その詳細が開帳されるとき。
企画短編2本同時参加は、さすがにやりすぎ申した
~前回までのあらすじ~
ついに、2度目の接敵を果たした、ハルウララ。
だが、ジジイどもなど眼中になく。
食糧庫の場所のみ吐かせ。
鷹揚に、彼奴らを見逃してやる。
酒が飲みたかったためだ。
果たしてたどり着いた、食糧庫。
その番人、ゴクウ。
働かぬアリが発生する、社会組織の構造。
それを全身で体現しつつ。
彼女たちを、歓迎する。
宴会が、大好きなのである。
艦内では、あまり宴会は行われない。
ジジイに飲ませすぎると、命の危険があるためだ。
始まる宴会。高まる怪鳥の身の危険。
ハルウララは、再度確信する。
トレーナー選び。間違ってはいなかった。
上機嫌でポールダンスに興じるも。
壁を壊した栗毛の暴言。
悪意無くして、ウマはウマを傷つけられる。
釣られたバ鹿も含め。
彼女を怒らせた者は、3人を超え。
ハルウララは、新たな力に覚醒する。
3人抜かし、最終直線で加速する皇帝。
3人にキレ、最終奥義をぶっぱする暴帝。
やはり帝王たるもの。こうでなくてはならぬ。
そう思いつつ、彼女は桜の華を咲かせ。
バ鹿どもを存分にわからせた。
たぶん反省はしないけども。
あとジジイが4人、巻き添えで医務室送りになった。
「全身が痛いのである」
「うーん。学生時代よりも威力が上がってますわね」
「ウララさんも、成長しているのね。胸の性徴は0だけど」
「スズカさん。私はこれ以上、栗毛を憎みたくありません。
言動には細心の注意を払ってください。
ファル子さんも栗毛なのですから」
「というか、サイレンススズカも同じ穴のたぬ吉さんだと。
オレは思うのだが」
「私は機能美だもの。むしろ胸は邪魔よ。
ふとももさえ太ければ、スぺちゃんは満足してくれるわ」
「やはり、グラ〇ルではなく、ラス〇リに。
ダイワスカーレット先輩と共に、出演するべきだったのでは?
私などは、そう思うのである。
ところでウララ先輩。痛いのである。もっとして」
バ鹿どもを、如意棒で小突きつつ。
歩を進める、ハルウララ。
隊形は、バ鹿が増えたため。
ヒシアマゾンストライク・改。
向かう先は、動力部。
もちろん宇宙戦艦を堕とし。
胸をすっきりさせるためだ。
堕ちた先のことは知らぬ。
どうせ、ギャグ補正で全員生き残るだろう。
「いいかバ鹿ども。次にわたしを怒らせてみろ。
スイープトウショウの魔法陣に、生肉付きで。
痺れ薬で胃を満たしてから、放り込んでやるからな」
「触手物は、ガイドラインとの親和性が悪い。
忘れてしまったのかしら」
「覚えているとも。だが、描写しなければ問題は無い。
大丈夫だ。ハルウララ以外の登場ウマ娘は、幸せになりました。
触手の嫁として。そう描写されるだけだよ。
ハッピーエンドだな。喜べ」
「ちょっと震えてきたのである……
エルをタキオン先輩の薬で、触手化する。
その辺で手を打っていただけないだろうか。
私は純愛志向なのでな。NTRはNGである」
「お前はエルコンをどうしたいんだよ」
「はちゃめちゃに愛されたい」
「そうか……」
ちょっと危うい思想を持つ、駄犬の主張。
ハルウララは、如意棒を引っ込めることとした。
こやつらに、何を言ってもわりと無駄。
そう、改めて悟ったからである。
あとタキオンの薬と言われると、マジで出来そうでヤバい。
アグネスタキオン。
大手製薬会社の、熱烈なラヴコールにより。
様々な、ウマ娘に役立つ薬。
これを、外部顧問のメジロ家主治医と。
彼女の愛するモルモット氏と共に。
日夜開発し、ウマ娘の救世主と。
そう呼ばれてはいるが……
自分は、ツインテ栗毛経由で知っている。
モルモット氏と楽しむための、夜の秘薬。
