もはや風呂敷を広げ過ぎて、空を飛びかねぬ勢い。
だがもう止まらぬ。最期まで走り切る所存。
あと、今回描写が薄い彼女については、機会を見つけて短編を投げようかと考えてます。
十九話にこっそり挿絵を挿入してみました。かわいいアフちゃんです。
絵じゃない? ハハハ。
さらにまさかのファンアートを頂く事態ッ……! 作品の目次に貼らせて頂きますッ!
んこにゃ様(Twitter垢:@Nkonya0529)、ありがとうございます! 欲しい物リストを公開した時が貴様の最期だッ・・・!
【挿絵表示】
綺麗なウララさんです。こう……浄化されすぎてやばい
~前回までのあらすじ~
パリピっぽくアゲアゲな猛禽類。
不穏な気配を発するクリークママ。
緊急発車する、希望の車は防弾仕様。
ハルウララは絶望に身を焦がされる。
明かされる、クリークママ宇宙怪獣説。
応戦を決め込む、ズッコケコンビの宇宙戦艦。
勇者はあまりの状況に、脳がバグり。
ツバメにキュンキュンしちゃう醜態を晒す。
高まる鼓動、強まる圧力。
片や、超古代バ鹿が酔っ払って建造した兵器。
対するは、リバーシブル母性。
アンプとメガホン。本来なら勝敗は明らかであるが。
さらにクリークママは、メガホンを捨てる暴挙に出る。
ハルウララはズッコケて、己の立ち位置を証明した。
お姫様じゃいられない。
いつだって、恋する乙女はリアクション芸人なのだ。
ハルウララは目をしばたたかせた。
周囲には瓦礫すらなく、全てが消し飛んだ景観。
青空が目に眩しく、異物は天空に浮かぶ、一つのみ。
飛んでも平気なトンデモ兵器。なんかちょっと傾いてる。
見上げるは、ツバメの顔。
不覚にも、ちょっとキュンとしちゃったではないか。
生意気なツバメである。
己はチョロくない。
ウララちゃんは高級品なのである。
だが、顔と声とケツは非常に好みである。
ウララちゃんポイントはやろう。
ひゃくおくてん。
100点貯めると、可愛いウララちゃんに。
セクハラされる権利が与えられます。
「……私、生きてる?」
「大丈夫? ウララさん」
「お、お前はっ!」
「危ない所だったわ……
スペちゃんおなか鼓、最終奥義。
ぽんぽこスペちゃんナイアガラ。
太り気味でなくば、助からなかったわね」
「うええ……口の中が酸っぱいです」
「ガイドラインをご存知無い?」
誇らしげに、無い胸を張るポンコツ栗毛。
涙目でえづくスペちゃん。
史上最悪の助かり方をしてしまった。
ハルウララは、生きていることを三女神に呪った。
三女神を呪うのは日常だ。
やつらは頭がイカれているのだ。
バ鹿に、無駄に力を与えすぎる。
自分の領域は、死ぬほど使い勝手が悪いのに。
そうだ。宇宙戦艦が傾くほどのダメージ。
クリークママもきっとダメージを……
ごうごうと風が吹く。
びゅうびゅうと気圧が再度下がっていく。
仁王立ちして第二の砲声を準備する、鬼子母神。
ダメみたいですねこれは。
音ゲー人どもを見てみる。
スぺちゃんのおなかはもう平ら。
栗毛のふとももに頬を擦りつけ、失われた体力の回復に努めている。
これは、新たな発狂秘技は期待できぬ。
ご都合主義の連発は禁物。
次は防げないだろう。
今度こそバッドエンドの香りが濃厚である。
どれ。最期の想い出に、ツバメのケツでも揉んでおこう。
「なんで私、宇宙戦艦を生身で圧倒できる大怪獣と。
ウマのお姉さんやってるんだろう……」
「う、ウララッ! テクニシャンッ! こんなの初めてッ!」
ぽつりと呟きつつ、ケツを揉み。
ハルウララは今さらながら、疑問を感じ始めた。
判断が遅い。手は早い。これには天狗も呆れ顔だろう。
『バリア消失! 再起動まで3うまぴょい!
