ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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明けましておめでとうございます。
なんかまたオリキャラが暴走しました。
反省はしない。
カイジ、名作ですよね。


ファル子さんじゅういっさい そのじゅうに ギターを鳴らせ

~前回までのあらすじ~

 

 囚われのバ鹿を救うためとかは特に関係なく。

 

 舐められた落とし前を付けさせるため。

 

 第四世代型超光速恒星間航行用超弩級万能宇宙戦艦ファル子リヲン(早口)攻略会議。

 

 ハルウララはその、智将としての才。

 

 これを遺憾なく発揮。

 

 まずは今日はクリスマス。

 

 愛する娘に与える、とびっきりのこけし。

 

 その選別こそが最も重要な議題。

 

 だが未熟なツバメの問題提起。

 

 腰痛予防に即座に却下。

 

 影の薄い黒幕をスルーしつつ。

 

 更なる野望に燃えるマ魔王を横目に。イカした作戦を練り切りする。

 

 使える手駒はゲーミング紅茶中毒、速度中毒ばんバ、さらには愛する我が子。

 

 おまけの褐色ロリの疑問を華麗にスルーし、草案が出来たところで。

 

 ツバメによる、独占欲の発露。

 

 ガイドラインに対する叛逆の狼煙。

 

 ちゅーなどと。呆れたツバメにウララは唸る。

 

 正直興味はあるが、ガイドライン以上にメルヘン重視。

 

 勇者の唇は安くない。

 

 だが、その心意気を認めたハルウララ。

 

 顔ケツ声と三拍子揃った彼を、初めてトレーナーと認める。

 

 そして始まる決戦。

 

 宇宙戦艦など知らぬとばかりに、脱線するが世の定め。

 

 彼が必死に練り上げた、トレーナーとして生きた証。

 

 ちん〇ん亭式催眠術に、思いックソドはまりしつつ。

 

 彼を華麗に恋空し、乙女の意地を見せつけた。

 

 宙を舞った本筋は、今こそ線路を破砕しつつ着地をキメる。

 

 初見殺しとはこうやるのだ。

 

 最新話から読む派の読者様、申し訳ありません。

 

 第一話から読め。

 

 

 

 

 

 

 

 「会長。無駄な抵抗って、知ってる? 

 今の会長の事を言うンだよ。

 またひとつ、お利口になったね?」

 

 「ユキオ―……! なんでこんなことを……!」

 

 「なんで? なんでって言った? わかってないね会長。

 ほら、顔を背けちゃダメだよ。

 その頑なな心。わたしの愛で破壊したげる」

 

 「ひっ……! いやっ! ファル子、そんなもの……!」

 

 

 

 差し出される、鈍い輝きを放つ金属。

 

 その上に載せられた、おぞましき物。

 

 スマートファルコンは、いやいやと首を振る。

 

 

 

 「いいから食えしっ! その年になって! 好き嫌いしてるンじゃないッ!」

 

 「ファル子、レバー苦手ぇぇぇぇッ! 血なまぐさいもんっ! んぶっ!」

 

 「はい噛んで噛んで。ちゃんと一口につき、10回は噛むンだよ?」

 

 「んぐんぐ……あれ。臭くない」

 

 「んふ。新鮮なヤツを、氷水で血抜き。牛乳で臭み取り。

 さらにニラと、ちょっぴりにんにく。これで臭みは気にならンしょ。

 子供の頃苦手だと思って、そっから食べてなかったンしょ? 

 わたしが作る限り、臭いとかの心配はしなくていいし。

 師匠直伝の料理テクで、会長を健康にしてあげるし」

 

 「うう。部下の女子力が高い……おいしいけど複雑な気分。

 ユキオ―、こんなのどこで習ったの? 

