ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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エルコンドルパサーが真剣にルチャ・リブレをやっている作品を見たことが無かったので、書きました。

あとついでにクソかわTSウマ娘異世界転生要素と相撲をブチ込んで台無しにしました。

すげー書いてて楽しかった。だいまんぞく。


ハルウララさんじゅういっさい そのじゅうよん リングに輝け、痴情の星

~前回までのあらすじ~

 

 おつかいを終え、帰路に着かんとするプリンセス。

 

 だがその前に、最後の刺客が立ち塞がる。

 

 汚い帝王、ナイスネイチャ。

 

 出オチ要員と思われたが、その変態性を遺憾なく発狂。

 

 マッドティーパーティーにて、姫君のおまかせミックス桃じゅーちゅを絞り尽くす寸前まで、彼女を追い詰めた。

 

 だが、辛くも親バ鹿のサブミッションと、援護射撃により難を逃れ。

 

 なんとか我が家にゴーホーム。

 

 夕飯時に愛する妖精より。

 

 レギュレーション違反の愛情ヘッドバッドを食らい。

 

 頭が沸騰しちゃうよぉぉぉぉ!!! して。

 

 座薬をねだるプリンセスなのであった。

 

 光の帝王の、闇の奇跡。

 

 光と病みが合わさり、誘い受けからのアイアンメイデン。

 

 汚い帝王の、獄中死は近い。

 

 このあらすじ、必要かな。

 

 

 

 

 

 

 「ウララちゃん! 始まりますわー!」

 

 「うん。楽しみだねぇ」

 

 「ウララちゃん! これ売ってたよ! ファル子よく知らないんだけど、おいしそうだよね!」

 

 「マジかよお前」

 

 

 

 屋台で猛禽類が買ってきたのは、アイスバイン。

 

 ベルリン名物の、煮込み料理。

 

 豚すね肉の下に鎮座する、ザウアークラウトが見えぬとでも申すつもりか。

 

 

 

 「……?」

 

 豚すね肉で頬を満たし、疑問顔の猛禽類。

 

 やはりこいつ、アホである。だがこの衆人環視の中で発狂されるよりはマシか。

 

 プリンセスの前でもある。ビールが飲めぬのは、この際我慢しよう。

 

 

 

 しょうがないので同じく屋台で売っていた、ビオマニアをグラスへ。

 

 なかなか良い品を揃えていた。

 

 

 

 ドイツ製の白ワイン。

 

 だが、この猛禽類はドイツ語が読めぬ。

 

 バレることはないだろう。

 

 彼女のグラスにも注いでやる。

 

 

 

 「ありがとうっ☆ウララちゃん!」

 

 素直にお礼を言い、グラスを傾ける猛禽類。

 

 憎きドイツの命の水。もしも気づいたらどうなるのか。

 

 このウララ、ネタばらしの誘惑を堪える自信がない。

 

 

 

 『さぁ! 始まります! 今世紀一番の大勝負! 

 まずは彼女を紹介しましょう! 

 輝かしきレースを卒業し、羽搏く空はリングへと変わった! 

 だが、その飛翔は、留まることを知りません! 

 今日もマスクに秘めたる闘志、熱い闘魂は空を舞う! 

 期待のルチャドーラ! エストレージャ! 

 エルコンドルパサーの入場だ!』

 

 

 アナウンサーによる選手紹介。

 

 流れる入場曲。

 

 隣に座る猛禽類の歌声と、観客の歓声が野外の特設会場を包み。

 

 別の猛禽類が会場へと降り立つ。

 

 万国野鳥展覧会ではない。

 

 

 

 そう。今日は友人の試合。

 

 三十路独身怪鳥。

 

 エルコンドルパサーのプロウマレスを見に来たのである。

 

 

 

 「エルちゃん、人気あるねぇ」

 

 「そうですわね! ウララちゃんと同期なんですわよね? 