会長の! ちょっといいとこ見てみたい!』
『そんな悠長に歌ってられるかバ鹿! ママ、タンマ!
ユキオー! 時間稼いで!』
『やれやれ。頭のおかしい会長を持つと苦労する。
まぁ良い。このユキオーにお任せを。
あー、スーパークリーク様。聞こえるだろうか。
ファンです。後でサインください』
「ぬっ……! ファン……!」
クリークママが動きを止める。
気圧が正常に戻っていく。
ユキオーとやら。ウマい。
我ら、トゥインクルシリーズを走ったウマ娘。
ファンと聞くと、危害を加えるのを躊躇するのだ。
たづなさんに仕込まれた、もはや本能とも言える条件付け。
『お客様は神様です。
ちょっとイラつかされた程度で危害を加えたら、どうなるか。
知りたい方はどうぞ。やってみてください。
トレーナーさん、大事ですよね?』
あの卑しか杯常連。
みどりのアクマオーは伊達ではないのだ。
トレーナーを人質に取られたならば。
我らは言うことを聞く他に無い。
だが、明確に危害を与えられた時は。
『でも、乱心したお客様は別。
金を支払い、お行儀よく振る舞う方だけが。
神様として扱われるのです。
商売の基本ですね。
よく吟味して、害となると判断したならば。
躊躇ってはいけません。
トレセン学園と、理事長を舐めた者には血の制裁を。
彼女を舐めていいのは私だけです。
大丈夫。合法ですよ、合法』
所詮、数秒の延命に過ぎぬ。
ヤツめ、ここからどうするのか。
頑張って。私まだ死にたくない。
『ええ。大ファンですとも。
高速ステイヤー。マ魔王。憧れます。
ワシは未勝利で終わったウマ娘。眩しくて堪りませんな』
「くっ……! よしよししてあげたい……!」
ここで追撃のお涙頂戴。
ヤツめ、クリークママの習性を熟知している。
彼女のアライメントは混沌・ママ。
慰めがいのある子は、放っておけないのだ。
なでなでむぎゅむぎゅが終わらぬ限り。
クリークママは、彼女とその乗艦を害せぬ。
『非常に結構。後でなでなでして頂きたい。
では、今回の件について、落とし所を……』
『ズゾゾゾゾッ……』
『会長。タピるのやめてくれませんか。うるせーですよ』
『ファル子、歌ったら喉渇いちゃって……ズゾゾッ』
『なんですか。ワシが必死こいて交渉している時に。
ズゾズゾズゾズゾと。
しかもタピオカとか。逆に喉乾きません?
あと何でワシを置いてタピりに行ったんですか。
タピるのはわたしみたいなJKの、特権でしょォ!?』
『ごめん。ごめんて。
マックちゃんとヘリオスちゃんと。
旧交を温めたかったんだって。
ユキオー、忙しそうだったし……』
『忙しいのは、あんたのせいですけどォ!?
マジ信じられんし! ジジイの世話ばっかり押し付けて!
わたしも会長とタピりたかった! 駄弁りながら、青春の一ページ!
もう、会長なんて知らない!
一人で好きなだけタピりながら!
ウマ外バトルしてればいいじゃん!』
『反省してるから! 機嫌直してユキオー!
ほ、ほら、タピオカ飲む?
飲みかけだけど『ズゾゾゾゾッ!』
Oh……はっや……すげー勢いでしゃぶりつくじゃん?』
『まったくもう。次から気をつけてくださいよ。
間接ちゅーに免じて許してあげますから。えへへ。
ズゾゾゾゾッグッホッ!?』
なるほど。やはり変態か。
年増好き、意外に多いのかな。
ハルウララは、多様化する性癖の流れを感じた。
『ふふ。こんなこともあろうかと。
ブルーシャインタピオカフラペチーノ固め濃いめガッツリ多め、当たり入り。
当たりのスコビル値は、なんと脅威の350万SHUでーす』
『ゲッホゲホゥン! ズゾゾゾゾッ! ガッフッ!
