ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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今回は短めです。
クロスオーバー作品は、アレな感じが多いと伺いまして。
自他共に認める地雷作品である本作にも、その要素を取り入れることとしました。
さて、誰が出るでしょう。
当てた方は、精神に重大な疾患があります。
素直に病院に行く事です。
この作品は、LGBTに対する配慮を重視しております。

時代考証?ハハハ。
ウマ娘でやる必要がない?ハハハ。


ハルウララさんじゅういっさい そのじゅうに 仮面の告発

~前回までのあらすじ~

 

 プリンセスちゃん、初めてのおつかい。

 

 輝かしき日本の伝統。

 

 幼児の登竜門。今日の晩ご飯の材料。

 

 おしゃまな幼児は前へと進む。

 

 愛するウララの笑顔のため。

 

 商店街へと歩みを向ける。

 

 立ちふさがるは、八百屋のギギギコンビと、老人性小児愛に目覚めた幼児。

 

 そう……この世界は残酷だ。

 

 ゴミ箱の中の、初めての慕情だけが、優しく微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とことことこ。

 

 身の程知らずのラブレターをゴミ箱にシュートした後も。

 

 お姫様は歩み続ける。

 

 

 

 じゃがいも。にんじん。かぼちゃ。たまねぎ。鶏胸肉。

 

 パセリ。最後に牛乳。

 

 根菜・野菜・香草の類。おまけにデザートのフルーツまで手に入れた。

 

 浮いたお金はお小遣い。

 

 ハルウララグッズの購入資金に充てよう。

 

 

 

 さぁ、次はお肉だ。

 

 愛する彼女には最高のものを。

 

 スーパーのパック詰めなどでは、このプリンセスが己を許せぬ。

 

 次なる標的は、精肉店だ。

 

 次なる犠牲者を見定めた、彼女の背後には怪しい影。

 

 

 

 「いらっしゃい。おお、ウララちゃんのところの。今日は何をお求めで?」

 

 にこやかに自分を迎え入れる、恰幅の良い男性。

 

 割腹が趣味の、肉屋の店主。

 

 公威さんである。

 

 どうやら、現在の政治体制について、物申すところがあるらしい。

 

 軍部とも繋がりがあるらしく、偶に軍服を着た青年将校が、尻を抑えて店から出られておらぬ。

 

 珍しく、ハルウララのファンではあるが、熱狂的ではない。

 

 だが、弱点はある。

 

 弱みの無い聖人など、この世に存在してはならぬのだ。

 

 

 

 「公威さん、こんにちはですわ! 今日は鶏むね肉を買いに参りましたの!」

 

 「なるほど。偉いねぇ。

 さぁ、どれでも自由に見てご覧。

 ガラスの中の自慢の逸品。

 どれを選んでも、味は極上。

 舌で蕩けておなかは満足。

 けして後悔させませんとも。

 お安くしましょう。おじょうさん」

 

 お道化て告げる、公威さん。

 

 なるほど。さすがは、文筆家と言ったところか。

 

 表現にも気が利いている。

 

 だが、その文学的センスが、自分の身を亡ぼすのだ。

 

 

 

 「ええ。このにわとりさんのお肉など、よろしいのではなくて?」

 

 「おやおや。そいつは丸鶏だよ? お嬢さん。ローストチキンでも作るのかな? 

 だが、ちょいと困ったな。怒涛丸鶏。お値段は決して安くない。

 お嬢さん、予算は? 

 君のおさいふには、金貨でも詰まってゐるのかな?」

 

 渋面を浮かべる彼。

 

 

 

 怒涛丸鶏。

 

 かのメイショウドトウが、教育番組だけでは足りぬ、畜生どもの餌代を稼ぐため。

 

 彼らと共に世話になっている牧場で、丹精込めて育て。

 

 そして、そのエベレストで圧殺した、プレミア価値までつく逸品である。

 

 

 

 特徴は、喜悦に歪んだ死に顔。

 

 その肉質は、快楽の中で果てたためか。

 

 蕩けるような舌ざわりと、噛むと溢れる肉汁。

 

 まるでメイショウドトウの胸のようであると、大評判。

 

 お値段は、脅威の時価である。

 

 今の相場なら、諭吉さんが数枚はアディオスするだろう。アミーゴ。

 

 

 

 だがこのプリンセスには秘策がある。

 

 カウンターに寄って、ぴょいとそれに飛びつき、告げる。

 

 「ペルソナシャウト」

 

 「……何故それを知っている……!」

 

 愕然とする彼。他愛なし。

 

 

 

 『永いあいだ、私は自分が生まれたときの光景を見たことがあると言い張っていた』

 

 その一文から始まる小説。

 

 とても共感が持てる冒頭文であった。

 

 母が読んでいた、ハートフルホモストーリーである。

 

 執筆者の名は。

 

 

 

 「ええ。だってあの小説の主人公。わたくしのパパでしょう? 

