ポケットモンスター・パールストーリー   作:ましゅ

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第94話   217番道路での邂逅

 

「ひやーっ!?

 なんか雪すごくなってきたんだけど!?」

「パール大丈夫なの……!?

 僕ですらだいぶ寒くなってきてんだけどっ……!」

「それは大丈夫!

 でも視界が悪いことの方が問題!」

 

 逃げたニューラとそれを追うフワンテを追いかけて、いつしか217番道路にまで足を踏み入れていたパール達。

 この大事な時に、お空の気まぐれが二人を困らせる。

 しんしんと降っていた程度の雪が、いつの間にやら夕立のような豪雨に。

 強風が無いので吹雪と呼ばれそうなものではないのだが、どかどか降ってくる雪はすこぶる眺めを悪くする。

 ニューラやフワンテを見失わないよう必死だったパール達だが、今はもはや一番近くにいるお互いさえ、見失って独りぼっちにならないよう気を遣うほどだ。

 

「どうしよう~!

 もうあの子の姿が見えないよー!」

「まずいな、こうなったら……!

 ピッピ、ガーメイル! 頼むよ!」

 

 早くあのニューラをなんとかしてあげなきゃいけないのに、遠くがもう見えない大雪のせいで、フワンテすらももう見失っている。

 こうなってしまうとフワンテの方さえ、仮にニューラの元へパール達を案内しようとしても、呼ぶ相手を見付けられなくなりがちだ。

 何とか打開策が必要である。プラチナが呼び出した二匹のポケモンは、命じられるよりも早く全身から強い光を放つ技を行使。

 本来、暗い洞窟の中を進む時に便利な技、フラッシュである。

 

「これならお互いの位置もよく見えるだろうからね……!

 パールも!」

「わかったっ!

 パッチ、お願いするね!」

 

 自分の手持ちの中で最もフラッシュが得意なパッチを呼び出したパールに応え、パッチも非常に強い光を放って協力をアピールだ。

 厚い雲と大雪に阻まれて、昼ながら日光の届かぬ雪原はやや暗く、かえってフラッシュの強い光は目立つのだ。

 視界最悪のこの状況下にあって、強い発光能力のあるフラッシュ使いは、歩く灯台の如くパール達の標にならんとする。

 

「ピッピもガーメイルも、ニューラでもフワンテでもいいからどちらかを探してみて。

 ただし、仲間の光を見失わない程度に! 迷子が増えると困るからね!」

「パッチもお願い!

 でも、あんまり離れ過ぎちゃ駄目だよ! 遭難しちゃうからね!」

 

 プラチナとパールの、強い忠告含みのお願いを受けたポケモン達は、わかったと力強い鳴き声で返事して散開する。

 それぞれ別の方向へ。217番道路は広々とした場所であり、こうして人手の多い形で散策しないと、砂漠の一滴を見付けるのは難しい。

 パール達もきょろきょろと首を回して、自分達でも探すことをやめてはいないが、やはり基本はポケモン達任せにならざるを得ない。

 むしろ下手に動き回らず、いざ目的のものを見付けたポケモン達が、戻ってきやすい状況を保つことも重要ですらある。

 

「流石にピョコは駄目かな……」

「んんん、それは流石に……

 氷に弱いピョコをこんな中で出しちゃうと……わわっ!?」

 

 猫の手も借りたいこの状況、つい思うままのことを呟いてしまったプラチナ。

 パールも一度はそれを考えたようだが、草ポケモンで地面ポケモンでもあるピョコを、こんな吹雪の中で外に出すのは憚られる。

 が、自分の力が役に立つのかもしれない、と耳にしてしまったが最後、勝手に出てきてしまうのがピョコという子。

 ずしんと雪に大きく沈む巨体を見せたかと思えば、パールに顔を近付けてくいくいと顎を上げるジェスチャーだ。

 

「の、乗れってこと……?

 いや、あの、ピョコそもそも大丈夫?」

「――――!」

「ううぅ、すごい心配……

 ピョコ頑張り屋さんだもんなぁ……無茶するぐらい……」

 

 君が言えたことじゃないでしょ、とはプラチナの内心の嘆きである。

 確かにピョコも無茶するタイプではあるけれど。パールのためならミオジムでの戦いに、一人で三連勝することに固執して頑張りまくったほどだし。

 今でこそ気合充分、平気だっつうのと吠えるピョコだか、豪雪の中でいつまで元気いっぱいでいられるかは心配なところである。

 

「――――」

 

「え? 僕も?」

「ほらプラッチも!