 ファル子、料理は教えた覚えないんだけど」

 

 「会長の家の冷蔵庫。初めて見た時さ。

 酒とツマミしか入ってなかったから。

 見た瞬間、ヘリオス師匠の所に駆け込ンだし。

 師匠主催の、ギャルのための料理教室。

 

 すごい評判いいンだよ。実際。

 まぁ口調は多少、ギャルっぽくなるけども……

 愛する旦那様と、幸せなパリピ生活を送るため。

 まずは食から整えましょう。道理だよね。

 一日三食。五十品目が基本だよ」

 

 「ギャルってそういうものだったっけ……」

 

 「二ホン一のギャルの、師匠が言うンだもん。

 間違いがあるわけないっしょ。

 さて、会長。お話を続けようか」

 

 

 

 独房型艦長室の中心。

 

 ふっかふかの椅子の上に囚われた、スマートファルコン。

 

 彼女は身構えた。一体次はどんな無理難題を。

 

 決して屈するわけにはいかぬのだ。

 

 膝の上で、自分のお口をふきふきして、空になった皿を眺め。

 

 上機嫌になでなでを要求する、ユキオー。

 

 その白髪を撫でつつ、彼女の言葉を待つ。

 

 かわいいヤツめ。これでもう少し素直ならば。

 

 キープから本命への昇格も。

 

 やぶさかではないのだが。

 

 

 

 「さて会長。条件を整理するよ。

 わたしの要求はよっつ。

 

 ひとつ。クリークママといっしょの出演は、週三回。

 やっぱり縛りすぎるのもよくないし。

 月曜日と金曜日は、会社で決裁してね。

 

 今までわたしが代行してたけど、やっぱりおじいちゃんたちも。

 恩義ある会長が決裁した方が、嬉しいと思うし。

 たまに現場にも、顔を出してあげてね。

 

 ああ、厳選して後は決裁するだけにしとくから、そこまで難しくはないよ。

 ビョードーおじいちゃんと、ワシーおじいちゃんも手伝ってくれるし。

 調子が悪い時とか、やる気が出ない時は言ってね。お休みにするから。

 土日はおうちでゆっくり休んでね。

 

 

 ふたつ。わたしに食生活を委ねること。

 会長にはいつまでも、綺麗で長生きしてもらいたいし。

 外食したい時は、事前に言うように。

 レシートだけ持って帰ってきてね。次の献立に反映するし。

 

 

 みっつ。ハルウララと結婚するのはいいけど、わたしを愛人にすること。

 もちろん法改正したら、ちゃんと結婚しようね。

 

 

 よっつ。ワンちゃんとやらはまだ興味ある? 

 子育てはあんま自信ないンだけど。

 でも、うちの子になるからには、本気で育てるから。

 ちゃんと、エイシンフラッシュに同意を取ってね。

 

 まぁわたし、あんまあのウマ気に入らないけど……

 会長の笑顔を取り戻せたから、許したげるよ。

 やっぱ、産みの親と無理やり引き離すのはよくないし。

 養子縁組は、わたしがどうにかするから。

 

 

 このよっつだよ。

 どう? 大分厳しいとは思うけど……

 でもわたし、一生懸命考えたンだよ。

 不満な所があったら言って。案を修正するから。

 

 リアクション芸は、正直どうかと思うけど……

 会長の笑顔のためなら、頑張るし」

 

 

 

 スマートファルコンは唸った。

 

 このウマ娘、愛する者をダメにする才能に。

 

 あまりにも満ち溢れている。

 

 身を任せたが最後。死ぬほど幸せにされてしまう。

 

 一度受け入れれば。

 

 もはやウマ生の墓場からの脱出は、不可能だろう。

 

 

 

 ……あれ。何も問題ねーなこれ。

 

 むしろコイツを逃すと、これ以上の優良物件は得られぬ。

 

 桜の妖精を思うさま愛玩しつつ、幸せな家庭生活を送れるだろう。

 

 よし。ここは渋る振りをして、さらなる譲歩を得よう。

 

 愛しの二号さんよ。もっと甘やかして。

 

 

 

 『ユキオーちゃん。下に動きがあったぞい』

 

 「ん。ハルウララが動き出したみたいだね。

 会長。ここで待ってて。おつまみはここ。

 ナッツ類を中心に食べてね。

 チェイサーもちゃんと飲むように。

 じゃあ、わたし対処してくるから。

 いい子で待っててね。あ、なでなでして」

 

 

 

 ご要望にお応えして、なでなですることとする。

 

 

 

 「んふー。しゃーわせ……

 行ってくるね。あ、手錠キツくない? 緩める?」

 

 

 

 ふわふわの。カバーに包まれた手錠。

 

 まったくキツくないそれを、気遣わしげになでられる。

 

 というかこれ、普通に抜けるな。

 

 

 

 「大丈夫だよ。ユキオ―。気をつけてね。

 ウララちゃん、キレると鬼より怖いから」

 

 「うわぁ。正直勘弁して欲しいンだけど……

 でも会長は、あの違法ロリと結婚したいんでしょ? 

