ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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今度はファル子が暴れだす。
元ネタは少年の飛躍と、堕天録。


ハルウララさんじゅういっさい そのじゅうはち 王・平和

~前回までのあらすじ~

 

 ハルウララ不在の番組は、当初から暗雲が立ち込めていた。

 

 桜色の勇者の不在に、幼児たちは動揺する。

 

 そして、猛禽類の制止も虚しく、彼らはクリークママに対する叛徒と化したのだ。

 

 だが、マ魔王を相手にするに、彼らはあまりにも無力。

 

 勇者抜きのボス戦は、この世界のバトルシステムでは負けバトルである。

 

 倒れた彼らを庇い、立ち上がる一匹の餓狼。

 

 彼は五体投地により慈悲を乞う。

 

 だが、マ魔王に降伏など通用するはずもなく。

 

 彼は己のアイデンティティの喪失を覚悟した。

 

 だが、頼れるバ鹿どもは仲間を決して見捨てない。

 

 汚い帝王・怨霊鬼女・テリー〇ン。

 

 彼らは同胞の危機に、自らの隠された気持ちに気付き。

 

 急遽の性癖の自白により、彼の幼児性愛は寸での所で守護られた。

 

 そして、マ魔王は不敵に微笑み。

 

 存在を忘れられた褐色ロリは、一人寂しく天井に張り付いていた。

 

 

 

 

 

 

 「では、プロデューサー♡良いこのみんなもお昼寝から起きましたし♡始めますよー♡」

 

 「クリークママの御心のままに……」

 

 

 

 頭を下げるプロデューサー。

 

 ママの傀儡と化しているが、彼の表情に憂いは無い。

 

 ママゾだからだ。既に調教は完了している。

 

 

 

 「では、諸君。番組を始めよう」

 

 厳かに告げる彼のズボンは、微かに膨らんでいた。

 

 そう。アフガンコウクウショーの手土産は、クリークママの公約の通り。

 

 みんなで使われていたのだ。

 

 

 

 「はいっ!」

 

 ADも。

 

 

 「ほいっ!」

 

 APも。

 

 

 「フンガ―!!」

 

 ディレクターも。

 

 

 

 全員おむつ着用済み。

 

 心憎い、ママの気遣い溢れる演出である。

 

 

 

 そして、先程マ魔王の暴虐により、性癖を大量殺戮された幼児ども。

 

 彼らもにこやかに笑っている。

 

 猛禽類により、秘孔を突かれた彼ら。

 

 既に先程のマ魔王戦は忘却の彼方である。

 

 

 

 ファル子神ゲンコツの力は、絶大だった。

 

 何故彼女はそれで、自らの怨念を消去しないのか。

 

 

 

 「さて♡よいこのみんなー♡クリークママといっしょ、はじまりますー♡」

 

 甘く蕩けたタイトルコール。

 

 だが目が笑っていない。

 

 その意味を痛いほど知る彼らへの牽制だ。

 

 

 

 「歌のお姉さん、ファル子だよっ☆」

 

 両の人差し指を尖らせる、常とは異なる立ち姿。

 

 幼児たちは首を傾げるも。

 

 そのまま次の出演者に目を向けた。

 

 

 

 「がろうくんだ。がおー」

 

 そこに居たのは、変わり果てた野獣。

 

 

 

 女児たちは胸キュンした。

 

 何このがろうくん、推せる。

 

 

 

 常は感じる、自らの尻への飢えた視線。

 

 それは全く感じられず、彼から向けられる感情。

 

 そこに籠るは、大いなる父性。

 

 さらにはねっとり成分をデトックスされた声。

 

 凄まじい程の、男の色気を感じさせる。

 

 

 

 ただのイケメン狼と化した、がろうくんがそこに居た。

 

 キャラ崩壊にも程がある。

 

 

 

 「ウマ美ちゃんだウマー」

 

 幼児たちは興味を失った。

 

 いつも通りのウマ美ちゃんである。

 

 尻に感じる、歪んだ渇望。

 

 警戒を怠らず、慎重に距離を取りつつ無視することとする。

 

 ウマなのにシカトとはこれ如何に。

 

 

 

 「……ウララお姉さんは?」

 

 

 

 そして、核心に触れる一人の幼児。

 

 だが、先程とは覚悟が違うのだ。

 

 三匹の変態の覚悟が。

 

 すかさずがろうくんの目配せを受けた、猛禽類によるインターセプト。

 

 

 

 「ウララちゃんはっ☆遠い所に行ってしまったんだよっ!」

 

 「ウララお姉さん、死んじゃったの!?」

 

 

 

 ズバァンッ! 

