ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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またやった……!
また、続き物を書いてしまうクソプレイ!
だが、書くね!何故なら私が書きたいからだ!!!


ハルウララさんじゅういっさい そのじゅういち お出かけですか、おひめさま

~前回までのあらすじ~

 

 ぴーひゃらぴーひゃら 叩く ぽんぽこぽん

 

 ドトウの如き勢いで鳴る腹太鼓。

 

 ポンコツによるスッペンペン。

 

 幼児が貧乳を愛せなくなった日。

 

 ハルウララはそっと思った。

 

 動物回はやっぱり視聴率が上がる……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いってきますわー!」

 

 「いってらっしゃい、プリンセス。気をつけてね」

 

 「いってらっしゃい! 頑張るんだぞ!」

 

 「いってらっしゃい、プリンセスちゃん」

 

 

 

 愛する家族のお見送りを受け、手を振りつつ。

 

 家を出て、商店街に向かって歩む。

 

 カワカミプリンセス、御年5歳。

 

 初めてのおつかいである。

 

 

 

 とことこと歩きながら、掌中のメモを確かめる。

 

 じゃがいも。にんじん。かぼちゃ。たまねぎ。鶏胸肉。

 

 パセリ。最後に牛乳。

 

 

 

 そう。今夜は愛する桜色の妖精の大好物。

 

 シチューである。

 

 

 

 母の作る料理は、なんでもおいしいおいしいと。

 

 愛らしい笑顔を咲き誇らせて食べる彼女であるが。

 

 シチューはやはり別格なのだろう。

 

 

 

 お膝に座って給仕してあげると、至近距離で素晴らしい笑顔を魅せてくれるのだ。

 

 このおつかい、責任重大である。

 

 彼女は決意を新たにした。

 

 

 

 商店街のアーケードが見えて来る。

 

 トレセン学園の生徒もよく通う、地域の顔である。

 

 縄張りとするのはハルウララとナイスネイチャ。

 

 

 

 自分もいつも、彼女に手を引かれながら、お買い物に来る。

 

 だが、今日は自分の手を引く柔らかいてのひらは無い。

 

 それに寂しさを覚えつつ、アーケードをくぐる。

 

 

 

 「らっしゃい! 人参が安いよー!」

 

 「スゥゥゥゥ……ハァァァァァァ……」

 

 「おい! 勝二! 何吸ってやがんだ! お客さん来てるぞ! ……お前、まさか!」

 

 「ち、違う……これはただの、雑巾じゃ……」

 

 「ムスビッ うそをつけっ」

 

 馴染みの八百屋の前を通ると、ちょっとした狂乱。

 

 商店街では日常である。

 

 見ると、八百屋のゲンさんが丁稚の勝二から、何かの布を取り上げようとしている。

 

 直感する。アレだ。

 

 

  

 「ゲンさん! こんにちはですわ!」

 

 「おお、ウララちゃんとキングちゃんのとこのお姫様じゃねえか! 今日は一人かい? 

 ……おい、勝二! しまえ! 子供の前で見せるもんじゃねぇだろ!」

 

 「すいやせん大将……上物が入ったもんで……らっしゃい。

 嬢ちゃん。今日は何をお求めで?」

 

 ねじり鉢巻きの大将と、おにぎりのような愛嬌のある丁稚。

 

 愛想良く接客を試みる彼らが、後ろ手に隠した布を、このプリンセスアイは見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 ハルウララ使用済みハンカチ。

 

 非合法に出回っている商品だ。

 

 商店街には彼女の熱狂的なファンが多い。

 

 

 

 選りすぐられた紳士である彼ら。

 

 パンツなど論外。彼女を穢すことは許されない。

 

 真のファンはハンカチで己のリビドーを慰めるのだ。

 

 

 

 そのため、自他共に認める熱狂的なファンである彼ら。

 

 彼らも聖遺物を裏ルートで入手したのだろう。

 

 だが己は知っている。

 

 あれ、パパのハンカチだ。

 

 

 

 

 

 

 事の起こりは数年前。

 

 ママが、消えた洗濯物に首を傾げていたのだ。

 

 下着類には一切手を付けず、数枚の女児向けハンカチのみ持ち去られていた。

 

 当時自分はまだ乳児を卒業したばかりであり。

 

 それを使うのは桜色の妖精のみ。

 

 そして持ち去られたハンカチの代わりに、新品のハンカチがそっと置かれていたのだ。

 

 紳士の手口である。

 

 

 

 これに対し、パパが激怒。

 

 愛しい愛バのハンカチ。

 

 補填をする気遣いはあれど。用途は明らかである。

 

 

 

 吸ってキメるのだ。それ以外に無い。

 

 何故なら自分もよくやっているからだ。

 

 愛バに対して性欲は感じないが、愛には満ち溢れているのだ。

 

 

 

 パパは対策を講じる必要性を感じ、しばし無事だった愛バのハンカチをキメつつ考えた。

 

 犯人を捜すのは困難極まる。

 

 何故なら、この地域にファン第1号たる自分を始め、ハルウララの男性ファンは多く。

 

 その中でも紳士となると、ほぼ100%である。それ以外は粛清されるからだ。

 

