ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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掲示板形式が流行りと聞き。
挑戦してみました。
すげーめんどくさいですが、好評ならたまにやろうかな。


ファル子さんじゅういっさい そのじゅうはち ウララン掲示板

~前回までのあらすじ~

 

 

 

 見事宇宙戦艦に不法侵入を決めた、連コ葦毛。

 

 ストリートでファイトする感じの技を見て。 

 

 栗毛は先頭民族の血の昂りを感じる。 

 

 背に負うは、諸悪の元凶。 

 

 思い出すは、綺麗な景色。

 

 特に意味の無い回想。

 

 景色の話題は安牌なのだ。

 

 赤ちゃんコンビに別れを告げ。

 

 いざ、己が最速を証明せん。

 

 レースを引退したとしても。

 

 最速の称号を、返上する理由にはならぬ。

 

 『サイレンススズカ』の名と、黒鹿毛を背負い、彼女は征く。

 

 いざ、大空へ羽ばたこう。

 

 天バの蹄は高らかに。

 

 宇宙戦艦へのノックをキメた。

 

 頭突きで。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ウララ。ウララ。起きないとイタズラするぞ」

 

 

 

 ねっとりとしたイケメンヴォイス。

 

 うむ。目覚ましとしては最適であろう。

 

 

 

 ハルウララは、瞬時の覚醒を果たし。

 

 マッサージ師の魔手を楽しみつつも、顔を上げた。

 

 

 

 「トレーナー。鏡」

 

 「ほら。今は七分咲きといった所だ」

 

 

 

 忠実なる臣下から手鏡を受け取り、愛らしい美貌をチェック。

 

 混じりあう、鹿毛と桜。

 

 なるほど。満開まであと少しである。

 

 

 

 「まだ完全に回復するまでは。

 しばらくかかるみたいだけど。

 なんで今起こしたの?」

 

 「状況を。把握しておきたいだろう。

 起き抜けにいきなり飛んでも、どんなトンチキを。

 やつらがキメたのかを、知っておかなくては。

 いくらウララでも、遅れを取る可能性がある」

 

 「なるほど。経験が生きたな。後でジュースを奢る権利をやろう」

 

 「感謝の極み」

 

 

 

 恭しく礼をするトレーナー。

 

 出来た臣下である。

 

 どれ、その気遣いを無駄にするのも嫌いではないが。

 

 ここは状況把握をしておくか。

 

 

 

 ウマホを取り出し、ネットに接続。

 

 トレセン学園掲示板を開く。

 

 現役の学園生とトレーナー。

 

 

 

 そしてOGと、引退したトレーナーしかアクセスできぬ、これ。

 

 秘匿回線としての。使い勝手はなかなか良い。

 

 緑のアクマオーも、たまにはいい仕事をする。

 

 建てておいたスレッドを開く。

 

 

 

 

 

 

 『バ鹿に身の程を思い知らせるスレPart1145』

 

 

 

 336:奇跡のウマドル ID:FarcoS0404

 うーん。酔っ払ってきた。やはりロマネ・コンティこそ至高

 

 

 337:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 状況を報告しろクズども

 >>336 お前なんなの? 死ぬの? 

 

 

 338:貴顕の紅茶中毒 ID:AsamacM0403

 >>337 昇竜ではなく百裂脚ですが。侵入に成功しましたわ

 >>336 やはり宇宙戦艦ごと堕とすべきだったかもしれませんわね

 

 

 339:愛バ専門ドスケベマッサージ師兼催眠術師 ID:HaitoK1888

 オレたち、なんのために戦ってたんだっけか

 

 

 340:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 >>339 スレタイ見ろ。それとお前、名前被ってるよ。

 愛バ専門ドスケベマッサージ師も、催眠術師も。

 この掲示板には腐るほどいるんだから。

 もっとわかりやすくしろ

 

 

 341:愛バ専門厩務員 ID:HaitoK1888

 >>340 こうかな? これは被ってないだろ

 

 

 342:ベルリンの一児の母 ID:FlashE0327

 >>341 それなんて読むんですか

 

 

 343:愛バ専門厩務員 ID:HaitoK1888

 きゅうむいん だが

 

 