 遠慮しなくていいから!

 ピョコが許す相手なんて多分すごく少ないんだよ!」

「ん、ん~……じゃあ、まあ、お世話に……」

 

 パールはピョコの背中に乗り慣れており、その甲羅に跨るまでの動きからして身軽で素早い。

 今日はピョコがプラチナにも、背中に乗れと声と首の動きで促してくれる。

 パールの言うとおり、ピョコがパール以外の誰かを背中に乗せることを許すなんて、間違いなくプラチナただ一人だけだろう。

 基本的にパールの特等席である。余程の相手にしか許さない。

 

「えーと……」

「ちょっと、ちなみにこっちはダメだよ。

 なにその手、抱きつこうとなんてしてないよね?」

「そ、それはしてないけど……

 この後ピョコ、知らせがあったら走るんでしょ?

 掴まる所がないんだけど……」

 

 パールがピョコの甲羅の上に乗る時、場所は必ず決まっている。

 ドダイトスの甲羅前方には灰色の六角形に近い形状のものがあるのだが、パールはその後方位置に座り、その六角形のものに両手をかける。

 こうすると、多少はピョコがどかどか走ったとしても、手綱を握っているような形で彼女も落ちずに安定するのだ。

 ハヤシガメの頃は背中の真ん中に乗せて貰っていたが、ドダイトスになってからはここがパールの所定の位置として定着しつつある。

 

 さて、しかしプラチナはどうしたものか。

 各方面にフラッシュを焚いて散会したみんなのうち、誰かが目標を見付けたら、お呼びがかかってピョコはそちらに走ってくれるつもりだろう。

 となればプラチナも、何かしらに掴まっておかないと振り落とされかねない。

 一番手っ取り早いのは、安定確実のパールにぎゅっとしがみつくことなのだが、流石に異性と意識し合い始めている間柄でやるには勇気が要り過ぎることだ。

 もっとも、それ以外の観点からでもプラチナにしてみればそんなことしたくないのだが。

 彼氏の自転車の後ろに座った女の子のようにしがみつくなんて、なんで男の僕がそんなことしなきゃいけないんだっていうのも正味のところである。

 

「……まあ、これしかないかなぁ」

「ぷぷっ、おサルさんみたい」

「くそ~、絶対言われると思ったんだよ。

 覚えてろよパール、いつか絶対似たような言い返ししてやるからな」

「私そんなことしないもん。

 木登りは得意だけどさ、ダイヤに振り回されて育ったせいで」

「おサルさんじゃん」

「誰がおサルさんかーっ!」

 

 仕方ないのでプラチナは、ドダイトスの背中に生えている木に、横身を預けるような形で両手を回してしがみつく。

 あんまり格好いい姿じゃない。プラチナも自覚はあるようで。

 お前だけは俺の背中に乗ってもいいんだよ、という友好表明も込めて乗れと言ってやったピョコだが、結果的に少々恥をかかせてしまったようで少し気まずい。

、まあ、パールと小喧嘩気味ながらきゃんきゃん楽しそうに喋っているので、微笑ましくもあるが。

 やっぱりうちのご主人の方が子供だなぁ、と笑えてくるからピョコも楽しい。

 

「――――z!」

 

「!!

 ――――z!」

「――――z!」

 

「わわ、誰かの呼び声?」

「最初の声が僕のピッピみたいだから、他のみんなは呼応した形かな。

 見つけた、って言ってるのかな?」

 

 ピョコに問いかけるように尋ねたプラチナに、ピョコが頭を頷かせる形でイエスの返答だ。

 ポケモンの言語は人間にはわからないが、ポケモン同士なら種族の垣根を超えて、概ね誰と誰でも疎通が出来るものだ。例外は多少あるようだが。

 見つけたよー、と声を出してくれたピッピに、パッチやガーメイルも今からそっちに向かうと返事したようである。

 となればピョコも、ピッピが強くフラッシュの光を発する方に体を向け、ざしざしと雪を前脚でかいてみせる。

 走るぞ、ちゃんと掴まっていろよと背上の二人に首の動きと短い鳴き声で訴え、二人の頷く動きを甲羅越しに感じ取れば、ピョコが雪原を走りだす。

 

「うわわわわ!?

