ウマ娘小説には欠かせますまい。
我が考察、存分に見るがいい……!
~前回までのあらすじ~
勝利の余韻に浸る間もなく。
ゲルマン陰陽師の声に。宇宙戦艦の異常に気付く、ハルウララ。
愛について講釈を垂れながらも、紅茶中毒に準備状況を問う。
勇気の履帯が ギュイギュイギュイン。
不思議なアホが ルンルン気分。
パリピ 見習い 筋肉ン。
メジロ一家のカチコミだ。
一人は特にメジロと関係ないが。
メジロパリピ。意外に居そう。
そして、宇宙戦艦に動き。
ステージの上でジジイに崇められる。
ウマサ―の姫。
敏腕従順ダメウマ全自動甘やかし異世界魂転生白髪合法JKロリ秘書系オリジナルウマ娘中間管理職(ギャル口調)(早口)。
ユキオ―の単独ミニライブだ。
アコースティックギターをかき鳴らし、歌い奏でるパクリ歌。
パロディの濫用は厳禁。
わかっておらぬと憤慨するも、その身に感じる重圧。
ユキオ―とやらの領域である。
来たぜぬるりと。失脚の香り。
そして弱者どもは跪き。
産まれながらの強者たる、ハルウララ。
膝を屈さぬ、覇王の威風を見せつける。
夢と希望など。そのようなものは必要ない。
ウマ娘は結果でのみ語る。
頼るべきは、己の脚と拳のみ。あと愛嬌。
そのように生きて来た。
さぁ、始めよう。
劇場版呪物開戦。
領域展開である。
「まさか。わたしの領域を生き様のみで破るなんて。
想定できるわけないじゃン? 六おじいちゃん。
ハルウララって、昔っからあンな感じなん?
ズゾゾゾゾッ。ガフッ! 当たり再びィッ!」
「ああ。アイツを送り出してすぐ。
縁側でぼうっとしてたら、いきなり現れてな。
いきなりズタ袋に詰め込まれて、気づいたらトレセンよ。
まったく。年寄りは敬えっての。
まぁ、育て甲斐は死ぬほどあったから。いいけどな。
お陰で10年は若返ったぜ」
「水ぅっ! んっくんっく……ふう。
一おじいちゃん。ありがとう。
トレーナー契約ってそれでいいの……?
わたし。誰も契約してくれなかったから、黄昏てたら。
会長に無理やり潜水艦に連れ込まれて。
あれよあれよという間に、中間管理職になってたんだけど。
まぁ、今は満足してるからいいけどさ。
会長かわいいからね。当然だね」
「似たようなもんだな。
人生もウマ生も変わらん。
大事なのは、笑って死ねるかどうか。
それだけだろ。
まぁ……アイツほどウマ生を楽しんでるヤツも。
なかなか居ない気がするがな。
さて、どうするんだアイツ。
領域はもう使えんはずだが……
何か隠し玉でもあるのかねぇ」
ユキオーは、ファンサービスを終え。
汗を拭きつつ、信頼するアドバイザーと駄弁っていた。
タピオカうめぇ。たまに痛い目に遭うが。
まぁスパイスというやつだ。
会長の使ったストロー。値千金の価値がある。
というか、これ。やたら多いなぁ……
『マックイーンちゃん。飛べ』
『端的すぎませんこと……?
カツアゲするヤンキーかなんかですか。
というか、あのバリアっぽいの。
どうにかしてからにしてくれませんこと?
わたくしの領域、攻撃性能は無いんですけど。
さすがに昇竜じゃあ厳しいですわよ。あれ』
『チッ。じゃあいいよ。プランBで行こうか。
トレーナー。準備』
『ウララ。何をするのか、教えてくれないか。
オレに何か役割が? ヒト息子には厳しい世界だぞ。
ウマ外バトルに参入するには、一か月ほど修行期間が欲しい』
『一か月あればどうにかできますの……?』
集音マイクから聞こえる音に。
耳をぴこぴこさせる。
このファル子リヲン。
ライヴ中はさすがにうるせーから無理だが。
古代ウマソセス王国の遺産は、伊達ではない。
下の会話も、余裕で拾える。
バ鹿どもめ。作戦が筒抜けになっているとも知らず。
好き勝手にぴーちくぱーちくと。
わたしも駄弁りに参加したいなぁ。
艦内に居るのは、会長と、おじいちゃんたち。
あとゴクウ。
下の彼女たちも、同年代というには。
ちょっとばかり、離れているが。
このユキオ―。女子トークには常に飢えているのだ。
この戦いが終わったら。お友達になってもらうんだ。
心に決めつつ、ハルウララたちの動向を見守る。
何が好きかな。山吹色のお菓子でいいかなぁ。
おっ。動き出すみたいだぞ……?