 やっぱ暴力的なおよめさん、良くないと思うよ。

 正妻となるに、相応しい教育をしてあげるし。

 まずは無力化して、洗脳を……」

 

 

 

 ぶつぶつと呟きつつ、部屋を出るユキオ―。

 

 頑張って欲しい。幸せな結婚生活のために。

 

 

 

 スマートファルコンは、グラスを傾け。

 

 ユキオ―お手製の、塩分控えめのおつまみに。

 

 舌鼓を打ちつつ、思った。

 

 ユキオ―攫ってきた過去の自分、超グッジョブ。

 

 やはり、最後に勝つのはこの自分である。

 

 

 

 

 

 

 「一おじいちゃん。状況は?」

 

 

 

 なでなでの余韻に浸りつつ、艦長席の横。

 

 副長席に座る。

 

 艦長席は会長限定。お膝の上に乗らぬ限り、自分が座るなど。

 

 とてもとても、出来はしない。

 

 索敵担当のおじいちゃんに、状況を聞く。

 

 

 

 「おお。ユキオーちゃん。下でなんか仲間割れしとる。

 あやつら何を考えておるんだか、さっぱりわからんな。

 だが、勝負はついたみたいじゃぞ。

 ハルウララの勝ちだ。さすがは桜色の暴帝と言ったところか」

 

 「ふむ。六おじいちゃん。予想される相手の出方は?」

 

 

 

 なるほど。わからん。だが、信頼できるアドバイザーが居る。

 

 ハルウララについて聞くならば、このおじいちゃん以外には居ない。

 

 

 

 「……ウララは全盛期から大分落ちてる。

 ドリームトロフィーリーグ時代なら。

 桃白〇式舞空術でもやってきただろうが……

 アイツの腰は、そんな出力にはもう耐えられん。

 できて一回のみ。しかもやった瞬間リタイアだ。

 考えなくてもいいだろう。

 

 恐らくアフガンコウクウショーによる飛行と。

 メジロマックイーンの第2領域による、短時間の飛行。

 それぐらいがせいぜいだろうさ。

 

 サイレンススズカがアップしてるのは謎だが……

 いくらスピードを乗せても。

 走り高跳び程度じゃ、この高さには届かん」

 

 

 

 なるほど。相手の手札はやはり少ない。

 

 このファル子リヲンなら、容易く蹂躙できるだろう。

 

 

 

 「ふぅん……三おじいちゃん。バリアは?」

 

 「問題ないぞい。やれやれ。ひさしぶりのうまぴょい伝説。

 老骨には応えるわい。六よ、腰は大丈夫か?」

 

 「まだまだ現役だっていけるわ。舐めるんじゃねぇぞ」

 

 「引退したわりに元気じゃのー。

 まぁ、身を引く他に無かったとはいえ。

 会長には感謝じゃわい。やはりわしらは……」

 

 「むっ。動き始めたぞい! ユキオーちゃん、ライブの準備は!?」

 

 

 

 おっと。動き始めたか。

 

 あちらの手札は僅か。

 

 こちらは頼れるおじいちゃんたちの。

 

 腰を気遣いつつのうまぴょいにより、バリアも万全。

 

 

 

 昔取った杵柄を、舐めてはいけない。

 

 そして。

 

 このユキオーがいる。

 

 

 

 「オッケー。おっぱじめようじゃん? 

 おじいちゃんたち! ノッてるかー!?」

 

 

 

 じゃかじゃかじゃかじゃかじゃんッ! 

