ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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短めです。
彼女は今、何をしているのか。
第二章の主人公ですから。
ちゃんとこまめに出番を入れますとも。


ファル子さんじゅういっさい そのよん シベリアより、愛をコメット

~前回までのあらすじ~

 

 今日も今日とて通常営業。

 

 クリークママといっしょ。

 

 残念なイケメンによる催眠マッサージ。

 

 忠実なるメイド風駄犬。

 

 鬼子母神は少しばかり、中腰にてケツを擦る。

 

 現れる特別な猛禽類。

 

 自走式先頭民族な小道具。

 

 少しだけ、今日はいつもよりノスタルジィ。

 

 狸と猛禽類の奇跡の融合。

 

 栄光輝く日曜日。

 

 ニホン一のフェチ娘。

 

 ふともも御免の傾奇者。

 

 優しい響きはあなたの元へ。

 

 きっとシベリアにて木を数える、彼女へ。

 

 届くことを、信じてない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「37564……37565……」

 

 スマートファルコンは、充実感を持ってこの仕事に臨んでいた。

 

 

 

 カラマツ、トウヒ。

 

 カラマツ、マツ。

 

 カラマツ、モミ。

 

 カラマツ、オソマツ、ジュウシマツ。

 

 

 

 モミの木を見て思う。

 

 そういえばそろそろクリスマス。

 

 永久凍土を飾る、タイガと呼ばれる針葉樹林帯。

 

 ここにもきっと、素敵なサンタさんが訪れるに違いない。

 

 

 

 「ファル子、楽しくなってきちゃった!」

 

 「会長ぉぉぉぉぉ! 目を覚まして! 

 失脚! 失脚だからこれ!!」

 

 

 

 ウォッカを呷りつつ、テンションをアゲる。

 

 ウオッカを煽りつつ、テンションをアゲるのはツインテ栗毛。

 

 

 

 間違えてはいけない。

 

 ウマ娘警察は、どこに潜んでいるのか解らぬのだから。

 

 

 

 そう考えていると。

 

 無言でスカウターをカチカチやっていた、彼女。

 

 ユキオーが我慢の限界を迎えたような叫びを上げる。

 

 もっこもこの毛皮のコート。

 

 ウマ耳まで覆うウシャンカも愛らしい。

 

 

 

 何をバ鹿な。

 

 クリークママも言っていたではないか。

 

 栄誉ある仕事であると。

 

 この作業により、チキュウ温暖化は加速し。

 

 愚かな大人たちは絶滅し、幼児たちのエデンが産まれるのだ。

 

 

 

 「ひゃー! かき氷はうめぇなぁ!」

 

 

 

 見るがいい。

 

 ゴクウも大喜びで、食費を限りなくゼロに近づける作業。

 

 死の錬金術に勤しんでいる。

 

 というか、ヤツは道着一枚で寒くはないのだろうか。

 

 どれ、ウォッカをシロップとして与えてやろう。

 

 少し早めのクリスマスプレゼントだ。

 

 

 

 ロシアにおけるサンタ。

 

 ジェド・マロース。

 

 寒さに身を縮める子供に対し、寒風を吹き付け。

 

 震える彼らに暖かいかと問う、ボケてるのか。

 

 ドSなのかいまいちわからぬ、ジジイ。

 

 

 

 ゴクウはMUJAKIな愚か者。

 

 彼の問いかけにも、即座に暖かいと答え。

 

 毛布と食料を与えられる事が可能な逸材である。

 

 

 

 ちなみに、寒いと答えると凍死するハメになる。

 

 この地においては、正直よりも従順が美徳となるのだ。

 

 クリークママといっしょのスタジオと、同様である。

 

 

 

 滔々と言い聞かせると。

 

 ユキオーがスカウターを投げ捨て、やれやれと首を振る。

 

 従順さが足りぬ。躾が必要か。

 

 

 

 「えっと、会長、いまなんさい?」

 

 「死にたいか貴様」

 

 「ヒェッ。か、会長の年齢については置いておこう。

 ワシ、じゅうはっさいなんじゃが……」

 

 

 

 じゅうはっさい。こやつ、若さを自慢しておる。

 

 可愛いキープちゃんといえど、これは制裁の必要がある。

 

 

 

 寒中水泳などが、この場に相応しいネタ振りだろう。

 

 その可愛らしいロリボディに相応しい、衣装。

 

 白いスクール水着を用意させねば。

 

 砕氷船のような艶姿を魅せておくれ。

 

 

 

 彼女の基本的ウマ権すらも、自分が保有している。

 

 まったく。自分からネタ振りを求めるとは。

 

