ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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バトルと、領域の設定回です。
アプリ版に、ウマ娘トレーナーが出ない理由。
それを、私なりに解釈しました。


ファル子さんじゅういっさい そのにじゅうろく 微笑みピエロの赤い鼻

~前回までのあらすじ~

 

 ジジイを下し。動力部へと向かう、道すがら。

 

 艦橋へと。向かっていることに気付く。

 

 ジジイのアンサー。理由としては最もだが。

 

 十中八九罠である。しかし、敢えて乗る。

 

 駄犬メイドの七転八倒。見たい気分だったからだ。

 

 道中語られる、トレーナーの愛の言葉。

 

 普通のヒト雌ならドン引きであるが。

 

 ウマ娘は、純情一途の愛されたがり。

 

 気分よく、罠へと直線一気をキメる。

 

 扉の前。ようやく気付く、褐色ロリ。

 

 味方は、味方だが。だがしかし。

 

 ドSしか、ここには居らぬ。

 

 ハルウララは、立ち止まる彼女に。

 

 正当っぽい、理由を告げて。

 

 罠へと、メイドを派遣する。

 

 出張メイドと、いうやつだ。

 

 デリバリメイド。些か風俗の香り。

 

 全てを悟ったアフちゃんは。

 

 十五夜を思いだし。

 

 ママ直伝の、ヤクザキックを扉にキメる。

 

 そして現れる、最後のおもちゃ。

 

 ジジイと、白髪ロリの作戦会議。

 

 発破を掛ける、ハルウララ。

 

 ダーツの旅の予感と、迫り上がる床。

 

 想起される、外道ママの鬼畜抱擁。

 

 ハルウララは、しばしの錯乱の後に。

 

 そっと、意識を手放した。

 

 ケツ鬼術。恐ろしい術である。

 

 果たして、スマートファルコンの安否は。

 

 

 

 

 

 

 

 「ファル子さん……! 

 なんと、痛ましい姿に……!」

 

 

 

 

 呆然と告げる、エイシンフラッシュの声。

 

 一同は、変わり果てた猛禽類。

 

 それを見て、戦慄した。

 

 

 

 

 「むにゃむにゃ……すんすん。

 えへへ、いいにおい……

 ファル子、もう飲めない……」

 

 

 

 頭部を覆うは、白い布。

 

 ウマ耳を、びょいと元気に突き出して。

 

 鼻梁に乗っかる、可憐なリボン。

 

 酒瓶を抱く、眠り姫。

 

 

 

 「Oh……HENTAI仮面……」

 

 

 

 思わずアメリカンに告げる、芦毛の声。

 

 そう。

 

 

 

 「ファルコン・パンツであるな」

 

 せっかくぼかしたのに。

 

 

 

 「会長を、迎えに行ったらさ。

 酔ってたからだね。いつも通り。

 気ままに、無体を働かれたよ。

 タイトスカートで、助かったね」

 

 「助かってはいないと思うわ」

 

 

 

 非常に珍しい、栗毛によるツッコミ。

 

 アフガンコウクウショーは唸った。 

 

 

 

 「ユキオー。今、私は。

 初めてお前に、凄まじい親近感。

 これを、感じたのである。

 やはり。はいてない方が気持ちいい」

 

 「一緒にしないでくれる? 

 わたしは、自主的にそうしてるンじゃなく。

 いっつも会長に。脱がされてるだけだよ。

 つまりこれって、愛じゃン?」

 

 「ドングリの。袴比べだと思いますが」

 

 「どちらも、履いておりません。

 比べようがないと思いますわ、わたくし」

 

 

 

 ノーガードを誇る、リスの餌ども。

 

 黒鹿毛の、冷静なツッコミ。

 

 片手では、ウマホでの高速連写。

 

 どうやら、猛禽類の痴態。

 

 いたく、気に入ったらしい。

 

 

 

 「さて。それじゃあ始めようか。

 なんで履き直さなかったか、わかる?」

 

 「気持ちいいから?」

 

 「それは、まぁ……そうだね。

 会長が履いてくれてる。頭に。

 なら、わたしが履いているのと同じ。

 むしろ、心が繋がっているのを感じる。

 それが、理由のひとつ」

 

 「なるほど。スペちゃんのおなかと。

 私のふともも。それと同じようなものね」

 

 「すまん、サイレンススズカ。

 オレにも理解可能な、例えをしてくれないか? 

