アプリ版に、ウマ娘トレーナーが出ない理由。
それを、私なりに解釈しました。
~前回までのあらすじ~
ジジイを下し。動力部へと向かう、道すがら。
艦橋へと。向かっていることに気付く。
ジジイのアンサー。理由としては最もだが。
十中八九罠である。しかし、敢えて乗る。
駄犬メイドの七転八倒。見たい気分だったからだ。
道中語られる、トレーナーの愛の言葉。
普通のヒト雌ならドン引きであるが。
ウマ娘は、純情一途の愛されたがり。
気分よく、罠へと直線一気をキメる。
扉の前。ようやく気付く、褐色ロリ。
味方は、味方だが。だがしかし。
ドSしか、ここには居らぬ。
ハルウララは、立ち止まる彼女に。
正当っぽい、理由を告げて。
罠へと、メイドを派遣する。
出張メイドと、いうやつだ。
デリバリメイド。些か風俗の香り。
全てを悟ったアフちゃんは。
十五夜を思いだし。
ママ直伝の、ヤクザキックを扉にキメる。
そして現れる、最後のおもちゃ。
ジジイと、白髪ロリの作戦会議。
発破を掛ける、ハルウララ。
ダーツの旅の予感と、迫り上がる床。
想起される、外道ママの鬼畜抱擁。
ハルウララは、しばしの錯乱の後に。
そっと、意識を手放した。
ケツ鬼術。恐ろしい術である。
果たして、スマートファルコンの安否は。
「ファル子さん……!
なんと、痛ましい姿に……!」
呆然と告げる、エイシンフラッシュの声。
一同は、変わり果てた猛禽類。
それを見て、戦慄した。
「むにゃむにゃ……すんすん。
えへへ、いいにおい……
ファル子、もう飲めない……」
頭部を覆うは、白い布。
ウマ耳を、びょいと元気に突き出して。
鼻梁に乗っかる、可憐なリボン。
酒瓶を抱く、眠り姫。
「Oh……HENTAI仮面……」
思わずアメリカンに告げる、芦毛の声。
そう。
「ファルコン・パンツであるな」
せっかくぼかしたのに。
「会長を、迎えに行ったらさ。
酔ってたからだね。いつも通り。
気ままに、無体を働かれたよ。
タイトスカートで、助かったね」
「助かってはいないと思うわ」
非常に珍しい、栗毛によるツッコミ。
アフガンコウクウショーは唸った。
「ユキオー。今、私は。
初めてお前に、凄まじい親近感。
これを、感じたのである。
やはり。はいてない方が気持ちいい」
「一緒にしないでくれる?
わたしは、自主的にそうしてるンじゃなく。
いっつも会長に。脱がされてるだけだよ。
つまりこれって、愛じゃン?」
「ドングリの。袴比べだと思いますが」
「どちらも、履いておりません。
比べようがないと思いますわ、わたくし」
ノーガードを誇る、リスの餌ども。
黒鹿毛の、冷静なツッコミ。
片手では、ウマホでの高速連写。
どうやら、猛禽類の痴態。
いたく、気に入ったらしい。
「さて。それじゃあ始めようか。
なんで履き直さなかったか、わかる?」
「気持ちいいから?」
「それは、まぁ……そうだね。
会長が履いてくれてる。頭に。
なら、わたしが履いているのと同じ。
むしろ、心が繋がっているのを感じる。
それが、理由のひとつ」
「なるほど。スペちゃんのおなかと。
私のふともも。それと同じようなものね」
「すまん、サイレンススズカ。
オレにも理解可能な、例えをしてくれないか?
未熟者故、ニホン語と、ウララ言語。
あと幾つかの、外国語しかわからん。
栗毛言語は、履修していない」
外野の声。理解できまい。
この自然主義。
はいてない者しか、わからぬ……!
「そしてッ! 追い詰められた方がッ!
ヒトの魂はッ! 輝きを放つ!
そう、あの男ッ! カイジのようにねッ!」
「ウマ娘ですわよね? この白髪。
あと、カイジって誰ですの?」
ウマ娘の身体に、トネガワソウル。
これをウマ娘と、呼んでいいのかどうか。
この小説の根幹に関わる、議題である。
「つまり、背水の陣ッ!
狂気の沙汰ほど、面白い……!」
「ぬぅっ! なんという圧力!
ユキオー! 成長しおったな……!」
感じる圧力。
わかる。これは。
愛しの怪鳥に匹敵する。
全てを解放して、当たらねばならぬ。
アフガン航空相撲力士として。
あの頃の自分に、還るとしよう。
アフガンコウクウショーは、覚悟を胸に。
ユキオーが待ち構える、ステージに登る。
「さぁ! 飛んでごらン!