 344:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 >>343 造語を使うな。あと読み方本名じゃねぇか

 ハンドルネームの意味が無い

 

 

 345:ハルウララ直属愛の奴隷 ID:HaitoK1888

 これならどうだ

 

 

 346:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 それなら良し

 

 

 347:怪鳥専門ご奉仕メイド ID:AfgahnK0214

 いいのか……(困惑)

 

 

 348:蒼き米農家 ID:RiceS0305

 えっとね。スレチだと思うの。

 HN談義は他所でやって欲しいなって

 

 

 349:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 >>348 スレ主は私だが? いいんだよ私がやってるんだから。

 さてはアンチだなおめー

 

 

 350:サイボーグ栗毛 ID:BurubonM0425

 くぁwせdrftgyふじこlp

 

 

 351:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 >>お前はブチ壊すことがわかってるのに。

 なんで毎回果敢に挑戦するんだよ。

 そのフロンティアスピリッツはいらねーんだよ

 

 

 352:国家の驀進犬 ID:BakusinS0414

 うーん。やはりこの掲示板は! 

 1のキレ味が違いますねぇ! バクシーン! 

 

 

 353:光速の鼓奏者 ID:SuzukaS0501

 こっちも無事に突き刺さったわ

 

 

 354:ベルリンの一児の母 ID:FlashE0327

 アレを無事と呼ぶ栗毛具合。やはり栗毛は滅ぼすべき

 

 

 355:トップを狙う十児の母 ID:ScarletD0513

 >>354 なんだァ? てめぇ……? 

 

 

 356:バイクを愛する七児の母 ID:VodkaV0404

 栗毛、キレた! 

 

 

 357:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 お前ら毎度思うけど、産みすぎだろ。

 書記長の視線が痛いんだよ。自重しろ

 

 

 358:トップを狙う十児の母 ID:ScarletD0513

 次こそ男の子よね。きっと旦那様そっくりのイケメンに育つわ

 

 

 359:太鼓の達人 ID:KokonL0311

 姉10人とか、性癖歪みそう

 

 

 360:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 >>359 お、珍しいな。ヨソジドクシンオー元気? 

 

 

 361:真の太鼓の達人 ID:BitterG0224

 太鼓なら、今私のベッドで寝てるよ

 

 

 362:太鼓の達人 ID:KokonL0311

 は? 何してくれてんの? これは戦争ですね

 ハイスラでボコるわ……

 

 

 363:絶対皇帝 ID:HrodulfS0313

 まぁ落ち着け。喧嘩は良くない

 

 

 364:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 >>363 政治活動の調子はどうっすか

 

 

 365:絶対皇帝 ID:HrodulfS0313

 百駿多幸の実現のため。誠心誠意頑張っているよ。

 愛弟子たちよ。待っていておくれ。

 ちゃぁんと娶ってやるからなァ……

 

 

 366:爆逃げコンビ・長距離 ID:PalmerM0321

 百合楽園婚の実現待ってます

 

 

 367:パリピッピ ID:HeliosD0410

 我欲に塗れきってるのマジおもろいんだけど

 

 

 368:タイマンの母 ID:AmazonH0326

 これにはアタシも思わず発砲

 

 

 369:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 でも汚いのも加湿器も、本命は師匠じゃねーんだよな

 

 

 370:有マの奇跡 ID:TeiohT0420

 まぁカイチョーならギリ許せるかな

 

 

 371:デバフは性義 ID:NatureN0416

 やっぱさ。たまにはしっとりバウムじゃなくて。

 煎餅が食いたくなる時があるんだよ

 

 

 372:絶対皇帝 ID:HrodulfS0323

 私は尻さえ揉めれば満足だよ

 

 

 373:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 歪みねぇな

 

 

 374:猛禽類ガチ勢 ID:YukioT0304

 求)正気な世界

 

 

 375:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 >>374 来世は平和な世界だといいな

 

 

 376:特別な一週間 ID:SpecialW0502

 求)ふともも

 

 

 377:宇宙大統領・桜 ID:UraranH0227

 デブでも食ってろピザ

 

 

 

 

 

 

 スレッドを閉じる。

 

 なるほど。

 

 おおよそ状況は把握した。

 

 

 

 

 「バ鹿しかいねぇな」

 

 「何を今さら」

 

 「やはりわたしが世界を変革せねば……」

 

 

 

 「ウララ。野望を燃やすのは結構だが。

 それよりも、オレとの幸福な結婚生活。

 今はそれを。考えるべきではないか」

 

 「そうだな……トレーナー。

 黙ってわたしについてこい」

 

 「一生……! 来世まで……! いや永遠に! 