 未熟者故、ニホン語と、ウララ言語。

 あと幾つかの、外国語しかわからん。

 栗毛言語は、履修していない」

 

 

 

 外野の声。理解できまい。

 

 この自然主義。

 

 はいてない者しか、わからぬ……! 

 

 

 

 「そしてッ! 追い詰められた方がッ! 

 ヒトの魂はッ! 輝きを放つ! 

 そう、あの男ッ! カイジのようにねッ!」

 

 「ウマ娘ですわよね? この白髪。

 あと、カイジって誰ですの?」

 

 

 

 ウマ娘の身体に、トネガワソウル。

 

 これをウマ娘と、呼んでいいのかどうか。

 

 この小説の根幹に関わる、議題である。

 

 

 

 「つまり、背水の陣ッ! 

 狂気の沙汰ほど、面白い……!」

 

 「ぬぅっ! なんという圧力! 

 ユキオー! 成長しおったな……!」

 

 

 

 感じる圧力。

 

 わかる。これは。

 

 愛しの怪鳥に匹敵する。

 

 全てを解放して、当たらねばならぬ。

 

 アフガン航空相撲力士として。

 

 あの頃の自分に、還るとしよう。

 

 

 

 アフガンコウクウショーは、覚悟を胸に。

 

 ユキオーが待ち構える、ステージに登る。

 

 

 

 「さぁ! 飛んでごらン! 

 アフガンコウクウショー先輩! 

 わたしの恋で、故意の航空事故! 

 味わい尽くして、地に堕ちろ! 

 『フォーリンダウン』!」

 

 「いや、飛ばんけど」

 

 「えっ」

 

 

 

 高らかに。告げて仁王立ちしたままに。

 

 こちらに重圧を掛ける、ユキオー。

 

 接近して、メイドヤクザキック。

 

 

 

 ふわりと優雅に。広がるメイドスカート。

 

 後ろに吹き飛ぶユキオー。

 

 ガードがウマい。ダメージは軽微だろう。

 

 

 

 「ぬああっ!? いったぁぁぁい! 

 飛びなさいよっ! トリでしょッ!? 

 あと、何そのスカートの下ッ!? 

 ピエロの笑顔がキモいんだけどっ!」

 

 「トリではない! 航空力士だっ! 

 あと、アラー!! の加護である」

 

 

 

 くるりと廻り、スカートを翻し。

 

 道化師の威光を魅せつけて。

 

 にぱっと笑い、見得を切る。

 

 やはり、サービスは大事である。

 

 

 

 「学生時代から、意味わかンなかったけど。

 相変わらず、よくわからン先輩だね。

 さっさと飛んでくれない? 堕とせないでしょ」

 

 「ユキオー。お前の領域の弱点。

 このアフちゃん、まるっとお見通しである。

 アフターバーナーで、十分対応できる」

 

 「なンと……! まさか、気づいたの!?」

 

 

 

 ユキオーの驚愕。

 

 甘い。怪鳥の唇のように。

 

 この人生経験豊かな、アフちゃんを無礼るな。

 

 上昇気流を。己の肉体のみに纏わせ、告げる。

 

 領域はフレキシブル。服に影響を与えぬことも、できる。

 

 

 

 「お前の領域。宇宙戦艦で、増幅せねば。

 飛んでる私一人を落とす。

 それぐらいが、精一杯。

 

 そして、地面に立っている今。

 既に、私は堕ちている判定ではないか? 

 領域の、効果はほぼ発揮できぬ。

 今のように、ちょっとばかり重くなるだけ。

 そうであろう?」

 

 「くっ……! 学生時代に見せすぎたねっ! 

 まさか、気付かれるとはッ……!」

 

 「当然である! 賢いのでなッ! 

 ……まあ。私も飛ばないと! 

