あれは本当だ。
だが、ファル子さんじゅういっさいを書かないとは言っていない。
ハッピーエンドは終わらないッ!
何故ならば、まだたどり着いていないからだっ!
最初はちと重めです。
不思議の海のナデ○アは名作。
ファル子さんじゅういっさい
私の罪は。
彼を愛してしまったこと。
そして、だいすきなあなたを。
助けてあげられなかったこと。
ハルウララさんじゅういっさい 第2部 飛べない隼は、翼の意味を知る
つまりはそう。セカンドシーズン。
ファル子さんじゅういっさい、始まります。
「ウララちゃんっ! 今日は飲みにいかないっ!?」
「最近毎日じゃねぇか……ファル子ちゃん、近い。離れろ」
「ウララッ! ならばオレとっ!」
「まずはその手に持った目薬をしまえ」
「じゃああたしとっ!」
「湿ったアイアンメイデンにでも入ってろ」
「じゃあ、ママと♡」
「喜んでエスコートさせていただきます」
「あ、私もご一緒してよろしいだろうか」
「いいですとも♡」
本日の収録が終わり。
ハルウララは辟易していた。
マ魔王を乳ビンタしたら、何故か職場復帰出来たのは良いが。
最近、職場の変態どもの圧が強いのである。
給料が上がったのは素直に嬉しいが。
これで我が家のお姫様に、豪勢なおもちゃを買ってやれるというものだ。
彼女はどんなこけしが好みだろうか。
はたまた腹筋ローラーか。
このハルウララ。
愛娘に与えるおもちゃのチョイスを失敗したことはない。
いつでも彼女は大喜びなのだ。
母親の鑑と言えるだろう。
さて、頼りにならぬうえ。
娘もおらぬ、寂しい生活を送るクズどもに目を移す。
まずツバメ。
なんか一般の女児に対する興味を失っている。
アイデンティティを喪失しているのだ。
「トレーナー。女児どもはもういいの?」
「オレは、真実の愛に気づいた。
もはやウララとアフちゃんしか目に入らぬ」
「真実の愛は複数バを対象にしねーよ。
なんでマルチロックオン形式なんだよ」
「近寄らないでもらえるか?
私は売約済みなのでな……」
やはり、あまり変わっていないような気もする。
クソかわ褐色合法ロリメイドも。
これには思わず天井に張り付いた。
スパイダー航空力士である。
下から真剣な眼差しで見上げる彼。
メイドスカートは鉄壁である。
「ウララ先輩は、こやつがトレーナーで満足しているのか……?」
「アフちゃんのトレーナーとどっちがいい?」
「うむ。どちらも要らぬ。つまりは怪鳥が最高ということである。
最近彼女は、エストレージャから、スペルエストレージャになりつつある。
リングに舞い戻った、正体不明の宿敵。
ショウワ・クリムゾンとの恥ずかし固め勝負に夢中。
まったく。年甲斐の無い。
独身三十路と、既婚三十路ビッグマザーとの。
年増肉と、熟成されたフレグランスの弾けるぶつかり合い。
最高であるな!
