拙作におけるネイチャは、ただの変態ではありません。
すごい変態です。
元ネタは大魔法峠。
~前回までのあらすじ~
お強請りの旅を続けるプリンセス。
背後には怪しい影。だが彼女は気づかない。
次なる獲物は肉屋の店主。
割腹の良い文筆家。
彼女はキモい鶏を手に入れんがため、彼の仮面を告発する。
自分のパパをホモ文学のモデルにした罰である。
仮面を剥がされた彼は、威風堂々と青年将校を菊乱暴。
敗北の証に彼女に鶏と牛乳を献上した。
満足感を胸に、家路に向かう途中。
彼女に迫る怪しい影。
商店街の裏の帝王。
性癖はまったくゆるふわではないツインテール。
ナイスネイチャが、そこにいた。
「やぁ、ウララのところのお姫様。なんであたしがここにいるか。わかるかい?」
「あらあら。ゲンさんに泣きつかれましたの? それともあの小僧?
なんにせよ、大の男が情けないことです」
「いいや。違うね。違うとも。この商店街のルール。
やり過ぎてはいけない。それにお姫様が、違反したからさ。
さすがにあのお強請りは度が過ぎる。被害総額数万円。
こいつが許されるのは、それこそお姫様の所の、ウララぐらいなもんだよ」
「あら、泣きつかれていないとなると、自主的に?
おかしいですわね。ネイチャさん。動きが早すぎではありませんこと?
まるで、幼気な姫を、ストーカーでもしていたかのような」
「えっ? 可愛い幼女が保護者不在でいたら、ストーカーするでしょ?
乙女の嗜みじゃん。そんなチャンス、逃がすわけがない」
「…………」
最初の小手調べはこちらの敗北。
ストーキング行為に対し、まったく罪の意識が無い。
この女、予想以上にガチだ。
繰り出したジャブを、思うさまにしゃぶられた気分だ。
あまりの怖気に身が竦む。
愛する妖精は、これをどうやって制御しているのだろう。
だが、敗北を認めるわけにはいかぬ。
この身は姫。誇り高くあるべき王家の華。
優雅に、淑やかに。
華麗なる勝利を収めてみせよう。
「わたくしを、どうなさるおつもりで?」
「何。ひどいことはしないよ。ウララに殺されるからね。
せいぜい、二度とおイタができぬよう。
その可愛い未成熟な桃を。このネイチャさんが、舐め尽くしてあげるだけさ」
「……それ、ひどいことじゃありませんの?」
「えっ? テイオーは喜んでくれるんだけどなぁ。まだまだ序の口だよ。
ひどいことって言うのは……そうだね。夜の楽しい食事の時に。
ごちそうさまって言葉を、忘れるぐらい。
それぐらいに楽しんだら、ひどいことになるかも。
テイオーみたいにね」
第2Rもこちらの敗北。
倫理観が予後不良。
ひどいことのハードルが、恐らく宇宙にまで飛翔している。
エクストリーム走り高跳びである。
ごちそうさまを忘れるということは。
与えられる快楽を無限に貪り。けして満足をすることのない。
飢えた淫らな獣になるよう、躾けられるということだろう。
対の帝王は、どちらも変態。
プリンセス覚えた。
今後はトウカイテイオーとも、距離を取る必要があるだろう。
常識ウマのように見せかけておきながら。
邪悪なる帝王に、その水蜜桃を、毎夜淫らに大サービス。
鳴りやまぬアンコール。終わりの合図は忘却の彼方に。
奇跡の帝王が笑わせる。プリケツの帝王の間違いであろう。
パパのケツとも、いい勝負に違いない。
「そのテイオーさんという桃がありながら。未成熟な桃にも舌を伸ばす。
浮気というものじゃありませんの?」
「大丈夫さ。テイオーは、ちょっと嫉妬を煽ってあげた方が、いい声で鳴く。
やり過ぎると、土下座謝罪をするハメになるけどね。
蔑んだ目で踏まれるのもいい。お姫様も、大人になればわかるよ」
駄目だ。手に負えない。無敵すぎるぞ、この女。
幼気なこの身に、奇矯なディナーの話を嬉し気に語る。
土下座など、テーブルマナーにありはせぬ。
これ以上聞けば、倫理観が崩壊する。
お淑やかに育てようとしてくれている、妖精に顔向けが出来なくなるだろう。
身を翻し、逃走を……
ぐらりと、身体が傾ぐ。
「おっと。逃げられるとでも?
アタシの声を、舐めてはいけない。
煽りの呼吸。皇帝直伝の、秘技ってヤツ。
アタシの口数、やたら多いと思わなかったかい?
耳に入れば、じわじわ浸透。一言二言ならば、問題ない。
だが、これだけ聞けば。
もう腰が砕けて、動けないだろう?
