ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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ついに、トレーナー同士の闘争。
その詳細が開帳されるとき。
企画短編2本同時参加は、さすがにやりすぎ申した


ファル子さんじゅういっさい そのにじゅうに 支える者の激闘

~前回までのあらすじ~

 

 ついに、2度目の接敵を果たした、ハルウララ。

 

 だが、ジジイどもなど眼中になく。

 

 食糧庫の場所のみ吐かせ。

 

 鷹揚に、彼奴らを見逃してやる。

 

 酒が飲みたかったためだ。

 

 果たしてたどり着いた、食糧庫。

 

 その番人、ゴクウ。

 

 働かぬアリが発生する、社会組織の構造。

 

 それを全身で体現しつつ。

 

 彼女たちを、歓迎する。

 

 宴会が、大好きなのである。

 

 艦内では、あまり宴会は行われない。

 

 ジジイに飲ませすぎると、命の危険があるためだ。

 

 始まる宴会。高まる怪鳥の身の危険。

 

 ハルウララは、再度確信する。

 

 トレーナー選び。間違ってはいなかった。

 

 上機嫌でポールダンスに興じるも。

 

 壁を壊した栗毛の暴言。

 

 悪意無くして、ウマはウマを傷つけられる。

 

 釣られたバ鹿も含め。

 

 彼女を怒らせた者は、3人を超え。

 

 ハルウララは、新たな力に覚醒する。

 

 3人抜かし、最終直線で加速する皇帝。

 

 3人にキレ、最終奥義をぶっぱする暴帝。

 

 やはり帝王たるもの。こうでなくてはならぬ。

 

 そう思いつつ、彼女は桜の華を咲かせ。

 

 バ鹿どもを存分にわからせた。

 

 たぶん反省はしないけども。

 

 あとジジイが4人、巻き添えで医務室送りになった。

 

 

 

 

 

 

 「全身が痛いのである」

 

 「うーん。学生時代よりも威力が上がってますわね」

 

 「ウララさんも、成長しているのね。胸の性徴は0だけど」

 

 「スズカさん。私はこれ以上、栗毛を憎みたくありません。

 言動には細心の注意を払ってください。

 ファル子さんも栗毛なのですから」

 

 「というか、サイレンススズカも同じ穴のたぬ吉さんだと。

 オレは思うのだが」

 

 「私は機能美だもの。むしろ胸は邪魔よ。

 ふとももさえ太ければ、スぺちゃんは満足してくれるわ」

 

 「やはり、グラ〇ルではなく、ラス〇リに。

 ダイワスカーレット先輩と共に、出演するべきだったのでは? 

 私などは、そう思うのである。

 ところでウララ先輩。痛いのである。もっとして」

 

 

 

 バ鹿どもを、如意棒で小突きつつ。

 

 歩を進める、ハルウララ。

 

 隊形は、バ鹿が増えたため。

 

 ヒシアマゾンストライク・改。

 

 向かう先は、動力部。

 

 

 

 もちろん宇宙戦艦を堕とし。

 

 胸をすっきりさせるためだ。

 

 堕ちた先のことは知らぬ。

 

 どうせ、ギャグ補正で全員生き残るだろう。

 

 

 

 「いいかバ鹿ども。次にわたしを怒らせてみろ。

 スイープトウショウの魔法陣に、生肉付きで。

 痺れ薬で胃を満たしてから、放り込んでやるからな」

 

 「触手物は、ガイドラインとの親和性が悪い。

 忘れてしまったのかしら」

 

 「覚えているとも。だが、描写しなければ問題は無い。

 大丈夫だ。ハルウララ以外の登場ウマ娘は、幸せになりました。

 触手の嫁として。そう描写されるだけだよ。

 ハッピーエンドだな。喜べ」

 

 「ちょっと震えてきたのである……

 エルをタキオン先輩の薬で、触手化する。

 その辺で手を打っていただけないだろうか。

 私は純愛志向なのでな。NTRはNGである」

 

 「お前はエルコンをどうしたいんだよ」

 

 「はちゃめちゃに愛されたい」

 

 「そうか……」

 

 

 

 ちょっと危うい思想を持つ、駄犬の主張。

 

 ハルウララは、如意棒を引っ込めることとした。

 

 こやつらに、何を言ってもわりと無駄。

 

 そう、改めて悟ったからである。

 

 あとタキオンの薬と言われると、マジで出来そうでヤバい。

 

 

 

 アグネスタキオン。

 

 大手製薬会社の、熱烈なラヴコールにより。

 

 様々な、ウマ娘に役立つ薬。

 

 これを、外部顧問のメジロ家主治医と。

 

 彼女の愛するモルモット氏と共に。

 

