ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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そろそろガチで怒られるやも。
だが、オレはこれが書きたい。


ファル子さんじゅういっさい そのにじゅうさん 先代を超えろ

~前回までのあらすじ~

 

 お仕置きを終え。

 

 進軍を再開した、ハルウララご一行。

 

 アグネスタキオンと、駄犬メイド。

 

 業の深さに、思いを馳せながら。

 

 次なるジジイと接敵する。

 

 初手の騙し合いの結果は、こちらの敗北。

 

 ポンコツ栗毛は、壁をブチ抜き走り出し。

 

 ジジイのご厚意により、崩れ落ちるハルウララ。

 

 飲み過ぎたためだ。

 

 愛する暴君の、膝を着く姿に。

 

 腹を立てた、トレーナー。

 

 彼女を地に伏せさせていいのは、自分のみ。

 

 独占欲が強いためだ。

 

 敬老精神を、遥か彼方に投げ捨てて。

 

 老爺わからせ企画物バトル。

 

 果敢に挑む、彼の姓。

 

 その名も高き、九夢院。

 

 桐生院に匹敵する、名家だ。

 

 ジジイに嫡子たる、義務を問われるも。

 

 そのようなこと、知らぬのだ。

 

 家に縛られるのは、もう古い。

 

 そう告げるも、老爺の唐突な自分語り。

 

 なんと、神バのトレーナー。

 

 ハルウララは、彼の動揺を見抜き。

 

 駄犬の薄い尻を楽しみながら。

 

 叱咤激励、待ったなし。

 

 彼は、愛する暴君の声に。

 

 ついに、秘められた力を開帳する。

 

 催眠バトル。正式な作法であった。

 

 告げられる、誇りある愛バの生き様。

 

 振り回される、五円玉。

 

 年季の違いに、んほぉするも。

 

 愛バを傀儡と化す、奇策により。

 

 見事、勝利を納める彼。

 

 灰は灰に。塵は塵に。

 

 ジジイはジジイの。

 

 愛バに生を、搾らせる。

 

 そして、最後の刺客が訪れる。

 

 彼の名は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハルウララは、目を覚ました。

 

 どうやら、楽しく観戦するうちに。

 

 寝てしまっていたようだ。

 

 自身は、彼の腕の中。

 

 

 

 状況を見るに、勝ったのだろう。

 

 後で、褒美をやらねば。

 

 しかし、一つの違和感。

 

 

 

 「トレーナー。何か頬が。

 舐め回されたように濡れてる」

 

 「ウララ。恐らく、倒れた時に。

 地面が濡れていたのだろう。

 どれ、オレがふきふきしてやろう」

 

 「なんか、粘ついているような」

 

 「気のせいだ」

 

 「むぅ。釈然としない……」

 

 

 

 何か。違和感を感じるが。

 

 大人しく、奉仕を受け入れることとする。

 

 忠実な臣下だ。

 

 自分を害することは、未来永劫無い。

 

 

 

 「これは、教えたほうが?」

 

 「教えない方が、面白いから却下よ」

 

 「あんなに思い切り、催眠に。

 ドハマりし尽くす、ウマ娘。

 初めて見ましたわよ、わたくし」

 

 「思い出しますね。よく私のトレーナーも。

 ファル子さんを、催眠していたものです。

 私はもちろん、かかりませんでしたが」

 

 「催眠なんて?」

 

 「ありえないわ」

 

 「絶対かかっている。私は確信したのである」

 

 

 

 外野が、ややうるさいが。

 

 大したことは、話していないだろう。

 

 気を取り直し、前進再開である。

 

 

 

 「ところでトレーナー。鏡」

 

 「うむ。どうぞ」

 

 

 

 差し出された、手鏡に映る。

 

 一分咲きの、物足りぬ桜。

 

 鹿毛のウマ娘の、ぷりちーフェイス。

 

 

 

 「んー。回復が遅いな」

 

 「完全展開に加え、あの威力の、謎奥義。

 今元気に喋れている方が、不思議ですわよ」

 

 「そうね。私も、あと10回ぐらいしか。

 今日は、全力では走れないわ」

 

 「スズカさん。容易くウマ娘の限界。

 栗毛力で突破するのは、やめて頂けませんか」

 

 

 

 やはり、栗毛はおかしい。

 

 思いつつ、横を見ると。

 

 駄犬メイドの、疑問顔。

 

 何か聞きたいことでも、あるのだろうか。

 

 

 

 「私は領域について、自分の物以外について。

 あまり、良く知らぬのだが。

 普通は、日に何回が限度なのだろうか」

 

 「ルーティーン化した、部分展開でも日に一度。

 レースを日に何回も走る、ウマ娘なんて。

 見たことありますこと? 