 

 餓狼の爪が猛禽類の頭頂部を強襲した。

 

 

 

 「ファルコン。真面目にやるか。それともここでオレと死ぬか。

 好きな方を選ぶが良い。お前の意志を尊重しよう」

 

 「ヒィッ……許し亭許して(三代目襲名)ッ! ついッ!」

 

 

 

 がろうくんに詰め寄られ、極低音のバリトンで耳朶を擽られ。

 

 謎の落語家の襲名披露を告げる猛禽類。

 

 着ぐるみごしでもわかる。目がマジだ。

 

 下手をしなくとも殺られる。

 

 

 

 少し言葉選びを間違っただけで、彼の地を踏むこともなく。

 

 己の翼はカラスに襲撃された鳩の如く、儚く地面に散らばるだろう。

 

 

 

 

 「もういい。黙っていろ。ここはオレが説明しよう」

 

 やれやれと首を振る着ぐるみ。

 

 正直腹が立つが、命の方が大事である。

 

 ここは黙っておくのが得策である。

 

 猛禽類はまた少し賢くなった。

 

 

 

 間違ったやれやれ系主人公と化した、がろうくんは説明を試みる。

 

 女児たちは彼の着ぐるみの、引き締まった尻に夢中だ。

 

 新宿二丁目の女性向けストリップバーのような逆セクハラを受けながら、彼は宣った。

  

 こらこら、諭吉さんをファスナーに捩じ込もうとするな。

 

 

 

 「いいか。幼児ども。よく聞くが」

 

 

 

 ズガァンッ! 

 

 ウマの蹄が餓狼の頭を強襲した。

 

 天丼は基本である。

 

 

 

 「がろうくん。お子様に対する言葉遣いを覚えろ。マジで。

 いっつもがおがお言ってるからって、普段の言葉遣いで喋るな。

 わかったらおへんじ!」

 

 「きゅーん……くーん……」

 

 

 

 腹を見せて転がるがろうくん。降参の証だ。

 

 だってしょうがないではないか。

 

 自分のこの番組における台詞など。

 

 

 

 がおー。

 

 食べちゃうぞー。

 

 ウララおねーさーん。

 

 まったく幼女は最高だぜ! 

 

 このガキの命が惜しくば、オレと同棲するがいい……! 

 

 

 

 その程度だ。

 

 だから口調が多少普段通りでも、問題ないと踏んだのだが……

 

 どうやらダメだったらしい。

 

 しょうがない、ウマ美ちゃんのお手並み拝見といこう。

 

 

 

 無防備な降参ポーズで女児たちに全身を撫でまわされながら、がろうくんは思った。

 

 

 

 愛バと違い、こいつらすぐにババァになるからな。

 

 もう尻とかどうでもいいわ。

 

 でも、かわいいはかわいいから愛でよう。

 

 感謝しろ将来のババァども。もっと撫でるがいい。

 

 

 

 愛バへの真実の愛を自覚し、彼は駄目な方向に進化したのだ。

 

 合法もしくは違法ロリ限定のロリコン。

 

 もはや極めて限定的な対象以外とは、愛を育めぬ身体である。

 

 

 

 「よーし、そこでそのまま反省! セクハラはしないように!」

 

 ウマ美ちゃんが、ぷりぷりと躾を終え、幼児たちに向き直る。

 

 

 

 おかしい。幼児たちの混乱は加速した。

 

 一番の問題児が、常識的な振る舞いをしている。

 

 これは、何かの罠だろうか。

 

 また、最後に裏切られるに違い無い。

 

 彼らの猜疑心は加速した。

 

 

 

 「さて、ウマ美ちゃんが説明するウマー。

 みんなのかわいいウララお姉さんは、なんと! 