自分で当たったらどうするつもりだったんだッ!
なんという理外……! ゲフッ! ジジイ! 水ッ!
だがっ! ごっきゅごっきゅ! んっ。おじいちゃん、ありがとね。
あとで肩たたきしたげる。ンんッ!
しゅ、収支は依然プラス……!
このユキオーのウマ生哲学に間違いは無い!
世間の大人たちが言わぬなら、ワシが言ってやる!
性癖は命よりも重い……!』
早いとこ本題に入ってくれないかな。
ツバメのケツの感触を楽しみながらも。
ハルウララは寛大な心で、会話の趨勢を見守った。
「やっているようですわね。ズゾゾゾゾッ」
「マックイーン。急に出てきてタピるな」
「学生時代を思い出しまして、つい。
あとファル子さんが地獄行きになるところを。
特等席で見ようと思いまして。
メジロの権益の横取りとは、舐めてくれます」
「またテイオーと?」
「いいえ。ファル子さんとヘリオスさんですわ。
あのクソ猛禽類の所業は許せませんが。
スイーツに罪はありませんもの。
美味しいんですのよ。これ。
このタピオカ、米粉100%ですの」
「それはタピオカじゃねぇよ。あとお前ら、仲良いの? 悪いの?」
タピオカの原料はブラジル熱狂の根菜。
キャッサバである。
こやつ、根本的に勘違いしている。根菜だけに。
自分を見習うべきだ。
愛する娘に、本物を与えた時の事を思い出す。
『ウララちゃんっ! タピるのが今アツいらしいですわっ!』
『へぇ。ギャルっぽいね。プリンセス、飲んでみたいの?』
『ええっ! ウララちゃんと一緒に、タピりたいんですのっ!』
自分はその言葉を聞き。すぐにヒシアマゾンに連絡を取った。
もちろん、窮兵衛を紹介してもらうためだ。
彼はブラジル産薩摩隼人だからだ。
『キャッサバ? そげんもんいけんすっと?』
かくかくウマウマ。
『よかっ! こどんばおもう心! アマさと同じ! この窮兵衛に任せィ!』
そして。
『プリンセス。これをどうぞ』
『ウララちゃん。……これは?』
『キャッサバ』
『キャッサバ』
『お母さん、原料は知ってたんだけど』
『はい』
『作り方知らんかったから、蒸かしてみた』
『蒸かしてみた』
『芋だし。多分美味しいよ。さぁお食べ』
『いただきますわ……』
パリピに作り方を聞いておけばと思ったが。
原料はどうせキャッサバなのだ。
プリンセスも満足していたようであるし、問題は無い。
回想を終える。
このポンコツにも、本物の重要さを教えなければ。
「これだからマックEーンは……」
「ヘリオスさんも大喜びでしたわよ。これ。
旦那さんに飲ませるんだって言って、ダッシュで帰りましたわ」
「マジかよ私も今度買うわ。どこの店?」
パリピが言うのなら間違いはあるまい。
ヤツはギャルっぽい物に、一切の妥協をしない事で有名である。
プリンセスに、今度こそ本物のタピオカを飲ませなければ。
やはり根菜まんまはいかんかったかもしれん。
「ブルボンさんが露店で売ってましたわ。
サンバ衣装で。相変わらず、ブルンボルンしておりました」
「またコンバイン壊して、出稼ぎに行かされたのかアイツ……」
ミホノブルボン。トゥインクルシリーズ卒業後。
ポンコツ栗毛と同じような流れで、ライスシャワーの米農場に転がり込んだ。
サイボーグっぽいけど、全ての機械から嫌われた栗毛。
定期的にその体質により、お高い農業機械を破壊し。
ライスシャワーに蹴り出され、損失を補填するための出稼ぎに励んでいるのだ。
稼ぐために使う材料は、青薔薇イス。
ライスシャワーの不幸体質と、コンバインから流れ出した重油。
それが水田で、奇跡の科学反応を起こし。
咲き誇った奇跡の蒼い宝石。