 試合が終わったら、サインを頂きたいですわ!」

 

 「良いよー。頼んであげる」

 

 「そういえば、ファル子ちゃんはお知り合いではないんですの?」

 

 「んー。芝で走ってればいいものを。ダートに踏み込んできたから。

 5バ身差でブッ千切ったよっ☆」

 

 「わぁ! 大人げないですわ! さすがはファル子ちゃん!」

 

 「フフフ。もっと褒めていいよ、プリンセスちゃん!」

 

 この猛禽類、己も皐月に出た癖に。

 

 ホームグラウンドでは強気である。

 

 

 

 しかし嘆かわしい事だ。

 

 適性外のレースを走るとは、常識はずれなやつらである。

 

 あと褒めてないぞ、それ。

 

 

 

 

 

 

 『そして対するは彼女。

 レースではその華はまだつぼみのまま。

 だがリングにおいて、大輪の華を咲かせました! 

 相撲をルーツとする格闘技と聞きます。

 だが、それを使うのは彼女のみ! 

 オンリーワンのスタイルで、怪鳥を地に堕とせるか! 

 アフガンコウクウショー!』

 

 

 

 リングで怪鳥に対するは、中東風のコスチュームに身を包んだウマ娘。

 

 トゥインクルシリーズにおいては、二年間走り。

 

 G3。重賞の冠を一つ得て、すぐにプロウマレスに転向した。

 

 もちろんそれだけでも偉業である。しかし。

 

 続けて走っていれば。G2、G1と更なる冠を得られたかもしれぬ。

 

 だが、そのチャンスを自ら放り投げたのだ。

 

 トレセン学園の変わり種。

 

 アフガンコウクウショーである。

 

 自分やエルコンドルパサーより、少々若い。少々な。

 

 

 

 リングの上でにらみ合う彼女たち。

 

 ここで、視点はエルコンドルパサーに移る。

 

 

 

 

 (ふぅ……この娘、スタイルがよくわかりません……相撲がルーツ? 

 それにしては、ウェイトが軽いように見えますデース……)

 

 マスクの下から猛禽の瞳で敵手を観察する。

 

 アフガンコウクウショー。初めての相手だ。

 

 

 

 ミディアムショートの黒髪に。

 

 褐色のシャワーを弾きそうな肌。

 

 ぷにっとしてそうだ。全体的に薄くてちんまい。

 

 ロリコン大歓喜であるが、さすがにハルウララには勝てまい。

 

 アレはもはや、合法を通り越し。

 

 違法なロリと化している。

 

 

 

 なんでも、空中殺法が得意だそうだが……

 

 相撲に空中殺法? スーパー頭突きでもしてくるのだろうか。

 

 それよりも……

 

 

 

 マスクに触れる。

 

 (マスクは戻って来たけど……嬉しくないデース……)

 

 そう。以前のルチャ・リブレ対決。

 

 そこで涙を呑んだ自分は、再戦を誓った。

 

 その時に手袋代わりに投げつけたパパのマスク。

 

 だが、この試合前に戻って来たのだ。

 

 ゆうパ〇クで。

 

 

 

 (クリムゾンッ……!)

 

 はらわたが煮えくり返る。

 

 なんと、復讐の相手は。

 

 できちゃった婚にて、プロウマレスの舞台から姿を消したのだ。

 

 

 

 許すことなどできぬ。

 

 そもそもルチャドーラの誇りを、ゆう〇ックで送りつけるなど。

 

 あきれ果てた女である。

 

 さすがはルチャの誇りも身に着けず、リングに上がるバ鹿犬っぽい女。

 

 己の嫉妬と復讐心は、どこに向かえばいいというのか。

 

 あと自分もそろそろ結婚したい。

 

 行き遅れるのは勘弁である。

 

 もう一度敵手を見る。

 

 若くてかわいい。

 

 

 

 よし、八つ当たりしよう。

 

 恥ずかし固めで、今度こそ。

 

 寿退リングできぬ身体にしてくれる。

 

 怪鳥は、マスクの下で陰惨に笑った。

 

 己より若い女が許せない年頃であった。

 

 

 

 

 (何か嫌な予感がするな……)

 

 アフガンコウクウショーは身震いした。

 

