ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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またネタを思いついたので書きました。

次回はキングちゃん家のお姫様が主役となります。

ちなみに、この世界の主要登場人物に、まともなヤツはいません。(断言)


ハルウララさんじゅういっさい そのよん マスコット襲来

 ハルウララは夜道を一人歩いていた。

 

 その足取りは常よりも些か重い物となっていた。

 

 「今日は疲れたなぁ……」

 

 思わず独り言も漏れるというものである。

 

 本日のクリークママといっしょの収録。

 

 番組の新たなマスコットたる、ウマ美ちゃんの活躍による疲れである。

 

 

 

 元々、クリークママといっしょにはマスコットが一匹いた。

 

 がろうくん。かわいらしい狼の着ぐるみである。

 

 

 幼児たちの呼び声に応じて現れ、一緒に歌や遊びを楽しんだ後。

 

 その親しみやすさに幼児たちが油断したところで突如豹変し。

 

 女児に対して狼藉を働こうとして、ウマのお姉さんたるこのハルウララに退治される。

 

 もしくはクリークママに胎児される、根っからのヒールである。

 

 

 

 子供たちに、悪い大人に騙されないようにと教訓を与える役柄だ。

 

 中身は自身のトレーナー。

 

 女児とウマのお姉さんに対する狂気的な執着心は、演技とは思えぬと評判である。

 

 

 

 そして、本日番組に登場したのは、そのライバルとして役割を与えられた者。

 

 正義のヒロイン・ウマ美ちゃんである。

 

 

 

 かわいらしいウマ娘をデフォルメした着ぐるみであり。

 

 そのチャーミングな姿は幼児を虜にした。

 

 チャームポイントはクリスマスカラーのメンコ。

 

 

 

 彼女は女児を人質に取り、ウマのお姉さんに対して同棲を要求するがろうくんの背後に突如現れ。

 

 アルゼンチンバックブリーカーによりがろうくんを見事退治したのだ。

 

 かわいらしい正義のヒロインに駆け寄り、そのふわふわの鹿毛のツインテールに夢中となった幼児たち。

 

 彼らがウマ美ちゃんを褒めたたえ、ウマのお姉さんががろうくんに三行半を突きつけたその時。

 

 

 

 そこでウマ美ちゃんは牙を剥いた。

 

 がろうくんが女児のみを狙うのに対し。

 

 ウマ美ちゃんは男児・女児の区別なく、その魔手を伸ばし、彼らの柔らかな尻を狙い始めたのだ。

 

 本能的な危険を感じ、悲鳴を上げて逃げ惑う幼児。

 

 彼らは感じたのだ。こいつガチのやつだ、と。

 

 そしてがろうくんを切腹させ、ケジメを取らせたウマのお姉さん。

 

 このハルウララによって、2匹目の悪夢は滅びたのだ。

 

 

 

 

 張り切ってウマライダーキックをかましたのがマズかった。

 

 ウマ美ちゃんの中身のウマ娘の首は、プロウマレスラー並みの強度があったのだ。

 

 反動でこの硝子の腰はまた悲鳴を上げた。

 

 さすがは土下座で首を鍛え上げた、先代ウマのお姉さんだけはある。

 

 

 

 ナイスネイチャ。汚い帝王。

 

 ウマのお姉さんをクビになった彼女は、トウカイテイオー宅で牙を研ぎ、尻を撫でて傷を癒し。

 

 突如クリークママの前に、一部の企画書を携え現れたのだ。

 

 

 警戒するクリークママに、彼女が告げた言葉。

 

 

 『貴女の教育には、厳しさが足りない』

 

 

 自身の教育に絶対の自信を持つ彼女は憤慨した。

 

 だが、怒り狂うクリークママにも怯まず、更に彼女は言葉を続けた。

 

 

 なるほどクリークママは、理想の母親として、幼児に夢と希望を与える存在である。

 

 がろうくんからも身を呈して幼児を守る。正に幼児の守護者。

 

 だが、足りない。

 

 クリークママが彼らを守れるのは、番組の間のみである。

 

 

 ハッとするクリークママに、悪魔は囁いた。

 

 彼らには、危機感を与えなければならない。

 

 この番組という名のゆりかごから出て、一人でも生きていくための強さを。

 

 そのために、このナイスネイチャがウマ皮脱ごう。

 

 脱いだ皮の代わりにマスコットの皮を被り、この身を犠牲にして教えようではないか。

 

 ゆりかごの外の厳しさというものを。

 

 

 

 まんまとその教育ママとしての義務感を悪用されたクリークママにより。

 

 また悪魔は幼児番組に潜り込んだのだ。

 

 その役柄は獅子身中の虫。

 

 迫りくる悪から幼児を身を呈して守り、信用を勝ち取り。

 

 そして、安心しきった彼らに対して牙を剥く。

 

 まさに、誰も信用してはならないという、教訓を与える悪魔である。

 

 

 

 番組が終わった後、自身の母親に駆け寄る幼児たちの瞳に宿る、猜疑心。

 

 彼らの姿を見て、クリークママは叫んだ。

 

 あっぱれナイスネイチャ。貴女こそが私の求めていた者である。

 

 そして、ナイスネイチャは痛む首を抑えつつもほくそ笑んだのだ。

 

 

 

 回想を終え、家への道をとぼとぼと歩きつつ思う。

 

 気が狂ってやがる。まともなヤツはこの世界におらんのか。

 

 

 

 ナイスネイチャの登用に対して、異論を挟んだ者はもちろんいた。

 

 自身のトレーナーもそのうちの一人だ。

 

 恐らく、ライバルの登場に、女児とウマのお姉さんを独り占めできなくなる危機感を覚えたのだろう。

 

 

 

 だが、彼はナイスネイチャに肩を抱かれ、番組のセットの裏に連れ込まれると。

 

 5分も経たぬうちにホクホク顔で現れ、彼女と堅い握手を交わしたのだ。

 

 何やら写真のようなものを持っていたため、買収されたのだろう。

 

 

 

 情けないツバメの代わりに自身ももちろん反対を叫びたかった。

 

 だがクリークママの目が怖すぎたのだ。

 

 彼女はスタジオ内における法律、絶対君主である。

 

 彼女に逆らえば、職を失う。

 

 涙を呑み、その指針に従う他無かった。

 

 

 

 家の明かりが見えて来た。

 

 今日はゆっくりと休もう。

 

 トレーナーがアルゼンチンバックブリーカーからの切腹をキメたため。

 

 ICUに緊急搬送され、今日は湿布を貼ってもらえなかった。

 

 クリークママは子供たちに嘘をつくことは決して許さないのだ。

 

 切腹ももちろんガチである。まぁあのツバメは頑丈だから明日には復活しているであろう。

 

 

 今日はお姫様に湿布を貼ってもらうとしよう。

 

 幼児に湿布を貼ってもらうのは、何か負けた気分になりアレなのだが。

 

 彼女はやたら湿布を貼るのがうまいのである。

 

 ハルウララはそう思い、玄関の扉を開いた。

 

 

 

 ただいま。

 

 「おかえりですの! ウララちゃん!」

 

 

 

 

 

 つづく

 


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