 わかってたけどピョコやっぱり速いなぁ!?」

「当たり前でしょ~!

 私の自慢のピョコなんだぞ~! 何やらせても一等賞だっ!」

 

 ポケモン同士の全力駆けっことなれば、負けることも多いドダイトスだが、走行速度の地力はやはり高い。

 大きな体で歩幅も大きいのだ。人間が走るのよりも遅いなんてことはない。

 背上に座る者に伝わる振動と、真正面から受ける風の強さときたら、駆けるドダイトスのスケールや迫力を肌で感じ取るには充分だろう。

 驚嘆の声を発してくれるプラチナに、一番好きな子の凄さが伝わっている気がして、パールの嬉しそうなこと嬉しそうなこと。

 そんなことで嬉しがってくれるパールの声に、ピョコも雪の冷たさや寒さを一時でも忘れて、気持ちのいい全力駆けが出来るというものだ。

 

「――――!」

 

「あっ、フワンテちゃん!

 あっちにいるんだね? よーしピョコ、行こう!」

「――――z!」

 

 ピッピが雪の中で見つけてくれたのは、まずはニューラの行き先をしっかり追っていたフワンテである。

 駆けつけてきたパール達の姿を見るや否や、こっちこっちと指差す手つきで行き先を示してくれる。

 ピッピならびに一緒に駆けつけていたパッチやガーメイルを、パールとプラチナはボールに戻し、ピョコの背に乗ってフワンテの案内する方へ進んでいく。

 

「――――――ッ!?」

 

 ニューラはすぐに見つかった。

 深い傷が相当に体力を蝕んでいるのか、雪原の中にそびえ立つ一本の大樹の根元で、それに背を預けるようにしてぐったりと休んでいた。

 

 未だ血の流れるあの傷を抱えて、雪が降りしきるこんな場所であんな風に倒れていれば、人間だったら間もなく死んでいる。

 氷ポケモンのニューラだからこの豪雪と極寒の中でも、それが命を蝕むことにならないというだけだ。

 それでもあの傷では、どこまで命が保つものだかわからない。

 それでいてニューラは、駆けつけてピョコの背中から雪原に降り立ったパール達を見て、大樹に爪を立てて辛うじて立ち上がる姿を見せた。

 爪を構えての臨戦態勢だ。ともすれば、逃げる体力がもう無いのだろうとも見える。

 

「うぅ、どうしよう……!

 どう考えても歓迎されてないよ……!」

「どうしても助けたいなら捕まえるしかないんじゃないかな……!

 そうすれば、ポケモンセンターにも連れていけるしね!」

「それしかない、よね……!

 うん、そうする! お願い、ニルル!」

 

 ピョコをボールに戻すと同時に、パールはニルルのボールのスイッチを押して、ニューラを迎え撃つ構えを取る。

 えっ? とパールの方を見るプラチナ。君がやるの? という気分。

 既にプラチナ、極力ニューラを傷つけずに弱らせて捕まえるために、ピッピを再びボールから出す構えに入っていたのだが。

 

「ニルル、あんまり強過ぎる攻撃しちゃ駄目だよ……!

 ほんとにあのニューラ、死んじゃうかもしれないから……!」

「――――z!」

 

 任せろ、とばかりにいななくニルルである。

 パールがどうして自分を選んでくれたか、ちゃんとわかっている賢い子。

 ピョコはこの極寒の中では戦わせにくく、パッチは攻撃力が高すぎて、不器用なミーナは手加減が得意じゃない。

 取り返しのつかないような攻撃をしないで欲しいというパールに応えるための戦術は、とうに閃いているニルルである。

 

「~~~~!」

「ッ――――!」

 

 雪上をにゅるーんと滑ってニューラの方へと前進するニルル。

 スキー板のようにつるーっと進んでいく。どこでもあんな風に滑れるらしい。

 しかしニューラからすれば脅威の接近である。撃退せねば。

 息も絶え絶えのコンディションにありながら、足に力を入れ、待たずニルルへと自ら突き進む動きを見せる。

 あれだけ弱っているにも関わらず、追い詰められた獣のような果敢さには、パールもプラチナも驚愕する想い。

 

「――――z!」

 

