しばらくクリスマスが続きます。
テーマは聖夜の奇行となります。
やっぱりクリスマスには、奇跡が起こりますからね!
後今回は、みんな大好き、ゆで理論に挑戦してみました。
恐らく納得いただけることでしょう。
我ながら、完璧な理論構築であります。
~前回までのあらすじ~
愛する妖精に捧げる極上の聖夜のため。
商店街をおしゃまに歩く、プリンセス。
そこに現れるトーホクテイオーラム肉風味。
彼女の執拗な尋問を華麗にかわし、マンホールからこんにちわ。
汚い帝王のご入場。
メイショウドトウの新商売。
繰り返される、ASMR。
だが残念。プリファイに二度同じ催淫音声は通じぬ。
惨状するはマスコット。夏と冬の名を持つウララシリーズ。
ピヨピヨワンワン、頼れるお供の登場でござい。
そして汚い帝王の油断を突き。勝利を悦ぶ幼女ご一行。
戦利品には秋の名を。新たなしもべを手に入れて。
喜び束の間、不穏な気配。
アメリカナイズされたのはドイツだ。
そして、物語は紡がれる。
三女神様。
教えてください。
愛する事は、罪ですか。
愛したくて、たまらない。
走るために、生を受けしこの身。
愛にその身を焦がすことが、もしも。
摂理に逆らう罪。そうおっしゃられるならば。
三女神様。わたしは貴女方にすら、叛逆の狼煙を。
左手にマイク。右手に世界。この歌は、運命すらも打ち砕く。
さぁ。開宴の時。ドイツもコイツも踊り狂え。この愛を聞くがいい。
我が名こそは。
「ウララちゃん♡アフちゃん♡ファル子ちゃんっぽい何かと備品♡
あとオマケのホスト気味な畜生♡今日もお仕事、お疲れ様でした♡」
甘く蕩けたエンドコール。
クリークママのねぎらいである。
ねぎらっているのか、喧嘩を売っているのか。
なかなか理解しづらいのが、欠点である。
ハルウララは、またも今日の遊びの時間にて。
痛めた腰を伸ばし、愛想笑いをした。
猛禽類の抜けた穴は、思ったよりも大きかったのだ。
「スズカさん。私のおなか、叩きすぎじゃないですか? 何ですか。
もうおなか鼓っていうか。ストマックヘヴィドラムとかそういう感じですよ」
「リクエストにお答えするには、ああするしかなかったわ。スぺちゃん。
昨今の幼児は雅楽じゃウケが悪いわ。デスメタルこそ勝利の鍵よ。
次回もアゲて、いきましょう?」
「アゲませんッッッッ!!!」
「年増のきゃぴきゃぴは見るに堪えん。他所でやってはくれまいか」
「お主、いつか殺されるぞ……だからといってこっち見んな。変態が感染る」
天丼をカマす、蟲毒のグルメからの刺客。
喧嘩を売る、謎コン。
謎コンを諫める、褐色合法……めんどい。ロリ。
こやつらも頑張ってくれてはいるが。
やはり、幼児どもはお歌の時間の、脳髄を貫く刺激。
あれに慣れ過ぎているのだろう。
三日目にして、もはや食傷気味のようだ。
しかし、サイレンススズカも変わったものだ。
昔の彼女を思い出す。
サイレンススズカ。異次元の逃亡者。
ふとももフェチのおなかをすぺんすぺんする以外は、レースにしか興味がなく。
栄光の日曜日以降も、速さの極限を追求し続けていた。
だが。ある事件により。
レースを走れぬ身と化したのだ。
事件は二度起きた。
一度目は、『沈黙の日曜日』。
『栄光の日曜日』と対を為す事件。
栄光の日曜日を経て、自らの足が、己の速度に耐えられぬという事実。
これを知り、対処を万全にしたサイレンススズカの出た、レース。
牛乳を一日50リットル飲むという狂気。
それを涼しい顔でこなした彼女は、万全であった。
だが。その日。観客席は、沈黙に包まれた。
サイレンススズカは、速度を追求しすぎて。
第1コーナーで曲がり切れず。外ラチにそのまま突っ込んだのだ。
笑っていいのか、心配したらいいのか。
無傷で立ち上がり、その場左旋回を続ける彼女を見て。
黙り込む観衆。
牛乳を飲んでいなければ、彼女は怪我をしていただろう。
牛乳ってすごい。みんなも飲もう。
それから彼女のスランプは始まった。
速度を落とすという、当然の事すら許容できぬ。
ちょっとばかり、行き過ぎたスピード狂の彼女。
壊した外ラチの数は数え切れぬ。
だが、彼女は諦めなかった。
ある日、相変わらずコーナーを破壊し続ける彼女に。
業を煮やしたスペシャルウィーク。
かわいい後輩に連れられ、気分転換に訪れた、北海道の農場。
そこで見た、一つの物が。
彼女を再びレースへと復帰させたのだ。
ブルドーザーである。
彼女は、ブルドーザーから着想を得て。
再びコーナーを曲がれるようになったのだ。
そもそも。ウマ娘がコーナーを曲がる際。