 あの女、何か恐ろしげな雰囲気を感じさせる。

 

 黄金世代。輝かしき実績をひっさげ、リングの上へ。

 

 笑わせる。大人しくレースを続けていればいいものを。

 

 羽搏く空を間違えるから、ここで恥を晒すことになるのだ。

 

 この、自分の相撲でな。

 

 彼女は、怪鳥を地に堕とす姿を幻視し。

 

 うっそりと笑った。

 

 わりと根暗である。

 

 

 

 

 レフェリーによるボディチェック。

 

 ウマ娘レフェリーが、両者の身体をいやらしく撫でまわす。

 

 

 入念なチェック。

 

 プロウマレスでは、栓抜きとパイプ椅子以外の凶器の所持は認められていない。

 

 両者、栓抜きのみ所持していることを確認し、レフェリーが満足げに頷く。

 

 良い仕上がりだ。触り心地も良い。

 

 やはりこの仕事は最高だ。

 

 たまに巻き込まれて痛い目に会うが、必要経費というものである。

 

 

 

 『さぁ! 両者、準備を終えたようです! 

 空中殺法を得意とする2羽の美しき野鳥! 

 ルチャが勝つか、相撲が勝つか! 

 この勝負、目が離せません! 

 開戦のゴングが……今っ!』

 

 

 

 カァン! 

 

 さぁ、勝負の始まりだ。

 

 

 

 まずは小手調べ。手四つで相手の力を……

 

 考えていたエルコンドルパサーの前から、敵手が消える。

 

 「何ッ!? どこにっ!?」

 

 「ここだっ! マヌケがぁっ!」 

 

 ドンッ。

 

 横っ面に蹴りを喰らい、吹き飛ぶ。

 

 (相撲じゃ、ない……!)

 

 ロープの反動を利して、態勢を取り直す。

 

 「相撲だなんて……大嘘をついてくれるじゃないですか……

 相撲で足技なんて、聞いた事無いデース」

 

 「相撲だとも。ただし。ニホンの国技ではない。

 アフガン航空相撲だっ!」

 

 ダンッ! 

 

 アフガンコウクウショーが再度、宙に舞う。

 

 あれだ。あのバ鹿げた脚力による跳躍。

 

 先ほどは、そこから旋風脚でも喰らったのだろう。

 

 アフガン航空相撲? 何をバ鹿な。アフガンなどという地名。聞いたこともない。

 

 

 

 そう。この世界に、アフガンなどという国はない。

 

 

 

 観客席より上がる、驚愕の声。

 

 「アフガン航空相撲っ!?」

 

 「知っているのか、ファル電!?」

 

 「なんだかとってもドイツっぽいと思うの。

 キレていい?」

 

 「黙れ」

 

 

 

 (この世界の誰も、知らぬだろう……! 我が故郷の、国技など……!)

 

 彼女……いや、彼は思いつつ、上昇気流に乗る。

 

 前世での名前はアブドゥル。

 

 そう、彼女が宿すは、ウマソウルではない。

 

 いかなる神の悪戯か。

 

 異なる世界から来たヒトの魂を宿す、異世界転生者である。

 

 

 

 

 

 

 

 思い出す。自らが死んだ日。

 

 自分は、航空会社に勤めており。

 

 度重なる欠航に、腹を立てた外国人どもに撲殺されたのだ。

 

 二ホンなる国から来た、フォースの暗黒面に堕ちたダースリキシがいたのも災いした。

 

 空港の低い天井では、鍛えた航空相撲もその力を発揮できぬ。

 

 健闘虚しく、二ホンの誇るリキシ奥義・マシンガンで全身を撃ち抜かれたのだ。

 

 あと殴られた。

 

 ヤオチョーを持ち掛ける暇もありはしない。

 

 

 

 

 

 

 そして、異世界にて。

 

 自我が再度目覚めた時。

 

 己の境遇に困惑した。

 

 年若い娘の身体。

 

 しかも耳としっぽが生えていた。

 