 彼女を拾ったのは大正解。

 

 このドMめ。どこまで自分を悦ばせる気か。

 

 考えていると、彼女から、再度の質問。

 

 

 

 「エデンが産まれたとして。生き残れるのはなんさいまで?」

 

 

 

 何を解りきったことを。

 

 やれやれ、甘やかし過ぎていたのかもしれぬ。

 

 そんな基本的な事もわからぬとは。

 

 呆れ果てたかわいこちゃんである。

 

 

 

 五歳までだ。当然だろう。

 

 クリークママといっしょの出演上限年齢は、五歳。

 

 エデンにおける生存可能年齢も、当然それに準ずる。

 

 生存が赦されるのは、幼児とママのみ。

 

 当然の理である。

 

 あとは恐らく……愛しの彼女も生き残れる。違法だがロリ故に。

 

 合法ロリも、生き残る目はあるだろう。

 

 

 

 

 「それ、ワシらも粛正されるんじゃない?」

 

 「天才かよ。その発想は無かったわ」

 

 

 

 なんと。

 

 こやつ、このファル子を越える閃きを魅せてきた。

 

 確かに、この永遠のじゅうななさいと言えど。

 

 ごさいと言い張るには、些か無理がある。

 

 

 

 あと一年若ければなんとかなったかもしれぬが。

 

 クリークママの粛正から逃れるのは困難だろう。

 

 数え終わればお役御免。我等の命は無い。

 

 待てよ……? と、いうことは……! 

 

 

 

 「おのれママ! ファル子を騙してたのねっ!」

 

 「ワシ、このウマに着いて行って大丈夫かな……

 そもそも、木を数えてもチキュウは温暖化せんじゃろ……」

 

 

 

 スマートファルコン、御歳31歳。

 

 歌のお姉さんにして、ニホンを代表する歌姫。

 

 そして。

 

 

 

 「ビョードー! ワシ-! 艦を回しなさい! ニホンに向かうわ!」

 

 「やっと気づきおったか。酒が進んでしょうがなかったわい。

 ククク……愉悦……!」

 

 散切り頭に和の装い。

 

 ニホンの金融業を牛耳る、闇の帝王。

 

 明王のビョードーのテイアイグループ。

 

 

 

 「さすがは愉悦の源。その七転八倒。

 それでこそ、我等が翼を預けた価値がある。

 クケコキキキ……」

 

 オールバックに尖ったお鼻。

 

 ニホンの軍需産業を牛耳る、怪物。

 

 道化のワシーのキョーセーグループ。

 

 

 

 その二つを統合した、巨大コンツェルン。

 

 フラッシュ・スプー・ラッタ商事。

 

 シンボルマークは酔っ払ったハルウララが描いた、奇跡の産物。

 

 

 

 かぼちゃのような、そうでないような奇形。

 

 ラグナロク星の王子を名乗る、よくわからない生き物、スプ○。

 

 

 

 電気ネズミに対し、勝てるはずもない戦いを挑む。

 

 身の程を知らぬ、茶色いドブネズミ、ラ○タ。

 

 

 

 どっちもどっちな両者が相争う。

 

 骨肉の争いを示したシュールレアリズムこそが。

 

 我等が企業理念。

 

 積極的に、弱者を見下そう。ヒトの本質を突いた言葉。

 

 

 

 両翼たるジジイどもに支えられた、弊社。

 

 些か高齢化が過ぎるきらいはあるが。

 

 影響力は世界中に及び。

 

 活動基盤たる、ニホンにおいてはほぼ無制限の強権が発揮できる。

 

 

 

 ワシ-の伝手により、警察など問題にならぬ。

 

 ビョードー配下の黒服どもにより、裏社会も掌握済み。

 

 トレセン学園どころか、URAの経営にも口を出せる。

 

 

 

 そうでなくば、ユキオーがどんなに成績が悪かったとしても。

 

 ウマ娘第一主義の、トレセン学園が手放すはずもない。

 

 

 

 理事長よ。権力無きその身を呪え。

 

 学生時代はお世話になりました。

 

 その後、いかがお過ごしでしょうか。

 

 

 

 この前お会いした時は、ロリロリしいままでしたね。

 

 たづなさんに狙われてますよ。気をつけて。

 

 わかるのです。この隼の眼力なら。

 

 まったく、年甲斐もなく発情するなど。

 

 呆れ果てたみどりのアクマオーです。

 

 

 

 学園が経営難の際はご相談を。

 

 そろそろユキオーの身売り代、尽きた頃でしょう? 

