ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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うん。真面目に書いてるつもりなんだ。
ほんとだよ。


彼女はまだ存命ですが。
ウマソウルの関係上。
この作品に於いては既に、眠りに就いております。
申し訳ありません。


ファル子さんじゅういっさい そのじゅうご メジロ・オラ(つき)トリオ

~前回までのあらすじ~

 

 バ鹿に落とし前をつけさせんとするハルウララ。

 

 宇宙戦艦ではユキオーが。

 

 あまりに雄々しい生き様に。

 

 目を点にしながら、盗聴していた。

 

 トレーナーのケツを目眩ましに、作戦を練る暴君。

 

 お友達を切に求める、ぼっちギャルの想いを他所に。

 

 信頼は特にしていない、葦毛を使いに出し。

 

 アンポンタンクから聞こえる罵声。

 

 ギャル道とは、正気にてならず。

 

 特に気にすることもせず。

 

 ウマ娘世界における必殺技・領域展開に臨む。

 

 唸りを上げる、ウマソウル。

 

 かつて人を愛した魂。

 

 『彼女』の想いを継承した、自らが願うは。

 

 完全無欠のハッピーエンド。

 

 さぁ、咲かせよう。

 

 我が生き様を。

 

 この世界 咲き誇りしは ハルウララ。

 

 トレーナーとの絆を以て。

 

 今、振り抜こう。

 

 咲き誇るこの命を。

 

 ウマ娘は、いつだって。

 

 全力で今を、生きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『被害報告ッ!』

 

 『バリア全損ッ! 修復までオールナイツ! 

 うまぴょい伝説は終わらないッ!』

 

 『装甲に被害なしっ!』

 

 『わしらもそこまで踊れんぞッ!? 

 寄る年波には勝てんッ!』

 

 『二おじいちゃん! 機関部はッ!?』

 

 『無事じゃいっ! ファル子リヲンは柔じゃないぞいッ!』

 

 『オッケー! もうあんなトンでも武器! 

 出てこンでしょ! 装甲板は破れないッ! 

 勝ったッ! 第二部完ッ!』

 

 『ユキオーちゃんっ! フラグが建っとる!』

 

 『立った! 勃った! クララが勃った!』

 

 『何を言っとる!! 灰二ッ!!』

 

 『名前で呼ぶなァッ!!』

 

 

 

 

 

 上空が騒がしい。

 

 ぼうっと。

 

 涙も拭わぬままに。

 

 腕の中の、鹿毛のウマ娘を見る。

 

 

 

 桜は散った。

 

 彼女の髪の色に、籠められた想いも。

 

 回復まで、時間が掛かるのだろう。

 

 

 

 「こ、腰が……腰がぁ……」

 

 

 

 譫言を呟く姿も愛らしい。

 

 この重みが、愛しくてたまらない。

 

 

 

 彼女の領域の中で、桜が散った瞬間。

 

 恐らく魂が繋がったためだろう。

 

 ぼろぼろの、彼女の蹄跡を見た。

 

 

 

 懸命に走り続ける、彼女。

 

 誰にも見向きもされなかった。

 

 その所有者にすら。

 

 

 

 年間に走れる数が、少しでも少なかったなら。

 

 この場には居なかっただろう。

 

 競争は、勝てない者に残酷だ。

 

 

 

 その連敗記録に注目され始めた彼女。

 

 終わりつつあった地方の。

 

 夢と希望を背負わされた。

 

 

 

 勝利への期待など、掛けられず。

 

 競走者として、あるまじき姿。

 

 だが。

 

 

 

 しかし。

 

 恐らく、とても。

 

 尊い敗北であったのだ。

 

 その身を削り、観衆に笑顔をもたらした。

 

 

 

 でなければ、ここには居ない。

 

 彼女は愛されていた。

 

 だが。

 

 

 

 それは。人のエゴではないだろうか。

 

 

 

 走り終わった彼女の、その後。

 

 怖気が走る程の、人の身勝手さ。

 

 その醜さを、ぼろぼろの身で味わい。

 

 

 

 人の善性がもたらした。

 

 最後に得た、安住の地。

 

 

 

 ハルウララは。

 

 そこで最期に。

 

 何を、想ったのだろうか。

 

 

 

 ぽつりと呟く。

 

 

 

 「ウララ。ハルウララは。

 人を、愛していたのだろうか。

 幸せに、終われただろうか」

 

 

 

 腕の中で、彼女が頬をすり寄せてくる。

 