さぁ。お耳に直接ASMRしてあげよう。
マッドティーパーティーへようこそ、お姫様。
お代は恐怖に溢れる黄金水。
若い葉から搾り出されるアバ茶。
きっと極上に違いない。
さぁさぁさぁ。あと3歩、2歩、1歩。
また油断したね? 顔が赤いよ。
聞いてはいけない。無理やり聞かせるけど。
顔を逸らしてはいけない。刮目してこの目を見よ。
視線にも、毒は宿る。覚えて決して忘れるな。
我が名はナイスネイチャ。汚い帝王。
汚泥に塗れ、足を引き。
呼吸を乱し、囁いて。
誰も彼も嘲笑い、奇跡を飲み干す黒い影。
残念だったね、お姫様。旅はどうやら、終わりらしい」
狂言廻し。
噂に名高い、汚い帝王の必殺技。
耳に直接流し込まれる、鉛のような、重い情欲。
脳が掻き混ぜられ、景色が極彩色に歪む。
これが、かの汚い帝王か。
聞きしに勝る、精神汚染。
皇帝とは違い、デバフに特化した……
強さという概念に対する、解答の一つ。
G1レースの勝利数にも頷ける。
ただの出オチ要員ではなかった。
変態のくせに、ラスボスの風格がある。
幼きこの身でこれに抗することは不可能。
致し方なし。自分で勝利するのは諦めよう。
「さぁさぁさぁさぁ! アタシ、興奮してきた!
友人の子を汚す快楽!
アタシ今、体温何度あるのかなぁ!?
クリークママも、ここにはいない!
過保護な親御さんたちも……
いない? あの親バ鹿どもが?」
ハッとする汚い帝王。
囀る口が、動きを止める。
気づいたか。だが、もう遅い。
そう。はじめてのおつかい。
保護者によるストーキングは、お約束である。
高らかな蹄鉄の音。凱旋を告げる、喇叭のように。
「やばっ……アタシ一人じゃ、分が悪い! せめて師匠でもいないと!
じゃあね! お姫様! アタシとは会わなかったことに……かひゅっ」
さすがに引き際を心得ている。だが、もう遅い。
ぐわしっ。ズルルルルルルルルル!!!!
霞んだ目に映る、趣味の悪い緑の服。
妖精とは異なる、ナイスバディ―。
汚い帝王の首根っこを引っ掴み、発声を封じ。
そのままの勢いで路地裏へと消えてゆく。
聞こえてくる、凛々しい声。
決める時は決めるのだ。王者の誇りはその胸に。
自慢の母の一人である。
ダンッ! ダンダンダンッ!
「打撃系など、華拳繍腿……! 関節技こそ、王者の技よ!」
「まってまってまってキング! 謝る! 謝るからぁ! この高さはやばい!! ネイチャさん死んじゃう!」
「問答無用! 雪崩式・キングホールド!」
ガゴォンッ!
「あぎゃああああああああ!!!! 気持ちいいィィィィィィ!!!」
出た。コーナーポストは無いが。
路地裏の壁を活用。
三角蹴りにて、天高く舞い。
相手の腰を腕ごとクラッチし、己の体重も加算して、地面に向けダイブ。
後ろから抱き締めるようにホールドしながら墜落し、相手の頭頂部をそのまま地面に直撃させる。
王者にのみ使用を許された技。
幼いこの身で再現したものとは、練度が違う。
石畳に頭頂部を埋められながらも、歓喜の悲鳴を上げる汚い帝王。
ブレない女だ。
自らの王者式格闘術の師たる、母のフィニッシュホールドを喰らいながら、あの余裕。
油断とあの女は言ったが。
この幼い身でアレを打倒するのは、まともに相対したとしても、さすがに困難だろう。
まだ、出力が足りな過ぎる。
冷や汗を垂らす。親バ鹿がいなければ、やられていた。
しかし、妖精の姿が見えぬ。不在であろうか。
いや、いる。間違いない。
過保護の塊たる彼女が、数少ない収録の無い休日……日曜日に。
このプリンセスのはじめてのおつかいを見逃すはずがない。
ほら。その証拠に。
「くっ……そりゃあ! いいケツしとるやないか! ワレェ!」
「ひゃぁん!? くっ、このっ!」
汚い帝王は生き汚さも一流。
再度大空に舞おうとした天使を止めるため。
腕を軟体生物のように蠢かせ、王者のケツを極限までいやらしく撫でて。
気の強い女の例に漏れず。尻の弱い母を怯ませてホールドを外す。
背を向けて逃走を図ったところで……
パァンッ!