 憑いていくとも! 任せてくれ!」

 

 

 

 「そろそろ話しかけても大丈夫だろうか。

 アフガンコウクウショー。ここに推参である」

 

 

 

 椅子を、尻の感触で楽しませてやりつつ。

 

 顔を上げる。

 

 

 

 「遅いぞアフちゃん。だがまぁ丁度いい。

 このプリティーフェイス。どう思う?」

 

 「すごく……九分咲きです……

 というか、領域を完全展開するとそうなるのか。

 驚愕の事実である。元々は鹿毛だったとは。

 かっこいい。メッシュ入れてるみたい」

 

 「わたしの場合はそうだねぇ。

 なんかそうなるっぽい。

 速度中毒栗毛とかは、変わらないらしいよ」

 

 「ふぅむ。ウマソウルによって違いが出るのか……

 私もいつか、完全展開に挑戦せねばなぁ」

 

 「別に必要ないと思うけどね。

 アフちゃんの完全展開とか。

 それ以上飛んでどうなるんだ」

 

 

 

 「うれしい」 

 

 「そうか……飴をやろう」 

 

 「わぁい」

 

 

 

 こやつ、ウマ娘ではなく。

 

 鳥に生まれるべきだったのでは。

 

 そう思いつつ、空を見上げる。

 

 

 

 「「「「「「「「「「ぴよー!」」」」」」」」」」

 

 

 

 舞い降りる、かわいい我が子たち。

 

 愛するひよこが一時的に居なくなる幼児たち。

 

 彼らには苦労をかけるが……

 

 

 

 このハルウララの役に立つのだ。

 

 光栄に思って欲しい。

 

 ミミズを与えて、愛でると満足そうな顔。

 

 よし。準備は完全に整った。

 

 

 

 「トレーナー。細長くて縛るアレを出して」

 

 「ウララ先輩。この世界はやはりおかしい」

 

 「ウララは頑なに、細長くて縛るアレの名称を。

 言いたがらないな……」

 

 「わたしにもプライドはある。

 ちゃんと家には金を入れている……

 細長くて縛るアレじゃあない。ないんだ……!」

 

 「そうか……」

 

 「ぴよっ?」

 

 

 

 ピヨる我が子たち。

 

 細長くて縛るアレを、括り付けていく。

 

 

 

 「ウララ先輩。動物虐待では? 鶏ならまだしも。

 いや鶏でもおかしいんだけど。ウララ先輩、クソ重いじゃん」

 

 「黙れ」

 

 「わんわんっ♡」

 

 

 

 わかっていない駄犬だ。

 

 このハルウララ。自らがちょっとばかり筋肉質なことなど。

 

 疾うに理解しているのだ。

 

 そのための、こやつの上昇気流。

 

 

 

 我が子たちのかわいい手羽先。

 

 それを補助するのが貴様だ。

 

  

 

 「ううむ。この重み。愛を感じるな……」 

 

 椅子の恍惚とした声。

 

 自分をお姫様だっこできる、逞しい男性。

 

 それはこのハルウララの結婚対象の、最低条件だ。

 

 その点、こやつは合格である。

 

  

 

 「よし。準備完了。アフちゃん、トレーナーを」

 

 「私、こやつにあんまり触れたくないんだが……

 セクハラされたらおよめにいけない」

 

 「大丈夫だアフちゃん。もはやお前も眼中には無い」

 

 「それはそれでムカつくな……どこまで行っても。

 腹の立つ男である。ウララ先輩は、こやつで良いのか?」

 

 「ヒシアケボノを。軽々と持ち上げられるような。

 益荒男かつ。声とケツと顔が。

 いい男が、他に居たら考えるよ」

 

 

 

 「……ウララ先輩。体重何キロ?」

 