私も心の不退転棒の滾りが隠せぬよ。
さらには屈辱に燃える怪鳥の八つ当たりお仕置き。
ダイワ家には、豪勢なお歳暮を贈らねばならぬ。
ウマ美ちゃん一番くじなどがいいかな。
そうそう、ウララ先輩は今年のお歳暮は何に……」
こやつ、実は力士ではなく、ニンジャなのでは。
情報収集力と、ヒデンニンポ・オセーボの使い方が。
あまりにも巧みすぎる。
番組において事業仕分けされたゴミ。
それを最も喜ぶであろう相手に送りつける。
元手がゼロで、リターンは図り知れぬ。
あのツインテールは一番という響きだけで。
幸福の絶頂に至ることが出来るのだ。
あと人妻レスラーの正体教えてやれよ。
可哀想だろ。
しかしながら、思い直す。
身内の裏切りはこの世界では日常茶飯事。
他人の不幸は蜜の味。
だが、身内の不幸は極上はちみーの味がする。
三十路独身怪鳥の出バする、独り相撲本場所。
鳥なのかウマなのか力士なのかすらわからぬ。
このハルウララ、飯が美味くてしょうがない。
よく出来た後輩だ。褒めてつかわそう。
あとカニでお願いします。
お返しは、愛娘へのプレゼント選び中に発見した。
クッソえげつない形の、充電式こけしで良いだろう。
ついつい購入してしまったが。
清らかなるこの身には、無用の長物。
あまりにもご立派な逸品。
レジの小僧も、何を想像したのやら。
このかわいいウララちゃんとこけしのハッピーセットに。
鼻血と無料のダブルピースをカマしてきたものだ。
というか、とてもではないが入らぬ。
ボコォしちゃう。
だが、彼女たちなら。
有効活用してくれるに違いない。
思う存分ひぎぃするがいい。
所感は後程聞き出そう。
天井でダーマしつつ、謎コンを威嚇する彼女に。
アフガンコウクウショー。
当初は、プロウマレスの舞台でイロモノ芸人として。
次は、自分のポジションを奪った憎き大敵として見ていたが。
同僚として働いてみると、中々便利な手駒である。
自分の復職と共に、やはりウマのお姉さんは一人だけ。
クリークママの信念は覆せず。
妥協案として、ウマ褐色合法ロリメイドのお姉さん。
謎の役職が新設され、正式採用が決まった。
いつからこの番組は、オプション豊富な風俗店になったのか。
だが、好都合。
彼女はまだ腰の痛みが無いため、幼児を砲弾にする際。
積極的に押し付ける事ができる。
もう少し、胸の厚みがあれば始末していたが。
厳正なる身体検査の結果、勝負はドロー。
可愛い後輩である。
やはりママは偉大なる指導者だ。
あとあの元生徒会長。
お隣に住んでるウオッカに、子供の世話を押し付けすぎである。
母性本能の塊である彼女は、かわいそうに。
大型バスのような、バ鹿でかいサイドカーでもって。
自分の子供たちと、カッコウの雛ども。
大家族で、大喜びでツーリングに興じている。
やはり、哀れなカッコウの被害者は救済せねば。
次に、クリークママ。
最近は、民主主義に政治体制を変更したようにも見える。
「うふふ♡赤ちゃんには悪いけど……♡
ウララちゃんを甘やかすのも、大好きなのよね♡
アフちゃんも加えて、両手にかわいい子♡
ママ、最近ウマ生が充実しすぎて幸せよ♡」
なんかやたらとみんなに優しい。
何が彼女を変えたのか。
シベリアの香りは、最近とんと嗅ぐ事が無い。
相変わらず、幼児どもの性癖をミキシングする作業。
幼子の未来を奪う、マ魔王業には熱心なのだが。
そこから地面に目を転じ、汚い帝王。
こやつは最近、追加のアクセサリをじゃらじゃらとぶら下げている。
死刑囚でもここまでの拘束は受けまい。
「首輪もいいもんだよね。手錠・足枷も嫌いじゃない。
でも最近物足りなくなってさ。
やっぱり知り合いと絡んだ方がさ。実感を得られるんだろうね。
テイオーのワット数も上がりやすいらしいんだ。
だからウララ。今度あたしとお出かけしない?
いいモーテルを見つけたんだ」
早い所、監禁されればいいのにコイツ。そして二度と出て来るな。
こいつはまったく、ブレることがない。
そして。最後にこやつ。
最近の自分の悩みの種だ。
「ウララちゃんっ! 結納はいつにする?
ファル子ね、また海底で遺産を発見したから!