「さて。始めようか。まずはトレーナー。ケツ文字を」
『盗聴の危険性アリ。話を合わせろ』
言いつつ、ハンドサインを出す。
バ鹿め。盗聴対策など。
基本中の基本である。
ウマ特殊作戦部隊にスカウトされたこともある。
このハルウララを舐めてはいけない。
「ううむ。ウララ以外にケツを出すなど。
紳士として耐えがたいが……
お尻を出した子は一等賞だ。致し方あるまい」
「あなた方の関係。羨ましく思いますわ。
ドバイのあの方は、お元気でしょうか……」
「そろそろ諦めろ。新しい恋を探せ。
上だけ向いて生きていこう。
下を向いても、小銭ぐらいしか落ちてないよ。
トレーナー。もっと淫らに振れ」
『タンクへ。陽動する。説得が終わったら栗毛とゲルマンに準備させろ』
「いいケツしてますわね……じゅるり。
おっと。そうさせてもらいますわ……
どれ。ライアンとパーマーと。奪還作戦でも練るとします」
「話聞いてた? 未練の塊じゃねーか。
もういいわ。40年後にドバイ行けよ。
そしたらババコンのストライクゾーンでしょ」
「華の命は短いんですのよ? 今を精一杯生きなくては」
我が物であるケツを、名残惜し気に眺めながら。
ずんだ餅のパン。
そのような形ということになっている、戦車に向かう彼女。
よし。通じたようだな。
でもどう見ても緑色じゃねーぞ、あれ。
ずんだパンマンタンクに駆け寄り、ハッチを覗き込む彼女。
加湿器どもは、例の領域により。
縄が死ぬほど食いこんだため、処置のため。
パン工場内部に引っ込んでいた。
「オラッ! いつまで手当してるんですのっ!
……Oh……修羅場ってますわね……」
「だいたいさ。あンたらほんとありえんじゃン?
パーマー。ウチ、言ったよね? 一度のウマ生。ハジけたもん勝ち。
なのに何さ。ギャル修行もせずに。ムキムキムキムキと」
「あの……私はライアン……」
「は? 口答えすンの? 電化製品の見分けとかつかンし。
悔しかったら、ギャル道場にかしこまりっ!
立派なギャルにしてやるし。
オラッ! ポージングしなっ!
あんたらの魂のギャルを呼び覚ましてやんよっ!
ヘイヘイ! 肩にロードローラー! ブッ潰れよォッ!」
「なんて素敵なコール! 燃えてきましたよー! ねぇパーマー!」
「腹筋に私の名前つけるのやめて?」
「あの……お話をですね……ヘリオスさん?」
「マックイーン。あンたは働いてるからまだマシだけど……
丁度いいからギャル道場に拉致ピッピだし」
「あら。わたくしのギャル力。
舐めてはいけませんわ。
メジロを舐めた者には死を。家訓ですわ。
まぁパーマーがお世話になっておりますから。
料理でわからせて差し上げますわ。
わたくしのスターゲイジーパイの完成度。
魅せて差し上げますわ。パイあそばせ?」
「私、あのパイ嫌いなのよね……」
「黙れパーマー。うなぎゼリー食わせますわよ?」
なるほど。よくわからんことになっている。
ゲーミング葦毛なら、パリピも説得できないかもしれないが。
強く生きて欲しい。
「さて。ナッちゃん。出番だよ」
「ぴよっ!」
飛び去るナッちゃん。
ひよこが空を飛べぬなどと。
誰が決めたというのか。
ハルウララは、溶鉱炉に沈み込みながら。
ガッツポーズをキメる、ミホノブルボンを幻視した。
常識は、敵だ。
さぁ。魅せてやろう。
暴帝と呼ばれた所以。
領域。
ウマ娘にのみ許された。
速く走るために三女神から与えられた、奇跡。
まぁ、用途外使用をキメ込む、バ鹿どももいるが。
このハルウララに限って、そのような。
道理に反したことなどはせぬ。
通常、レースで使われる『領域』とは。
固有スキルとも呼ばれる発動形式だ。