自分たちは、遠心力に打ち勝つため。
その身を曲がる方へ傾ける。
これは、タイヤ式の車両と同じ原理だ。
タイヤをハンドルにより、曲がる方向に傾ける事で。
車は曲がるのである。
対して、ブルドーザーや油圧ショベルなどの、キャタピラを装備した車両。
ハンドルでキャタピラを傾ける事など、不可能である。
そのため彼らは、左右の動力を伝えるギヤの不均衡。
これによって曲がる。
片側のみに動力を伝達し、片側の動力を切る。
片側のみの速度を上げ、もう片側の速度を落とす。
場合によっては、左右のギヤを逆回転させることにより。
超信地旋回を行うのだ。
そしてサイレンススズカは、キャタピラによる方向変換。
この、戦車にも使われるコーナリング方式。
これに活路を見出し。
お義母様の懇意にする、農業用重機の整備工場において。
ブルドーザーの整備に、熱心に携わり。
ついには開眼を果たしたのだ。
更なる速度を追求するための、第二の領域。
『コーナーの景色も、譲らない……!』に。
そもそも走ってる最中、前見えてんのかなコイツ。
その発動条件は単純。
先頭をひたすら走りつつ、全速力でコーナーに突っ込むこと。
彼女以外誰もやろうとも思わない、クレイジーな発動条件に。
三女神も思わずオーケーを出したのだ。
サマードリームトロフィーで、それは初めてお披露目された。
左足の速度はそのままに。右足を超高速でターフに連続で叩きつけ。
芝を豪快に捲り上げつつ、左回りする暴走栗毛タンク。
初めて彼女と走る、夢の舞台に。
心をときめかせていた、スペシャルウィーク。
戦車でも通ったかのように、捲れ上がった芝に足を取られ。
二十バ身差を付けられ、ゴールした後に。
初めて自棄酒をかっ喰らい、暴飲暴食を重ね。
無事太り気味になったという。
(コイツ、性癖のみならず。思考回路まで異次元に逃亡してやがんな……)
ハルウララは思った。どうしてそうなる。
まぁ彼女がレースを走れなくなった理由とは、『沈黙の日曜日』は関係ない。
彼女がレースを引退したきっかけは、その次の事件。
『常識が逃亡した日曜日』にある。
いつか語られる時が来るだろう。たぶん。
「そういえばスぺちゃんたちは、いつまで番組に出れるの?」
首をかわいらしく傾けつつ、聞いてみる。
ごきりと不穏な音が鳴るが、周囲はノーリアクション。
彼女らにも情けはあるのだ。
「はいっ! わりと長い間、お世話になりましたが!
明後日の飛行機で帰りますっ! 撮影も終わったのでっ!」
元気にお返事するスぺちゃん。
こやつ。己の年齢に自覚がない。
元気な田舎系娘が許されるのは、二十代まで。
己と同い年の彼女に、身の程を知るよう忠告すべきか。
ハルウララは逡巡した。
「あらー♡困りましたねー♡引き留めるわけにも、いきませんし♡
ウララちゃん、他に心当たりは?」
「そんな面白演奏できる芸人、他には心当たりないかなー」
クリークママのご下問。
無茶を言いなさる。この芸人どもですら、とても稀少な珍獣である。
「もう。ファル子ちゃんも反省してるでしょうし♡そろそろ呼び戻しますか♡」
「アイツ、反省とかすんのかな……」
「しないと思います。学生時代からそうですもん」
「しないと思うわ。以前、次は芝のサイレンススズカとか言ってたわ」
「しないだろう。性癖を賭けてもいい」
「しないと思うぞ。短い付き合いの私でもわかる」
満場一致で否定される、猛禽類の。
自らを省みる機能の存在。
己もそう思う。だが、背に腹は代えられぬ。
さて、シベリアに電報でも送らねば。
『ママキチク スグカエレ』
文面はそのあたりでいいだろう。
さて、それでは郵便局に……
そう思っていると。
「ウララちゃんっ! お客様ですわっ!
ママのメールを見た限り、いつも通りヤベー奴ですわっ!」
「サプライズってやつだねぇ。テイオーにも今度やろっと。
ウララ、ビデオレターとか興味ない?」
「ここに居れば、ファル子さんに会えると思いまして。
お久しぶりです。皆さん」
「だー!」
おっと。かわいい娘と、汚い帝王。
後は……なんと。よもやよもやだ。
それは、紛れもなくヤツさ。
「あ、あなたはっ!」
「知っているの、スぺちゃんっ!?」
「お前も恐らく知っているだろうに。これだから栗毛は……」
「お主、全ての栗毛を敵に回したぞ……
そろそろウララ先輩以外にも、気遣いを覚えるのである」
「落ち着きなさい、クズども♡おひさしぶり、フラッシュちゃん♡
まずはワンちゃんを抱かせてもらっていい? 返事は聞いてない♡」
そう。エイシンフラッシュ。
諸悪の根源が、そこにいた。
つづかない