ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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読者様がた、メリークリスマス。
しばらくクリスマスが続きます。
テーマは聖夜の奇行となります。
やっぱりクリスマスには、奇跡が起こりますからね!
後今回は、みんな大好き、ゆで理論に挑戦してみました。
恐らく納得いただけることでしょう。
我ながら、完璧な理論構築であります。


ファル子さんじゅういっさい そのろく 第二日曜日

~前回までのあらすじ~

 

 愛する妖精に捧げる極上の聖夜のため。

 

 商店街をおしゃまに歩く、プリンセス。

 

 そこに現れるトーホクテイオーラム肉風味。

 

 彼女の執拗な尋問を華麗にかわし、マンホールからこんにちわ。

 

 汚い帝王のご入場。

 

 メイショウドトウの新商売。

 

 繰り返される、ASMR。

 

 だが残念。プリファイに二度同じ催淫音声は通じぬ。

 

 惨状するはマスコット。夏と冬の名を持つウララシリーズ。

 

 ピヨピヨワンワン、頼れるお供の登場でござい。

 

 そして汚い帝王の油断を突き。勝利を悦ぶ幼女ご一行。

 

 戦利品には秋の名を。新たなしもべを手に入れて。

 

 喜び束の間、不穏な気配。

 

 アメリカナイズされたのはドイツだ。

 

 そして、物語は紡がれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三女神様。

 

 教えてください。

 

 愛する事は、罪ですか。

 

 愛したくて、たまらない。

 

 走るために、生を受けしこの身。

 

 愛にその身を焦がすことが、もしも。

 

 摂理に逆らう罪。そうおっしゃられるならば。

 

 三女神様。わたしは貴女方にすら、叛逆の狼煙を。

 

 左手にマイク。右手に世界。この歌は、運命すらも打ち砕く。

 

 さぁ。開宴の時。ドイツもコイツも踊り狂え。この愛を聞くがいい。

 

 我が名こそは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ウララちゃん♡アフちゃん♡ファル子ちゃんっぽい何かと備品♡

 あとオマケのホスト気味な畜生♡今日もお仕事、お疲れ様でした♡」

 

 

 

 甘く蕩けたエンドコール。

 

 クリークママのねぎらいである。

 

 ねぎらっているのか、喧嘩を売っているのか。

 

 なかなか理解しづらいのが、欠点である。

 

 

 

 ハルウララは、またも今日の遊びの時間にて。

 

 痛めた腰を伸ばし、愛想笑いをした。

 

 猛禽類の抜けた穴は、思ったよりも大きかったのだ。

 

 

 

 「スズカさん。私のおなか、叩きすぎじゃないですか? 何ですか。

 もうおなか鼓っていうか。ストマックヘヴィドラムとかそういう感じですよ」

 

 「リクエストにお答えするには、ああするしかなかったわ。スぺちゃん。

 昨今の幼児は雅楽じゃウケが悪いわ。デスメタルこそ勝利の鍵よ。

 次回もアゲて、いきましょう?」

 

 「アゲませんッッッッ!!!」

 

 「年増のきゃぴきゃぴは見るに堪えん。他所でやってはくれまいか」

 

 「お主、いつか殺されるぞ……だからといってこっち見んな。変態が感染る」

 

 

 

 天丼をカマす、蟲毒のグルメからの刺客。

 

 喧嘩を売る、謎コン。

 

 謎コンを諫める、褐色合法……めんどい。ロリ。

 

 

 

 こやつらも頑張ってくれてはいるが。

 

 やはり、幼児どもはお歌の時間の、脳髄を貫く刺激。

 

 あれに慣れ過ぎているのだろう。

 

 

 

 三日目にして、もはや食傷気味のようだ。

 

 しかし、サイレンススズカも変わったものだ。

 

 昔の彼女を思い出す。

 

 

 

 サイレンススズカ。異次元の逃亡者。

 

 ふとももフェチのおなかをすぺんすぺんする以外は、レースにしか興味がなく。

 

