ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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蟲毒のグルメが人気だったので、書こうとしたら、別のウマ娘が脳内に走り込んできまして・・・
やはり降りないと書けないというのは、難しいものです。
世のウマ娘作家さんは、狙い通りの物をどうやって書いているのでしょうか・・・

元ネタは、彼の今の生活と、スタジオジ〇リと、クソゲーオブザイヤー。それにちょっぴり、高杉晋作と童話を添えて。

ちなみにこのスぺちゃん。短編「勝利の女神の後ろ髪は、蜘蛛の糸に似ている」の彼女と同一人物です。


ハルウララさんじゅういっさい そのじゅう どうぶつパラダイス

~前回までのあらすじ~

 

 常と変わらぬ収録。そうなるはずだった。

 

 だが、薩摩隼人の切腹により、事態は風雲急を告げる。

 

 現れる、性癖二郎系ウマ娘。

 

 そう、ヒシアママの登場である。

 

 凍り付くスタジオ。湧く幼児。

 

 銃刀法を華麗に無視し、クリークママのヤクザキックを無傷でいなす立ち回りを魅せる彼女。

 

 ライダーにキック系の技が通じないのは常識である。

 

 広辞苑にも書いてある。

 

 そして、もっくんは八王子へ。

 

 さぁ、今日も地獄の収録が始まる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よいこのみんなー♡クリークママといっしょ、はじまりますー♡」

 

 「ヴッフ……ヴッフ……」

 

 「にゃーん」

 

 「メヘヘェェェェェェ!!!!!!」

 

 「ぴょ、ぴょんぴょんですぅ!」

 

 いつもの甘く蕩けたタイトルコール。そこに混じる4つの異物。

 

 上から順に、狸、猫、ヤギ、そしてバニーである。

 

 

  

 

 「ウマのお姉さん、ウララだよっ!」

 

 ビキビキビキ。血管が額に浮き出るのを、血流操作にて抑制し。

 

 笑顔で腰を痛めつけ、畜生共が映える角度でポーズを取りつつ。

 

 思う。

 

 

 

 しかし無礼な乳だ。自分をバ鹿にしている。

 

 これこそが、無礼面の音楽隊である。

 

 そう……メイショウドトウwith畜生どものご登場だ。

 

 

 

 

 「今日は―♡動物さんたちと、触れあいましょうー♡」

 

 クリークママが本日のお題目を告げる。

 

 動物回。視聴率の取れる、薄汚い大人の目論見丸出しの回である。

 

 

 

 「が、がんばりますぅ! ね、たぬ吉さん! にゃん太さん! がらがらどん!」

 

 「ヴッフ!」

 

 「なぁーん」

 

 「メヘヘヘヘヘヘヘェェェェェェェ!!!!!」

 

 「ブルヒヒィィン!!!!!!!」

 

 「ウマ美ちゃんは違いますぅ!!!!」

 

 

 

 気合を入れるメイショウドトウ。ネーミングセンスは、皆無と言っていいだろう。

 

 ウマ美ちゃんの捕食対象にもばっちり入っており。

 

 今はバニースーツからはみ出し気味の、胸を庇いながら逃げている。

 

 

 

 「狸さんかわいい!」

 

 「ん 猫ちゃん猫ちゃん!!」

 

 「わぁ! すげー! ぶるんぶるん揺れてる!」

 

 「ヤギって紙をほんとに食べるのかな?」

 

 「救いは、ないんですかぁぁぁぁ!!」

 

 幼児たちは動物たちに夢中。

 

 クリークママはその姿に胸いっぱいの喜びを得ており、助けが入る様子はない。

 

 

 

 地下アイドルの姿は無い。

 

 彼女は、通勤途中にとある一般通過ゴルシが口ずさんでいた七・七・七・五の詩。 

 

 『黙れば美人 喋ると奇人 走る姿は 浮沈艦』

 

 そう……都都逸を聞いたことにより、急遽発狂したため、本日不在である。

 

 

  

 愛らしい動物たちの群れに、ロリに飢えた餓狼が入り込む余地などある筈もなく。

 

 がろうくんは座敷牢へ放り込まれ。

 

 ウマ美ちゃんは何故か潜り込んでいた。ストーキング技術のちょっとした応用だろう。

 

 

 

 そしてこのハルウララ。

 

 己より胸の大きい女は、キングちゃんとクリークママとヒシアママ……

 

 あとは、無いと信じたいが、将来自分を超えるかもしれない愛娘を除き。

 

 『三千世界の 巨乳を殺し わたしの胸が 標準化』 

 

 その野望を常より抱いている。

 

 つまり、救いは無いということだ。

 

 変態なら山ほど巣食って居る。

 

 大人しくウマ美ちゃんの餌になるがいい。

 

 そう思っていると。

 

 

 「もう! こうなったら……がらがらどん! お願いしますぅ!」

 

 「メヘヘヘヘヘヘェ……メベェッ!!!!」

 

 あっ。バ鹿がヤギにがらがらドォン! された。

 

 よく躾けられたヤギである。

 

 吹き飛ぶウマ美ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 メイショウドトウ。不屈の挑戦者。

 