 伝説の、キンチェムぐらいでは?」

 

 「私、いつでもどこでも何度でも。

 わりと、自由に飛べるのだが」

 

 「レースに使えないからだろ。

 三女神は、そういうとこザルだよ」

 

 「スズカ先輩のは? めちゃくちゃレース向きである。

 飛ぶこと以外。親近感を感じはするが」

 

 「飛ぶからだからじゃ、ないですかね……

 いや、飛ばなくても。とんでもない速度でしたが」

 

 

 

 遠い目をする、エイシンフラッシュ。

 

 何やら、思う所があるらしい。

 

 

 

 「肉体負荷も、関係しているのだろう。

 アフちゃんのは、上昇気流に乗るだけ。

 サイレンススズカは、やたらと頑丈。

 メジロマックイーンと、エイシンフラッシュ。

 お前たち二人の領域については。

 オレは、内容はわからないが。

 

 ウララの領域は、身体の負担がでかい。

 恐らく、防衛本能だろう。

 己を壊さないための」

 

 「なるほどね。つまりはこうだな。

 か弱いウララちゃんはかわいい」

 

 「その通りだ」

 

 「ウソでしょ……」

 

 

 

 珍しい、栗毛の呆然顔。

 

 何かおかしい所が、あっただろうか。

 

 トレーナーに、お姫様だっこされつつ。

 

 動力部へと向かう。

 

 

 

 「そういえば、トレーナーさん。

 ご実家の話を、されておりましたが。

 お家は、大丈夫なんですの?」

 

 「心配は無用だ。いいか、考えてみろ。

 名家は、幾つかあるが。

 まず、サトノ。百合婚をした挙げ句。

 謎の、引退した演歌歌手兼業トレーナー。

 それも、己の親より年上。

 そいつを囲おうと、画策しているらしい」

 

 「どんなヤツなんだろうね。その被害者」

 

 「顔を見てみたいものですわね」

 

 

 

 既に見ているが、彼らは知らない。

 

 北 燦三郎。

 

 キャラは濃いが、先程の登場では。

 

 影は死ぬほど、薄かった。

 

 

 

 「次に、桐生院。家の秘伝だか知らんが。

 鋼の意思とかいう、誰に役立つのか不明な。

 よくわからんスキルを、嫌がらせのように。

 ティッシュよりも気軽に、ばら撒いた挙げ句。

 白毛のウマ娘に、執着されて未だに独身」

 

 

 

 既に、二代目ミソジドクシンオーを襲名している。

 

 

 

 「シンボリは、まぁ政治家だ。

 誇れる職ではあるが。なんというか……

 動機が欲に塗れている上、やり方がダーティ。

 逮捕と変革。どちらが先になるやら」

 

 「是非頑張って欲しいと、思ってるよ」

 

 「ウララ。オレ一人では不満か」

 

 「たまには、ステーキ以外も食いたいんだよ」

 

 「そうか。まぁオレがメインディッシュであれば、それでいい」

 

 「そういうところ、高ポイントだよ」

 

 

 

 驚愕の顔で、こちらを見るバ鹿ども。

 

 何か、おかしい所があっただろうか。

 

 

 

 「なんと。どこまでも都合の良い。

 顔と声とケツの、すこぶる良い男。

 ウララさんは、どうやってこんな優良物件。

 捕獲したのでしょうか」

 

 「洗脳も完璧ですね。違和感を感じる、素振りも無し。

 腕力だけだと、思っていましたが。

 これは、後程やり方を。ご教示願わねばなりません」

 

 「私は怪鳥一筋。あまり関係ないのである」

 

 

 

 「最後に、メジロマック院。

 ごらんの有り様だ」

 

 

 

 全員の視線が、ゲーミング葦毛お嬢に集中する。

 

 

 

 「わたくしだけ、何故名指し? 