お金はゾンビと化すほどあるよ! ゴクウにワシ―。
ビョードーも、結婚式には参加してくれるって!」
猛禽類がおかしいのだ。
怨霊からウラコンカサブランカに進化している。
退化かもしれないが。とにかくおかしい。
ターゲットが自分に変更されている。
「ファル子ちゃん。フラッシュちゃんの事はもういいの?」
以前の彼女なら、これで即発狂していたはず。
「うんっ! もういいのっ! ファル子、真実の愛を見つけたんだからっ!」
胸に提げた、蒼い宝石の着いたペンダント。
それを揺らしつつ、即答する彼女。
真実の愛を見つけた。
こやつ、学生時代も同じことを言っていたはずだが。
一体自分の何が、彼女の琴線に触れたのか。
燃料を与えつつ、ゲルマン煽りしていただけなのだが。
もはやビールもじゃがいもも、ソーセージも。
シュトーレンでさえ。
この猛禽類を発狂させるに至らぬ。
だがその癖、ドイツに向かうのは相変わらず失敗している。
本日のお歌の時間。
「青空BLUE WATER」。
曲のモデルとなった、体験。
彼女が旧ウマソセス王国の遺跡において。
うっかり発見したという、第四世代型超光速恒星間航行用超弩級万能宇宙戦艦、ファル子リヲン。
聞いたスペックによれば、たどり着けない筈はないのだが……
空路でも。海路からも。海中からも。
あまつさえ大気圏外からでも。
何故か、彼女はドイツの地を相変わらず踏めていない。
まるで、そう定められているかのように。
「ファル子ちゃん♡そういえばー♡」
「はいっ! なんですかクリークママッ!」
反射的にマイクを握りながら良い返事をする、猛禽類。
こういう所は変わっていないのだが。
一体自分の不在間に、何があったというのか。
ウマドル活動を放棄し。
この番組と歌手。
活動を絞った事によって、その歌の練度は急激に上昇し。
発狂しなくなったことにより。
独身ウマ娘と幼児どもだけではないファン層を拡大し。
二ホンを代表する、歌姫となりつつある彼女。
一見栄華を極めているように見える。
だが、このハルウララの目はごまかせぬ。
ちっとも、幸せそうには見えぬのだ。
まるで、何か大事な物を無くしたかのように。
例えば。
想う対象を、見失ったかのような。
自分を見ているようで、見ていない。
「フラッシュちゃんが、今度来日するそうですよー♡」
「えっ? フラッシュちゃんが?」
「ワンちゃんも連れてくるそうです♡良かったですね、ファル子ちゃん♡」
「ワンちゃん……ワンちゃん……? あれっ……?
私、おかあさんで……? でも、なんで……?」
「……ファル子ちゃん♡今日はもう帰りなさい♡」
「でも、子供たちとの懇談が……」
「そんな能面みたいな顔で。何を子供に教えるんですか。いいから帰りなさい」
「えっ……? ふぁ、ファル子、笑えてない……?」
そして、最大の違和感。
彼女の顔。
その顔は。
怨霊ではなくなった。
だがその代わり、感情と言う物が希薄になっていた。
愛想笑いにすら失敗する始末。
これでは、歌のお姉さんを降ろされるのも。
時間の問題であろう。
最近とみに丸くなったとはいえ。
クリークママが、子供たちの利にならぬ者。
役目を果たせぬ欠陥品を。
そのままにするはずが無い。
飽くまで彼女の役割は、剥きだしの感情を。
歌を通して子供たちに叩きつけ。
そして、彼らに相手を想う素晴らしさ。
例え、それが憎悪だとしても。
それを教えること。
それが彼女の役割。
そうでなくては、ならないのだ。
衆愚の人気など、いくらあっても困らぬが。
このバ場においては無価値。
綺麗でオーディオ機能のついただけの。
感情を知らぬお人形さんでは。
とてもとても務まらぬ。
「……すいません。今日は、お先に失礼します」
ふらふらと、覚束ない足取りでスタジオを出る彼女。
やはり、おかしい。
「クリークママ。ファル子ちゃんの状態に、心当たりは?」
「いいえ。でも、想像は着くわ。憎しみを失った事ね」
「原因は?」
「……てへっ♡」
「お前かい」
パァッン!