 ちょっとした、重量軽減しか出来ないけど!」

 

 

 

 えっへんと、胸を張る褐色ロリ。

 

 歯噛みする、白毛ロリ。

 

 

 

 「どちらも、アホだとは思いますが」

 

 「今さらだと思うわ」

 

 「まぁ、このぐらいのバ鹿。

 学生時代から、慣れっこですわ。

 ほら、紅茶が入りましたわよ」

 

 「ほう。メジロの紅茶とは。

 お茶請けには、これなどどうだ」

 

 

 

 あるお菓子を取り出す、トレーナー。

 

 ウマ娘は、甘味が大好き。

 

 嗜みとして、甘いおやつは常備しているのだ。

 

 

 

 「あら。ベイクドモチョチョ。

 ありがたく、パクパクですわっ!」

 

 

 

 それを見て歓声を上げる、ゲーミング葦毛。

 

 現役時代は我慢していたが。

 

 今、彼女を阻む糖質制限はない。

 

 おなかのおにくは、摘まめるほどある。

 

 

 

 「モチョチョ、わりと好きよ」

 

 「学生時代を、思い出しますね」

 

 「まぁ、呼び方は自由だが。

 これの名称は、今川焼きでは……?」

 

 「うーん、腰がぁ……」

 

 「お、今川焼き。俺も頂くぜ」

 

 

 

 褐色ロリの、前蹴り。

 

 微笑むピエロの、赤い鼻。

 

 

 

 「アフガン前蹴りッ!」

 

 「そのまんま、ミヤザキ県知事すぎンッ!?」

 

 

 

 東の国の原っぱっぽい蹴り。これを利し。

 

 ユキオーは、後方へと跳んだ。

 

 

 

 やはり、ベイクドモチョチョは共通認識。

 

 自分の正しさを、再確認したのはいいが。

 

 ピクニックシートを広げ。

 

 和気藹々と、ティータイムと洒落こむ外野。

 

 

 

 (おじいちゃんまで、参加してる……!)

 

 

 

 ずるい。わたしもアオハルしたい。

 

 そう思いつつ、領域を維持。

 

 重圧を掛けるが、相手の動きに遅滞はない。

 

 痴態は晒しているが、ピエロの笑顔で隠されている。

 

 拮抗状態は、変わらない。

 

 

 

 「そういえば。領域とは。

 ここまで拮抗するものか?」

 

 「なんだ小僧。知らねぇのか。

 まぁいい。先輩の務めってヤツだな。

 六平先生が、優しく教えてやろう」

 

 

 

 授業まで始まった。

 

 

 

 「アフガン航空掌ッ!」

 

 「自己紹介かなッ!?」

 

 

 

 褐色ロリの、張り手をいなしつつ思う。

 

 学校生活、懐かしいなぁ。

 

 

 

 「いいか小僧。俺が見た限り。

 アフガンコウクウショーとやら。

 あいつも、領域に入門したばかり。

 ……と、いうか。練度自体は高いな。

 部分展開まで達していない。

 こう言った方が適切か」

 

 「部分展開?」

 

 「そっからかよ。

 まぁ、ウララしか担当してねぇからな。

 完成形しか、知らねぇこともあるか」

 

 

 

 やれやれと、サングラスを上げ。

 

 超小型プロジェクターを展開する、ジジイ。

 

 トレーナーの嗜み。彼も未だ、現役を張れる。

 

 

 

 「いいか。領域には、大きく分けて三段階ある。

 第一段階。ウマソウルの存在を知覚し。

 ウマ娘の意志で、力の片鱗を振るえる『開眼』。

 これは、目では見えねぇ。一部の例外を除いてな。

 力を振るう、本ウマと。それに触れているトレーナー。

 その二人だけが、領域の存在を知覚できる」

 

 「ほう。レースで使われるのは、それか?」

 

 「まぁ、使われることもあるな。

 ユキオーと、褐色ロリが使ってるのも。この段階だ」

 

 

 

 彼女たちのバトルに、目をやり。

 

 ピエロと目が合ったため、逸らして説明を続ける。

 

 一部の例外だ。神の加護は強い。

 

 

 

 「なんだよあのピエロ。

 アイツ、まだ開眼の筈だろ……

 視覚への干渉とか、器用すぎるんだろ。

 まぁいい。第二段階。

 ウマソウルが、ある条件で励起され。

 この世に適合しつつある状態。

 夢の一部を現出させる、『部分展開』。

 領域の存在を、知覚した……

 目覚めたトレーナーなら、幻視できる。

 レースでウマ娘が、ルーティン化して使う。

 『固有スキル』とも呼ばれるものだ。

 マックイーンのお嬢ちゃんの、紅茶とか有名だな」

 

