ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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はじめてのおつかい編、終わり。
拙作におけるネイチャは、ただの変態ではありません。
すごい変態です。

元ネタは大魔法峠。


ハルウララさんじゅういっさい そのじゅうさん たたかうおひめさま

~前回までのあらすじ~

 

 お強請りの旅を続けるプリンセス。

 

 背後には怪しい影。だが彼女は気づかない。

 

 次なる獲物は肉屋の店主。

 

 割腹の良い文筆家。

 

 彼女はキモい鶏を手に入れんがため、彼の仮面を告発する。

 

 自分のパパをホモ文学のモデルにした罰である。

 

 仮面を剥がされた彼は、威風堂々と青年将校を菊乱暴。

 

 敗北の証に彼女に鶏と牛乳を献上した。

 

 満足感を胸に、家路に向かう途中。

 

 彼女に迫る怪しい影。

 

 商店街の裏の帝王。

 

 性癖はまったくゆるふわではないツインテール。

 

 ナイスネイチャが、そこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やぁ、ウララのところのお姫様。なんであたしがここにいるか。わかるかい?」

 

 「あらあら。ゲンさんに泣きつかれましたの? それともあの小僧? 

 なんにせよ、大の男が情けないことです」

 

 「いいや。違うね。違うとも。この商店街のルール。

 やり過ぎてはいけない。それにお姫様が、違反したからさ。

 さすがにあのお強請りは度が過ぎる。被害総額数万円。

 こいつが許されるのは、それこそお姫様の所の、ウララぐらいなもんだよ」

 

 「あら、泣きつかれていないとなると、自主的に? 

 おかしいですわね。ネイチャさん。動きが早すぎではありませんこと? 

 まるで、幼気な姫を、ストーカーでもしていたかのような」

 

 「えっ? 可愛い幼女が保護者不在でいたら、ストーカーするでしょ? 

 乙女の嗜みじゃん。そんなチャンス、逃がすわけがない」

 

 「…………」

 

 

 

 最初の小手調べはこちらの敗北。

 

 ストーキング行為に対し、まったく罪の意識が無い。

 

 この女、予想以上にガチだ。

 

 繰り出したジャブを、思うさまにしゃぶられた気分だ。

 

 

 

 あまりの怖気に身が竦む。

 

 愛する妖精は、これをどうやって制御しているのだろう。

 

 だが、敗北を認めるわけにはいかぬ。

 

 この身は姫。誇り高くあるべき王家の華。

 

 優雅に、淑やかに。

 

 華麗なる勝利を収めてみせよう。

 

 

 

 「わたくしを、どうなさるおつもりで?」

 

 「何。ひどいことはしないよ。ウララに殺されるからね。

 せいぜい、二度とおイタができぬよう。

 その可愛い未成熟な桃を。このネイチャさんが、舐め尽くしてあげるだけさ」

 

 「……それ、ひどいことじゃありませんの?」

 

 「えっ? テイオーは喜んでくれるんだけどなぁ。まだまだ序の口だよ。

 ひどいことって言うのは……そうだね。夜の楽しい食事の時に。

 ごちそうさまって言葉を、忘れるぐらい。

 それぐらいに楽しんだら、ひどいことになるかも。

 テイオーみたいにね」

 

 

 

 第2Rもこちらの敗北。

 

 倫理観が予後不良。

 

 ひどいことのハードルが、恐らく宇宙にまで飛翔している。

 

 エクストリーム走り高跳びである。

 

 

 

 ごちそうさまを忘れるということは。

 

 与えられる快楽を無限に貪り。けして満足をすることのない。

 

 飢えた淫らな獣になるよう、躾けられるということだろう。

 

 

 

 対の帝王は、どちらも変態。

 

 プリンセス覚えた。

 

 今後はトウカイテイオーとも、距離を取る必要があるだろう。

 

 

 

 常識ウマのように見せかけておきながら。

 

 邪悪なる帝王に、その水蜜桃を、毎夜淫らに大サービス。

 

 鳴りやまぬアンコール。終わりの合図は忘却の彼方に。

 

 奇跡の帝王が笑わせる。プリケツの帝王の間違いであろう。

 

 パパのケツとも、いい勝負に違いない。

 

 

 

 「そのテイオーさんという桃がありながら。未成熟な桃にも舌を伸ばす。

 浮気というものじゃありませんの?」

 

