ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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 読者の皆様のご愛顧により。
 この小説も、ついに10万UAを突破致しました。
 感謝の念に堪えません。

 感謝の印にッ!このデイジー!
 コンプライアンスを遵守しつつ!
 引き続き、好き勝手に書き散らす事を誓いますッ!
 これがオレの、書きたい物だッ!


ファル子さんじゅういっさい そのにじゅう 旧世代型低速通信

~前回までのあらすじ~

 

 ついに宇宙戦艦への不法侵入を。

 

 優雅に華麗に美しく。

 

 しかして大胆にキメる、ハルウララ。

 

 ウマ娘小説として、どうかしている状況。

 

 本作に於いては、通常運転でございます。

 

 まずは戦艦内部の確認。

 

 酔っぱらいのリークした、幼児性イカ踊り。

 

 なるほどわからぬ。だがいける。

 

 今回の目的たる、海賊行為には十分。

 

 正義の私掠を見るが良い。

 

 桜色の暴帝は、イカした陣形を固め。

 

 従う配下は少数精鋭。

 

 格ゲ名優。

 

 奉仕駄犬。

 

 愛隷桃尻。

 

 飛翔桜雛の、四天王。

 

 群鶏一ぴよの、性癖無双。

 

 敵する者がいようとも。

 

 鎧袖一触に蹴散らしてくれよう。

 

 進むにつれ明らかとなる、限界集落の実態。

 

 現れるは、呆け気味のファンを名乗る。

 

 歌舞伎剣士・市川五右衛門。

 

 こんにゃくは、切れなさそうである。

 

 トレーナーは、先達への敬意を払い。

 

 彼の後頭部を、思う様に痛打した。

 

 ひよこで。

 

 このあらすじだけ読んだ状態で。

 

 前話の展開を当ててみよう! (配点:10点)

 

 

 

 

 

 

 

 「くくく、五右衛門がやられたか……」

 

 一の字を戴く、艦内の最長老。

 

 

 「ヤツは6Gの中でも、燦三郎に次ぐ若さ……」

 

 登山が趣味の、高峯 灰二。

 

 

 「ぶっちゃけあやつ以外は、戦闘がきつい……」

 

 酒と博打が止められぬ、甘草 四朗。

 

 

 「オレは武闘派じゃねぇからなぁ」

 

 六の字を冠する、在りし日の暴君を支えた者。

 

 

 

 燦三郎と、五右衛門。

 

 2人ほど、ベッドでダウンしているが。

 

 艦内主要幹部。誇り高き翁。

 

 彼らは今、作戦会議を開いていた。

 

 

 

 「ワシ、腰が痛い」

 

 「ワシはどうも、老人性の手の震えが」

 

 「おじいちゃんたち。無理はしなくていいンだよ?」

 

 

 

 

 6G会議。それが会議の名前。

 

 次々世代型の、高速通信をしそうな名称。

 

 そこで。旧世代型の彼らは、悩んでいた。

 

 

 

 気遣わしげに、お茶を配り。

 

 肩を揉んでくれる、ユキオー。

 

 可愛い担当バのためには、我らが踏ん張らねば。

 

 

 

 だが、現状は少々厳しい。

 

 ネタが尽きたためだ。

 

 サインはもう、全員分。

 

 書いてもらってしまった。

 

 五右衛門を回収した、清掃のお姉ちゃん。

 

 

 

 そう呼ばぬと、マジギレされるのだ。

 

 己らと同年代の癖に。

 

 でも怖いから、素直に従う。

 

 

 

 ちゃっかり自分も書いてもらったという。

 

 彼女から先ほど、負け犬とサインを受け取った。

 

 孫が喜ぶことだろう。

 

 

 

 「隔壁閉鎖の効果は?」

 

 「先程から、艦内を左周りに。

 爆走しとる栗毛と、背中の荷物。

 ヤツらのせいで、デカい穴が。

 そこかしこに空きまくっとる。

 侵攻の妨げには、なるまい」

 

 「あやつら、どこを目指しておるんじゃ?」

 

 「左手の法則で、いつかはゴールに辿り着くと。

 考えているのではあるまいか」

 

 「壁ブチ抜いておいて。迷路の必勝法が通じると。

 よく思えるもんじゃのう。

 賢さトレーニングが足りないようですね」

 

 「おお、たづなちゃんに似とる! 

