 あ~、いや、そこまで堅苦しい言葉遣いしなくていいか」

「学会っぽい! その感じでいこうよ!」

「や~、やっぱやめとく。なんかヘンだよ」

 

 遊びが入ってきた。

 博士の前で、仮にも助手なりの仕事をしている割に、肩の力が抜けているプラチナである。

 真面目な性分で、博士の前では遊び一つせず助手としての仕事に徹していたプラチナを、ナナカマド博士は知っている。

 パールと旅する中で得たものにより、良い方向に余裕が出てきたと見える。無表情のナナカマド博士だが、内心では微笑ましい。

 

「普通に話すね。

 こないだのリッシ湖でギンガ団が暴れた騒動の後、警察の現場検証で少し変わったものが回収されたんだ。

 それが何なのか解析するのも警察の仕事なんだけど、なんだかモンスターボールと材質が似てるって話になったらしくてね。

 シンオウ地方に籍を置くポケモン博士のナナカマド博士に、その物体の解析が依頼されたんだ。

 えぇと、博士、今その破片ってありますか?」

「ウム。

 これだ」

 

 ナナカマド博士は、シルバーカラーの破片めいたものを懐から取り出して見せてくれる。

 ほんの小さな破片だが、これを異質な物体と判断して回収し、モンスターボールの素材だろうと判断した警察も、なかなかに優秀な化学班を擁している。

 とはいえそこまでわかって頭打ちとなったため、民間のナナカマド博士に究明を依頼した、ということらしい。

 信頼できる知識人に複雑な手順と許可を経て協力を求める警察の柔軟性と、警察にも頼られるナナカマド博士の社会的信用、共にうかがえる一件である。

 

「博士の解析の結果、やっぱりこれは特殊なモンスターボールの破片っていう結論になった。

 ギンガ団が作ったんだろうね。今のところ、博士は仮にだけど"ギンガボール"って名付けてるんですよね」

「ウム。

 忌まわしいが、一つだけサンプルも復元した。

 実物と全く同じように、とはいかぬがな」

「わ、すごい……やっぱりナナカマド博士って、すごい人なんだ……」

 

 リッシ湖に残された小さな破片から、ギンガ団が使っていたボールを再現してしまう技術。

 パールも思わず驚いた呟きを漏らすが、やはりナナカマド博士は偉大なポケモン博士なのだ。

 ただ、プラチナに語り手を引き継いだナナカマド博士が、普段の仏頂面以上に少し不機嫌そうな顔をしているように見えるのが、少しパールを委縮させる。

 どうも機嫌は良くなさそうである。

 

「市販のモンスターボールとは全く違うボールをわざわざ作って、ギンガ団は何をしようとしていたのか。

 リッシ湖には、シンジ湖や北のエイチ湖と同じく、古くから神秘的な逸話もたくさんある。

 パールもシンジ湖のおとぎ話ぐらいは聞いたことあるんじゃないかな」

「ん~、詳しくは知らないけど、絵本で色々読んだことはあるなぁ。

 神秘的なイメージは私もある。リッシ湖もそうなんだね」

「ギンガ団は、そんなリッシ湖にいる、何か特殊なポケモンを捕獲することが目的だったんじゃ、っていうのが警察と博士の見解。

 湖の水を全部抜いて、湖底のほこらみたいな所でギンガ団の幹部と戦ったよね。

 あの時はもう、そこにいたポケモンを幹部が捕まえた後で、僕達は撤退前のそいつと戦った、ってことなんじゃないかな」

 

「特殊なポケモンって、えーとつまり、幻のポケモン、的な?」

「そうなのかもね。

 だとしたら、ギンガ団もそう簡単には捕まえられないだろうし、でも絶対に捕まえたい。

 特殊なモンスターボールを作ったギンガ団の意図にも説明がつくんだ」

 

 普通に過ごしている限りでは、一生関わり合いになることなんてなさそうな、幻のポケモンとでも呼ばれる個体がこの世界には実在する。

 シンオウ地方は他の地方に比べ、そう語り継がれるポケモンがやや多い方だ。

 ほんの数か月前にはトレーナーですらなかったパールでさえ、幻のポケモンという言葉になじみがある程度には、シンオウ地方はそんな逸話が溢れている。

 

「用途を顧みる限り、ポケモンを捕まえやすい特殊なボールっていうことなんだろうね。

 博士、僕が聞いたことと思ったことは全部お話ししました。

 ここからは、博士に説明して貰っていいですか?」

「ウム。

 私はこのギンガボールを、はっきり言って人道に悖る創造物だと感じている」

 

 ここからは、プラチナも聞かされていない話だ。

 無表情のナナカマド博士は相変わらずだが、少々声に不機嫌が混じったかのような違和感を二人も感じている。

 ギンガ団にまつわる話だけあり、楽しい話ではなさそうだ。

 

「このボールは、中に閉じ込めたポケモンに、苦痛を与える強い磁場のようなものを与え続ける作りになっている。

 わかりやすく言うなら、中に入れたポケモンに、絶え間なく強力な電気を流し続けるようなものだ。

 つまりこのボールを当てられたポケモンは、その時点から強い苦痛を与えられ、出てこられたとしてもダメージが残る。

 ポケモンを捕まえやすいボール、という解釈は正しいだろうな」

 

「えっ……そ、それって……」

 

「そんなボールに捕らえられたポケモンはどうなるか。

 そのようなボールを用いてでも捕獲したいと思われた対象は、捕獲されたが最後、もうボールからは出して貰えない。

 そのボールの中に囚われたまま、朝も昼も夜も、ずっと苦痛を与え続けられ、決して解放されることはない。

 例えるならそれは、電気椅子に縛りつけられたまま、24時間ずっと電流を流し続けられるようなものだ」

 