 「大丈夫さ。テイオーは、ちょっと嫉妬を煽ってあげた方が、いい声で鳴く。

 やり過ぎると、土下座謝罪をするハメになるけどね。

 蔑んだ目で踏まれるのもいい。お姫様も、大人になればわかるよ」

 

 

 

 駄目だ。手に負えない。無敵すぎるぞ、この女。

 

 幼気なこの身に、奇矯なディナーの話を嬉し気に語る。

 

 土下座など、テーブルマナーにありはせぬ。

 

 これ以上聞けば、倫理観が崩壊する。

 

 お淑やかに育てようとしてくれている、妖精に顔向けが出来なくなるだろう。

 

 

 

 身を翻し、逃走を……

 

 ぐらりと、身体が傾ぐ。

 

 

 

 「おっと。逃げられるとでも? 

 アタシの声を、舐めてはいけない。

 煽りの呼吸。皇帝直伝の、秘技ってヤツ。

 アタシの口数、やたら多いと思わなかったかい? 

 

 耳に入れば、じわじわ浸透。一言二言ならば、問題ない。

 だが、これだけ聞けば。

 もう腰が砕けて、動けないだろう? 

 

 さぁ。お耳に直接ASMRしてあげよう。

 マッドティーパーティーへようこそ、お姫様。

 お代は恐怖に溢れる黄金水。

 若い葉から搾り出されるアバ茶。

 きっと極上に違いない。

 

 さぁさぁさぁ。あと3歩、2歩、1歩。

 また油断したね? 顔が赤いよ。

 聞いてはいけない。無理やり聞かせるけど。

 顔を逸らしてはいけない。刮目してこの目を見よ。

 視線にも、毒は宿る。覚えて決して忘れるな。

 

 我が名はナイスネイチャ。汚い帝王。

 汚泥に塗れ、足を引き。

 呼吸を乱し、囁いて。

 誰も彼も嘲笑い、奇跡を飲み干す黒い影。

 残念だったね、お姫様。旅はどうやら、終わりらしい」

 

 

 狂言廻し。

 

 噂に名高い、汚い帝王の必殺技。

 

 耳に直接流し込まれる、鉛のような、重い情欲。

 

 脳が掻き混ぜられ、景色が極彩色に歪む。

 

 

 

 これが、かの汚い帝王か。

 

 聞きしに勝る、精神汚染。

 

 皇帝とは違い、デバフに特化した……

 

 強さという概念に対する、解答の一つ。

 

 G1レースの勝利数にも頷ける。

 

 ただの出オチ要員ではなかった。

 

 変態のくせに、ラスボスの風格がある。

 

 

 

 幼きこの身でこれに抗することは不可能。

 

 致し方なし。自分で勝利するのは諦めよう。

 

 

 

 「さぁさぁさぁさぁ! アタシ、興奮してきた! 

 友人の子を汚す快楽! 

 アタシ今、体温何度あるのかなぁ!? 

 クリークママも、ここにはいない! 

 過保護な親御さんたちも……

 いない? あの親バ鹿どもが?」

 

 ハッとする汚い帝王。

 

 囀る口が、動きを止める。

 

 

 

 気づいたか。だが、もう遅い。

 

 そう。はじめてのおつかい。

 

 保護者によるストーキングは、お約束である。

 

 

 

 高らかな蹄鉄の音。凱旋を告げる、喇叭のように。

 

 「やばっ……アタシ一人じゃ、分が悪い! せめて師匠でもいないと! 

 じゃあね! お姫様! アタシとは会わなかったことに……かひゅっ」

 

 さすがに引き際を心得ている。だが、もう遅い。

 

 

 

 

 ぐわしっ。ズルルルルルルルルル!!!! 

 

 霞んだ目に映る、趣味の悪い緑の服。

 

 妖精とは異なる、ナイスバディ―。

 

 汚い帝王の首根っこを引っ掴み、発声を封じ。

 

 そのままの勢いで路地裏へと消えてゆく。

 

 

 

 聞こえてくる、凛々しい声。

 

 決める時は決めるのだ。王者の誇りはその胸に。

 

 自慢の母の一人である。

 

 

 

 ダンッ! ダンダンダンッ! 

 

 「打撃系など、華拳繍腿……! 関節技こそ、王者の技よ!」

 

 「まってまってまってキング! 謝る! 謝るからぁ! この高さはやばい!! ネイチャさん死んじゃう!」

 

 「問答無用! 雪崩式・キングホールド!」

 

 ガゴォンッ! 