 今、ちょっとお出かけ中だウマ!」

 

 「えー! なんでー!」

 

 「ウララおねーさんが居ないクリークママといっしょなんて! 

 チョコの無いTOPP〇だよ! つまりはただのプレッツェル! 

 PL法を何と心得る! この駄バが! クーリングオフ待ったなし!」

 

 

 

 やたらと饒舌なえっくん(5)の叱責を受けるも、ウマ美ちゃんは動じない。

 

 彼の耳元にそっと着ぐるみの口を近づけ、囁く。

 

 

 

 「タ、べ、チャ、う、ゾッ♡♡♡♡♡ふぅっ♡」

 

 「あっぎゃああああああああああ!?」

 

 

 

 ガクンガクンプシャァァァァァァァ!!! 

 

 えっくんは一瞬で性癖を破壊され。

 

 下半身から水分を一気に垂れ流しつつ、崩れ落ちた。

 

 おもらしである。サービスシーンだな。喜んで欲しい。

 

 

 

 耳元で皇帝と、対なる帝王、自分自身。

 

 さらにはクリークママとヒシアママの情欲に塗れた声を完全再現した上で、5つ連続で発声し。

 

 指向性を与えた上で、脳髄に直接叩き込み、犠牲者の脳内で炸裂させる。

 

 

 

 夜の覇道裏奥義。

 

 『多元重奏飽和性癖』†クヴィンテッド・ネイチャ†だ。

 

 

 

 未来ある幼児の頭脳が、連続するそれぞれの異なる性癖に濡れた声により完全に混乱。

 

 最後の優しい吐息により、強制的に飽和状態となった性癖が脳内で爆発。

 

 もはや何に興奮していいのかもわからぬ、前後不覚の状態に陥り。

 

 最終的には薔薇の華が咲き誇る。

 

 

 

 自ら禁じた奥義だ。

 

 だがこのナイスネイチャ、容赦せぬ。

 

 

 

 この番組は、最高の職場なのだ。

 

 幼児の尻を、楽しむばかりではなく。

 

 愛しき光の加湿器の嫉妬を軽く煽り、お仕置きまでしてもらえる。

 

 もちろんリバースは基本である。

 

 相方は誘い受けが何よりも得意なのだ。

 

 

 

 その邪魔をするものは、誰であろうと性癖を生かしてはおけぬ。

 

 友人たちで実験を繰り返していた頃の自分を。

 

 彼女は久方ぶりに思い出していた。

 

 

 

 あいつら、元気かな。

 

 今度電話してみよう。

 

 きっとかわいいあの子は、大喜びで電話を取ってくれるだろう。

 

 電話越しでも性癖は伝わる。

 

 ねぇターボ。

 

 

 

 心底邪悪な、ナマモノであった。

 

 

 

 「さーて、よいこのみんな、わかったかな? ウマ」

 

 「「「「「「「はい!!!!」」」」」」」

 

 

 

 わからない。わからないが、逆らったらまずい。

 

 賢明な彼らは、元気にお返事をした。

 

 わかったと、お返事しなければ……

 

 理解らせられる。

 

 それを悟っていたのだ。

 

 

 

 「ん。いいお返事ウマ。じゃあ説明を続けるウマー。

 ウララおねーさんは、大事な用事があってお出かけ中! というわけで。

 今日はお歌の時間だウマー! 

 クリークママ!」

 

 「はーい♡じゃあ、ファル子ちゃん♡」

 

 「御意ッ! それでは歌います!」

 

 

 

 クリークママのご指名。

 

 もはや失点は犯せぬ。

 

 ウマドルは卒業だ。

 

 

 

 愛する我が子を憎き彼奴めから奪還し、大学に進学させるためにも。

 

 愛しの桜色を細くて長いアレにするためにも。

 

 金はいくら有っても足りぬ。

 

 歌のお姉さんと、歌手の二本立てでやっていこう。

 

 マイクを握る手を震わせながら。

 

 猛禽類は決意を固めつつ、一つの違和感に気づく。

 

 

 

 おや……? ピアノは……? 