 「ああ、カットインが入るヤツか」

 

 「メタな話はよせ」

 

 「すまない。つい……」

 

 

 

 叱責しつつ、続ける。

 

 

 

 「そして、第三段階。

 ウマソウルの励起が、臨界に達し。

 ウマ娘と完全に、同調した状態。

 夢で世界を塗り潰す、『完全展開』だ。

 こいつは、誰でも見える。

 そのウマ娘に、都合の良い世界。

 我が儘を、無理やり現世に描き出してるからな」

 

 「ほう。オレは完全展開しか。

 目にしたことは無いな」

 

 「珍しいケースだな。

 普通は、最初の三年間。

 担当ウマ娘と絆を深め、開眼を果たした彼女と。

 触れ合ったトレーナーは、見るんだよ。

 微睡むウマソウルの、夢の一部を。

 『知覚』って、言うんだがな。

 完全展開でやったヤツは、初めて見た」

 

 

 

 そう。彼は、ハルウララしか。

 

 既に完成したウマ娘しか、担当していない。

 

 それ故、歪んだ知識しか。

 

 実感として、持ってはいない。

 

 

 

 「おめえ、よく無事だったな。

 事故とかで、トレーナーを引き継いで。

 部分展開で、初めて知覚したヤツでも。

 魂に掛かる負荷は、相当らしいぜ。

 

 全く覚えの無い知識。見知らぬ風景。

 そして。温もりを求める、魂の声。

 そいつを急に視て、発狂しかけるヤツも。

 過去には居たらしい」

 

 「ああ、とても衝撃的だったよ。

 オレは、全てを見たからな。

 魂が、揺さぶられたよ」

 

 「ウララとの相性が、余程に良かったんだな。

 三女神に感謝しろよ、小僧」

 

 「感謝しているとも。また、出会えた。

 ツバメに、チャンスを与えてくれたこと。

 オレは、生まれ変わっても忘れぬ」

 

 

 

 六平トレーナーは、サングラスの下で。

 

 そっと微笑んだ。

 

 彼女は、いい出会いをしたらしい。

 

 

 

 先ほどからの言動を見るに。

 

 この小僧。意味がよくわからない、発言が多い。

 

 まだ、多少混乱しているのだろう。

 

 後遺症としては、軽い方ではあると思うが。

 

 会話を続ける。彼が自分を取り戻す、一助となるだろう。

 

 

 

 「小僧。最強の領域とは。何だと思う?」

 

 「決まっている。ウララの領域だ」

 

 「いいね。その答え。すげぇ好みだ。

 トレーナーは、そうでなきゃいけねぇ。

 だが、不正解。今のは意地悪問題だ」

 

 

 

 引退する時、心残りだったのだ。

 

 愛バを最後まで、支えられなかったこと。

 

 ラストラン。万全とはほど遠く。

 

 それでも、壊れかけた身体で。

 

 最後の勝利を掴んだ、彼女。

 

 寄り添えぬ、自分を呪った。

 

 

 

 だが、今や心配は無いだろう。

 

 信頼すべき、パートナーを見つけられたことに。

 

 自身も三女神に、感謝を捧げる。

 

 

 

 「正解はな、無い。

 最強の領域なんてものは、無ェんだよ。

 領域には。練度やら、条件。代償。

 

 その他、色々な差があるが……

 三女神は、平等だ。残酷な迄にな。

 与えられる、力の総量。

 こいつだけは、どんなウマ娘でも変わらん」

 

 「なるほど。それが拮抗の理由か」

 

 

 

 そう。互いに、レースに役立たぬ領域。

 

 天に昇る、アフターバーナー。

 

 地へ堕とす、フォーリンダウン。

 

 

 

 どちらも、開眼しただけの領域。

 

 条件も、緩い。

 

 本領を発揮出来ぬ、今の状態。

 

 差が生まれるわけもない。

 

 

 

 「ああ。ユキオーも、開眼は元々してたが。

 次のステージに、目覚めさせること。

 こいつが、俺たちには出来なかった。

 歴戦と自負する、ジジイが六人も居てだぜ? 