 ……やめてくださいまし。

 わたくしを、憐れんだ目で。

 そんなに見るのは、やめてくださいましっ!」

 

 

 

 泣き崩れる、メジロ家首魁。

 

 長らく、目を逸らし続けていたが。

 

 本当は、気づいているのだろう。

 

 

 

 愛するババコンに、愛される頃には。

 

 恐らくとっくに、アガっている。

 

 何かはコンプライアンス上、言えぬが。

 

 

 

 新しい恋を見つけぬ限り。

 

 子孫を残せぬ、身の上である。

 

 

 

 「思い付くだけでも、この惨状。

 オレは、子孫を残す気満々。

 むしろ、100人は。愛の結晶が欲しい。

 どうだ。家に貢献しているだろう」

 

 「わたしはそんなに産めねーよ。

 殺す気か、貴様」

 

 「いけるいける。愛があれば」

 

 「ツインテ栗毛どもと、一緒にするなよ。

 いいか。いつも言っているだろう。

 わたしは、一姫二太郎ぐらいが理想だ」

 

 「オラッ♡催眠ッ♡」

 

 「いけそう」

 

 「よし」

 

 

 

 バ鹿どもが、やれやれと首を振る。

 

 どうしたのだろうか。

 

 かわいい我が子に満ち溢れる、このハルウララの。

 

 輝かしい未来に、嫉妬しているのだろうか。

 

 

 

 「やっぱこいつは、ダメですわね。

 罪悪感とか、倫理観とか。

 欠片も、持ち合わせが無さそうですわ」

 

 「オレ様系は、少女漫画でウケると聞きますが。

 どちらかというと、そのような作品への出演。

 登場した途端に、非業の死を遂げさせられる。

 エロ漫画島に生息してそうな、ヒト息子ですね」

 

 「ウララ先輩、退マ忍より催眠に弱くない?」

 

 

 

 よくわからないが、無礼なことを言われている気がする。

 

 トレーナーの首元を、くんかくんかしつつ。

 

 反論を、試みることとする。いいにおい。

 

 

 

 「誰が感度三千倍だよ。ウララちゃんは清い身だ」

 

 「好感度は弄っていない。完全に合法だ」

 

 「絶対弄ってますわよね?」

 

 「いや。ウララには効かなかった。オレにできるのは。

 ちょっと性癖を、オレ好みにすることだけだよ」

 

 「十分大惨事だと。思うのだけれど」

 

 「マゾなのか、サドなのか。私のように、はっきりするべきである」

 

 「エルコンドルパサーさんへの、扱いを見るに。

 アフちゃんも、相当歪んでいると。私は思うのですが」

 

 

 

 失礼なヤツである。完全に純愛だというのに。

 

 更なる反論を考えるうちに。よく知った気配。

 

 通路の先から、感じるこれは。

 

 

 

 「……おじいちゃん?」

 

 「よう。久しぶりだなウララ」

 

 

 

 つば短の、麦わらハットにサングラス。

 

 手には、ステッキを携えた。

 

 悪人面の、おじいちゃん。

 

 己の、ドリームトロフィー時代を支えた男。

 

 六平 銀次郎が、そこにいた。

 

 

 

 「ほう。ウララの元トレーナー。

 フェアリーゴッドファーザーか。

 お噂はかねがね。ウララがお世話になっておりました。

 もうオレの物だがな。羨ましかろう」

 

 「敬意を払うか、喧嘩を売るか。どっちかにしやがれ。

 あと、オレをそのあだ名で呼ぶな」

 

 「失礼。ジジイ。これでいいか?」

 

 「いいねぇ。はっきりしたヤツは好きだぜ。

 ウララに相応しい、バ鹿野郎だ」

 

 

 

 ゆらりと。身を揺らす、おじいちゃん。

 

 何か、様子がおかしい。

 

 と、いうか彼は。

 

 

 

 「おじいちゃん。腰は大丈夫なの? 

 それが原因で引退したじゃん」

 

 「お前と一緒の原因だということに。

 そういうことに、していたな。

 だがな。あれは方便よ。

 本当の理由。お前が知る必要は無いがな」

 

 「……貴様。ウララに嘘を? 

 オレがウララを担当出来たのは、貴様の引退が原因。

 それについては、感謝しよう。

 だがな、担当ウマ娘に。嘘をつく。

 それだけは、トレーナーとして。

 やってはならない事ではないか?」

 

 

 

 トレーナーの、怒り。

 

 この顔も、わりと好みだ。

 

 だいたい大好物だが。イケメンだし。

 

 

 

 「お前にはわからねぇよ。若すぎる。

 必要だったんだ。嘘なんてつきたかぁ、無かった。

 だがな。世の中には、それが必要な時がある」

 

 「……サングラスを外してくれないか。

 オレは未熟者でな。目を見ないと。

 相手が、尊敬すべき者であるのか。

 ちゃんと、催眠にかかっているのか。

 まだ、見抜くことができんのだ」

 

 「さらっと催眠を自白したな。こやつ」

 

 「うるせぇぞ。育て甲斐がありそうなロリ。

 おい、小僧。オレの目を見たきゃあな。

 実力で見てみやがれってんだ」

 

 

 

 ステッキを、こつこつと。

 