研究開発費のほとんどを、そちらに注ぎ込んでいるのだ。
屈腱炎を治癒する薬。
繋靭帯炎を治癒する薬。
涙を呑み、引退する筈だった。
数々のウマ娘を救った、奇跡の秘薬。
あれらは、モルモット氏の不退転の心構え。
それが輝いたり、ピサの斜塔になったり。
果ては触手になったりしたときに。
偶然採取された、成分を分析し。
なんかすごい薬効があったため、偶然産まれた物に過ぎぬ。
救われたウマ娘たちも、開発経緯と。
薬がやたらと生臭い理由。
それを、知ってしまえば。
微妙な笑顔を見せることだろう。
真実とは、時にウマを傷つけるのだ。
回想を終え、前に目を向ける。
トレーナーのケツ。やはりいい。
そう思っていると。
「来たか。わしの弟分どもが。
世話になり尽くしたのう」
「接敵。インド人を右に」
「私はアフガン人だが」
「お前はジャパニーズウマ娘だろ。目を覚ませカス」
「きゅうん……」
駄犬を叱責し、心の余裕を作る。
余裕は大事だ。メジロ家の秘伝でもあると聞く。
さて、自己紹介のお時間だ。
さっさとどんな変態か。自白するがいい。
「あなたはだぁれ? どんな性癖を持っているのかな」
「お前らと一緒にせんで貰えるかのう。わしは正気じゃよ」
「この世界にまともなヤツがいるとは、寡聞にして聞かないね」
「まぁ否定はせんけど。三十路でその瞳。どんな地獄を見てきたんじゃ」
黙って不快な仲間たちを見る。
目がさらに濁った気がする。
「……すまんななんか。泣かないでおくれ。
ほら、飴ちゃんはいるかの?」
「欲しい」
「ほれ、転ばぬように気をつけるんじゃぞ」
「わぁい」
飴をペロリつつ、ハンドサインで合図。
死角から、壁に向かって走り去るツルペタ栗毛。
轟音と共に、壁に新しい穴が開く。
「だまし討ちもできねーのか。栗毛め」
「やっぱりおぬし、一番邪悪じゃね?」
「かわいいウララちゃんを捕まえて。何を言うのか。
……うぐぅっ!?」
膝が折れる。まさかこれはッ……!
「まさか、毒ッ!?」
「いや、酔い覚まし飴じゃ。飲めば飲むほど、強烈に分解する。
立てなくなるほどでは無い筈なんじゃが……おぬし、どんぐらい飲んだんじゃ」
「何リットルだっけ」
「ガロン単位で飲んでましたわよ。
もちろん、英ガロンで」
「今さらながらのイギリス要素ッ……!」
床に接吻する前に、トレーナーに支えられる。
「ご老人。些かオイタが過ぎるな」
「話聞いておったおぬし? 純粋に好意なんじゃが。
やれやれ。九夢院の次代がこれでは。
次の世代は、どうなってしまうのかのぉ」
「……なぜ、オレのことを?」
「知らんわけなかろ。わしらはトレーナーじゃぞ。
トレーナーの名家。基礎知識じゃろうそれは。
まぁ、二の字たちは、おぬしがそれだと。
気づいておらんようじゃったが」
ハルウララは、トレーナーの腕の中で思う。
久しく聞いていなかった名だが。
こやつの本名、相変わらず厨二くせーな。
「オレの生家など。今ここに、関係があるのか?」
「無いと思っておったよ。だがおぬし。顔が険しくなったぞ」
「年の功。厄介な物だな」
トレーナーが、自身を駄犬メイドに優しく渡し。
ゆらりと立ち上がる。
下から見上げるケツもまたいい。
「おぬし。嫡子じゃろう。それが暴帝とは言え。
レースから身を引いた、ウマ娘の担当。
九夢院の当代は、さぞかし気を揉んでおることじゃろう。
おぬしは、勝手気ままに生きられる身分ではない。
そういうもんじゃろう? 名家とは、体面を気にする。
哀れなことじゃな。生まれに縛られるとは」
「何か勘違いしているようだな。ご老体。
もはやオレは、何者にも縛られん」
「口ではなんとでも言える。
あと何年、猶予があるのかの?」
「…………」
「それとももう、勘当されておるのか?
