ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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また続き物を書くという暴挙。
オリジナルTSウマ娘力士に出番を取られた彼女は、大層ご立腹なようです。
この怒り、容易には収まりますまい。
わりと今回はおとなしめ。

元ネタは、平家物語。
途中挟んだ考察については、独自設定です。


ハルウララさんじゅういっさい そのにじゅう 心の冬景色

~前回までのあらすじ~

 

 ハルウララの不在。

 

 そこに立ち上がる、3人の変態。

 

 猛禽類は海を征き。

 

 飢えた狼はロリを侍らせ。

 

 汚い帝王はショタを薔薇した。

 

 そして、最後に舞い降りる天使。

 

 そう。

 

 ポンコツクソかわTS異世界転生褐色合法ロリメイド系オリジナルウマ娘力士(精神年齢還暦越え)(早口)

 

 寿限無の如き、性癖の煮込み。

 

 彼女はスタジオで大暴れ。

 

 スーパーヒロイン着地からの萌えキャラアピール。

 

 長広舌での愛情告白。

 

 秘密の花園から神を召喚。

 

 クリークママとのインタビュー。

 

 挙句の果てには太神楽。

 

 好き勝手に幼児を廻し、天地ママ闘の生贄とし。

 

 合間に怪鳥の異常百合性癖を大暴露。

 

 最後は勝手にTS異世界転生ウマ娘力士特有の葛藤を、スイーツな感じで片づけた。

 

 まこと、現世とは楽しいものである。

 

 このすば。

 

 

 

 

 

 

 

 『さぁーあ! 本日も! いい感じに飛んで! 飛んで! 飛んで! 飛んで! 堕ちろォッ!』

 

 『ママさん・バレィッ♡』

 

 『アタックファル子・ナンバーワンッ!』

 

 

 

 テレビ画面の中で、スタジオを所狭しと飛び回り。

 

 抱えた幼児を母なる魔王の懐に。

 

 華麗に投下して飛び去る、以前見た覚えのあるロリ。

 

 

 

 投下された幼児は、何故か体操服に身を包む、クリークママの胸に包まれることもなく。

 

 優しくレシーブされ、猛禽類の掌打にて。

 

 マゾ快楽を味わいつつ。

 

 がろうくんが抱える籠に、ホールインワンしていく。

 

 

 

 なんだ、これ。

 

 ハルウララは思った。

 

 明らかに、己の知らぬ遊びである。

 

 

 

 未知の遊びが登場し始めたのは、自分が同志ママーリンにより。

 

 この柳腰を鯖折られてから次の週。

 

 彼女が出演し始めてからである。

 

 

 

 確か、アフガンコウクウショーと言ったか……

 

 三十路独身怪鳥の家に押し掛けた、謎のプロウマレスラー。

 

 番組のニーズを完璧に満たす、褐色合法ロリメイドである。

 

 

 

 己が退院してから2週間の時が経ち。

 

 予定されていたよりも早く、腰の痛みは引いていき。

 

 現在では入院前よりも腰が軽くなった。

 

 安心沢も、たまには成功するものである。

 

 

 

 調子に乗ってポールダンスに挑戦したら、また腰を痛めたが。

 

 まぁ。些末事である。

 

 ありったけのセクシーを籠めたので、この家は熱狂の渦に包まれた。

 

 彼らに最大限のサービスをできたので、大成功と言えるだろう。

 

 

 

 褐色合法ロリメイドについて、思う。

 

 確かに、彼女の領域は破格の性能を誇る。

 

 なんといっても、発動条件は不明だが。

 

 およそ飛行する事において、何の制限も見えぬ。

 

 腰痛持ちの己より、若さとプロウマレスラーとしての鍛錬により。

 

 ただでさえ肉体能力としては優位。

 

 加えてそれが空を飛ぶのだ。

 

 新しい遊びも生まれようというもの。

 

 

 

 これは余談ではあるが。

 

 アフターバーナーの自由性が高い理由。

 

 とても単純である。

 

 

 

 レースには、クソの役にも立たぬからだ。

 

 この世界において、領域とは。

 

 切なる願いを抱いたウマ娘に対して与えられる、女神の恩寵。

 

 その発動条件は、『走るために生を受けた生き物にとって』。

 

 強い効果……すなわち。

 

 レースに勝ちやすい領域ほど、厳しくなる。

 

 

 

 3人抜き去らねば発動できぬ、皇帝の威光が。

 

 1人抜き去れば発動できる、流れ星よりも強いように。

 

 発動条件は、その効果の強さに比例して厳しくなる。

 

 

 

 それを踏まえると、アフガンコウクウショーの領域。

 

 効果は、多少の自由度はあるが、上方向に飛ぶだけ。

 

 ターフを踏みしめることもままならぬ。

 

 

 

 航空力士特有の技術で、横方向に滑空することもできるが。

 

 高高度の気流に乗らぬ限りは、一般のウマ娘が走るよりも、余程遅い。

 