 栄光の日曜日以降も、速さの極限を追求し続けていた。

 

 

 

 だが。ある事件により。

 

 レースを走れぬ身と化したのだ。

 

 

 

 事件は二度起きた。

 

 一度目は、『沈黙の日曜日』。

 

 『栄光の日曜日』と対を為す事件。

 

 

 

 栄光の日曜日を経て、自らの足が、己の速度に耐えられぬという事実。

 

 これを知り、対処を万全にしたサイレンススズカの出た、レース。

 

 

 

 牛乳を一日50リットル飲むという狂気。

 

 それを涼しい顔でこなした彼女は、万全であった。

 

 だが。その日。観客席は、沈黙に包まれた。

 

 

 

 サイレンススズカは、速度を追求しすぎて。

 

 第1コーナーで曲がり切れず。外ラチにそのまま突っ込んだのだ。

 

 

 

 笑っていいのか、心配したらいいのか。

 

 無傷で立ち上がり、その場左旋回を続ける彼女を見て。

 

 黙り込む観衆。

 

 牛乳を飲んでいなければ、彼女は怪我をしていただろう。

 

 牛乳ってすごい。みんなも飲もう。

 

 

 

 それから彼女のスランプは始まった。

 

 速度を落とすという、当然の事すら許容できぬ。

 

 ちょっとばかり、行き過ぎたスピード狂の彼女。

 

 壊した外ラチの数は数え切れぬ。

 

 

 

 だが、彼女は諦めなかった。

 

 

 

 ある日、相変わらずコーナーを破壊し続ける彼女に。

 

 業を煮やしたスペシャルウィーク。

 

 かわいい後輩に連れられ、気分転換に訪れた、北海道の農場。

 

 そこで見た、一つの物が。

 

 彼女を再びレースへと復帰させたのだ。

 

 

 

 

 

 

 ブルドーザーである。

 

 

 

 

 

 

 彼女は、ブルドーザーから着想を得て。

 

 再びコーナーを曲がれるようになったのだ。

 

 

 

 そもそも。ウマ娘がコーナーを曲がる際。

 

 自分たちは、遠心力に打ち勝つため。

 

 その身を曲がる方へ傾ける。

 

 

 

 これは、タイヤ式の車両と同じ原理だ。

 

 タイヤをハンドルにより、曲がる方向に傾ける事で。

 

 車は曲がるのである。

 

 

 

 対して、ブルドーザーや油圧ショベルなどの、キャタピラを装備した車両。

 

 ハンドルでキャタピラを傾ける事など、不可能である。

 

 そのため彼らは、左右の動力を伝えるギヤの不均衡。

 

 これによって曲がる。

 

 

 

 片側のみに動力を伝達し、片側の動力を切る。

 

 片側のみの速度を上げ、もう片側の速度を落とす。

 

 場合によっては、左右のギヤを逆回転させることにより。

 

 超信地旋回を行うのだ。

 

 

 

 そしてサイレンススズカは、キャタピラによる方向変換。

 

 この、戦車にも使われるコーナリング方式。

 

 これに活路を見出し。

 

 

 

 お義母様の懇意にする、農業用重機の整備工場において。

 

 ブルドーザーの整備に、熱心に携わり。

 

 ついには開眼を果たしたのだ。

 

 

 

 更なる速度を追求するための、第二の領域。

 

 

 

 『コーナーの景色も、譲らない……!』に。

 

 

 

 そもそも走ってる最中、前見えてんのかなコイツ。

 

 

 

 その発動条件は単純。

 

 先頭をひたすら走りつつ、全速力でコーナーに突っ込むこと。

 

 彼女以外誰もやろうとも思わない、クレイジーな発動条件に。

 

 三女神も思わずオーケーを出したのだ。

 

 

  

 サマードリームトロフィーで、それは初めてお披露目された。

 

 左足の速度はそのままに。右足を超高速でターフに連続で叩きつけ。

 

 芝を豪快に捲り上げつつ、左回りする暴走栗毛タンク。

 

 

 