 日夜開発し、ウマ娘の救世主と。

 

 そう呼ばれてはいるが……

 

 

 

 自分は、ツインテ栗毛経由で知っている。

 

 モルモット氏と楽しむための、夜の秘薬。

 

 研究開発費のほとんどを、そちらに注ぎ込んでいるのだ。

 

 

 

 屈腱炎を治癒する薬。

 

 繋靭帯炎を治癒する薬。

 

 涙を呑み、引退する筈だった。

 

 数々のウマ娘を救った、奇跡の秘薬。

 

 

 

 あれらは、モルモット氏の不退転の心構え。

 

 それが輝いたり、ピサの斜塔になったり。

 

 果ては触手になったりしたときに。

 

 偶然採取された、成分を分析し。

 

 なんかすごい薬効があったため、偶然産まれた物に過ぎぬ。

 

 

 

 救われたウマ娘たちも、開発経緯と。

 

 薬がやたらと生臭い理由。

 

 それを、知ってしまえば。

 

 微妙な笑顔を見せることだろう。

 

 真実とは、時にウマを傷つけるのだ。

 

 

 

 回想を終え、前に目を向ける。

 

 トレーナーのケツ。やはりいい。

 

 そう思っていると。

 

 

 

 「来たか。わしの弟分どもが。

 世話になり尽くしたのう」

 

 「接敵。インド人を右に」

 

 「私はアフガン人だが」

 

 「お前はジャパニーズウマ娘だろ。目を覚ませカス」

 

 「きゅうん……」

 

 

 

 駄犬を叱責し、心の余裕を作る。

 

 余裕は大事だ。メジロ家の秘伝でもあると聞く。

 

 さて、自己紹介のお時間だ。

 

 さっさとどんな変態か。自白するがいい。

 

 

 

 「あなたはだぁれ? どんな性癖を持っているのかな」

 

 「お前らと一緒にせんで貰えるかのう。わしは正気じゃよ」

 

 「この世界にまともなヤツがいるとは、寡聞にして聞かないね」

 

 「まぁ否定はせんけど。三十路でその瞳。どんな地獄を見てきたんじゃ」

 

 

 

 黙って不快な仲間たちを見る。

 

 目がさらに濁った気がする。

 

 

 

 「……すまんななんか。泣かないでおくれ。

 ほら、飴ちゃんはいるかの?」

 

 「欲しい」

 

 「ほれ、転ばぬように気をつけるんじゃぞ」

 

 「わぁい」

 

 

 

 飴をペロリつつ、ハンドサインで合図。

 

 死角から、壁に向かって走り去るツルペタ栗毛。

 

 轟音と共に、壁に新しい穴が開く。

 

 

 

 「だまし討ちもできねーのか。栗毛め」

 

 「やっぱりおぬし、一番邪悪じゃね?」

 

 「かわいいウララちゃんを捕まえて。何を言うのか。

 ……うぐぅっ!?」

 

 

 

 膝が折れる。まさかこれはッ……! 

 

 

 

 「まさか、毒ッ!?」

 

 「いや、酔い覚まし飴じゃ。飲めば飲むほど、強烈に分解する。

 立てなくなるほどでは無い筈なんじゃが……おぬし、どんぐらい飲んだんじゃ」

 

 「何リットルだっけ」

 

 「ガロン単位で飲んでましたわよ。

 もちろん、英ガロンで」

 

 「今さらながらのイギリス要素ッ……!」

 

 

 

 床に接吻する前に、トレーナーに支えられる。

 

 

 

 「ご老人。些かオイタが過ぎるな」

 

 「話聞いておったおぬし? 純粋に好意なんじゃが。

 やれやれ。九夢院の次代がこれでは。

 次の世代は、どうなってしまうのかのぉ」

 

 「……なぜ、オレのことを?」

 

 「知らんわけなかろ。わしらはトレーナーじゃぞ。

 トレーナーの名家。基礎知識じゃろうそれは。

 まぁ、二の字たちは、おぬしがそれだと。

 気づいておらんようじゃったが」

 

 

 

 ハルウララは、トレーナーの腕の中で思う。

 

 久しく聞いていなかった名だが。

 

 こやつの本名、相変わらず厨二くせーな。

 

 

 

 「オレの生家など。今ここに、関係があるのか?」

 

 「無いと思っておったよ。だがおぬし。顔が険しくなったぞ」

 

 「年の功。厄介な物だな」

 

 

 

 トレーナーが、自身を駄犬メイドに優しく渡し。

 

 ゆらりと立ち上がる。

 

 下から見上げるケツもまたいい。

 

 

 

 「おぬし。嫡子じゃろう。それが暴帝とは言え。

 レースから身を引いた、ウマ娘の担当。

 九夢院の当代は、さぞかし気を揉んでおることじゃろう。

 おぬしは、勝手気ままに生きられる身分ではない。

 そういうもんじゃろう? 名家とは、体面を気にする。

 哀れなことじゃな。生まれに縛られるとは」

 

 「何か勘違いしているようだな。ご老体。

 もはやオレは、何者にも縛られん」

 

 「口ではなんとでも言える。

 あと何年、猶予があるのかの?」

 

 「…………」

 

 「それとももう、勘当されておるのか? 