 レースに負けるためにあるような領域である。

 

 

 

 そう。つまり。アフターバーナーとは。

 

 彼女の切なる願いに反応してしまった三女神が。

 

 走るための種族として生を受けたのにも関わらず。

 

 その本能をガン無視したアホみたいな要望に。

 

 ヤケクソ気味に授けた恩寵であるのだ。

 

 うるせー。飛びたきゃ飛べ。いつでも好きに使えカス。

 

 

 

 そういうことである。

 

 TS転生ウマ娘力士特有のチート能力などと、都合の良い物ではない。

 

 余談終了、彼女の視点に戻そう。

 

 

 

 さて、古来から言われている言葉がある。

 

 踊れる平家は久しからず。

 

 そう。新たなダンスパートナーの登場だ。

 

 あの番組に、自分の居場所はもう無いだろう。

 

 ハルウララは納得した。

 

 

 

 悔しくはない。むしろせいせいする。

 

 何といっても、シベリア送りの恐怖から解放されたのだ。

 

 木を数える仕事に従事するのは、勘弁である。

 

 

 

 だが。

 

 思う。

 

 

 

 (ニート……)

 

 

 

 恐れていた日が来たのだ。

 

 失職である。お役御免ということだ。

 

 働かざるもの食うべからず。

 

 

 

 就学も就労もせず。職業訓練も受けていない。

 

 穀潰しとしてこの家の資産を食いつぶす。

 

 何の利益ももたらさぬ。

 

 ただ一匹の寄生虫。

 

 もはや追い出す他に無い。

 

 そう思われていればよかったが。

 

 

 

 彼らはそう思ってはおらぬらしい。

 

 

 

 「ウララちゃんっ! これからはずっとおうちに居れますのねっ!」

 

 ぶんぶんと、おひざの上で。

 

 興奮気味に自分の左手を握り、おててを振るプリンセス。

 

 

 

 「元々、頻繁に腰を痛めるような重労働、良くないと思っていたわ。

 ウララさん。これからはおうちで、私とおしゃべりしてましょう? 

 もちろん家事は私がやるわ。

 おこづかいはパパの10倍あげるわよ」

 

 にこやかに微笑むキングちゃん。その手に握る、諭吉さんズが眩しく映る。

 

 

 

 「うむっ! ウララッ! 金の心配はいらんぞッ! オレの稼ぎは良くないが、キングの投資でうちは金がやたらあるからなっ! できる嫁をもらえて、オレは幸せだっ! むしろオレもずっと家にいていいか!?」

 

 「駄目よ。うるさいもの」

 

 「パパはいらないですわっ!」

 

 バ鹿。

 

 

 

 そう。

 

 この家において、自分の存在は凄まじい程のニーズを誇る。

 

 正直、働かずとも追い出されることはないだろう。

 

 だが。だが、しかし。

 

 

 

 (完全にペット扱い……!)

 

 

 

 そう。家に金を入れることもなく。

 

 パソコンに向かい、株式相場とにらめっこする奥様の横で。

 

 家政婦のように仕事を任されることもなく。

 

 日がな一日、幼女と戯れる自分。

 

 それだけで多額のおこづかいまでもらえるという。

 

 

 

 それは、もはやペットではあるまいか。

 

 いや、細くて長いアレ……? 

 

 なんにせよ。

 

 尊厳の危機である。

 

 

 

 「わ、わたし、まだ働きたいなぁって……」

 

 「もうあそこに居場所はなさそうですわっ!」

 

 ざくり。

 

 「そうねぇ。他の仕事と言っても、ウマ娘向けの仕事は肉体労働が多いし……

 腰が悪いと、厳しいわね」

 

 どすり。

 

 「うむっ! ウララは何の資格も持っていないからなッ! 再就職は絶望的だろうっ!」

 

 ズドンッ。

 

 

 

 カンカンカン! K.O.! 

 

 祇園ゴングのレフェリーの声。

 

 盛者必衰のうるせぇバ鹿。

 

 

 

 お姫様を抱いたまま、ソファーに横倒しになり、心の内で涙する。

 

 

 

 こやつら、これで本当に悪気が無いからタチが悪い。

 

 ネコが良いわけではないが。

 

 善意でしか喋らないのは、5年も共に生活していれば、嫌でもわかる。

 

 だが、悪意が無い分。

 

 容赦などゼロを通り越して、死体を興奮気味に蹴りつける新兵の如し。

 

 

 

 

 「ウララちゃんったら、甘えん坊さんですのねっ!」

 

 なでなで。

 

  

 「あら、眠たくなっちゃったのかしら? ふふ。毛布を持ってくるわね」

 

 なでなで。

 

 

 「うむっ! せっかくのんびりできるようになったんだ! 好きなだけ寝るといい! 寝る子は育つというしなっ!! まぁウララはこれ以上大きくならんがなッ!!」

 

 なでなで。

 

 

 