 おぬし、やるのう!」

 

 「ふふふ。わしもまだまだいけるのう」

 

 「わたしたづなさん苦手……

 だって怖いもン。目が」

 

 

 

 よしよしと、かわいい彼女の頭を。

 

 ジジイ総出で撫で回しつつ、小遣いを与える。

 

 やはり無条件降伏などできぬ。

 

 

 

 最低でも、彼女の身の安全。

 

 それだけは保証させねば。

 

 会長も。命だけは、助けてあげて欲しい。

 

 我らが恩ウマであるのだ。

 

 

 

 あの桜色。現役時代が被っておらぬ者も。

 

 被っている者も、知っている。

 

 

 

 敵対して、無事に済んだ者は居らぬ。

 

 必ず、えらい目に遭わされるのだ。

 

 喧嘩を売られてすぐキレる。

 

 落とし前を、着けずには。

 

 黙って居られぬ、その精神。

 

 

 

 正直、レースなど出走せず。

 

 任侠の道に進んでいれば、裏社会を。

 

 その手腕で、今頃は。

 

 天下統一していただろう、逸材。

 

 

 

 「わしら総出で土下座したら。

 なんとか許してもらえんかな」

 

 「土下座程度で止まるなら。

 暴帝などとは。呼ばれておらんじゃろ」

 

 「あやつ、マジなんなの? 

 おい六の字。おぬしの怠慢では? 

 ちゃんと、お淑やかに育てておけ」

 

 「オレに言うない。もう人格なんざ。

 既に完成し尽くしてたよ。それに。

 お前らの愛バ、お淑やかに育ちましたか?」

 

 「「「わしらが悪かった」」」

 

 

 夢物語を囀ずった、不明を詫びつつ。

 

 彼女と関係性の深い、一人のジジイに視線が集中する。

 

 

 

 「ちなみに。おぬしが謝罪するならどうする?」

 

 「謝っても無駄だ。腹ァ括って待っておく。

 いいか。防ごうと考える方が無駄だ。

 ファル子リヲンなら、いけるかと思ったが……」

 

 「隕石か何かか?」

 

 「おいおいお前ら。勘違いしてねぇか? 

 隕石よりもタチが悪いぞ。なんたって。

 絶対に相手に、一直線に容赦なく。 

 遠慮呵責ゼロで、カッ飛んで行くんだ。

 天災と違って、運の良さなんて関係ねぇ」

 

 「「「「…………」」」」

 

 

 

 静寂が、場を包む。

 

 

 

 

 「わ、わたし。なんてことを……」

 

 「ゆ、ユキオーちゃんのせいじゃないぞい!」

 

 「六の字ッ! なんでそれを先に言わぬッ!」

 

 「ユキオーちゃんのウマ生に! 支障が出るではないか!」

 

 

 

 非難の声にも、怯む事はない。

 

 どこ吹く風、レベルマックス。

 

 伊達に彼女を育てた一人では、ないのだ。

 

 

 

 帽子の庇を下げ。

 

 サングラスを煌めかせ、告げる。

 

 

 

 「安心しろ。死にはしねぇ。

 むしろ、いい経験になるさ」

 

 「……なぜ、そう言える?」

 

 「ウララにやられたヤツはな。

 必ず、また立ち上がるんだよ。

 アイツは、そういうやり方をする」 

 

 「良い事言ったみたいな顔はやめい。

 ジジイのドヤ顔はムカつく」

 

 「アレに喧嘩を売るような。

 ガッツとバイタリティがありゃ。

 そりゃあ立ち直るのは、当然じゃろ」

 

 「違いねぇ! そりゃそうだ!」

 

 

 

 ツッコミを受けても、呵呵大笑する彼。

 

 やはりこやつ、暴帝に影響を与えたのでは。

 

 そう思う周囲を他所に、彼は続けた。

 

 

 

 「オレたちに出来る事は、ただ一つ。

 全力で迎え撃ち、アイツのストレスを。

 発散させて、ユキオーへの着弾時の威力。

 そいつを抑える事だけだな」

 

 「つまり?」

 

 「一緒にシバかれようぜ。

 なァに、無駄に長く生きてんだ。

 屈辱なんぞ、慣れっこだろうがよ。

 泥水の味、忘れてねぇか? 

 久し振りに、思い切り啜りてぇだろ?」

 

 

 

 にやけて告げる、彼に。

 

 嘆息しつつ。覚悟を決める、老雄たち。

 

 

 

 「おぬし。最初から、それが目的か」

 

 「思えば、ユキオーちゃんへのアドバイス。

 ピントが外れておった。

 こうなることを、予期しておったな?」

 

 「わしら、そんなに腑抜けて見えてたかのう?」

 

 「ああ、最悪だね。オレァお前らを。

 心の底から。尊敬してたんだぜ? 

 偉大なる、先達どもをよぉ」

 

 「言葉遣いから、敬意が感じられんのう」

 

 「なのにお前らと来たら。

 ただの孫バ鹿と化してやがる。

 ユキオーを甘やかしすぎじゃねぇか? 

 

 ロートルに、活躍のバ場。

 さらには育て甲斐のあるウマ娘。

 そいつを与えてくれた、会長。

 

 ファル子の嬢ちゃんに、申し訳ねぇと。

 ちったぁ思わねぇのかい」

 

 「話聞かんのも、愛バに似てるなこやつ」

 

 

 

 そして告げられる、真の目的。

 

 

 

 「ユキオーはこのままじゃ駄目だ。

 この世界じゃ生きていけねぇ。

 だから、アイツを呼び込んだ。

 

 可愛い子ウマは、千尋の谷に投げ落とせ。

 昔から言うだろ? 