 

 ちゃんとあなたも高値で買ってあげます。

 

 

 

 立派なロリアクション芸人にしてあげますから。

 

 早く失脚してください。

 

 URA職員の買収は順調です。

 

 

 

 メジロ家の保持していた、おしぼり代の利権。

 

 既に我等が奪い去った。

 

 在りし日の栄光は、もはやその手から離れた。

 

 

 

 マックイーンよ。

 

 既得権益にあぐらをかいた、その油断を呪え。

 

 不労所得など夢幻。このファル子以外にはな。

 

 手元に残った量産型加湿器どもと共に。

 

 思う存分じめじめするがいい。

 

 

 

 ところで今度、商店街にタピりに行かない? 

 

 ヘリオスちゃんも誘ってさ。

 

 あいつ、いつまでパリピ続けるんだろ。

 

 旦那捕まえたからって余裕こきすぎだよね。

 

 羨ましくなんてねーぞ。

 

 

 

 彼女らに送る、手紙の文面を考えつつ思う。

 

 

 

 そう。あとは妖精を手に入れるのみ。

 

 百合とドリフ色の未来が待っているのだ。

 

 期待を胸に、手旗にてファル子リヲンを誘導する。

 

 

 

 「オーライ、オーライ。ストッ……オイィ! 

 数えた木、全部押し潰したぞゴラァッ! 免許持ってンのかっ!」

 

 「会長ッ! 操舵長もう年だからっ! 許してあげてっ!」

 

 「なんでジジイが運転してんだよ!! 

 昨今の高齢者による交通事故多発をご存知ない!? 

 お前どんな指導してんだよ!! 中間管理ロリだろ!!」

 

 「酔っ払って乗組員決めたの、会長ですけどォ!? 

 ワシ以外、ジジイしかいないじゃんっ! しかも! 

 操舵長、AT限定しか持ってないから断ったのに!! 

 あとわたし、自分のおじいちゃんより年上のヒト! 

 叱るとか無理なんですけどォ!?」

 

 

 

 わかっていない娘だ。このジジイ共は、孫娘より小さい娘に罵倒される。

 

 その快楽のために、老骨を粉砕機に掛けているというのに。

 

 あまりにも、未熟。だがその未熟さこそが。

 

 

 

 「てへっ☆ファル子、うっかりっ!! 

 そういやジジイしかいないよねっ☆

 あと一人称が戻ってるぞ。ちゃんとやれ。

 職場に早く馴染めるよう、ちゃんとワシって言え。

 ロリのジジイ言葉とか、ファル子興奮するから」

 

 「ぐっ…………まさか…………

 シベリアで年増と漫才をすることになるとは……

 一人称まで強要されるし……

 ワシのウマ生、どうなっとるんだ……

 でもお給料、いいんだよなぁ……金は命より重い。

 新作のコスメ、後で買おうっと」

 

 「よし、ちゃんと出来たな。褒美をやろう。

 後でシンボリルドルフのギャグ百連発視聴な」

 

 「お許しを……! 会長……! 何卒……!」

 

 

 

 そう、彼女こそ。

 

 現代のサンドリヨンにして、暴歌ロイド。

 

 奇跡の歌姫・スマートファルコン。

 

 彼女が座すは、第四世代型超光速恒星間航行用超弩級万能宇宙戦艦ファル子リヲン。

 

 

 

 孤独な艦隊の旗艦。

 

 フラスプネズミ商事が保持する、単独運用可能な軍事力。

 

 ただ一隻で、世界と闘える超兵器。

 

 

 

 陸海空から宇宙まで。電子戦に、リサイタル。

 

 全ての領域を制圧する、絶望を載せたノアズ・アーク。

 

 

 

 「行くよ! ワシ-、ビョードー、ゴクウ、ユキオー! 

 あとモブジジイ共! 縮退炉全開! 最大戦速! 

 ファル子リヲン! 北に向かって、全速前進!」

 

 「会長ぉぉぉぉぉ! そっちは北極ゥ!!! 

 操舵長! 素直に言う事聞いてンじゃねぇぞ!! 

 年長者として若者を導けよ!! クソがっ!」

 

 「性癖回路、全壊ッ! 出るッ!」

 

 「何を出すんだ、何をッ! わたし、もういやぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 海賊王・スマートファルコン。

 

 望めば世界を掌中に収めることすら容易い、現代の怪物。

 

 頭はやはり、だいぶかわいそうであった。

 

 彼女は気づいてないが、クリークママといっしょの放送局も、実はグループ傘下である。

 

 なんで歌のお姉さんをやっているのか。

 

 答えは一つ。

 

 

 

 一心腐乱の、愛のため。

 

 

 

 

 つづかない


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