 俺たちは、自分が情けねぇよ」

 

 「ご老体。あまり気に病むな。

 未勝利バが、G3勝利バと対等に。

 キャットファイト出来ている。

 それが、あなた方の実力を。

 今まさに、証明しているではないか」

 

 「まあ、領域が全てじゃねぇからな。

 だがよ。既に開眼してるのに。

 部分展開……魂の、共振による励起。

 こいつができない理由がわからん。

 ウマソウルと、ヒトの魂。

 条件は満たしてるはずだ」

 

 

 

 彼女の魂が、ジジイとの触れ合いで励起しない理由は。

 

 ウマソウルを、持っていないから。

 

 入っているのは、トネガワソウルである。

 

 彼らが知る由も無いが。

 

 

 

 「ちなみに、ウマ娘のトレーナーを見たことが無いが。

 それも、領域が原因か?」

 

 「そうだな。ウマソウルの目覚めは。

 『ヒト』と『ウマ娘』の、魂の共振。

 これによって起きると言われている。

 ウマ娘同士だと、波長っていうのかね……

 そいつが似通いすぎていて、ソウルが震えないらしい」

 

 「ふむ。……領域を覚醒させることが出来た、ウマ娘トレーナー。

 これは、過去に存在しないのか?」

 

 「過去に、やたらと男らしいウマ娘トレーナー。

 そんなヤツがいたらしくてな。

 そいつは、担当したウマ娘を完全展開まで。

 魂を、共振させることができたらしい。

 詳しい資料が残っていないから、眉唾もんだがな」

 

 

 

 そして、六平 銀次郎は。

 

 会話を打ち切り、視線を戦いに戻した。

 

 彼女の雄姿を、目に焼き付けるため。

 

 己らの、愛しい最後の担当ウマ娘。ユキオーを。

 

 

 

 「アフガン旋風脚ッ!」

 

 「あっぶなッ!? オールバックで助かった!」

 

 

 

 ユキオーは、旋風脚を屈んで避けつつ。

 

 己のヘアースタイルに感謝した。

 

 前髪があれば、千切り飛ばされていただろう。

 

 モテカワスタイルに、傷がつくところである。

 

 思いつつ、次なる手を考える。

 

 形勢不利。

 

 

 

 そもそも、相手はウマレスラー。

 

 上半身の動きだけで、いつまでも捌ききれぬ。

 

 しかも、謎の加護により。

 

 はいてないを気にせずに。

 

 勝手気儘に、跳ね回る。

 

 

 

 (これが無けりゃ、既に負けてたね……)

 

 

 

 視線を、身に纏う戦闘服に落とす。

 

 擬似勝負服。

 

 おじいちゃんたちの叡智を結集した、この衣装。

 

 真正の物には劣るが、動作サポートは抜群。

 

 

 

 「どこを見ているッ!? もっとアラー!! 

 私の下半身を見て讃えろッ!」

 

 「痴女かよッ!? 下半身を見せびらかすなッ! 

 なんだよ、そのピエロ! どこから見ても笑顔じゃン!?」

 

 「笑顔が大事ッ! スマイル、スマイル!」

 

 

 

 スカートを盛大に捲り上げながら、蹴りを中心に放つ褐色ロリ。

 

 なんとか避けつつ、歯がみする。

 

 あちらと違い。こちらは、脚技が封じられているのだ。

 

 タイトスカートは、ずり上がりやすい。

 

 自業自得といえど。会長以外に、魅せるわけにはいかぬ。

 

 ガイドラインに反するためだ。

 

 

 

 「シッ!」

 

 「おっと。往生際が悪い」

 

 

 

 牽制の拳を振るい。

 

 相手を少々、退がらせる。

 

 さて。このまま続ければ、敗北は必定。

 

 ならば。チノ=リを活かす……! 

 

 

 

 「ファル子リヲン! リクエストッ! 

 領域増幅用アンプ! 出力最大ッ! 

 範囲ッ! 『ステージ上』ッ! 

 曲名ッ! †落ちぶれっ☆堕天録!†

 ……2番ッ!」

 

 

 

 さぁ。お歌の時間だ。

 

 恋に堕ちる音を、聞くがいい。

 

 

 

 

 

 つづかない 




もしも、面白いと思っていただければ。
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やる気が走り高跳びします。
正常な方向に跳ねるとは限りませんが。

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