 

 

 

 艦長席の前のステージ。そこに乗り。

 

 ギターをかき鳴らす。

 

 この第四世代型超光速恒星間航行用超弩級万能宇宙戦艦ファル子リヲン(早口)。

 

 ヒトの力も、ある程度は増幅するが。

 

 ウマ娘の力を、最大限に増幅する。

 

 古代ウマソセス王国の遺産。

 

 その性能を最大限発揮するため。

 

 必要なのは、歌のウマさではない。

 

 感情の昂りである。

 

 

  

 「「「「「「ノッてるぞおおおおおおおい!!!」」」」」」

 

 

 

 オーディエンスのレスポンス。

 

 いい。非常に良い。

 

 自分の奏でる、アコースティックギターも。

 

 彼らの嗜好に即している。

 

 レコード世代は伊達ではない。

 

 

 

 街はずれの楽器店。

 

 会長とともにお出かけして、一目惚れしたこのギター。

 

 買い与えてもらった時、思わずほっぺにちゅーしたものだ。

 

 トランペットを買ってくれる、あしながおじさんは居なくとも。

 

 わたしには大恩ある、愛しいあのウマが居る。

 

 

 

 とても手になじむ。

 

 多分、産まれた時から助言してくれている、彼。

 

 やたらポエミィなおじさんが、ギターが得意だったのだろう。

 

 このユキオー。彼にはとてもお世話になっている。

 

 

 

 困った時は、彼が頭の中でそっと囁くのだ。

 

 幸せになるための道筋を。

 

 

 

 金は命よりも重い。

 

 金の話をする時は、虚偽は言ってはならない。

 

 部下の心を掴む方法。

 

 要忖度おじさんの扱い方。

  

 決して油断してはいけない。  

 

 奴隷も皇帝を二度刺すことがある。

 

 そして。

 

 

 

 「勝たなきゃッ!!! ゴミなんだよッ!!! 

 わたしはこのウマ生を、精一杯生きるッ!!! 

 生きて生きて生きて生きて生きて生きてッ!!! 

 勝ち続けて、決して後悔なんか、してやらないッ! 

 おじさん、見ててッ! あなたの分までッ! 

 幸せなウマ生を送ってあげるッ! 

 カイジとやらも、ここには居ないッ!」

 

 

 

 そう。

 

 志半ばで奴隷に刺された、堕ちたる皇帝。

 

 自らを負け犬であると告げた、彼の無念。

 

 それを晴らすためには、完全無欠のハッピーエンド。

 

 それこそが。それだけが。それ以外には、有りはしない。

 

 

 

 さぁ。来るがいい。我が恋敵。

 

 彼女の一番は譲ってやろう。

 

 一番になど、ならなくても良い。

 

 『彼』の魂を受け継いだ自分に、一番は似合わない。

 

 だが。

 

 

 

 「それはそれとしてっ! 上下関係は大事じゃんッ!? 

 会長が上ッ! あンたは下ッ! 

 たどり着く可能性なんて、万に一つも残さないッ! 

 会長の『力』に跪いて、堕ちて堕ちて堕ち尽くせッ! 

 領域増幅用アンプ! 出力最大ッ!」

 

 

 

 アフガンコウクウショーには、ああ言ったが。

 

 本来なら、彼女一人を堕とすのが精々だ。

 

 自分の領域は、極小範囲にしか作用しない。

 

 元々、自分に作用させるための。

 

 『彼』の末路を再現したものだからだ。

 

 

 

 だが、このファル子リヲンなら。

 

 その領域を、歌により増幅できる。

 

 さぁ、悲しみを歌おう。

 

 喜びを叫ぼう。

 

 この曲は。

 

 

 

 「ファル子リヲンッ! リクエストッ! 曲名ッ! 

 

 †逃げられっ☆堕天恋(にげられっ☆フォールンラヴ)†パロディソングッ! 

 

 †落ちぶれっ☆堕天録(おちぶれっ☆フォールンダウン)! †

 

 さぁ、わたしの恋で、全てが堕ちるッ!」

 

 

 

 『彼』の失墜と。『私』の恋心を歌う曲である。

 

 

 

 

 

 

 つづかない


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