 

 

 

 誰が運ぶのだろうか。

 

 がろうくんは女児どもに愛玩され。

 

 ウマ美ちゃんは、男児どもの性癖を破壊する作業に熱心に取り組んでいる。

 

 きょろきょろとステージから辺りを見回すと。

 

 

 

 ズゴゴゴゴ……

 

 

 

 クリークママの眼前の床が開き。

 

 ピアノが迫り上がってきた。

 

 以前仮面魔法ウマママ少女ライダーが登場した際に使われたギミックだ。

 

 

 

 悠然と椅子に座り。

 

 ピアノをぽろんと鳴らすクリークママ。

 

 マイクのスイッチを入れつつ思う。

 

 

 

 これ、ウララちゃんが見た時に、どんな反応するかな。

 

 ファル子、興奮してきた。

 

 その無駄な犠牲に流すあなたの涙、私が舐め尽くしてあげるからね。

 

 

 

 フッ……カッ! 

 

 

 

 スタジオの照明が暗転し。

 

 スポットライトに照らし出され、眩しさに目が眩む。

 

 強い光は怨霊に特効作用があるためだ。

 

 ダメージは3倍である。

 

 

 

 でも、もう光に目をそむけたりしない。

 

 気づいたんだから。真実の愛に。

 

 病院から聞いていてね。ウララちゃん。

 

 

 

 ゆっくりと、息を吸い込み。

 

 さぁ。愛を歌おう。

 

 

 

 この曲は、愛を求め彷徨う。

 

 心躍る、大航海の曲である。

 

 

 

 クリークママの奏でる、優しい旋律。

 

 

 

 『あの日 夢に見た再開 どこまでも飛べる 羽ばたく前は そう思っていたの』

 

 

 

 この間、リリースしたニューシングルだ。

 

 

 

 残念ながら、この短時間では。

 

 新曲を作る暇は無かった。

 

 

 

 だが、この曲ならば。

 

 彼女の愛を心から求める自分の気持ちを、伝える事が出来るだろう。

 

 

 

 『大空は私を拒んだ ならば 大海原へと漕ぎ出そう 行こう 

 希望へと舵を切り 遥かなる閃光目指し』

 

 

 

 空路からの領空侵犯は、機内食のヴァイスヴルストとドイツビールによる発狂を経て断念し。

 

 彼女は、単身太平洋へと。

 

 船の舵を切ったのだ。

 

 一繋ぎの憎悪を探すため。

 

 

 

 『どこまでも続く蒼 空を舞う海鳥 迫り来る海賊船 海賊王に 私はなる』

 

 

 

 思い出す。ライバルたちとの熱い海戦を。

 

 

 

 ここで、幼女にされるがままに愛玩されている、情けない餓狼のMCが入る。

 

 ちいさなおててでマイクをそっと着ぐるみの口に押し込まれ。

 

 彼のバリトンが優しく響く。

 

 

 

 『何ィっ!? ワシの鼻が尖っているじゃとぉっ!? ククク……愉悦……!』

 

 

 

 道化のワシーとの海賊船・エスポワール号甲板上での。

 

 透明な牌を用いた麻雀勝負。

 

 今でも彼とはたまに卓を囲み。

 

 病院に出血多量で運び込まれ、共に看護士に叱責される仲だ。

 

 

 

 がろうくんは続けて唄う。次はテノール。

 

 彼は芸達者であるので、幾つかのイケメンヴォイスを使い分ける事ができるのだ。

 

 才能をドブに捨てることにかけては、一流の男である。

 

 

 

 『オメェ、面白いヤツだなぁ! オラ、ワクワクすっぞ!』

 

 金麦のゴクウとの、酒盛り。

 

 発泡酒しか妻に買い与えられぬ、彼の侘しい懐具合に同情しつつ。

 

 自身はロマネ・コンティをがぶ飲みした。

 

 

 

 貧乏人を嘲笑う愉悦は、道化のワシーと、その友人の明王のビョードーに教えてもらった。

 

 まさに愉悦のひとときであった。

 

 

 

 そして、がろうくんがマイクを呑み込む。

 

 悪い狼は、腹に石を詰め込まれるという、寓話のオマージュだ。

 

 

 

 後で水槽に沈めよう。

 

 さぁ。自分の番だ。

 

 マイクを手に、彼女への愛を叫ぼう。

 

 

 

 ダァァァァァァン!!! 