 追撃のトリオなでなでに、ダメージは加速した。

 

 

 

 やはり、ペット扱いである。

 

 こいつら、三十路女の頭を気軽に撫ですぎ。 

 

 でも、すっごい気持ちいい。

 

 やはり働かずに食う飯は最高では。

 

 もうペットでもいいかな…… 

 

 

 

 そう思いつつ、眠りに就いた翌朝。

 

 己は、リビングの隅に。

 

 ひっそりと置かれていた箱の中に。

 

 恐ろしい物を発見してしまったのだ。

 

 

 

 それは、赤い金属の光沢を放っていた。

 

 それは、短めの鎖が付いていた。

 

 それは、誇らしげに輝くネームプレートに、『うらら』と刻印されていた。

 

 おまけに、GPSが装着されていた。

 

 

 

 首輪である。

 

 あやつら、ガチだ。

 

 ガチで自分をペットにするつもりだ。

 

 しかも、自由に出歩く事も許されず。

 

 勝手きままに愛玩される、エロいゲームとかに出て来る方向性で。

 

 

 

 これにはこのハルウララ、身体のガックガクを禁じ得ぬ。

 

 たまらず家を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 そして、今。

 

 自分は途方に暮れていた。

 

 就職氷河期。

 

 気分はすっかりフユウララである。

 

 

 

 (碌な仕事が、無い……!)

 

 この世界はウマ娘に優しい。

 

 だが、無条件の優しさなど。

 

 そのような物が存在するはずも無く。

 

 自分の再就職への栄光の道は、落陽を迎えていた。

 

 

 

 一件目。

 

 メイショウドトウの暮らす牧場。

 

 キモくて美味なるチキンが、思うさま貪れると思い尋ねたのだが。

 

 

 

 『ええ……? 番組は大丈夫なんですかぁ? じゃ、じゃぁこの鶏さんを、絞めてみてくださいぃ……』

 

 『コッケェェェェェェ!!! コケッ!! コケコケェェェェェェェ!!!』

 

 『マジか』

 

 

 

 牧場において提案された仕事は、鶏の屠殺。

 

 考えてみれば、一羽数万円の値が付く、それ。

 

 金の卵は産めぬ雄鶏の世話を、牧場の看板娘の知り合いとは言え。

 

 得体の知らぬウマ娘になど、任されるはずもない。

 

 初手クライマックスである。

 

 

 

 『よーし、ウララ頑張っちゃうぞ!』

 

 『コケェェェェェェェェ!?』

 

 『ウララさん! ダメですぅ!』

 

 

 

 愛用の鉈を取り出し構えるも、ストップがかかった。

 

 何故だ。

 

 優に数十リットルもの血を吸った、業物であるのだが。

 

 

 

 『怒涛丸鶏はこう、胸で優しく……』

 

 『ふむふむ』

 

 『鋭ッ!』

 

 『我が鶏生に、一片の悔い無し……っ! 誇気ェッ!』

 

 

 

 胸おっぱいの、悦びに。

 

 安らかに 息を引き取る キモい鳥

 

 世の無常を感じさせる、生命の儚さを詠う川柳。

 

 渾身の一句だ。

 

 

 

 『圧死させますぅ』

 

 『ふざけんなよバ鹿』

 

 パァンッ! 

 

 『ああんっ! 乱暴ッ! 採用決定ですぅ!』

 

 

 

 なんでいきなり畜生が喋り出すんだよ。

 

 この世界には、動物すらも変態しかおらんのか。

 

 

 

 あまりの展開と、自身の彼女よりはやや小さめの胸に。

 

 腹を立てた自分は、乳ビンタにて遺憾の意を表明したる後に。

 

 牧場を後にした。

 

 謎の基準で採用が告げられた気がしたが、恐らく気のせいだろう。

 

 

 

 さぁ。次の就職先候補に向かうとしよう。

 

 きっと、見つかるはず。

 

 自分を暖かく迎えてくれる、理想の職場が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時の彼女に、知る由も無かった。

 

 この小説は、王道純愛ラブストーリー。

 

 筆者の無駄なこだわりにより、お約束は遵守される。

 

 

 

 そう。

 

 彼女の職場復帰は、世界に定められた確定事項。

 

 このリクルート活動は、全くの無駄である。

 

 

 

 だが。この世界に無駄な物語などない。

 

 これもまた、お約束である。

 

 全ての事象には、必ず意味が存在しているのだ。

 

 ヒシアママの登場シーンのように。

 

 

 

 そして、彼女はこの無駄なようでいて全く無駄の無い無駄な旅において、新たなる力を手に入れる。

 

 脇役のオリジナルTSウマ娘力士が、主役の上位互換となるなど。

 

 この世界が許すはずもなく。

 

 

 

 マ魔王を倒すための力は。

 

 桜色の勇者の手にのみ、握られているのだ。

 

 未だ、目覚めてはいないが。

 

 覚醒の時は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 つづかない


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