 あのひとほど、自分に正直な方、わたくし見たことありませんもの。

 ねぇ、由紀夫さん?」

 

 作者の名前を告げる。彼の文筆家としての名前だ。

 

 なぜわかるか。それは。

 

 

 

 主人公は、冒頭文の直後に言ってのけるのだ。

 

 『尻だ!!! 尻が良い!!! 野郎の尻が最高だ!!! オー!! シャビダビダア!!!』

 

 などと。恐ろしく早い自白。

 

 このプリンセスでなくば、感嘆符の多さに気づかなかったほどの狂乱である。

 

 まったく仮面を被れていない。

 

 タイトル詐欺もいいところである。

 

 ママはたぶん気づいていないが、あの主人公。

 

 挿絵の体型といい、顔といい。

 

 完全にうちのパパである。

 

 

 

 「……恐ろしい。恐ろしいお嬢さんだ。

 何故、わたしだと?」

 

 「うちのパパの尻にあんな熱狂的な視線を向けるなど。

 あなたとうちのウララちゃんぐらい。

 

 そして、主人公の恋敵のモンスターエナジー。

 うちのママでしょう? 

 誰だって気づきますわ。

 あと、そこの少尉さん、そろそろ目覚めそうですわよ?」

 

 「おっと。薬の効きが甘かったか……

 負けたよ。やはり身近な家族をモデルにしてはいけないな……

 もってお行き。将来が恐ろしいプリンセス。こいつはわたしからの、プレゼント。

 そういうことにしておくれ。

 おまけだ。ママミルクも付けておこう」

 

 潔く敗北を認め、冷蔵庫から牛乳を。

 

 ショーウィンドウからよくわからない死に方をした、哀れな鶏を渡してくる公威さん。

 

 決断が早い。

 

 丸鶏だけでは、今後もお強請りを受けると睨んだのだろう。

 

 さすがはお昼休みに軍の駐屯地にカチコミをかけるだけはある。

 

 お昼ごはんに舌鼓を打っていた、ウマ娘兵士たちに速攻で叩き出されたらしいが。

 

 よくこの店を続けられているものである。

 

 

 

 では、優雅に去るとしよう。

 

 八百屋でカツアゲした生鮮食料品たちに、新たな仲間が加わる。

 

 怒涛丸鳥と、ママミルク。

 

 戦利品が誇らしげにリュックの中で微笑んでいる。

 

 しかしこの鶏、笑顔がキモい。

 

 

 

 ちなみにママミルク。

 

 クリークママがCMに出て、人気が爆発しただけの高級品である。

 

 キャッチコピーは、『ママのすんごい愛情で、赤ちゃんのお腹もダイナマイツ!』

 

 粉ミルクと勘違いしてはいまいか、あの邪神。

 

 そして乳児の腹部を爆弾成金させて、どうしようというのか。

 

 

 

 ちなみに、決して彼女の母乳というわけではない。

 

 それは彼女の愛する赤ちゃんだけの、専売品だからだ。

 

 おしゃぶりを咥えた、ダンディー赤ちゃん。

 

 初めて会った時は、思わず雪崩式プリンセスホールドを叩き込んでしまったものだ。

 

 寛大なクリークママは、甘やかす口実が出来て悦んでいたが。

 

 

 

 おっと、挨拶を忘れてはいけない。

 

 ちょこんとスカートの裾を摘み。

 

 カーテシーにて別れを告げる。

 

 「ありがとうございましたわ、由起夫さん」

 

 「その呼び方はやめてくれ。私にも体面というものがある。

 オラッ♡かわいいねっ♡二倍の濃度でイったら♡二分の一で快楽の内に死に給へ♡♡♡」

 

 文学的表現を最大限に活用しつつ。

 

 青年将校に菊乱暴を白昼堂々と働きながらも、鬼作に挨拶を告げる彼。

 

 

 

 体面など、どこにあるというのか。

 

 考えてはいけない。この世界では。

 

 深く考えると不覚を取るのである。

 

 

 

 彼女は狼藉を見逃すことに決め、店主のぬふぅ写真を一枚撮り、店から出た。

 

 次の脅迫材料である。

 

 

 

 さぁ。愛する妖精に捧げる供物は揃った。

 

 おうちに帰ろう。

 

 家に足を向けようとすると。

 

 

 

 「おっと。ちょいと待ちなよ、お嬢さん」

 

 ねっとりとした、声に步みを止められる。

 

 逃げ牽制。まんまと彼女の術中にハマッたようだ。

 

 

 

 変態を刺激せぬよう、ゆっくりと振り向くと。

 

 そこには明るい鹿毛のゆるふわツイン。

 

 性癖はガッチガチのバイセクシャル。

 

 ナイスネイチャが、そこに居た。

 

 そう……出オチ要員である。

 

 

 

 

 

 プリンセスの商店街蹂躙の旅、つづかない。




正解は、あの方でした。飽くまで元ネタで、本人ではありません。

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