 「貴様、死にたいか」 

 

 「きゃうんっ♡きゃうんっ♡」

 

 

 

 さて。優雅に参るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 「マジありえンし……ブクマ見て、SAN値を回復だね。

 えっと、学園掲示板……このシリーズ、好きなンだよねぇ。

 スレ主はセンスあるよ。今までの1144人の犠牲者。

 クッソ面白い最期を、毎回迎えるもン。

 今回はどんなバ鹿を、土下座謝罪させるのかな……

 まさか実話じゃないと思うけど。

 でも誰が話に割って入っても。ちゃんと終わるもんなぁ」

 

 「ユキオ―ちゃん! ネットサーフィンしてる場合じゃないぞいっ!」

 

 

 

 おじいちゃんの声に、ウマホから顔を上げる。

 

 

 

 「どうしたの。四おじいちゃん。今わたし、レスバに夢中なンだけど」

 

 「うーん。今時の若者すぎる。読書をしろ読書を。

 ……そうだっ! そんな場合じゃないぞい! 

 ついに本命が来たぞいっ!」 

 

 「えー……見たくないなぁ。パンジャンで狂気に囚われてる間にさ。

 なんか色々頭がおかしかったらしいじゃン。

 報告聞いたら、砲丸投げからの格ゲー。

 

 おまけになんと! 栗毛砲弾と来た。今度はどンな方法で。

 わたしのSAN値を削ってくるのさ。もう歌う気力もないよ。

 ……ところで。二おじいちゃんどうしたの? 

 気づいたら燃え尽きてたンだけど」

 

 

 

 この老人ホームでは、自分と会長。おまけにゴクウ。

 

 それを除けば、最年少の筈の彼。

 

 なんだかとっても、老けて見える。

 

 

 

 「ヤツは、交通事故に遭ってしもうてのう……」

 

 「ここ、宇宙戦艦だよ……? 道路とか無いじゃン」

 

 「性癖の交通事故じゃ。百合を偽装したダンプ2台。

 恐ろしい轢かれ方じゃった」

 

 「聞きたくなァい……」

 

 「まぁそれはいいとして。ほれ、モニターを見ろ」

 

 「見たくなァい……」

 

 「ワガママ言わないのっ! おじいちゃん怒るぞい!」

 

 「はぁーい……」

 

 

 

 しぶしぶと、モニターに目をやる。

 

 んンッ!? 

 

 

 

 「……おじいちゃん。アフガンコウクウショー先輩はまだわかるよ。

 でも。でもさ。ここ、妖怪ポストとか。あったっけか……」

 

 「あるわけないじゃろ。やたら古いもんを知っとるのぉ……」

 

 「いやさ。脳内のおじさんが囁いたンだよ。

 アレ、見たことあるって」

 

 「ユキオ―ちゃんは、不思議ちゃん要素まで完備しておるのう。

 大人になる前に、それは捨てるんじゃぞ」

 

 「えー。おじさんとは一生の付き合いだよ。

 ユキオ―をいつも助けてくれるの」

 

 「そうか……ところで、そろそろ現実を直視してみんか?」

 

 

 

 言われ、大きく息を吸い込む。

 

 吸って、吸って、吸って……

 

 そして叫ぶ。

 

 

 

 「そんなバ鹿みたいな方法でッ! 空をッ! 飛ぶんじゃないイィィィッ! ……あっふん」

 

 「おお。気絶したか。やれやれ。まぁ20歳じゃからのう。

 この世界の常識。今のうちに慣れておかないと苦労するぞい」

 

 

 

 四おじいちゃん。メンタルケア担当。

 

 本名、甘草 四朗はモニターを見る。

 

 胸元に吊り下げた、十字架を握り。そっと呟く。

 

 

 

 「まぁひよこが空を飛ぶ事もあるわな。

 この子の未来に、幸あれ。偉大なる三女神よ。

 我らの最後の担当ウマ娘。ユキオ―に祝福を」

 

 

 

 モニターに映る映像。

 

 そこには、アフガンコウクウショーに抱えられた、若造と。

 

 手を繋ぎながら、ハルウララがひよこブランコに座り。

 

 空中デートを楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つづかない


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