 

 「あぎゃああああああああ!!!! 気持ちいいィィィィィィ!!!」

 

 

 

 出た。コーナーポストは無いが。

 

 路地裏の壁を活用。

 

 三角蹴りにて、天高く舞い。

 

 相手の腰を腕ごとクラッチし、己の体重も加算して、地面に向けダイブ。

 

 後ろから抱き締めるようにホールドしながら墜落し、相手の頭頂部をそのまま地面に直撃させる。

 

 

 

 王者にのみ使用を許された技。

 

 幼いこの身で再現したものとは、練度が違う。

 

 石畳に頭頂部を埋められながらも、歓喜の悲鳴を上げる汚い帝王。

 

 ブレない女だ。

 

 自らの王者式格闘術の師たる、母のフィニッシュホールドを喰らいながら、あの余裕。

 

 油断とあの女は言ったが。

 

 この幼い身でアレを打倒するのは、まともに相対したとしても、さすがに困難だろう。

 

 まだ、出力が足りな過ぎる。

 

 

 

 冷や汗を垂らす。親バ鹿がいなければ、やられていた。

 

 しかし、妖精の姿が見えぬ。不在であろうか。 

 

 いや、いる。間違いない。

 

 過保護の塊たる彼女が、数少ない収録の無い休日……日曜日に。

 

 このプリンセスのはじめてのおつかいを見逃すはずがない。 

 

 

 

 ほら。その証拠に。

 

 「くっ……そりゃあ! いいケツしとるやないか! ワレェ!」

 

 「ひゃぁん!? くっ、このっ!」

 

 汚い帝王は生き汚さも一流。

 

 再度大空に舞おうとした天使を止めるため。

 

 腕を軟体生物のように蠢かせ、王者のケツを極限までいやらしく撫でて。

 

 気の強い女の例に漏れず。尻の弱い母を怯ませてホールドを外す。

  

 背を向けて逃走を図ったところで……

 

 

 

 パァンッ! 

 

 乾いた銃声。ナイスネイチャのクリスマスカラーのメンコが吹き飛ぶ。

 

 熟練の狙撃手たる、戦闘妖精の仕業だろう。

 

 やはり彼女もいる。愛されている実感に、胸がいっぱいになる。

 

 

 

 「狙撃ィッ!? ウララかっ! すたこらさっさだねっ!」

 

 耳本体は外されたのだろう。

 

 弾き飛ばされたメンコを掴み、今度こそ闘争から逃走する汚い帝王。

 

 バンッ! カァンッ! ぬるるるるるるぅ……

 

 地面を叩き、奥義・マンホール返しで銃弾を弾き。

 

 その姿がぬるりと下水の中に消えていった。

 

 くさそう。

 

 

 

 路地裏に立つ王者の姿にそっと近づき、声を掛ける。

 

 「ありがとうございますですわ。ママ」

 

 「いいのよ。でも、迂闊に変態に近づいちゃダメよ? ママとのお約束よ」

 

 「わかりましたわ」

 

 

 

 素直に頷く。

 

 嘘である。この世界で、どうすれば変態に近づかずに生きられるというのか。

 

 母の目に、世界はどのように映っているのだろう。

 

 この母、あまりにも現実が見えていない。

 

 だが、この異常なまでの純粋さが、きっとこの世界には必要なのだろう。

 

 

 

 そうでなくば、この残酷で美しい。

 

 バ鹿が酔っ払って描き出したような、クソみたいな世界で。

 

 寄りかかれるものなど、何もない。

 

 さすがは妖精が愛した女である。

 

 

 

 「じゃあ、帰りましょう? ウララさんも、おなかを空かせて待っているわ」

 

 「はいっ! ママ!」

 

 そっと差し出された手を取る。

 

 妖精でないのは残念だが。

 

 このてのひらも、嫌いではない。

 

 今度こそおうちに帰ろう。

 

 変態がギャァと鳴いたから。

 

 

 

 

 

 

 

 「ただいまですわ!」

 

 「ただいま。ウララさん、あの変態とは縁を切った方が良いと思うの」

 

 「おかえりなさい。プリンセスちゃん、キングちゃん。

 大丈夫、テイオーにはウマインで通報済みだよ。

 拘束具の山の写真で返事してきた。

 これはさすがに、得意の土下座でも。

 切り抜けるのは難しそう。むしろ態勢を取った瞬間。

 首輪と手錠と足枷と。最後にアイアンメイデンに封印される。

 家は追い出されないね。むしろ二度と出れなくなりそうな勢い」

 