銃刀法に違反したり、セルフダーリンお仕置きだっちゃしたりするが。
それらは、全て、『領域』そのものではなく。
そこから漏れ出した、力の片鱗である。
固有スキルだけを見ると、千差万別であり。
共通点など無いようにも見える。
だが、根本は同じ。
ウマ娘の心象風景。
ウマソウルが見た夢の続き。
それを現出させ。
この世界というキャンバスを、塗り潰す奇跡である。
レースにおいては。
ルーティーン化した、発動条件を満たした際の。
ごく一部の現出に留まり。
領域そのものを、完全に展開することは無い。
全てを引き出すには、極度の集中が必要であるためだ。
目を瞑り、胸に手を当てる。
ウマソウルが絶叫する。
勝ちたい。それしか叫ぶ事の無い、彼女。
彼女の願い。それは。
レースに勝つ事。
では、ない。
走って、走って、とにかく走って。
一勝もできなかった。
なんど走ったところで、その身に栄誉は無く。
本来ならば、この世界に流れ着くのに足る功績など。
このウマソウルには無かった。
でも、愛してくれた人たちがいた。
応援してくれる人たちがいた。
彼らの願いにより、この身は。
第二の生を受けたのだ。
彼らに、恩返しを。
懸命に生きて、生きて、生き抜いて。
彼らが与えてくれた、二回目のウマ生。
それに意味があったということを。
証明しなければならない。
ならばどうするか。
笑って死んだ姿を。
現世ではもう会う事のできぬ、彼らに。
最少単位の最大幸福。
このハルウララの、完膚なきまでのハッピーエンドを。
この手で掴み取り。
ヴァルハラにて待つ、彼らに捧げる事こそが。
それこそが。
今生における、勝利であるのだ。
そのためには、こんな所で躓いてはおられぬ。
領域よ。ここに。
世界が塗り替わる感覚。
目を開ける。
桜色が舞っている。
花弁がひらひらと落ちる、庭園の中央には。
雄大なる桜の木。
己の『力』の象徴。
この風景を目にするのも久しぶりだ。
「ウララ。これは……?」
「領域。わたしのウマソウルの見た夢。
聞いたことはあるでしょう?」
「ウララの領域を見るのは、初めてだな。
これが噂に聞く、完全展開か……
ラストランでも、片鱗すら。目にすることはできなかった。
オレが未熟であるためか?」
展開時取り込んだ、彼。
トレーナーが、花弁を手のひらに載せ。
尋ねてくる。
何をバ鹿な。
「うん」
「うんっ!? 今うんって言ったっ!?
そこはそんなことないよって!
オレ、言って欲しかったなぁ!?」
「わたし、自分に正直に生きるって決めたんだぁ」
「愛バがオレの心を積極的に破砕してくる……」
「まぁ、先程の戦いで。トレーナーの成長はわかったよ。
合格点をあげる。わたしの領域。魅せてあげるよ」
「アフちゃんとかは勝手気ままに使ってるのに……
領域って、トレーナー必要なのか……?」
「わたしに限ってはそうだよ。この領域、ちょっと特殊なんだよ。
固有スキルだけでもきつい。しかも完全展開。
わたしだけだと、自爆するだけだよ」
「ふむ。まぁそういうことなら……
それで。オレは何をすればいい?」
「見てればわかるよ。さぁ、殺るよ」
「領域って。走るための物じゃなかったっけ」
「走るためにも使える。当たり前でしょ。
でも走るためだけの領域だと。
わたしのウマソウルは満足できないんだ。
そんで、走るために使わない時は、条件を満たせば。
わりと自由に使えるんだよ」
「三女神、ガバガバすぎだろ……」
「やつらレース脳だから。さて、宇宙戦艦の様子はっと」
「冬に桜ァッ!? まさか領域ッ!? 六おじいちゃん!?
ハルウララ、領域使えなかったんじゃないの!?」
「予想外だッ! あの若造! まさか、オレと同等の能力を……!?