いやいや、おぬしは兄弟が居ない。
となれば、九夢院はおぬしを放せぬ。
血を繋ぐ義務があるからのう。
実績が足りなければ、家は継げぬ。
困ったのう。弱ったのう。
枯れつつある、桜の大木。
患っている暇は。もはやおぬしには……」
「黙ってもらおう。
オレの咲かせる華は、ただ一本。
魂に誓ったのだ。ハルウララという桜。
それを、今度こそ咲かせることこそが。
我が使命。我が喜び。我が愛の全て。
誰にも。何にも。邪魔などさせぬ」
彼が告げる言葉。
酒が回ってよくわからないが。
たぶん、とても重要なことなのだろう。
いつも自分を見て、幸せそうに微笑む顔ではない。
真剣な、男の顔だ。
「……揺るがぬか。おぬし、まだ二十一じゃろう。
暴帝とも、出会って一年と聞く。
まだ自分の生涯を定めるには。些か早くはないかの」
「早い、遅い。短い、長いなど。愛に関係があるのか?
それに、短くなどない。オレと『ハルウララ』にとってはな。
貴様の人生経験など、その程度の物か」
「愛か。そう言われると、これ以上はつつけぬの。
確かに、ウマ娘を担当する我ら。
3年間に、全てを注ぎ込む。
それだけで幸福。それだけが生きる意味。
そうでなくては、トレーナーになど。
ならぬ方がマシというもの。
サラリーマンにでもなっておいた方が。
まだ利口というものじゃな」
舌戦は終わりを告げる。
ゆっくりと、お互いを見据える二人。
駄犬メイドの尻は、些か物足りぬ。
だが、手が寂しいため撫でてやろう。
「ウララ先輩。私はエル専用なのだが」
「もっと肉をつけろ。ケツがデカい方が、エルコン喜ぶぞ」
「マジかよ。ピザとコーラででっかくなるかな」
「デブるだけだぞ。サイボーグ栗毛の現役時代。
そのトレーニングメニュー。いくらまで出す?」
「言い値で買おう。犬とお呼びください。わんわん」
「もっと媚びろ。いいぞ。その調子だ」
駄犬メイドにケツを振らせつつ。
ポップコーンを片手に、戦いを見守ることとする。
トレーナー同士の戦い。すると、
我がトレーナーよ。その価値をわたしに見せるがいい。
勝利した暁には、褒美をやろう。
「おぬし。本当にアレでいいのか?」
「ああいうところがかわいい」
「こやつ、ガチで狂っておるな……
名乗りを忘れておった。我が名こそは。
6Gの頭領。
冥途の土産に、覚えておくがよい」
「墓石に刻む銘に、悩んでいたところだ。
ありがたいことだな。
……待て。銅大地だと?
まさか、伝説のトレーナー。名高き神バ。
それを育て上げた、生きる伝説か?」
「照れるのう。もはやロートルじゃよ。
家内は有名じゃがな。だが、わしの実力。
見誤るでないぞ?」
ぴりりと弾ける、殺気。
トレーナーの肩が揺れる。
動揺したか。愚か者め。
「トレーナー。わたしにかっこいい姿を見せろ」
「ああ。ウララの声援。オレを昂らせる。
神バの伝説。おおいに結構。だがオレは。
ハルウララ。今代において、最も我が強いウマ娘。
そのトレーナーだッ!」
トレーナーの闘気が、膨れ上がる。
手間を掛けさせるトレーナーだ。
だが、持ち直した。勝率はわからぬが。
あと、我が強いってなんだよ。お仕置きするぞ。
思いつつ、駄犬の調教を続ける。
「あっ……ウララ先輩……これ以上はッ!」
「うるさい。今大事なところだろ。
エルコンには、出来ないだろう? この指遣い」
「ウララさんって、なんでこれで愛してもらってますの?