 

 

 

 もはや擦られ尽くして味が無くなりつつある、クリークママによる全鍵盤同時打撃。

 

 我が愛を、聞くがいい。

 

 

 

 『柄杓をください! 柄杓をください! 神様仏様ウララ様! プリーズヘルプ! 愛羅舞勇!!!!!』

 

 

 

 曲名は、『柄杓を信じて!』

 

 

 

 そう。

 

 ゴーイングフラッシュ冥土号には重大な欠陥があった。

 

 丸太を綱で雑に括った構造上、衝撃に対し極めて脆弱だったのだ。

 

 流氷の衝突により、沈み行く愛船。

 

 自分は藁にも縋る気持ちで、神仏へ祈った。

 

 その時最後に頭に浮かんだのは、彼女の笑顔だったのだ。

 

 

 

 ドヤ顔気味だったので、バタフライで本土に戻った後に。

 

 大胆に膝を駆け上がり、閃光魔術を叩き込んだが。

 

 

 

 今でもたまに報復のゲルマン煽りを受ける。

 

 まったく、心の狭いポニーちゃんである。

 

 だが、そこがまたイイ。愛してるぜ。

 

 

 

 ニューシングルの発表と、その制作秘話に。

 

 世界は感動の涙を流した。

 

 

 

 ドイツは南極には無い。

 

 コンパスぐらい持っていけ。

 

 そもそも筏で太平洋を縦断するな。

 

 バタフライでそのままドイツ行けよ。

 

 失望しました。カレンチャンのファンやめます。

 

 

 

 等々。

 

 事務所は彼女の挑戦を応援する、暖かい声援に包まれたのだ。

 

 

 

 スマートファルコン。御年31歳。

 

 地政学及び航海術についても、曖昧であった。

 

 古式泳法の達者で無くば、命すら危うかった事だろう。

 

 

 

 『胸いっぱいの夢を探しに行こうぜ! 人魚のように海を渡り!!! 

 生足疑惑のマーメイド!!! センキュウ!!!』

 

 

 

 そして、最後まで発狂しない奇跡を魅せ。

 

 純粋な愛の歌が終わりを告げる。

 

 幼児どもによるスタンディングオーベーション。

 

 

 

 彼らは海賊物が、大好きなのだ。

 

 少年はジャンプするもの。

 

 ウマ明書房も言っていた。

 

 そして、拍手が治まる時。

 

 

 

 天使がスタジオに舞い降りる。

 

 サプライズだ。

 

 お歌の時間はそれを誤魔化すための前振りである。

 

 

 

 スポットライトを遮る影。

 

 天井を見上げた幼児たちが、口々に叫ぶ。

 

 

 

 「あ、あれは!?」

 

 「鳥か!? 飛行機か!?」

 

 「いや、違う! まさか!?」

 

 「知っているのか、ザムディン(5)!?」

 

 「ああ! 古文書によれば、天使が鯖折りにより堕ちる時、代わりの合法ロリが舞い降りると言う! 

 拙者はこれを、わんこロリの法則と名付けた!」

 

 「マジかよ古文書始まったな」

 

 「ああ、見よ! 親方ァ! 空から合法ロリが!」

 

 

 

 そして、一発ネタからスタジオぬぷり作品のヒロインへの、大躍進を遂げた彼女。

 

 

 

 アフガンコウクウショーは。

 

 アフターバーナーで慣性をゆっっっっっくりと殺し、着地に備えつつ思った。

 

 

 

 エル、たすけて。

 

 ニホンこわい。おうちかえゆ。

 

 

 

 真の変態の群れの前に。

 

 長年の経験など、物の役にも立たぬのだ。

 

 彼女は一連の惨劇を目撃して幼児退行しつつ。

 

 身に染みてそれを悟っていた。

 

 

 

 

 

 つづかない


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