 二ホンのHENTAI文化は好きだったが、まさか自分がMOEキャラになるとは。

 

 このアブドゥル、不覚の極みである。 

 

 

 

 それから。己の異常性をひた隠し。

 

 トレセン学園になんとか入学を果たし。

 

 そして出会ったのだ。彼と。

 

 

 

 「アフガン竜巻脚ッ!」

 

 高高度からの蹴り。防がれる。

 

 この国では、真空刃が巻き起こらぬのだ。

 

 恐らく気候の違いだろう。

 

 

 

 「ぬぅっ! その高さ! まさか、領域ッ!?」

 

 エルコンドルパサーの驚愕の声。

 

 その通り。

 

 

 

 「正解だっ! なんのために、レースに出ていたと思っている!」

 

 「少なくとも、空を飛ぶためじゃないデース!」

 

 「不正解ッ! 空を飛ぶために決まっているだろうがっ!」

 

 「意味がわからないデース!!!!!!」

 

 

 

 

 領域。ウマ娘の夢を叶えるための、翼。

 

 そう。物心ついた己は、アフガン航空相撲の稽古に励み。

 

 そして気づいた。この国には、上昇気流がないのだ。

 

 これでは、アフガン航空相撲は出来ぬ。

 

 航空力士は、上昇気流と共に生き、上昇気流を失った時死ぬのだ。

 

 そういう、生き物なのだ。

 

 

 

 だが、希望はあった。

 

 それが領域である。

 

 

 

 夢を叶えるための翼。

 

 理想を現実に押し付ける奇跡。

 

 そう。それならば。

 

 上昇気流だって生めるはず。

 

 

 

 そう考え、自分はトレセン学園に入学したのだ。

 

 だって領域って、レースでしか目覚めないっていうんだもん。

 

 

 

 そして、G3の冠とは特に関係なく目覚めた領域。

 

 故郷の空を現出させる、この身に宿す奇跡の力。

 

 これこそが。

 

 領域『アフターバーナー』である。

 

 効果は単純。

 

 飛びます、飛びまぁす!! 

 

 

 

 領域に目覚めた瞬間。

 

 オープンレース中に大空に飛翔した自分。

 

 唖然と空を見上げる観衆。

 

 たづなさんに怒られる自分。

 

 美味しいちゃんこ作ったトレーナー。

 

 今夜も君に、ササニシキ。

 

 相撲甚句の調子も良い。

 

 

 

 

 「テッポウッ!」

 

 「ぐあああああ!? これは相撲っぽい!? いや、相撲は空を飛ばないデース!!!」

 

 上空50mからの張り手。

 

 それを受け止めるエルコンドルパサー。

 

 さすが、この世界のウマ娘は頑丈である。

 

 己の故郷では、これを防げたのは。

 

 同胞と、憎きモンゴル。

 

 同じ航空力士だけだった。

 

 

 

 「くっ、クケェェェェェェェェェェェェ!!!!!」

 

 怪鳥音を口から垂れ流し、エルコンドルパサーがコーナーポストから宙を舞う。

 

 地上で航空力士に相対する愚を悟ったか。

 

 だが、上昇気流に乗らぬ、空中戦など。

 

 

 

 「低いっ! アフガンウマ娘ミサイルッ! 

 ウェイ! メェイリエィヤス!」

 

 「なんですかそれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 低空に舞う猛禽など、格好の獲物。

 

 そのまま引っ掴み、更なる上空へ。

 

 エレベーターガール式京浜○行電鉄車掌で、ファンサービスもばっちりだ。

 

 ニホン文化の奥深さ。味わい尽くすがいい。

 

 この身に宿す翼で、地平線を魅せてやろう。

 

 山を越え。雲を突き抜けラピュ○は本当に、あったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 地上1000m。

 

 「どうだ、怪鳥。空から見る地上は。爽快な気分だろう? 