 ハルウララファンクラブは、自浄作用も完璧なのだ。

 

 特定は困難であろう。

 

 だが、このままにもしておけぬ。

 

 自分以外が愛バのハンカチをキメるなど、認める事はできぬ。

 

 

 

 そして彼は手を講じた。

 

 ハンカチを隠すならハンカチの中。

 

 彼は会社に女児向けハンカチを持っていくことに決め。

 

 愛バのハンカチは部屋干しするようにママに指示。

 

 そう。己の社会的地位の失墜と引き換えに、愛バのハンカチを守ったのだ。

 

 その言動により、社内では元より底辺の社会的地位。

 

 リターンの方が大きいため、妥当な判断である。

 

 

 

 

 

 (でも、やっぱりこのヒトたち、頭がおかしいですわ……パパもですけど……)

 

 「今日はコイツが良いぜ、嬢ちゃん。スぺちゃん農場から直送の人参だ」

 

 「おっと勝二、これを忘れちゃいけねぇ……このリンゴも出物だぜ? 

 なんたって、あのサイレンススズカが好き勝手に走り回った挙句。

 果樹に正面衝突して落ちたリンゴだ。こいつもスぺちゃん農場産。

 たぶんご利益がある」

 

 パパのハンカチを後生大事にしまいつつ、おすすめの根菜と果実を勧めてくる彼ら。

 

 筋金入りのド変態どもである。

 

 よく平気な顔で接客ができるものだ。

 

 

 

 彼女のハンカチは嗜みとして、自分もキメるが。

 

 自分はお姫様である。

 

 姫君として、当然の権利を行使しているだけである。

 

 

 

 だが、これは使える。

 

 そっと丁稚に近寄り、囁く。

 

 

 

 「先程のハンカチ……どちらのルートで?」

 

 「……何の事を言ってるのかわからんな。

 嬢ちゃん。大人をからかっちゃいけねえよ」

 

 「帝王商事」

 

 とぼけようとした彼の顔が青褪める。

 

 

 

 やはり、汚い帝王か。

 

 ゆるふわツインテールを思い浮かべる。

 

 彼女はこの商店街に深く根を張っており。

 

 たまに、独自ルートで入手した聖遺物を横流しすることにより。

 

 商店街の変態どもに、女神のように崇められているのだ。

 

 蛇の道はネイチャ。

 

 商店街においては常識である。 

 

 

 

 

 「……勝二。俺たちの負けだ。嬢ちゃん。

 好きなもんを持ってきな。金はいらねぇ。

 まったく……この前まで、こーんなにちっちゃかったのにな。

 俺も年を取るわけだぜ……

 ウララちゃんは年を取らないけどな!」

 

 

 ガハハ、と親指と人差し指で、豆粒の大きさを示し。

 

 この商店街で良く使われる、永遠のアイドル。

 

 ハルウララを賛美するための定型句を告げ。

 

 豪快に笑う大将。

 

 

 

 潔い男だ。変態だが、嫌いではない。

 

 なんといっても、愛しい彼女のファンである。

 

 つまり、自分と同志であるのだ。

 

 手を差し伸べる。

 

 

 

 「これからもウララちゃんをよろしくですわ!」

 

 「言われるまでもねぇ。だが、よろしくなお姫様。ウララちゃんほどじゃねぇが。

 良い女になるぜ。大きくなるなよ」

 

 ニカッと笑って答える、ロリコン大将。

 

 ハルウララファン。そういうことである。

 

 

 

 

 

 「ねぇねぇ! 君、ウララお姉さんのとこの子!?」

 

 気持ちよく野菜を分捕り、リュックサックに詰め込み。

 

 八百屋を辞す際。

 

 同い年ぐらいの男の子が声を掛けて来た。

 

 どうやら会話を聞かれていたらしい。

 

 「ええ。わたくしはウララちゃんの……そう。娘みたいなものですわ」

 

 今はな。

 

 

 

 心の中で付け加える。

 

 まだ娘としか思われていないのは知っているが。

 

 娘で終わる気などさらさら無い。

 

 だが、他人に聞かれた際は、まさか恋人とは言えぬ。

 

 いつかはなる気だが、さすがにまだ早い。

 

 そのため、こう答えるようにしているのだ。

 

 

 

 「じゃ、じゃあ……ウララお姉さんに、これを渡して! お願い!」

 

 紅潮した顔で、差し出されたのはヒシアマゾンがライダーポーズをキメている封筒。

 

 受け取ると、彼は脱兎の如き勢いで逃げていった。

 

 

 

 おや、恋文か。

 

 罪な妖精である。

 

 この男児も、彼女の被害者であろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 愛すべき桜の妖精。

 

 ハルウララは、常々番組における、クリークママによるでちゅね性癖破壊をテレビの前で嘆いているが。

 

 実のところ、男児の性癖を一番破壊しているのは、彼女である。

 

 

 

 男児から見た彼女はこうだ。

 

 自分たちと一生懸命遊んでくれる、少し年上のお姉さん。

 

 大人たちと対等に、すごいパワーを見せてくれる。

 