 突きながら告げる彼。

 

 感じる圧力が増す。

 

 

 

 「……ウララ。ヤツの実力は?」

 

 「強いよ。シンデレラを作る魔法使い。

 フェアリーゴッドファーザーは、伊達じゃない。

 おじいちゃんじゃなきゃ、オグリは2冠を取れてない」

 

 「なるほどな。……なるほど。

 強いな。未熟なオレでもわかる。

 先ほどの、銅大地とやらが最強。

 そう考えていたが……

 どうやら、この世界は。

 オレが思っていたよりも、広いらしい」

 

 「銅大地の兄貴か。

 あっちの方がつえぇぞ。だがな。

 オレは、アイツほど甘くねぇ。

 その違いだと考えろ」

 

 「……ウララ。降ろすぞ。

 どうやら、お前を抱えたままでは。

 一瞬で、勝負が決められる。

 お前を抱えたまま、喘ぎたくはない」

 

 「当たり前だろバ鹿」

 

 

 

 そっと、地面に降ろされる。

 

 かつんという音。少しばかりの喪失感。

 

 下がって、見守ることとする。

 

 

 

 「さて。こちらの準備は良いぞ。

 ご老体、やはり催眠で?」

 

 「それもいいが。せっかくウララがいるんだ。

 ネ・トレ・ラレWピース。そいつで決めようや」

 

 「ネ・トレ・ラレWピースですって……!?」

 

 「知っているのですか、スズ電!?」

 

 「ええ。知っているわ。恐ろしい勝負方法よ……」

 

 

 

 栗毛が、平坦な胸に手を当て。ゆっくりと告げる。

 

 

 

 「ネ・トレ・ラレWピース。ピ・クシブを発祥とする勝負よ。 

 安直な、嫌われの氾濫。現れる、謎の敏腕トレーナー。

 ちょっとチョロすぎる、ウマ娘たち。

 これを問題視した、理事長が提案した方式よ」

 

 「大丈夫ですの? なんかすごい勢いで、喧嘩売ってませんこと?」

 

 「安心して。今さらよ。……続けるわね。

 1人のウマ娘を争う時。トレーナーは、催眠で勝負をつける。

 そして、愛の深さを競うのよ。

 当然よね。催眠に最も重要なのは、リラックスと信頼関係。

 絆が深いトレーナーだけが、愛バを催眠にかけられるの」

 

 「愛っていったい。私は思ったのである」

 

 

 

 朗々と紡がれる、栗毛の美声。

 

 そうか。こやつも確か。

 

 

 

 「スズカさんも。トレーナーが交代したのでしたね」

 

 「そうよ。私の、2人のトレーナー。

 王道戦法を至上とする、前トレーナーと。

 私を好きに走らせようとした、彼。

 彼らは、私に催眠をかけ。

 そして、勝者が私を勝ち取ったの」

 

 「スズカさん。なんでもないように言ってますけど。

 基本的ウマ権の侵害では?」

 

 「正式な作法だもの。しょうがないわね」

 

 「スズカ先輩、メンタルつっよ……」

 

 

 

 ちょっと引いた感じのアフちゃん。

 

 栗毛に慣れていないためだろう。

 

 こやつは、走ることと、スぺちゃん以外。わりとどうでもいいのだ。

 

 ……というか。ちょっと待て。

 

 

 

 「わたしの意志は?」

 

 「ウララ。わがままを言ってはいけない」

 

 「そうだぞ。たまには言うことを聞きやがれ」

 

 「釈然としない……」

 

 

 

 だが、こやつら話を聞きそうにない。

 

 まぁいいだろう。ウララちゃんは、催眠になど。

 

 絶対に、負けはしないのだ。

 

 

 

 ※負けます

 

 

 

 「さぁ! 五円玉を出せ! ちっとばかし、ブランクはあるが! 

 オレたちの十一年、お前の一年で勝てるかな!」

 

 「愛とは、時間ではない。忘れてしまったようだな」

 

 

 

 ゆっくりと、己の前で五円玉を揺らす彼ら。

 

 なんだこれは。どうしろというのだ。

 

 

 

 「ちなみにスズカ先輩。先輩は催眠には?」

 

 「かからなかったわ。普通に前トレーナーを殴り倒したわ」

 

 「さすがすぎる……勝負の意味、ゼロである」

 

 

 

 そして。

 

 

 

 「「オラッ♡催眠ッ♡」」

 

 

 

 最低の勝負が、始まった。

 

 こいつら、後で殴る。

 

 ハルウララは。

 

 そう思いつつ、催眠にドハマりした。

 

 

 

 

 つづかない


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