 職業はアニマルトレーナー。

 

 動物に好かれやすい体質を活かし、トゥインクルシリーズ引退後。

 

 彼らを友とし、北海道にて、牧歌的な生活を送る事を志したのだ。

 

 

 

 

 だが、その道のりは、決して楽な物では無かった。

 

 動物を育てるのはいい。芸を仕込むのも、そこまで苦労はしなかった。

 

 だが、彼らに何をさせ、収入を得るのか。

 

 そのヴィジョンが、彼女には抜けていたのだ。

 

 致命的な見通しの甘さである。

 

 

 

 打ちひしがれる彼女。

 

 金にもならぬ動物を撫でながら、呆然とする彼女の元に一人のウマ娘が現れた。

 

 『やぁドトウ! 久しぶりだね!』

 

 『お、オペラオーさん! どうしてここに!?』

 

 そう。

 

 新進気鋭の演出家として数々のKOTY(クソ映画・オブザイヤー)を受賞した、彼女。

 

 ザじゃなくてジだろと突っ込んだヤツは、黙れバ鹿と言われるのがお約束。

 

 世紀末覇王。テイエムオペラオーである。

 

 

 

 今まで手掛けた映画に、何か足りない物を感じていた彼女。

 

 自分の才能には絶対の自信があるクソ映画メーカー。

 

 きっと、何かが見つかる筈。

 

 スランプを打破するため。

 

 終生のライバルたる、メイショウドトウを訪ねたのだ。

 

 

 

 和やかに、昔を懐かしむ彼女たち。

 

 まずは再会を喜ぶのが最優先である。

 

 テイエムオペラオーは、大事な物を決して間違えない、覇王たる資質を持つ。

 

 いきなりステーキの如く、仕事の話……

 

 しかも己のスランプを初手から持ち出すのはあまりに無粋。

 

 

 

 『ヴッフ……』

 

 『あら、たぬ吉さん。お腹が空いたんですか?』

 

 そして彼女は、談笑しているライバルの膝に乗って来た、一匹の闖入者に目を付けた。

 

 『ドトウ! さすがは僕のライバル! これだ! これが必要だったんだ!』

 

 『えっ!? ど、どうしたんですかオペラオーさん!?』

 

 

 

 「ヴッフ……ヴフゥゥゥゥ……」

 

 その始まりの一匹は、今は幼児どもに撫でられ、ご満悦の狸。

 

 たぬ吉さん。

 

 トゥインクルシリーズ中に出会い、一時は別れ。

 

 そして数奇な縁で以て、メイショウドトウと再会した。

 

 彼女の引退後の道に、大きな影響を与えた一匹のぽんぽこである。

 

 オペラオーは彼に目をつけたのだ。

 

 

 

 そう。動物が出る映画はウケる。

 

 彼女は特に映画に対するこだわりが無かったため。

 

 大衆に媚びることを決めたのだ。

 

 

 覇王は退かぬ。媚びる。顧みぬ。

 

 まさに王者の三ヶ条である。

 

 

 

 エウレーカ! エウレーカ! エロティカセブン! 

 

 狂ったアルキメデスの如き叫びを上げ。 

 

 そのままオペラオーは、ドトウが暮らす牧場のほど近く。

 

 スぺちゃん農場へ走り込み。

 

 戸惑うスペシャルウィークと、それに自動的に着いてきたポンコツ栗毛。

 

 異次元の逃亡者。現在は労働からの逃亡者たる、彼女。

 

 サイレンススズカを連れ、またドトウの元へやってきた。

 

 

 

 『サイレンススズカ。スぺちゃんおなか奏者としての、君に頼みがあるんだ』

 

 『……話を聞きましょうか。スぺちゃんのおなかと聞いては、黙っていられないわ』

 

 『スズカさん!?』

 

 真剣な面持ちのオペラオーの頼み。

 

 頷くポンコツ。

 

 戸惑うスペシャルウィーク。

 

 夢を喰らうブラックホール。星堕とし。

 

 日本一のウマ娘も、さすがにポンコツに押され気味だ。

 

 

 

 そう。スペシャルウィークは、トゥインクルシリーズ引退後、故郷に帰り。

 

 愛するおかあちゃんと共に、農場を熱狂的なファンの自主的な奴隷労働により、大きく発展させ。

 

 北海道の食料自給率を、大きく引き上げた。

 

 そして、現役時代と変わらぬブラックホールのような食欲でもって、それを自ら台無しにしたのである。

 

 

 

 サイレンススズカは、ポンコツだったため。

 

 かわいいスぺちゃんになんとなく着いてきて、お義母様のご厚意で牧場に住み着き。

 

 日がな一日、スぺちゃんのお腹をすぺんすぺんし、たまに気が向いたらバ鋤で農場を荒らしまわる。

 

 とんでもなく自由きままな生活を送っていた。

 

 特技はスぺちゃんおなか鼓。

 

 太鼓には一家言を持つ、リトルココンが唸る程の腕前である。

 

 そこに、オペラオーは目を付けたのだ。

 

 

 

 そして、半年後。一本のフィルムが産声を上げた。

 

 令和おなか合戦・奔放鼓! (れいわおなかがっせん・ほんぽこ!)