「レベルが高い……!」

「わわっ、ニルル、だいじょ……」

 

 ニューラがニルルに繰り出したのは"きりさく"攻撃だ。

 ただの"ひっかく"攻撃とは違う、爪先を一点に集わせるようにして、一筋にして力強い一刀両断を為す一撃だ。

 "ひっかく"複数の爪先による浅い傷を数本刻むより、深く相手を抉るその一撃は、本能的なだけの引っ掻く攻撃よりも相手に深手を与える技。

 そんな技を使えるニューラを見て、有象無象の野生の個体とは違うレベルの高さを感じ取る、そんなプラチナの分析は的を射ているのだ。

 

「~~~~~~!」

「――――!?」

 

 しかし、そんなやや強烈な一撃を受けたニルルだが、彼が仕掛ける技に変更は無い。

 パールに案じられかけはしたものの、彼女に心配させる暇も与えず、襲い掛かるようにニューラに飛びついていく。

 まあ、単なる"のしかかり"なのだが。

 ニューラはニルルにのしかかられて雪上に倒れ、ぎゅうっとその軟体で締め上げてくる重みにけはっと息を吐く。

 ただでさえ弱っているところに、組み伏せられて全身を重く押さえつけられてはかなり厳しい。

 

 ばたばたと足掻きながら、ニルルを爪先でびすびす斬りつけて抵抗するニューラだが、苦し紛れの爪先がニルルの身体に刻む傷は浅い。

 切られるたびに痛いニルルだが、苦痛を顔に出さずにニューラを見下ろし、たいしたことないぞ、そんなものかと挑発気味ですらある。

 重い体に組み伏せられて、抵抗だけで精一杯のニューラにとって、なけなしの力を振り絞っての抗いも相手にたいしたダメージじゃないという図式。

 ぎゅうぎゅうと軟体に体を搾り上げられる苦痛を伴う中、必死の抵抗も相手にダメージを与えるに至らぬと思えてならぬ状況の絶望たるや如何に。

 案外ニルル、可愛い顔して肉体的にも精神的にも、相手の心をばっきばきに折る戦術を組み立てられるようで。

 

「~~~~~~!」

 

「に、ニルルすごいね……

 でも、わかったっ! いけえっ!」

 

 まさにニューラの瞳が、もう駄目だ私はここで終わりなんだと力尽きたその瞬間に、今だとニルルがパールに鳴き声で以って呼びかける。

 あっさりこんなに早く、それもほぼ自己判断のみで好機を作ってくれたニルルの賢さに驚かされながら、パールはモンスターボールをニューラに投げつける。

 当たった瞬間、心も身体も屈服したニューラを取り込んだボールは、大きな抵抗を動きに表すことなく、あっさりカチリと音を立てた。

 捕獲完了の合図である。元々ニューラが弱っていたことも一因であるが、今までにパールが捕まえてきたどのポケモンよりも、容易な捕獲と相成った。

 

「捕まえたっ! ありがとうニルル!

 ごめんね、後でいっぱい感謝するからね!」

「えぇと……」

「プラッチ、キッサキシティはどっちかわかる!?

 はやくこの子をポケモンセンターに連れていかないとっ!」

「わかってるってば、だからポケッチのGPSで……」

 

 本当に仕事が出来るタイプのプラチナ君。

 ニューラを捕獲したパール、彼女が次に行きたがる場所をわかり果たした上で、即座にポケッチで方角を調べて。

 ニルルへの感謝を苦々しく後回しにするパールが何に焦っているかを、はなっから理解している行動の早さである。

 そしてプラチナにベストパートナーの立場を奪われたくないピョコときたら、この場面で即座にボールから再び飛び出してくる。

 

「ほらパール、乗って乗って!

 ピョコ、キッサキシティはあっちだよ! 急いであげて!」

「――――z!」

 

「あ、あれぇ……?