 甘えん坊な子だ。

 

 

 

 そうか。君は。

 

 まだヒトを愛しているのか。

 

 ヒトは。

 

 自分は。

 

 

 

 ウマ娘。

 

 走るために、再度の生を受けた彼女たち。

 

 走り終わった彼女たちに。

 

 いったい何を、してあげられるだろう。

 

 

 

 「……オレは人が嫌いだよ。

 いつだって。君を傷つけた」

 

 

 

 「ツバメ……?」

 

 「ウララ。オレはもう、ツバメではないよ」

 

 「んふ……なまいきぃ……

 しょうがないなぁ……トレーナーって。

 ちゃんと呼んであげる……

 ねぇ。トレーナー。重くない?」

 

 「ああ。重いよ。愛しい重みだ。

 軽いなどと。口が裂けても言えない」

 

 「デリカシー、無いんだぁ……」 

 

 「オレは君に、いつでも正直で居るよ。

 さぁ、お眠り。疲れただろう。

 ……右手の爪。割れてしまったな」

 

 「昔から……割れやすいんだよね……

 ……『ハルウララ』の夢。見た?」

 

 「見たよ。とても綺麗で。

 とても痛い夢だった」

 

 「痛かったの? ……変なヒト。

 初めてだよ。そんなこと言われたの。

 あれはわたしじゃないよ」

 

 「オレは、変な人で居たかったよ。

 ツバメではなく」

 

 「……おかしなトレーナー。

 ちょっと休んだら、起こしてね」

 

 「ああ」

 

 

 

 彼女を横たえ、マッサージを始める。

 

 ちいさな身体。

 

 夢と希望を。

 

 今生でも、背負わされ。

 

 蹄の代わりに、腰を痛めたのだろう。

 

 

 

 また走り出す、彼女のため。

 

 調子を万全に整えなければ。

 

 いつもの仕事だ。

 

 ……いや。

 

 

 

 空を見上げる。

 

 桜吹雪が舞っていた。

 

 

 

 「ウララ。今度こそ。オレは」

 

 

 

 魂が告げている。

 

 二度と、間違えてはならない。

 

 

 

 植樹し直された、桜の樹の下には。

 

 彼女が今も、微睡んでいる。

 

  

 

 

 

 

 

 

 「さて。ウララさんは仕事をしましたわ。

 次はこちらの番です。

 ここで我らが役目を果たさなくては。

 メジロの名折れ。死ぬまで煽られ尽くします」

 

 「マックイーンが煽られたくないだけじゃない? 

 しっかし、相変わらず冗談みたいな力だね。

 こりゃ、私もじめじめしてらんないね。

 後で、ヘリオスとジョーダンと遊びに行こっと」

 

 「ウララさんの、あのパワー! 

 マックイーンが唸りますねぇ!」

 

 

 

 ジト目でこちらを見る、ギャル見習い。

 

 上腕二頭筋を見せびらかす、見せ筋。

 

 

 

 宇宙戦艦の装甲を破壊し。

 

 侵入可能にすること。

 

 それが、湿り気がようやく抜けてきた。

 

 このバ鹿どもと、自分の役割だ。

 

 

 

 「お黙り。調子が出てきたようで何より。

 殺りますわよ。領域、展開」

 

 

 

 バ鹿どもと、手を繋ぎ。

 

 そっと目を閉じ、呟く。

 

 広がる領域。

 

 手汗すげぇ。まだ湿ってたわ。

 

 

 

 

 

 

 目を開ける。

 

 眼前に広がる、風景を眺める。

 

 

 

 「……ここは。いつ来ても慣れないよね」

 

 「アルダンも震えてます」

 

 「そうですわね……でも、此処が。

 我らメジロの故郷ですもの。

 この、湖と火山。

 水と火が合わさり最強に見えますわ」

 

 「「マックイーンの感覚はおかしい」」

 

 「クソわよ。さっさと準備!」

 

 

 

 メジロ家のウマ娘には、一部の例外を除き。

 

 他のウマ娘には無い、ある特徴がある。

 

 

 

 産まれた場所が違っても。

 

 レースの勝利数に関わらず。

 

 ある、共通の特徴が。

 

 

 

 それは何か。

 

 総じて、長距離に高い適性を持つこと? 

 

 障害競争が得意なこと? 

 

 

 

 それは、全般的な特徴だ。

 

 全員には当てはまらぬ。

 

 答えは、此処。

 

 

 

 「共通領域最大展開! 