 博士が無表情の奥に義憤を抱いていることは、そしてその所以も、パールとプラチナには伝わっただろう。

 本来モンスターボールは、ポケモンを捕獲し、その中に収めるものとして、内部はポケモン達にとって居心地が良いように作られている。

 ギンガボールは真逆なのだ。中のポケモンを苦しめる構造であり、捕獲対象の抵抗力を削ぎ、捕獲後にその苦しみを和らげる配慮も無い。

 サンプルを復元しながらも、忌まわしいと口にしたナナカマド博士の真意は、もはや語るべくもない話である。

 

「捕獲しやすいのは当然だ。

 ボールそのものに、ポケモンを痛めつけて弱らせる機能があるのだからな。

 そして最も忌まわしきは、捕獲したその後も中のポケモンを苦しめるその構造が、何ら顧みられていないところだ。

 このようなボールに囚われたポケモンと捕獲者の間に、心ある者同士の正しい繋がりが生じようとは、到底想像できるはずもない」

 

 決して表情こそ改めず、声もまた平常のままに語るナナカマド博士だが、復元したギンガボールのレプリカを握りしめる手には強い力が入っている。

 博士が手にしているボールは、機能まで現物を再現したものではない。あくまで外面だけを再現したレプリカだ。

 それだけでも怒りが込み上げてくるものであるとも、機能まで再現するのは信念を以って拒むほどの嫌悪感があったとも言える。

 許されざるべき産物。ナナカマド博士はそう訴えている。

 

「プラチナ。そしてパール君」

 

 ナナカマド博士は、言葉を失っている二人の子供に呼びかける。

 博士と同様、ギンガ団の良心無き賜物にふつふつと怒りを溜めるプラチナ。

 そして、そんなボールにもしも自分が閉じ込められたら、とさえ想像して青ざめる、感情力と想像力に秀でて震えるパール。

 そんな二人を見て、正しい心を持つ二人であると僅かな安心を得るとともに、ナナカマド博士は伝えるべき言葉を努めて紡ぐ。

 

「ギンガ団という組織は、このような悪逆非道を厭わぬ者達だ。

 君達が、過去にこれらに抗ったという話は聞いている。

 だが、これ以上関わろうとすることがあってはならない。

 君達のご両親も、このような者達に関わる君達が引き返せない結末を迎えては、只ならぬ悲しみに見舞われる。

 引き返せぬ結末とは、考え過ぎではない。それほど道理無き者達だ」

 

 今までと何ら変わらぬ仏頂面と声に過ぎぬながら、ナナカマド博士の言葉は二人に重いものだった。

 正義感に忠実に突き進み、幾度もギンガ団に立ち向かってきたパールとプラチナ。

 それが、かつてサターンに言われたとおり、最良の結果を掴めねば永遠の闇たる結末に繋がり得ることを、二人は改めて思い知る。

 ギンガ団とはポケモンの捕獲のために、そんな非人道的なボールを開発し、使う、そんな連中だとナナカマド博士は強調しているのだ。

 

「今後、どんなことがあろうとも、ギンガ団に関わることはしないように。

 本当に、君達が想像していた以上に、恐ろしい結末に辿り着くことにさえなりかねないのだからな」

 

 痛烈な忠告だった。

 ナナカマド博士がわざわざここミオシティ、パールとプラチナがいると知れた場所まで赴いて、電話越しでない強い声を届けた真意はまさしくここにある。

 今まではたまたま運が良かっただけで、今後もギンガ団に関わり続けようとすれば、本当に取り返しのつかないことにさえなり得るという警告。

 パールとプラチナだってわかっているはずだ。

 ナタネがいなければジュピターのスカタンクにより、パールが全身を火で包まれていたかもしれないあの日。

 あるいはサターンを退けられねば、八つ裂きにされていたかもしれないあの日。

 二人はそれを今改めて思い返し、ぞっとするばかりである。

 

 組織の本質をよく知らされぬまま手駒にされていた元ギンガ団の二人が、今の話を聞いて、言葉を失っていたことはせめてもの救いだろうか。

 自分達はそんな組織に従い、非道に手を染めていたのだと、異国から常識を与えられぬまま操られていた二人。

 そして自分達がそうだと知れば、仮にも忠義を貫こうとしていた組織に対してさえ、今や嫌悪と後悔さえ抱く二人の姿がここにある。

 どうやらギンガ団に属していた者達とて、性根まで腐り果てた者ばかりではないのだろう。

 それは人類史の明るさを、僅かにでも明るく物語ってくれる救いであるのも確かである。

 

「パール君、プラチナ。

 わかったかね」

 

「……わかりました」

「…………はい」

 

 渋々の返答を見せるプラチナと、心から湧く恐怖心から頷くことしか出来なくなったパール。

 ナナカマド博士は、二人から言質を取ることに成功した。

 せめてこの言葉を聞かぬ限り、帰れないとさえ思っていたところである。

 

 ナナカマド博士は、本当に二人のことを心配しているのだ。

 ジム巡りをするというパールの事情さえなければ、警察に保護してもらうという名の拘束さえ叶えたいほどに。

 ご両親という言葉を使って語ったが、それを抜きにしても、純然とポケモンを愛する子供達は、ナナカマド博士にとって尊ぶべき子供達。

 その未来が、悪しき者達に積極的に関わることで閉ざされてしまうなど、絶対に避けたい、最も悔いかねぬ結末に他ならないのだ。

 

 ギンガ団。

 許すまじ者達にして、パールやプラチナのような子供が関わりを持ってはならぬ連中だ。

 そんなナナカマド博士の表明した現実は、少なからず二人にも伝わっていた。あるいは、知らしめていた。

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