 ピョコって私のポケモンだよね……?」

 

 出てきたピョコにパールより先に飛び乗って行く先を伝えるプラチナと、それに応えて任せろとばかりに声を発するピョコ。

 なんだかプラチナのポケモンみたい。息ぴったりじゃないの感。

 急いで急いでの一心だったパールも、男二人が仕事も行動も早過ぎて、ふっと冷静になって置いてきぼりを食らっている。

 

「――――?」

「あっ、ハイ、すみません。

 乗りまーす」

 

 気持ちばかりが急いてせっかちさんと化していたパールも、ちょっと冷静になってピョコの背中に乗る。

 気の抜けてしまった返事になっているが、乗り慣れたピョコの背に跨るまではやはり早い。

 すぐさまプラチナに指し示された方向へと走りだすピョコの甲羅の上で、ぐっと持ち手に力を入れて振り落とされないようにする。

 さっきより速いピョコの走りだ。急いでくれている。

 

「…………ねえ、パール」

「なに?」

 

 揺れの激しいピョコの背上だが、プラチナは舌を噛まないように気を付けながらパールに話しかける。

 振り返ったパールの涼しい顔を見るに、ピョコの背に慣れているか慣れていないかの差が二人の間に如実である。

 こんなにどかどか走るピョコの上で、よくそんな顔で平然としてるなぁとはプラチナの所感。

 

「昔パール、友達になるポケモンしか捕まえないみたいなこと言ってたよね。

 ニューラを5匹目……あ、いや、5人目の友達にするの?」

「ん、んん~……どう、でしょ……

 この子が私に心開いてくれるかどうか、今んとこ自信ないのですが……」

 

 パールは元々、捕まえたポケモンはみんな等しく大事にしてあげたいタイプであり、6匹以上のポケモンを捕まえたがらない性格をしている。

 トレーナーが連れ歩いていいポケモンは最大で6匹。7匹目以降は、所有権を有したまま余所に預けることになる。

 大事な友達はそばに置いておきたいパールなので、7匹目以降の友達というのはあまり考えていないのである。

 

 友達になりたいというインスピレーションを抜きにした、ほぼ成り行きに任せての捕獲だったが、さてこのニューラをどうしよう。

 6匹のポケモンしか有さないスタンスを想定していたパールにとって、このニューラを5人目の友達とするか、あるいは逃がすのか。

 あくまで傷を治せる場所まで連れて行くための捕獲だったので、元気にしてあげればお別れという選択肢も無いではない。

 特にパールは、あのフワンテを友達候補に確定させているふしがあるので、残る枠は彼女の中で一つしかないのだ。

 プラチナに対する返答を深読みすると、親しくなれるならなりたいという気持ちは漏れているようだが。

 

「怪我が治ったらニューラとお話ししてみたらいいんじゃないかな。

 気が合いそうだったら、5匹目……あ、いや、5人目の友達でもいいかもね」

「考えとく……!

 やっぱり、何かの縁でこうやって繋がったんだしね!」

 

 初めてのポケモンだったピョコ。

 この子強そう、頼りになりそうと目をつけて捕まえたパッチ。

 二人に新しい友達をと思い立ったが吉日、その日初めて遭遇した野生のポケモンを早速という形で捕まえたニルル。

 可愛い見た目に一目惚れして、熱意いっぱいで捕まえたミーナ。

 今までの友達とは全く異なる事情での捕獲となったニューラである。

 

 それでも、これも何かの縁といえばそうなのだろう。

 パールは前向きに、今後もニューラと一緒に旅をしていければいいなと思いつつある。

 強く拒絶されているのが明らかな上での捕獲だったため、はなっから嫌われているかもしれないという懸念だけがパールを不安にさせる。

 逆に言うなら、それさえクリア出来るならパールの気持ちとしては、このニューラを5人目の友達として受け入れたいということだ。

 

 ふとパールが横を見ると、すいーっとピョコの走りに並走するように浮遊してついてきていたフワンテが、ふよ~っと離れる方向へと飛んでいく。

 ばいば~い、またね~、とでも言いたげに手を振ってだ。

 パールが心に決めている、いつか友達になりたい相手とは今日も繋がりきらなかった。

 だけど、いつかまた会えるはず。そしたらもしかしたら今度こそは。

 名残惜しいがパールも手を振り、またねとご挨拶するのみだ。

 ピョコの背中の樹にしがみつくプラチナは、よくこの揺れる背中の上で片手を離せるなぁと感じる次第。やはり慣れの差か。

 

 今はただ、傷ついたニューラの命が助けるために、一秒でも早く街へ。

 フワンテと別れたパールは豪雪の中で向かう先を見据え、先決のそれへと気持ちを切り替えるのだった。

 街に着いたらポケモンセンターへダッシュ。今一度、そう心に決めていた。

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