 いやいや、おぬしは兄弟が居ない。

 となれば、九夢院はおぬしを放せぬ。

 血を繋ぐ義務があるからのう。

 実績が足りなければ、家は継げぬ。

 困ったのう。弱ったのう。

 枯れつつある、桜の大木。

 患っている暇は。もはやおぬしには……」

 

 「黙ってもらおう。

 オレの咲かせる華は、ただ一本。

 魂に誓ったのだ。ハルウララという桜。

 それを、今度こそ咲かせることこそが。

 我が使命。我が喜び。我が愛の全て。

 誰にも。何にも。邪魔などさせぬ」

 

 

 

 彼が告げる言葉。

 

 酒が回ってよくわからないが。

 

 たぶん、とても重要なことなのだろう。

 

 いつも自分を見て、幸せそうに微笑む顔ではない。

 

 真剣な、男の顔だ。

 

 

 

 「……揺るがぬか。おぬし、まだ二十一じゃろう。

 暴帝とも、出会って一年と聞く。

 まだ自分の生涯を定めるには。些か早くはないかの」

 

 「早い、遅い。短い、長いなど。愛に関係があるのか? 

 それに、短くなどない。オレと『ハルウララ』にとってはな。

 貴様の人生経験など、その程度の物か」

 

 「愛か。そう言われると、これ以上はつつけぬの。

 確かに、ウマ娘を担当する我ら。

 3年間に、全てを注ぎ込む。

 それだけで幸福。それだけが生きる意味。

 そうでなくては、トレーナーになど。

 ならぬ方がマシというもの。

 サラリーマンにでもなっておいた方が。

 まだ利口というものじゃな」 

 

 

 

 舌戦は終わりを告げる。

 

 ゆっくりと、お互いを見据える二人。

 

 駄犬メイドの尻は、些か物足りぬ。

 

 だが、手が寂しいため撫でてやろう。

 

 

 

 「ウララ先輩。私はエル専用なのだが」

 

 「もっと肉をつけろ。ケツがデカい方が、エルコン喜ぶぞ」

 

 「マジかよ。ピザとコーラででっかくなるかな」

 

 「デブるだけだぞ。サイボーグ栗毛の現役時代。

 そのトレーニングメニュー。いくらまで出す?」

 

 「言い値で買おう。犬とお呼びください。わんわん」

 

 「もっと媚びろ。いいぞ。その調子だ」

 

 

 

 駄犬メイドにケツを振らせつつ。

 

 ポップコーンを片手に、戦いを見守ることとする。

 

 トレーナー同士の戦い。すると、()()か。

 

 我がトレーナーよ。その価値をわたしに見せるがいい。

 

 勝利した暁には、褒美をやろう。

 

 

 

 「おぬし。本当にアレでいいのか?」

 

 「ああいうところがかわいい」

 

 「こやつ、ガチで狂っておるな……

 名乗りを忘れておった。我が名こそは。

 6Gの頭領。銅大地 一(どうだいち はじめ)

 冥途の土産に、覚えておくがよい」

 

 「墓石に刻む銘に、悩んでいたところだ。

 ありがたいことだな。

 ……待て。銅大地だと? 

 まさか、伝説のトレーナー。名高き神バ。

 それを育て上げた、生きる伝説か?」

 

 「照れるのう。もはやロートルじゃよ。

 家内は有名じゃがな。だが、わしの実力。

 見誤るでないぞ?」

 

 

 

 ぴりりと弾ける、殺気。

 

 トレーナーの肩が揺れる。

 

 動揺したか。愚か者め。

 

 

 

 「トレーナー。わたしにかっこいい姿を見せろ」

 

 「ああ。ウララの声援。オレを昂らせる。

 神バの伝説。おおいに結構。だがオレは。

 ハルウララ。今代において、最も我が強いウマ娘。

 そのトレーナーだッ!」

 

 

 

 トレーナーの闘気が、膨れ上がる。

 

 手間を掛けさせるトレーナーだ。

 

 だが、持ち直した。勝率はわからぬが。

 

 あと、我が強いってなんだよ。お仕置きするぞ。 

 

 思いつつ、駄犬の調教を続ける。

 

 

 

 「あっ……ウララ先輩……これ以上はッ!」

 

 「うるさい。今大事なところだろ。

 エルコンには、出来ないだろう? この指遣い」

 

 「ウララさんって、なんでこれで愛してもらってますの? 