ウララの領域は、熟練のトレーナーが居れば発動できる!
だが、完全展開だとっ!?
部分展開だけでも厳しいというのに!
アレを支えられるほどのテクなど!
20やそこらの若造に、できることではないっ!
自爆するだけだ! ハッタリだっ!」
「……領域発動にトレーナーなんて。
必要ないんじゃないの?
そりゃあ心が繋がったトレーナーが居れば。
心象風景は広がっていくっていうけど。
でも、必要なのは成長する時だけでしょ?
発動時はいらないでしょ。
アイツの領域、あのデカさ。育ち切ってるじゃん。
なンだよあの桜の木。世界樹かよ」
「まぁすぐに閉じるだろ。目くらましだ。
ぼうっと見てる隙を突かれちゃたまらん。
メジロのパン屋戦車の動向を見ておこう」
「うん。動きはないみたいだね。油断したな。ド阿呆め」
「ウララ。よくわからんが頑張れ……!」
「んふ。いいね。トレーナー。自己催眠始めて。
職業はマッサージ師。ドスケベ抜き」
「お? おう……。オレは愛バ専門マッサージ師……
オレは愛バ専門マッサージ師……」
トレーナーの応援。
応援は大好きだ。
ウマソウルがときめく。
やはり、このハルウララには。
声援が無ければ始まらぬ。
トレーナーに準備をさせ。
桜の幹に手を当てる。
流れ込む、力。
みしみしみしみし……
領域に響く、骨が軋む音。
異音にトレーナーが眉を寄せる。
だが、五円玉の動きに淀みはない。
自己催眠は順調なようだ。
このハルウララ。
適性はダート短距離。
短距離選手に必要なもの。
それは何か。
レースに必要な要素はいくつかあるが……
駆け引き。圧倒的な実力で、蹂躙すれば良い。
持久力。短距離を駆け抜けるためには、必要ない。
デバフ。弱者の発想である。
必要なのは、ただ一つだ。
めきめきめきめき……
軋み続ける不協和音。
固有スキルの、レースにおける発動条件。
最終コーナーで、後方に位置し。
前を征くウマ娘どもを見て。
敗北の予感に、腹を立てること。
今の自分は、大層立腹している。
バ鹿に舐められたためだ。
舐められたままで済ませては。
このウマ生に、後悔が残る。
それでは胸を張って、彼らに会えぬ。
この領域の効果は、単純明快。
怒りを引き金に、瞬発的な推進力を得て。
己を甘く見たバ鹿共を抜き去り。
そのまま全てを置き去りに、駆け抜けるため。
圧倒的な筋力を、この身に宿すことである。
レースを走り終わり、引退した後も。
幸せを掴み取るために、最大限に活用できる。
一石二鳥というものである。
固有スキルを展開せずとも、その副作用により。
己は他のウマ娘よりも怒りっぽく。
この矮躯には過剰な筋力のため。
身長が伸びなかった。
やはりウマ。代償までは、考えが及ばなかったようだ。
そして。腰が痛い。
若い頃は良かったが、バ鹿げた筋力に背骨が締め付けられ。
ラストランでは、固有スキルの発動すら覚束なかった。
完全展開して、『これ』を使おうものなら。
椎間板が一瞬でパァッンする。
だが。マッサージ師さえいれば……!
「トレーナー! 腰を揉めッ!」
「おうっ! ヒャッホウ!! 役得ッ!!!」
いやらしい手つきで、腰を揉まれる。
うむ。とても心地良い。
こやつ。元々の腕に加え、思い込みだけで。
現役時代を支えた、2人のトレーナーよりも。
マッサージの腕が上になっている。
さすがは己が認めた最後のトレーナー。
我が覇道を支えるに、相応しい……!
めきめきめきめき……ずぼっ!
構える。
拳銃? 薙刀?
スケールが小さい。
丸太?
ふざけているのか。
そのようなもので、生は誇れぬ。
この領域の名を聞け。
そして、この生を称えよ。
断末魔の悲鳴で以て。
見ていてみんな。
愛してくれた、全ての人たち。
この世界に、わたしは立派に咲いている……!
ウマは黙って。
大樹で殴る……!
「後悔無き生をッ! 怒りがッ! 『沸く沸く! 喰らえマックス!』」
つづかない