 

 テイエムオペラオーが絶対の自信を持って送り出した、正真正銘のクソ映画である。

 

 

 

 その内容は。

 

 嫌がる狸とスペシャルウィークを押さえつけ。

 

 メイショウドトウと、サイレンススズカ。

 

 二人のへっぽこが、スマートファルコンの歌に合わせて、かわいそうな二匹のお腹をぽんぽこする。

 

 3時間の上映時間を誇る、大作である。

 

 

 

 メイク・たぬっと! から始まり、ネクスト・たぬんティア。

 

 Winning the 総理、UNLIMITED・八畳敷。おなか・Phantasiaを経て。

 

 最後は飛び入り参加した、樫本理子と愉快な仲間たち。

 

 チームファーストによる、名物・ふしだら大太鼓を加えた。

 

 たぬぴょい伝説で〆である。

 

 

 

 ラストシーンでは、さすがにおなかに据えかねた、スペシャルウィークにより。

 

 逆シューティングスターでバ鹿共が打ち上げられ、夜空に笑顔の華を咲かせた。

 

 そのシーンのサイレンススズカの笑顔は、彼女のウマ生で一番輝いていたという。

 

 翌日、すぐに仲直りし、またおなかをすぺんすぺんしたらしいが……

 

 懲りない栗毛である。

 

 

 

 スペシャルウィークも、惚れた弱みにしても甘やかし過ぎている。

 

 スぺちゃん農場の奴隷どもも、一風変わった百合に大興奮し。

 

 さらに農場の規模は拡大した。

 

 

 

 これが、クソほどウケた。

 

 ノリに乗ったオペラオーは、特撮やドラマの分野にも手を伸ばし。

 

 その手腕でもって、仮面魔法ウマママ少女ライダー・アマゾンや、蟲毒のグルメを世に送り出すのだが……

 

 それはまた、別のお話。

 

 

 

 

 

 

 そして、メイショウドトウ。

 

 彼女はクソ映画により、多額の現金収入を得たものの。

 

 所詮は一発限りの栄光。

 

 今はうさぎのお姉さんに身を窶し、クリークママの忠実な下僕として。

 

 バニー姿で愛する畜生どもと共に、この番組で日銭を稼いでいる。

 

 動物と巨乳。

 

 小さな子供たちから、大きな子供たちまで、幅広いニーズを満たす、人気キャラである。

 

 

 

 もちろん、彼女にも性癖破壊機能は搭載されている。

 

 ほら、今も。

 

 

 

 「あうっ!」

 

 「んぷっ!?」

 

 何もない所でコケて、きっくん(5)をそのエベレスト級の二子山で押しつぶし。

 

 

 

 「や、山が……そうか……! チョモランマとは……! 世界の母なる女神……!」

 

 「大丈夫ですかぁー!? きっくん、しっかりしてぇ!」

 

 

 

 譫言をほざくきっくんを慌てて抱え起こし。自らの胸に顔面を埋没させる。

 

 むにゅり。

 

 

 

 「あああああああああああ!!! Hカップ以下は……! 貧乳……!」

 

 「きっくぅぅぅぅぅぅん!?」

 

 瞬時に性癖を破壊され、世の99,9パーセントの女性を愛することが叶わなくなったきっくん。

 

 

 

 「ヴッフ……」

 

 「にゃぁん……」

 

 「めへへぇ……」

 

 「ひひぃぃん……」

 

 動物たちも呆れ顔である。

 

 だが彼らは、決して愛する彼女を見捨てたりはしない。

 

 ウマ美ちゃんが、一人の男児を可哀想な事にし、落ち込んだメイショウドトウ。

 

 動物たちが彼女に寄り添うのに混じり、背後から慎重にパイタッチを狙うが。

 

 

 

 「ドトウちゃーん♡」

 

 「はいぃ! クリークママ!」

 

 

 

 ぶるんっ! バッチィィィィン!!! 

 

 「ひひぃんでぶっ!?」

 

 母なる邪神の呼び声に。

 

 慌てて振り向いた彼女の胸に、横っ面を殴打され。

 

 心なしか、満足そうに吹き飛んでいく。

 

 あのビンタ、凄まじい威力を誇るらしく、以前スイカをスイカで破砕する姿を目撃したことがある。

 

 首を鍛えているウマ美ちゃんでなくば、頸椎を破砕されていただろう。

 

 戦慄しつつ、思う。

 

 

 

 メイショウドトウが出演する回は、いつもこうだ。

 

 女の価値は、胸の大きさではない。

 

 わかっている。わかっているのだが……

 

 

 

 

 愛する娘に授乳を強請られ、無念にもキングちゃんにパスせざるを得なかったあの日。

 

 仕方がないとは言え、母としては誠に遺憾である。

 

 

 

 5歳になった今も、毎日ねだってくるのだが……

 

 そろそろ諦めてくれないだろうか、あのプリンセス。

 

 

 

 悲しみに涙を零さぬよう。

 

 空を見上げる、ハルウララなのであった……

 

 

 

 

 

 

 つづかない

 

 


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