 わたくし、ものすごく納得いきませんわ」

 

 「おそらく、あのトレーナー。マゾ気質ですね。

 私のデータによると、間違いありません」

 

 「データを見るまでも無いと思うわ。勝手きままにかわいがる。

 それが、愛を得る術。私はこれでスぺちゃんを楽器にしました」

 

 「いつの間に帰ってきたんですか」

 

 「三周して、そろそろかなぁって」

 

 「クソみたいな恋愛観のやつばっかり、いい目を見ますわね。この世界」

 

 「嘆かわしいですね」

 

 「鏡、いりますこと?」

 

 

 

 外野がうるさい。

 

 まぁ、いい出し物だ。騒ぐのもわかる。

 

 映画館で騒ぐ、腐女子のようなものだろう。

 

 もしもトレーナーが負けても。ケツ拭いはしてやろう。

 

 ウマ娘の、甲斐性というやつだ。

 

 ジジイの散華は、確定している。

 

 

 

 「厄介じゃのう。若さというものは。

 ちと羨ましくなるな。……では参るッ!」

 

 「我が決意。我が純情。我が愛の全てをここにッ!」

 

 

 

 二人が同時に。

 

 懐に手を突っ込む。

^ 

 出るッ……! 

 

 

 

 「神バの呼吸ッ! 壱の型ッ!」

 

 「暴帝の呼吸ッ! 壱の型ッ!」

 

 

 

 技名のコール。愛バを示す名と、型番。

 

 正式な作法だ。

 

 引き出された手の内には。

 

 鈍い銅の輝きッ……! 

 

 

 

 「「オラッ♡♡♡催眠ッ♡♡♡」」

 

 

 

 そう。トレーナー同士の闘争とは。

 

 催眠術によって、行われる……! 

 

 

 

 暴力描写はできぬため。

 

 ガイドラインを遵守するため。

 

 平和的に、愛と勇気で戦うのだ! 

 

 そして、勝負は一瞬でキマる。

 

 

 

 「んほぉぉぉぉぉッ♡♡♡」

 

 「わしの勝ちじゃなッ! 貴様は既に、退マ忍ッ!」

 

 

 

 三千倍の喘ぎを上げるトレーナー。

  

 勝ち誇るジジイ。

 

 その後頭部を。

 

 ハルウララの、剛腕が襲う。

 

 

 

 「なぬぐぅっ!?」

 

 

 

 倒れるジジイ。

 

 血は、無論出ていない。

 

 ただの脳震盪である。

 

 

 

 「な、何故じゃ……そやつは! 

 先ほどまでただの観客! 

 鼻の下を伸ばして、そこのロリの尻を撫でていたはず! 

 動く予兆も、合図も見えんかった……! 

 演技でも、なかったはず……!」

 

 

 

 悔しいビクンビクンしていたトレーナーが、ジジイの催眠が解け。

 

 ゆっくりと、虚ろな瞳の愛バ。

 

 ハルウララの腰を抱き。彼に近づき告げる。

 

 

 

 「ジジイ。奥義の練度で、オレが叶う筈はない。

 年季が違いすぎるからな。

 だから、催眠を掛けたのさ。

 貴様ではなく、オレの声が必ず届く。

 ハルウララ。オレの愛バにな!」

 

 「まさか、そのような手が……

 催眠耐性の高いウマ娘に、催眠など。よほどの信頼が無くば。

 決して届かぬはず! 一年で、そのような信頼関係……!」

 

 「一年ではないさ。ハルウララは、オレの『あいば』だ。

 お前には、わからぬだろうがな。

 さぁ。この五円玉を見るがいい」

 

 「嗚呼ッ! あああッ! ああああああっ!?」

 

 

 

 ハルウララの頬を、べろりと舐め。

 

 彼は動けぬ老人に対し、厳かに告げた。

 

 

 

 「奥さんとよろしくやれ。こんなところで油を売って。

 寂しがらせているだろう? 思う存分、愛を確かめるがいい。

 その老体が、枯れ果てるまでな」

 

 

 そして、脳震盪から回復した彼は。

 

 一人用の脱出ポッドを、自ら操り。

 

 出迎える彼女に対して。夜の誘いは大胆に。

 

 

 

 銅大地 一。

 

 

 

 ご無沙汰の 愛バの手により 再起不能(リタイア)! (字余り)

 

 

 

 

 

 つづかない


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