 甘味! メジロマックイーン!」

 

 「……苦味。メジロパーマー」

 

 「辛味! メジロライアン!」

 

 

 

 メジロ家の、ウマ娘は。

 

 自身の固有の領域に加え。

 

 共通の領域を持つのだ。

 

 

 

 『共通領域・メジロ牧場』

 

 

 

 メジロの栄光と、斜陽を表す。

 

 我らのウマソウルが見た光景だ。 

 

 レースに活用することは出来ない。

 

 

 

 ウマ娘は、己の力のみで。

 

 輝かしい勝利を掴み取るのである。

 

 

 

 では、この領域。

 

 メジロの系譜が生んだ、領域にして領域ではない。

 

 想いが、重なりあい。

 

 偶発的に産まれた、心象風景。

 

 

 

 ただの飾りか? 

 

 いや、そうではない。

 

 

 

 ここを利用して。

 

 ウマ娘単独では、起こせぬ。

 

 奇跡を起こすことができる。

 

 

 

 「さぁ! 紅茶をキメますわ! さらにこれ! 

 パクパクですわっ!」

 

 

 

 紅茶にチョコレート。

 

 これさえあれば、勝ちである。

 

 甘味が、領域に加わる。

 

 

 

 「毎度だけどさ。これ、三女神様に怒られない?」

 

 

 

 顔をしかめた、パーマー。

 

 彼女のウマソウルの、苦い思い出。

 

 障害競争を思い出しているのだろう。

 

 主流から外された、経験。

 

 苦味が、領域に加わる。

 

 

 

 「フンッ! フンフンフンッ! いいですよアルダン! 

 パァッンするまでッ! ボンバイエッ!」

 

 

 

 スクワットで、大腿四頭筋を痛め付けるライアン。

 

 あまりにマゾヒストじみた、トレーニング強度。

 

 辛味が、領域に加わる。

 

 

 

 領域システムから。

 

 三女神に伝わる、甘味と苦味と辛味。

 

 出所も不明な、訳のわからぬ不正アクセス。

 

 彼女たちの、今夜の献立は。

 

 麻婆豆腐にさぁ決まり。

 

 そしてウマれる、領域のバグ。

 

 

 

 「来た来た来た! 来ましたわッ!」

 

 「そりゃ三女神様も混乱するよね。

 与えた覚えのない領域から、よくわからん味が。

 ダイレクトに伝わってくるんだもん」

 

 「この技、誰が発見したんでしょうね」

 

 「さぁ! 詠唱ですわっ!」

 

 

 

 洞爺湖の湖面から、生まれる波紋。

 

 

 

 「そこでむすめはうかつにもっ!」

 

 「バリカンに嫁ぐことになったのさ」

 

 「出席したのは!?」

 

 「「「メジロ! メジロ! メジロ!」」」

 

 「それにお偉い……『パンジャンドラム』ッ!」

 

 

 

 混乱した三女神に叩き込まれる、謎の詠唱。

 

 トドメに告げられる。

 

 昨今ウマウマ動画のランキング上位を占める、彼。

 

 

 

 ウマ厨気味の三女神の混乱は、極限に達し。

 

 微笑むネビル・シュートの幻影。

 

 いい、笑顔です……

 

 

 

 そして、怪物が。

 

 湖面から姿を現す。

 

 

 

 この姿は、英国の誇り。

 

 メジロとは特に関係無い。

 

 この作品においてすら、栄光ある孤立を保つ。

 

 バ鹿と冗談の、総動員。

 

 

 

 迂闊に存在を文中に出してしまったため。

 

 再度使わざるを得なかった。

 

 酔っ払った際にやらかした、負の遺産。

 

 

 

 本作品は、英国面に堕ちた茜ちゃんを。

 

 応援しておりますッ……! 

 

 次回は真面目に領域バトルするから許して。

 

 

 

 「相互協力型(ジョイントタイプ)領域ッ! 

 通称バグ技ッ! 『対空型パンジャンドラム』ッ! 

 散れィッ! ババアのようにっ! 

 最後に勝つのはわたくしですわっ! 

 ぱんころー!!!!!!」

 

 「ババア無傷だったじゃん。

 次は大陸間弾道型にしようよ」

 

 「フンッ! フンフンッ! アッギッ!? 

 アルダァン!! なんてことですかっ! 

 プロテインが足りません!」

 

 

 

 

 

 

 つづかない 


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