 初めて彼女と走る、夢の舞台に。

 

 心をときめかせていた、スペシャルウィーク。

 

 戦車でも通ったかのように、捲れ上がった芝に足を取られ。

 

 二十バ身差を付けられ、ゴールした後に。

 

 

 

 初めて自棄酒をかっ喰らい、暴飲暴食を重ね。

 

 無事太り気味になったという。

 

 

 

 (コイツ、性癖のみならず。思考回路まで異次元に逃亡してやがんな……)

 

 

 

 ハルウララは思った。どうしてそうなる。

 

 まぁ彼女がレースを走れなくなった理由とは、『沈黙の日曜日』は関係ない。

 

 

 

 彼女がレースを引退したきっかけは、その次の事件。

 

 『常識が逃亡した日曜日』にある。

 

 いつか語られる時が来るだろう。たぶん。

 

 

 

 「そういえばスぺちゃんたちは、いつまで番組に出れるの?」

 

 首をかわいらしく傾けつつ、聞いてみる。

 

 ごきりと不穏な音が鳴るが、周囲はノーリアクション。

 

 彼女らにも情けはあるのだ。

 

 

 

 「はいっ! わりと長い間、お世話になりましたが! 

 明後日の飛行機で帰りますっ! 撮影も終わったのでっ!」

 

 元気にお返事するスぺちゃん。

 

 こやつ。己の年齢に自覚がない。

 

 元気な田舎系娘が許されるのは、二十代まで。

 

 

 

 己と同い年の彼女に、身の程を知るよう忠告すべきか。

 

 ハルウララは逡巡した。

 

 

 

 「あらー♡困りましたねー♡引き留めるわけにも、いきませんし♡

 ウララちゃん、他に心当たりは?」

 

 「そんな面白演奏できる芸人、他には心当たりないかなー」

 

 

 

 クリークママのご下問。

 

 無茶を言いなさる。この芸人どもですら、とても稀少な珍獣である。

 

 

 

 「もう。ファル子ちゃんも反省してるでしょうし♡そろそろ呼び戻しますか♡」

 

 「アイツ、反省とかすんのかな……」

 

 「しないと思います。学生時代からそうですもん」

 

 「しないと思うわ。以前、次は芝のサイレンススズカとか言ってたわ」

 

 「しないだろう。性癖を賭けてもいい」

 

 「しないと思うぞ。短い付き合いの私でもわかる」

 

 

 

 満場一致で否定される、猛禽類の。

 

 自らを省みる機能の存在。

 

 己もそう思う。だが、背に腹は代えられぬ。

 

 さて、シベリアに電報でも送らねば。

 

 

 

 『ママキチク スグカエレ』

 

 文面はそのあたりでいいだろう。

 

 さて、それでは郵便局に……

 

 そう思っていると。

 

 

 

 「ウララちゃんっ! お客様ですわっ! 

 ママのメールを見た限り、いつも通りヤベー奴ですわっ!」

 

 「サプライズってやつだねぇ。テイオーにも今度やろっと。

 ウララ、ビデオレターとか興味ない?」

 

 「ここに居れば、ファル子さんに会えると思いまして。

 お久しぶりです。皆さん」

 

 「だー!」

 

 

 

 おっと。かわいい娘と、汚い帝王。

 

 後は……なんと。よもやよもやだ。

 

 それは、紛れもなくヤツさ。

 

 

 

 「あ、あなたはっ!」

 

 「知っているの、スぺちゃんっ!?」

 

 「お前も恐らく知っているだろうに。これだから栗毛は……」

 

 「お主、全ての栗毛を敵に回したぞ……

 そろそろウララ先輩以外にも、気遣いを覚えるのである」

 

 「落ち着きなさい、クズども♡おひさしぶり、フラッシュちゃん♡

 まずはワンちゃんを抱かせてもらっていい? 返事は聞いてない♡」

 

 

 

 そう。エイシンフラッシュ。

 

 諸悪の根源が、そこにいた。

 

 

 

 

 

 

 つづかない

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