 

 

 さっそくのママ会議。議題は本日の変態に対する報復措置についてだろう。

 

 どの変態かは、言うまでもない。

 

 やっと光の帝王が、闇の奇跡を魅せてくれるようだ。

 

 

 

 「あら。しっとり。テイオーも遂に我慢の限界かしら」

 

 「今までは、嘘とか演技だと思い込んでたみたい。

 番組での犯行を話しても、信じてなかったみたいだけど。

 今日の犯行を動画付きで送ったら、さすがに信じたね」

 

 「あの子、ほんと思い込みが激しいわね……

 反動が怖いわね。あの変態、五体満足で朝日を拝めるのかしら……

 以前テイオーがキレたのはアレよね。

 学生時代の……双帝王による、生徒会室皇帝拉致監禁ダブルピース事件。

 たづなさんが悲鳴を上げて酒に逃げてたもの。

 ダイワスカーレットも発狂して、トレーナーを押し倒してたものね」

 

 「この世から極上の変態が消える日だね。クリークママも喜ぶよ」

 

 

 

 なるほど。汚い帝王の獄中死も近い。

 

 トウカイテイオー。彼女は被害者だと思われがちだが……

 

 誘い受けだけの女ではない。

 

 彼女もこの世界の住人なのだ。

 

 頭がおかしくない者など。

 

 目の前で談笑する、母ぐらいだろう。

 

 

 

 戦利品を、信頼する母に渡す。

 

 にっこりと、それを受け取る母。

 

 開けた瞬間、キモい鳥の登場に。一瞬笑顔が凍り付いたが。

 

 怒涛丸鶏。ジョークグッズとしても、一流の存在感を示す。

 

 まさにキングに相応しい食材と言えるだろう。

 

 このプリンセス。母の取り乱す顔も、好みである。

 

 

 

 

 

 

 「それでね、ウララちゃん! 今日は、ゲンさんがねっ! いっぱいお野菜をくれたんですのっ!」

 

 「ゲンさんかー。あの人、いつもおまけしてくれるもんね。

 えらいね、プリンセスちゃん。おつかい、ちゃんとできたねー」

 

 夕食の時間。

 

 至福の時間である。

 

 なんといっても、愛する妖精のお膝の上で。

 

 彼女の可愛らしいお口に、このプリンセスが、手ずから食事を給仕するのだ。

 

 

 

 独占欲が、たいへん満たされる。

 

 しかも、今日はさらにすごい。

 

 成果報告もしながらである。肝心な所はボカすが。

 

 褒めそやされ、頭を撫でられながら、お口にシチューを入れてあげる。

 

 あまりの幸福に、体温が急上昇する。

 

 わたくし今、体温が何度あるのかしら。

 

 恐らく、50度は超えている。

 

 

 

 「あれ? プリンセスちゃん、なんだか顔が赤いよ? 疲れちゃったかな?」

 

 こつん。額で体温を測られる。

 

 目の前には、心配そうにこちらを見る瞳。そして。

 

 柔らかそうな、そのくちびる。

 

 ここで顔を突き出せば。この果実は、己の物に……

 

 

 

 ぼふんっ! 頭から煙を吐き、お膝の上に崩れ落ちる。

 

 「ぷ、プリンセスちゃん!? 大丈夫!? キングちゃん! プリンセスちゃんすごい熱! 座薬! 座薬ぅぅぅぅ!」

 

 

 

 薄れゆく意識の中思う。

 

 この性癖破壊ロリ、無自覚が過ぎる。

 

 このプリンセス、おでこっつんはまだ早いと思うのである。

 

 だが、座薬は是非妖精に挿れて頂きたい。

 

 

 

 おしゃまな女の子、カワカミプリンセス。

 

 5歳児にして、完全にイっちゃった変態以外には、わりと無敵なラスボス系お姫様であるが。

 

 

 

 愛する妖精からの攻撃には、防御力ゼロ。

 

 こちらから触るのは積極的でも、彼女から胸キュン仕草で攻められた場合。

 

 頭が沸騰しちゃう、お年頃であった。

 

 プリンセスが、桜色の妖精をその手に収める日は、遠い。

 

 

 

 

 つづかない

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