「あひんっ♡ちょ、ちょっと追い詰めただけで憎しみを忘れるなんてっ♡ママ計算外っ♡」
なんというやつか。
何故一回惚けた。これは、さらなる愛の張り手で躾けを……
「そもそもあの時追い詰められてたの、がろうくんだしねー。
元々限界だったのかもよ」
ここで汚い帝王のインターセプト。
こやつ、何か原因に心当たりがあるようだ。
「限界とは? どういうことだ、ネイチャ。
オレにもわかるように説明しろ」
「遠距離恋愛で結婚までたどり着く確率。
知ってる? なんと16%。
たまに直接会えたとしても、その数字さ」
「つまりは?」
「愛は偉大だよ。でも、その偉大なる愛でさえ。
近くでいなきゃ熱を失う。
憎しみ程度が愛に勝てるとでも?
10年以上も保ってたのが奇跡だね。
そんで、ウララと結婚したい気持ち。
これも恐らく。
心がからっぽになるのを恐れて。
自己防衛で身近な者に縋ろうとしただけだよ。
マ魔王降臨は切っ掛けに過ぎない」
「つまり、お前はこう言いたい訳だ。
ファルコンは、憎しみを失った。
空洞となった心は、新しい中身を得るため。
ウララを愛することにより。
それを誤魔化そうとして。
それさえも失敗した。
……残ったのは、抜け殻か。哀れなことだ。
ワンちゃんとやらを求める気持ち、
それも恐らく偽物だな。
想っていた相手の子とはいえ。
赤の他人をどうやって愛そうというのか。
ウララとウオッカが特殊なだけだぞ、アレは」
「おい。何故私を煽った? 恋愛クソ雑魚鹿毛はまぁいいにしても」
「すまないウララ。
あんまりにもカッコウの被害に遭った鳥だったもので……
だが安心して欲しい。
お前が鳥類としての習性を捨てきれぬというのなら。
オレもプリンセスを、父として愛そうではないか。
男の度量というものだ。
あと彼女の方が、実は恋愛強者ではあるまいか。
7人だぞ。7人。
オレもそのぐらい……いや。
それ以上にお前との愛の結晶を授かりたいものだ。
サッカーチームでもまだ足りぬ」
なんという男か。我が愛娘への愛を疑うとは。
やはり、今日のママと合法ロリとの飲み会に拉致し。
プリンセスの素晴らしさを、叩き込んでやらねばなるまい。
あとコイツ、自分を犬か何かと勘違いしてはいまいか。
ウマ娘はそんなにぽんぽんぽんぽん産めねーよ。
あの出産数でも競い会う、バ鹿どもがおかしいんだ。
なんだよ、10人と7人って。
お盛んにも限度があるだろ。
「ママ。この謎コンも飲み会に」
「いいですとも♡」
「ウララ、あたしは?」
「加湿器の水でも飲んでろ」
「冷たい……でもそれもイイ……」
「もう♡ウララちゃん♡仲間外れは駄目ですよー♡」
「はーい」
「やったぜ! テイオーにウマインOh……はっや……」
彼女のウマホを覗き込んでみる。
『カエッタラワカッテルヨネイチャ』
うむ。短い付き合いであった。
理解らせ監禁とは風流。
梅雨の時期はまだ遠いのだが。
あと今日の飲み代のツケは、猛禽類に付けておこう。
何、心配させた罰というものである。
彼奴めは稼いでおるので、金の心配は要らぬ。
一人納得し、クリークママに抱きかかえられ。
幼児どもとの懇談に向かう彼女は気づいていない。
主人公が交代したとはいえ。
飽くまでこれは彼女を核心とした物語。
またも始まる、読者の想像の大気圏を突破するクッソ面白い状況に。
桜色の勇者たる、ハルウララが巻き込まれぬはずは無いのだ。
彼女の珍道中は、続く。
つづかない