ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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第1部 桜色の恋心 勇者の珍道中
ハルウララさんじゅういっさい


 「おはようウララ! 今日も頑張っていこう!」

 

 「うん! ウララ頑張る!」

 

 和やかな朝の一幕。

 

 トレーナー、21歳。

 

 ハルウララ、31歳の春であった。

 

 

 

 

 

 

 

 おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ではなく。

 

 

 商店街の永世アイドル。ハルウララは悩んでいた。

 

 最近腰の痛みがすんごい。

 

 端的に言って、年を感じていた。

 

 

 走り抜けたトゥインクルシリーズ。

 

 煌いていた日々。

 

 有マ記念で涙を飲んだあの日。それでもなお、輝いていたあの毎日。

 

 忘れがたき思い出である。

 

 

 

 「ウララさん! 娘のお世話を頼みたいの!」

 

 「ですわー!」

 

 5歳になる娘を連れて来た、キングヘイロー。

 

 学生時代に散々お世話になった彼女のお願いを断ることはできない。

 

 なんとなれば、毎日ベッドに潜り込み、彼女の布団を吹き飛ばしていたのだ。

 

 自分が卒業できたのも彼女のおかげだ。

 

 壊滅的な成績は、彼女のおかげで低空飛行ながら、なんとか卒業水準に達した。

 

 だが今は、後悔していた。

 

 この幼児、パワフルすぎるのだ。

 

 

 

 「ウララちゃんー! プリンセスごっこですわー!」

 

 ちゃん。ちゃん付けと来たかこの幼児。

 

 だが商店街のアイドル・このハルウララを舐めるな。

 

 「いいよー! プリンセスちゃんは何役?」

 

 口元に手を当て、渾身のぶりっこポーズ。昔取った杵柄である。

 

 媚びを含んだ腰の旋回に走った痛み。後でサロン〇スを貼らせねば。

 

 

 

 「ウララ……頑張れ……!」

 

 陰から見守るトレーナー。俗に言う若いツバメというやつである。

 

 トゥインクルシリーズを共に走り抜けたトレーナーは、寿退社した。

 

 

 

 キングヘイローと結婚して。

 

 (キングぅぅぅぅぅぅ…………! ちゃん……!)

 

 最後に残った良心で踏みとどまる。彼女には本当にお世話になったのだ。

 

 だが。略奪した男と、自分の愛の結晶を、被害者に預ける。

 

 あの女、とんだサイコパスである。これにはウララも思わずびっくりだ。

 

 だが、恐らく悪意はない。わりとポンコツだからだ。

 

 

 

 寝ている彼女のベッドに潜り込み、色々した学生時代。無垢な信頼を己に向ける彼女。

 

 取返しのつかないほどのトリック&トリック。

 

 翌朝、仕方の無い子ね、と苦笑いする彼女。

 

 退〇忍にされつつあるというのに呑気な物だ。だがそれがいい。

 

 いつかトレーナーと共に食らい尽くしてくれる。そう思っていたのに。

 

 

 

 トレーナーもとても満足したそうだ。結婚式の次の日、彼が言っていた。

 

 初めてなのは確認したが、しゅごい。まるで誰かに開発されたかのような。

 

 (トレーナぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)

 

 トンビに油揚げを掻っ攫われた気分である。

 

 自らが育てた花を横から摘み取られ、感想まで聞かされた。

 

 彼女は笑顔で相槌を打ちながら心の内で激昂した。

 

 捨てた女に選んだ女との初夜の話をするな。お前もサイコパスか。

 

 可愛さ余って憎さ10000倍。でもすき。

 

 

 

 ウラっ☆

 

 回想を終え、わくわくとこちらを見る幼女に笑いかける。

 

 いかん顔面筋が。だが根性で耐える。芝2500m。

 

 己の適性とは真逆のレースを、根性だけで2着に入った己を無礼るな。

 

 尚一着はキングヘイロー。

 

 自分の頭を雑に撫でながら、彼女を褒めたたえる彼。

 

 怒りと愛の狭間で、恐らく自分の体温は50度を超えていただろう。

 

 

 

 う”ら”ッ☆

 

 「ウララ! ストップストップ! 子供に見せちゃダメな顔になってる!」

 

 ツバメの声になんとか笑顔を修正する。

 

 危ないところだ。まだお姫様はきょとんとしている。これはセーフだろう。

 

 「ウララちゃん! わたくし、プリファイのプリンセスやりたいですわ!」

 

 ぶんぶん、とちいさなおててを振り回す彼女。非常に微笑ましい。

 

 「そっかー! じゃあウララは……」

 

 「ウララちゃんは悪役のドブ・クセ―ですの! 愛される三下ですのよ!」

 

 「調子に乗るなよ小娘」

 

 「ウララっ!!!!」

 

 ツバメの叱責。うるさいぞ若造。

 

 

 

 プリファイはスマートファルコンと共に鑑賞したが、ドブ・クセ―ってあれだろ。

 

 すげー臭いやつ。己は臭くない。加齢臭などないのだ。

 

 商店街アイドルの座も狙う貪欲な猛禽類と、これはないと笑いあったものだ。

 

 独身三十路越え2人で見る女児向けアニメは、涙で霞んでほぼ見えなかったが。

 

 

 

 

 「うーん、じゃぁウララちゃんは何をやりたいですの?」

 

 「そうだねー、ウララは、三代目プリンセスをやりたいかな!」

 

 「歴代最年少の彼女を!? さすがウララちゃん、自らの年齢に自覚が足りませんわ!」

 

 「黙れ」

 

 「ウララッ!」

 

 ツバメの叱責。黙れ小僧。お前にわたしが救えるか。

 

 

 

 ハルウララさんじゅういっさい。

 

 和やかな昼下がりであった。

 

 その後、なんやかんやでご機嫌で眠りについたお姫様を存分にイチャイチャしてきたバカップルに返却。

 

 お礼を言われて2人に頭を撫でられた。しゅき。

 

 

 

 その後、彼らの家にそのまま宿泊。

 

 トレーナーと、キングヘイロー。彼らに挟まれ、お姫様を胸に抱き就寝。

 

 毎日恒例の就寝態勢である。

 

 彼らは違和感を感じていない。完全に洗脳は済んでいるのだ。

 

 最後に勝つのはこの、ハルウララなのである。

 

 

 

 

 

 

 

 おわり。




ついったでタイトルについて流れていたので思いついて書きました。

なんの問題もない簡潔かつ明瞭なタイトルでしょう。

すまんかった。


少しでも面白いと思って頂ければ、次話以降もお楽しみ頂きたく。

お気に入り登録・感想・評価なども貰えれば、幸福の絶頂であります。

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