 痛くなけりゃあ、覚えねぇんだよ。

 お前らが一番、解ってる筈だ」

 

 「痛い事を言うてくれるのう。

 背中を見せる。痛みを教える。

 両方やらにゃいかんと。

 そういうことか。

 ……やれやれ、相変わらず。

 業の深い生き方よ」

 

 「六おじいちゃん……?」

 

 

 

 可愛い愛バの、不安げな顔。

 

 彼女に裾を、ぐいと引かれ。

 

 彼は不敵に微笑んだ。

 

 

 

 「見てろよユキオー。

 オレたちはジジイだが。

 ただの老いぼれじゃあ、無い。

 

 いつくもの綺羅星たちを送り出した。

 最高のトレーナーだって。

 最後の担当ウマ娘。お前に。

 お前だけに、教えてやる。

 

 おい、燦三郎! 五右衛門! 

 寝てる場合じゃねぇぞ!」

 

 「やれやれ。年寄り遣いが荒いのぅ」

 

 「もう少し、現実から。逃げていたかったんだがなァ」

 

 

 

 再度立ち上がる、戦士たち。

 

 負けジジイの復活に、満足げに微笑み。

 

 彼は出陣を告げる。

 

 

 

 「行くぞお前ら! 年寄りの意地! 

 かわいい愛バと、アイツらに!

 思う存分ひけらかし! 笑ってくたばれ!」

 

 「ろっぺいおじいちゃん! みんな! 

 ユキオーを、置いて行かないで!」

 

 「六平だっつってんだろ。

 最後までわかんねぇやつだな。

 いいかユキオー。お前は、一人で走ること。

 これを覚えなきゃいけねぇ。

 

 オレたちは、お前より早く死ぬ。

 こいつは、三女神様でも動かせねぇ。

 純然たる、事実だ」

 

 「おじいちゃん……」

 

 「なぁに、安心しろ! 死にはしねぇよ! 

 ちょっとばかし、再起不能になるだけだ! 

 最後に闘うのは、お前。オレたちの集大成。

 我らの煌めく一等星。ユキオー。頑張れよ」

 

 「さらっと。恐ろしいことを言いよったぞこやつ」

 

 「わしら、生きて帰れるかのう」

 

 「心臓発作には、気をつけねばな」

 

 「オレ、生きて帰ったら百合に挟まるんだ……」

 

 「お前は一度、死んでおけ」

 

 

 

 彼らは、愛する担当ウマ娘に。

 

 萎れた大きな背中を見せ。

 

 威風堂々。よぼよぼと歩き出した。

 

 

 

 「待って!」

 

 「ユキオー。あまり覚悟を決めた男を。

 引き留めるもんじゃあないぞ」

 

 「ううん、違うよ。おじいちゃんたちの覚悟。

 わたしにも伝わったよ。

 おじさんも、笑って送り出せって言ってる。

 でも。せめて、これを。自信作なんだよ?」

 

 

 

 涙を必死に堪える、愛らしき瞳。

 

 彼女が皿を取り出し、渡してきたそれ。

 

 今日のお茶請けにと。用意していたのだろう。

 

 

 

 円筒形の、ニクイやつ。

 

 ほかほかと、おいしそうに。

 

 その姿を、晒している。

 

 

 

 その名を告げて、頂くこととする。

 

 冥途の土産には、上等すぎる。

 

 

 

 「今川焼きじゃねぇか。ありがとよ、ユキオー」

 

 「は? 大判焼きじゃろ。カスが」

 

 「何を言うとる。蜂楽饅頭じゃろう。ボケ」

 

 「回転焼きに決まっておろうが! バ鹿どもめ!」

 

 「太鼓焼きだろうが! これだからジジイどもは」

 

 「もはやこれは許せぬで、御座候!」

 

 

 

 飛び散る火花。充満する殺気。

 

 前哨戦には、相応しい。

 

 己が正しさを。証明する……! 

 

 

 

 「「「「「「やるかゴラァッ!」」」」」」

 

 

 

 突如勃発した、第一次ジジイ大戦。

 

 骨肉の争いに、残り僅かの寿命。

 

 どんどん無駄に、消費されていく。

 

 

 

 げに、地域のこだわりとは。

 

 恐ろしきものである。 

 

 

 

 ユキオーはおろおろと、争いの火種。

 

 残り一つをぱくりと咥え。

 

 ひとりごちた。

 

 

 

 「ベイクドモチョチョでしょ」

 

 

 

 それだけはない。

 

 心の中の利根川先生だけが。

 

 優しくツッコミを入れていた。

 

 

 

 

 

 

 つづかない 


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