そのドス青い色により、米としての食用には向かず。
青色2号に代わる、新たな着色料として業界からは注目されている。
絶対インディゴカルミンより、身体に悪いぞあれ。
「大盛況でしたわよ。あれだけ売れれば、農場への帰参を許されるでしょう。
スターウマ娘がその手で米を粉砕し、練った手作りタピオカ。
稀少価値は計り知れませんわ。
しかもやたら蒼い。ちょっと光ってる。
サンバ衣装も効いたのでしょう。あの駄肉」
「アイツ、ミキサーとかも使えないもんね……手作りしかできないのに。
よくもコンバイン買えるだけの数、作れるもんだわ。あの駄肉」
ハルウララは、心が通じる感覚を得た。
やはりあのブルンボルン。粛清すべきである。
ブラジルだからといって、サンバとは。
ウマ娘として恥ずかしくないのか。
いや、羞恥心とかないわアイツ。
あの勝負服から見ても明らかである。
「ライス農場を支えているのは、ブルボンさんですもの。
手を変え品を変え、様々な手段で稼いでますわ。
修練の賜物ですわね。
むしろ、農場が邪魔ではないでしょうか」
「おかゆの存在全否定じゃん」
ライスシャワーは頑張る子だが。
不幸を超えた、何かが彼女を残念なおかゆにしている。
だがブルボンも、単体ではポンコツなので生きてゆけぬ。
まぁ、良い共依存の関係なのだろう。
ハルウララは納得した。
さて、ユキオ―とやら。ここからどう、話を収めるつもりか。
『ところでスーパークリーク様。あなたの番組のテレビ局。
クリークママといっしょの予算を出しているのは、どこかご存知だろうか』
「えっ? もちろん知っているわ。UHK。【ウ】マ娘【放】送【協】会よ」
『その情報は古いですよ。今はFHKです』
「そういえばプロデューサーがそんな事を言ってたような……
でも当番組には、さほど影響は無いと聞いているわ。
どうせ一文字変わっただけでしょ?
それが今、何の関係があるのかしら?」
『FHKの正式名称を知っておられますか?
【フ】ラッシュ・スプー・ラッタ商事【放】送業界【革】命部門なんですよ。
おや。この艦にも、スプ〇とネズミの紋章がついておりますな』
「……フラッシュ・スプー・ラッタ?
ママ、とっても聞きたくないんだけども。一応聞かないとね。
ちなみに、ちなみになんだけど。御社の代表取締役のお名前は?」
『スマートファルコン会長ですよ。当然でしょう。
こんなクソみたいな名前。会社につけるヤツ、他にいます?』
『ユキオー。後で制裁な。ママ。なんかそうだったみたいだよ。
私も知らんかったけど。いやー、うっかりファル子、上司になってたみたい』
「畜生ッ……! 納得いかないわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
下剋上ものが流行りだからって! こんなのあんまりよっ!
こんな適当な流れで! バ鹿に生殺与奪の権を握られるなんて!
かくなる上は、最大出力のマ魔王の産声で……」
『楽しみにしておりますよ、会長。
ところで、最近弊社の中間管理職たるワシに。
スタジオ老朽化の話が耳に入りましてな。しかも不幸な事故により更地に。
いい機会ですので、スタジオ建造に、以前の3倍の予算をつぎ込もうと思いまして。
そうそう。国際放送も視野に入れておりますよ』
「永遠の忠誠を誓います♡」
ハルウララは、バ鹿が殿上人になった悲しみと。
クリークママのあまりの変わり身の早さに。
膝を折って、顔面をツバメのケツに埋めた。
クリークママは、優先順位を決して間違えないのだ。
赤子のためなら、不倶戴天の敵の足を。
喜んで舐め尽くす女である。
誇りでは、子育てはできぬのだ。
つづかない