わたくし、ものすごく納得いきませんわ」
「おそらく、あのトレーナー。マゾ気質ですね。
私のデータによると、間違いありません」
「データを見るまでも無いと思うわ。勝手きままにかわいがる。
それが、愛を得る術。私はこれでスぺちゃんを楽器にしました」
「いつの間に帰ってきたんですか」
「三周して、そろそろかなぁって」
「クソみたいな恋愛観のやつばっかり、いい目を見ますわね。この世界」
「嘆かわしいですね」
「鏡、いりますこと?」
外野がうるさい。
まぁ、いい出し物だ。騒ぐのもわかる。
映画館で騒ぐ、腐女子のようなものだろう。
もしもトレーナーが負けても。ケツ拭いはしてやろう。
ウマ娘の、甲斐性というやつだ。
ジジイの散華は、確定している。
「厄介じゃのう。若さというものは。
ちと羨ましくなるな。……では参るッ!」
「我が決意。我が純情。我が愛の全てをここにッ!」
二人が同時に。
懐に手を突っ込む。
^
出るッ……!
「神バの呼吸ッ! 壱の型ッ!」
「暴帝の呼吸ッ! 壱の型ッ!」
技名のコール。愛バを示す名と、型番。
正式な作法だ。
引き出された手の内には。
鈍い銅の輝きッ……!
「「オラッ♡♡♡催眠ッ♡♡♡」」
そう。トレーナー同士の闘争とは。
催眠術によって、行われる……!
暴力描写はできぬため。
ガイドラインを遵守するため。
平和的に、愛と勇気で戦うのだ!
そして、勝負は一瞬でキマる。
「んほぉぉぉぉぉッ♡♡♡」
「わしの勝ちじゃなッ! 貴様は既に、退マ忍ッ!」
三千倍の喘ぎを上げるトレーナー。
勝ち誇るジジイ。
その後頭部を。
ハルウララの、剛腕が襲う。
「なぬぐぅっ!?」
倒れるジジイ。
血は、無論出ていない。
ただの脳震盪である。
「な、何故じゃ……そやつは!
先ほどまでただの観客!
鼻の下を伸ばして、そこのロリの尻を撫でていたはず!
動く予兆も、合図も見えんかった……!
演技でも、なかったはず……!」
悔しいビクンビクンしていたトレーナーが、ジジイの催眠が解け。
ゆっくりと、虚ろな瞳の愛バ。
ハルウララの腰を抱き。彼に近づき告げる。
「ジジイ。奥義の練度で、オレが叶う筈はない。
年季が違いすぎるからな。
だから、催眠を掛けたのさ。
貴様ではなく、オレの声が必ず届く。
ハルウララ。オレの愛バにな!」
「まさか、そのような手が……
催眠耐性の高いウマ娘に、催眠など。よほどの信頼が無くば。
決して届かぬはず! 一年で、そのような信頼関係……!」
「一年ではないさ。ハルウララは、オレの『あいば』だ。
お前には、わからぬだろうがな。
さぁ。この五円玉を見るがいい」
「嗚呼ッ! あああッ! ああああああっ!?」
ハルウララの頬を、べろりと舐め。
彼は動けぬ老人に対し、厳かに告げた。
「奥さんとよろしくやれ。こんなところで油を売って。
寂しがらせているだろう? 思う存分、愛を確かめるがいい。
その老体が、枯れ果てるまでな」
そして、脳震盪から回復した彼は。
一人用の脱出ポッドを、自ら操り。
出迎える彼女に対して。夜の誘いは大胆に。
銅大地 一。
ご無沙汰の 愛バの手により
つづかない