 ここからでも十分だとは思うが……折角だ。

 聖ダケの高さまで連れていってやろう」

 

 「それってどこデース?」

 

 「うむ。ナガノ県とシズオカ県に跨る山でな。3013m。いい景色だぞ」

 

 「高すぎるデース!!!」

 

 

 

 暴れる怪鳥。ニホンの誇る名峰を知らぬとは。

 

 これだから帰国子女はいけない。

 

 仕方がない。大人しくさせねば。

 

 

 

 「何故、貴様を相手に指名したかわかるかね?」

 

 「……空中戦が得意だから?」

 

 「いやいや、違うとも。

 ……エドモンド・喜八郎」

 

 「……何故、その名を?」

 

 「それはな……私のトレーナーだからだ。もちろん、リングでもな」

 

 「あのビッチ男!!! 私にはついてこなかった癖に!!! 呪ってやるデース!!!」

 

 「こらこら、彼にも事情があったのだよ……致し方無い」

 

 「……事情? 何か私についてこれない理由が?」

 

 「うむ。実はな……ただ単に、収入が落ちるのが嫌だったらしい」

 

 「次に会ったらミンチデース……じゃあ、なんで貴女には?」

 

 「うむ。私の顔と体型が好みだったらしい。ロリコンだな。貴様には最初から、恋が生まれる余地は無かった」

 

 「お前ら纏めてハンバーグにしてやるDEEEATH……」

 

 「おやおや……さぁ。上空3000m。ここから生き残れたならば。

 そうだな。彼は君に進呈しよう。生き残れたならばな。

 私は貴様を消して、彼の一番のみならず。

 絶対唯一の女になるッ……!」

 

 

 

 そう。アフガンコウクウショー。

 

 前世の名前はアブドゥル。

 

 TS異世界転生ウマ娘。

 

 お約束に漏れず、トレ堕ち済みであった。

 

 TS転生ウマ娘はトレ堕ちする。

 

 ウマ辞林にも載っている、世界の真理である。

 

 

 

 

 

 「痴情の縺れデース!!!」

 

 「そうっ! そして後は堕ちるだけ! 綺麗な華を、咲かせておくれ……!」

 

 痴情の縺れで地上に堕とす。

 

 気の利いた表現に心が躍る。

 

 ニホン語って素晴らしい。

 

 

 

 これもアフガン航空相撲のおかげ。

 

 トースト・ドメスト・ハーンに感謝を。

 

 この世界におわすかは分からぬが、アラー!! よ。

 

 御笑覧あれ。

 

 

 

 ベンチに座る、ピエロ風の不審者。

 

 我らを見守る、偉大なる神よ。

 

 

 

 

 「ウララちゃん、見えますの?」

 

 「うーん。なんか話してる事しかわかんないかな」

 

 「さすがウララちゃんっ! マサエ族もびっくりですわ!」

 

 「老眼かなっ☆」

 

 「挽肉にするぞ」

 

 「ファルコン・ミンチですわねっ!」

  

 大狂乱、フラッシュシスベシー。

 

 

 

 

 

 

 地上2000、1000、500。

 

 重力加速度を味方に着け、縺れ合って落ちていく痴情。

 

 最高にハァイ! ってやつだ。

 

 

 

 「こ、この速度では、貴女も無事では……!」

 

 「心配無用。アフターバーナーがある。上昇気流がある限り、アフガン航空相撲は無敵だ」

 

 エルコンドルパサーの顔が、恐怖に歪む。

 

 その顔だ。その顔が、見たかった。

 

 さぁ。地上が近づいた。

 

 残り50mになれば。

 

 必殺の、アフガン航空相撲殺でフィニッシュを。

 

 

 

 「くっ……! こうなったら……!」

 

 「何をするつもりだね? 空を舞えぬ、コンドルに逃げる道など……何ッ!?」

 

 

 

 ドンッ! エルコンドルパサーが、突如腕の中から消える。

 

 バ鹿な。推進力など無いはず……? 

 

 そして、身にまとう空気の異変に気付く。

 

 これは。メタンガスの香り。

 

 

 

 「キン肉〇ン式舞空術ッ……!」

 

 習得していたのかッ……! 

 

 伝説の技をッ! 