 なんてすごいお姉さんだろう。自分たちとあまり年も変わらないのに。

 

 かわいいしかっこいい。おまけになでなでがすごくうまい。

 

 小学校の何年生だろう。僕も小学生になったら。

 

 

 

 そんな男児の淡い初恋。

 

 ハルウララに惹かれた男児たちは、初恋パワーにより。

 

 クリークママの抱擁にも一時的な耐性を得る。

 

 番組中は、念入りに西松屋されない限りは、性癖を破壊されないのだ。

 

 違法ロリの奇跡である。

 

 だが。

 

 

 

 その奇跡は、番組終了後に凄まじい勢いで没シュートされるのだ。

 

 番組終了後は、クリークママたっての要望により。

 

 出演者と幼児たちの、懇談の時間が設けられている。

 

 テレビの前では、幼児たちも緊張して、ママに充分に甘えられないだろうという。

 

 クリークママの母なる邪神としての欲望を、丸出しにした制度である。

 

 そして、番組が終わると。

 

 

 

 3分の1の、番組中に性癖を破壊された男児は、クリークママの方へ。

 

 メイショウドトウが出演した際は、彼女の方にもその内約半数が。

 

 ニッチな性癖持ちの男児と、3分の1の女児は、スマートファルコンの所へ。

 

 そして残り全ての。過半数の幼児は、ハルウララとのお話を望むのだ。

 

 がろうくんとウマ美ちゃんは、寂しげに端の方でジェンガやドミノで遊ぶのが常である。

 

 

 

 当然のことだろう。一番年が近く、親しみやすい風貌。

 

 自分たちと同じ目線で、楽しく遊んでくれた彼女。

 

 そして天真爛漫な笑顔。それに彼らは惹かれるのだ。

 

 

 

 あれが楽しかった。次もここで遊びたい。私もデーモンファル子閣下みたいになる。

 

 楽しい懇談の時間はすぐに過ぎ。

 

 決まって、途中で一人の男児が不用意な質問をしてしまう。

 

 「ウララおねーさんって、なんさいなの?」

 

 

 

 凍り付くハルウララ。

 

 壊れた人形のように軋む指を、三本立てる。

 

 「小学3年生!? すごーい! ぼくたちとあまり変わらないように見えた!」

 

 軋む首を横に振るハルウララ。

 

 「えっと……13歳……? 中学生なの!? すごいや!」

 

 軋む腰の痛みに悩むハルウララ。

 

 そして告げるのだ。

 

 「わたし、さんじゅういっさい」

 

 

 

 さんじゅういっさい。さんじゅういっさい。さんじゅういっさい。

 

 まさかの自分たちの6倍ほどの年齢。

 

 

 

 ここで男児たちの脳は混乱する。

 

 

 

 「あと、腰痛が最近ひどくて……」

 

 腰痛。おじいちゃんおばあちゃんが悩んでるやつだ。

 

 

 

 さらに男児たちの混乱は加速する。

 

 

 

 そんなバ鹿な。こんなにかわいいのに。

 

 おとうさんやおかあさんよりも年上。

 

 つまり、おばさん……? 

 

 いや待て。こんなにかわいらしいおばさんが居てたまるか。

 

 およめさんにしたいけど、ぼくが大人になるころには何歳になっているというのか。

 

 腰痛とは。老人にならねば、悩まぬものではないのか。

 

 

 

 そして、混乱した幼い脳髄は、誤った答えを導き出すのだ。

 

 

 

 でも、このおねえさん小学生ぐらいからずっと成長していないのでは? 

 

 つまり、合法ロリ……! 

 

 紅ベン先生で出たやつだ!!!! 

 

 わかったよ先生! 永遠のロリ! これが先生の言っていた、理想! 

 

 

 

 僕、ウララおねーさんをおよめさんにする! 

 

 今は若くても、よし子ちゃんもさち子ちゃんも年を取る。

 

 つまりはかわいい子も、いつかはババァ。

 

 でもウララおねーさんは永遠にロリ。

 

 年を取るババァ共なんて、もう眼中にないや! 

 

 やっぱりロリは最高でおじゃるな! 

 

 腰痛持ち? 僕が一生支えるよ! 

 

 

 

 

 

 

 そう。

 

 彼らはその時、一時の祝福を剥がされ、呪いを得るのだ。

 

 腰痛に悩む、永遠のロリしか愛せない。

 

 そんな呪いを。

 

 子孫など、残せようはずもない。

 

 

 

 そう、クリークママといっしょ! に出演したが最後。

 

 男児の3分の1はクリークママに。

 

 ニッチな素質を持つ、数人はスマートファルコンに。

 

 そして残り全ての男児は、ハルウララに性癖を破壊されるのである。

 

 助かる者などいない。

 

 残酷極まりない、真実であった。

 

 

 

 

 

 

 

 世界はいつだって残酷だ。

 

 カワカミプリンセスはそっと微笑み、彼から受け取った封筒を。

 

 大胆に引き裂いて、ゴミ箱に入れた。

 

 ライバル登場の可能性は、0.000000001%とて、許容できないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お姫様のはじめてのお使い、つづかない。

 

 


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