乾いた銃声。ナイスネイチャのクリスマスカラーのメンコが吹き飛ぶ。
熟練の狙撃手たる、戦闘妖精の仕業だろう。
やはり彼女もいる。愛されている実感に、胸がいっぱいになる。
「狙撃ィッ!? ウララかっ! すたこらさっさだねっ!」
耳本体は外されたのだろう。
弾き飛ばされたメンコを掴み、今度こそ闘争から逃走する汚い帝王。
バンッ! カァンッ! ぬるるるるるるぅ……
地面を叩き、奥義・マンホール返しで銃弾を弾き。
その姿がぬるりと下水の中に消えていった。
くさそう。
路地裏に立つ王者の姿にそっと近づき、声を掛ける。
「ありがとうございますですわ。ママ」
「いいのよ。でも、迂闊に変態に近づいちゃダメよ? ママとのお約束よ」
「わかりましたわ」
素直に頷く。
嘘である。この世界で、どうすれば変態に近づかずに生きられるというのか。
母の目に、世界はどのように映っているのだろう。
この母、あまりにも現実が見えていない。
だが、この異常なまでの純粋さが、きっとこの世界には必要なのだろう。
そうでなくば、この残酷で美しい。
バ鹿が酔っ払って描き出したような、クソみたいな世界で。
寄りかかれるものなど、何もない。
さすがは妖精が愛した女である。
「じゃあ、帰りましょう? ウララさんも、おなかを空かせて待っているわ」
「はいっ! ママ!」
そっと差し出された手を取る。
妖精でないのは残念だが。
このてのひらも、嫌いではない。
今度こそおうちに帰ろう。
変態がギャァと鳴いたから。
「ただいまですわ!」
「ただいま。ウララさん、あの変態とは縁を切った方が良いと思うの」
「おかえりなさい。プリンセスちゃん、キングちゃん。
大丈夫、テイオーにはウマインで通報済みだよ。
拘束具の山の写真で返事してきた。
これはさすがに、得意の土下座でも。
切り抜けるのは難しそう。むしろ態勢を取った瞬間。
首輪と手錠と足枷と。最後にアイアンメイデンに封印される。
家は追い出されないね。むしろ二度と出れなくなりそうな勢い」
さっそくのママ会議。議題は本日の変態に対する報復措置についてだろう。
どの変態かは、言うまでもない。
やっと光の帝王が、闇の奇跡を魅せてくれるようだ。
「あら。しっとり。テイオーも遂に我慢の限界かしら」
「今までは、嘘とか演技だと思い込んでたみたい。
番組での犯行を話しても、信じてなかったみたいだけど。
今日の犯行を動画付きで送ったら、さすがに信じたね」
「あの子、ほんと思い込みが激しいわね……
反動が怖いわね。あの変態、五体満足で朝日を拝めるのかしら……
以前テイオーがキレたのはアレよね。
学生時代の……双帝王による、生徒会室皇帝拉致監禁ダブルピース事件。
たづなさんが悲鳴を上げて酒に逃げてたもの。
ダイワスカーレットも発狂して、トレーナーを押し倒してたものね」
「この世から極上の変態が消える日だね。クリークママも喜ぶよ」
なるほど。汚い帝王の獄中死も近い。
トウカイテイオー。彼女は被害者だと思われがちだが……
誘い受けだけの女ではない。
彼女もこの世界の住人なのだ。
頭がおかしくない者など。
目の前で談笑する、母ぐらいだろう。
戦利品を、信頼する母に渡す。
にっこりと、それを受け取る母。
開けた瞬間、キモい鳥の登場に。一瞬笑顔が凍り付いたが。
怒涛丸鶏。ジョークグッズとしても、一流の存在感を示す。
まさにキングに相応しい食材と言えるだろう。
このプリンセス。母の取り乱す顔も、好みである。
「それでね、ウララちゃん! 今日は、ゲンさんがねっ! いっぱいお野菜をくれたんですのっ!」
「ゲンさんかー。あの人、いつもおまけしてくれるもんね。
えらいね、プリンセスちゃん。おつかい、ちゃんとできたねー」
夕食の時間。
至福の時間である。
なんといっても、愛する妖精のお膝の上で。
彼女の可愛らしいお口に、このプリンセスが、手ずから食事を給仕するのだ。
独占欲が、たいへん満たされる。
しかも、今日はさらにすごい。
成果報告もしながらである。肝心な所はボカすが。
褒めそやされ、頭を撫でられながら、お口にシチューを入れてあげる。
あまりの幸福に、体温が急上昇する。
わたくし今、体温が何度あるのかしら。
恐らく、50度は超えている。
「あれ? プリンセスちゃん、なんだか顔が赤いよ? 疲れちゃったかな?」
こつん。額で体温を測られる。
目の前には、心配そうにこちらを見る瞳。そして。
柔らかそうな、そのくちびる。
ここで顔を突き出せば。この果実は、己の物に……
ぼふんっ! 頭から煙を吐き、お膝の上に崩れ落ちる。
「ぷ、プリンセスちゃん!? 大丈夫!? キングちゃん! プリンセスちゃんすごい熱! 座薬! 座薬ぅぅぅぅ!」
薄れゆく意識の中思う。
この性癖破壊ロリ、無自覚が過ぎる。
このプリンセス、おでこっつんはまだ早いと思うのである。
だが、座薬は是非妖精に挿れて頂きたい。
おしゃまな女の子、カワカミプリンセス。
5歳児にして、完全にイっちゃった変態以外には、わりと無敵なラスボス系お姫様であるが。
愛する妖精からの攻撃には、防御力ゼロ。
こちらから触るのは積極的でも、彼女から胸キュン仕草で攻められた場合。
頭が沸騰しちゃう、お年頃であった。
プリンセスが、桜色の妖精をその手に収める日は、遠い。
つづかない