 

 歯噛みする。

 

 

 

 桃白○式、南斗ウマ娘砲弾式ならば、この状況では物の役にも立たぬ。

 

 我が翼から逃れる事は叶わなかった。

 

 まさか、乙女の尊厳を既に投げ捨てていたとは。

 

 一番しょーもない飛行方法だぞ、アレ。

 

 

 

 

 

 単独で地面に降りても自爆するだけだ。

 

 アフターバーナー最大出力。

 

 上昇気流で制動を掛け。

 

 空を見上げると。猛禽が翼を広げ。

 

 

 

 堕ちてくる。流れ星のような、煌めく肢体の躍動感。

 

 なんと美しい。

 

 やはりコンドルは、自らの翼で飛翔んでこそ。

 

 でも臭ぇ。普段何食ってやがる。

 

 

 

 

 「プランチャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 

 ああ。そうか。

 

 己の敗因。それは。

 

 彼女の三十路を、舐めていた。

 

 だって私、まだ20だもん。

 

 

 

 

 そして、己は地へと堕ちた。

 

 大地にウマ娘型の穴を開けて。

 

 もちろん小指は立っている。

 

 古典表現である。

 

 二ホンのHENTAI文化を愛するが故に。

 

 

 

 

 

 「ワン! ツー! スリー! 

 勝者! エルコンドルパサー!」

 

 

 カンカンカーン!!!!!! 

 

 

 

 ゴングの音に、意識を取り戻す。

 

 立てた小指は骨折していた。

 

 致し方無い犠牲である。

 

 そうか、自分は……

 

 

 「まだ起きない方がいいデース」

 

 「エル、コンドルパサー……彼は……?」

 

 「あなたを置いて、スタコラサッサデース。お互い、選ぶ男を間違えましたね……」

 

 「そうか……私は見捨てられたのか……」

 

 「ええ。これからどうするのデース?」

 

 「その事なのだが……時に君は、独身かね?」

 

 「え? 殺しますよ? そうデース。独身三十路デース。なんですか。嫌味ですか?」

 

 「いいや。実はな……君に、惚れた。やはり私は、おんなのこの方が好みらしい。トウが立っていれば、尚良い」

 

 「どういう事デース!? こらっ! 尻を触るなッ!」

 

 「フハハハハハ! ウマ生って、最ッ高!!!!!!」

 

 

 

 トレ堕ちからの百合堕ち。

 

 急転直下のウマ生。

 

 アフガンコウクウショー。

 

 彼女はこの世界に素早く順応し、ウマい空気を思う存分謳歌していた。

 

 つまりは元から変態だったのである。

 

 「レズはグラスで、十分デース!!!!!!」

 

 ちゃんちゃん。

 

   

 

 

 「良かったね、エルちゃん……」

 

 感動に目頭が熱くなる。

 

 今夜は祝杯だ。

 

 なんといっても、不良在庫が一掃されたのだ。

 

 

 

 破れ鍋に割れ蓋。

 

 二人の幸せな食卓には、熱い煮汁が溢れ出すことだろう。

 

 まったく羨ましくはない。

 

 百合カップルなど、非生産的である。

 

 

 

 クリークママも言っていた。

 

 生産せぬ者には、死を。

 

 やたらと目が怖かった。

 

 早く結婚せねば。

 

 下手したら、彼女に無理やりウマされる。

 

 

 

 

 さぁ、気を取り直し。

 

 笑顔でこの喜劇の幕を降ろそう。

 

 これは主役の特権である。

 

 

 

 

 

 「サインは特に欲しくなくなってきましたわ……」

 

 「ファル子ちゃん、このワイン、実はドイツ製なんだけど」

 

 「フルルルルルルァァァァァァッシュウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この調子で、この小説においては、各ウマ娘の一風変わったハッピーエンドが描き出されるのだ。

 

 読者諸兄におかれましては、ストゼロをキメた上でお楽しみ頂きたい。

 

 

 

 

 おわり。

 




 ※アフガン航空相撲については、アンサイクロペディアを見てください。爆笑できます。
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