アフガンコウクウショー先輩!
わたしの恋で、故意の航空事故!
味わい尽くして、地に堕ちろ!
『フォーリンダウン』!」
「いや、飛ばんけど」
「えっ」
高らかに。告げて仁王立ちしたままに。
こちらに重圧を掛ける、ユキオー。
接近して、メイドヤクザキック。
ふわりと優雅に。広がるメイドスカート。
後ろに吹き飛ぶユキオー。
ガードがウマい。ダメージは軽微だろう。
「ぬああっ!? いったぁぁぁい!
飛びなさいよっ! トリでしょッ!?
あと、何そのスカートの下ッ!?
ピエロの笑顔がキモいんだけどっ!」
「トリではない! 航空力士だっ!
あと、アラー!! の加護である」
くるりと廻り、スカートを翻し。
道化師の威光を魅せつけて。
にぱっと笑い、見得を切る。
やはり、サービスは大事である。
「学生時代から、意味わかンなかったけど。
相変わらず、よくわからン先輩だね。
さっさと飛んでくれない? 堕とせないでしょ」
「ユキオー。お前の領域の弱点。
このアフちゃん、まるっとお見通しである。
アフターバーナーで、十分対応できる」
「なンと……! まさか、気づいたの!?」
ユキオーの驚愕。
甘い。怪鳥の唇のように。
この人生経験豊かな、アフちゃんを無礼るな。
上昇気流を。己の肉体のみに纏わせ、告げる。
領域はフレキシブル。服に影響を与えぬことも、できる。
「お前の領域。宇宙戦艦で、増幅せねば。
飛んでる私一人を落とす。
それぐらいが、精一杯。
そして、地面に立っている今。
既に、私は堕ちている判定ではないか?
領域の、効果はほぼ発揮できぬ。
今のように、ちょっとばかり重くなるだけ。
そうであろう?」
「くっ……! 学生時代に見せすぎたねっ!
まさか、気付かれるとはッ……!」
「当然である! 賢いのでなッ!
……まあ。私も飛ばないと!
ちょっとした、重量軽減しか出来ないけど!」
えっへんと、胸を張る褐色ロリ。
歯噛みする、白毛ロリ。
「どちらも、アホだとは思いますが」
「今さらだと思うわ」
「まぁ、このぐらいのバ鹿。
学生時代から、慣れっこですわ。
ほら、紅茶が入りましたわよ」
「ほう。メジロの紅茶とは。
お茶請けには、これなどどうだ」
あるお菓子を取り出す、トレーナー。
ウマ娘は、甘味が大好き。
嗜みとして、甘いおやつは常備しているのだ。
「あら。ベイクドモチョチョ。
ありがたく、パクパクですわっ!」
それを見て歓声を上げる、ゲーミング葦毛。
現役時代は我慢していたが。
今、彼女を阻む糖質制限はない。
おなかのおにくは、摘まめるほどある。
「モチョチョ、わりと好きよ」
「学生時代を、思い出しますね」
「まぁ、呼び方は自由だが。
これの名称は、今川焼きでは……?」
「うーん、腰がぁ……」
「お、今川焼き。俺も頂くぜ」
褐色ロリの、前蹴り。
微笑むピエロの、赤い鼻。
「アフガン前蹴りッ!」
「そのまんま、ミヤザキ県知事すぎンッ!?」
東の国の原っぱっぽい蹴り。これを利し。
ユキオーは、後方へと跳んだ。
やはり、ベイクドモチョチョは共通認識。
自分の正しさを、再確認したのはいいが。
ピクニックシートを広げ。
和気藹々と、ティータイムと洒落こむ外野。
(おじいちゃんまで、参加してる……!)
ずるい。わたしもアオハルしたい。
そう思いつつ、領域を維持。
重圧を掛けるが、相手の動きに遅滞はない。
痴態は晒しているが、ピエロの笑顔で隠されている。
拮抗状態は、変わらない。
「そういえば。領域とは。
ここまで拮抗するものか?」
「なんだ小僧。知らねぇのか。
まぁいい。先輩の務めってヤツだな。
六平先生が、優しく教えてやろう」
授業まで始まった。
「アフガン航空掌ッ!」
「自己紹介かなッ!?」
褐色ロリの、張り手をいなしつつ思う。
学校生活、懐かしいなぁ。
「いいか小僧。俺が見た限り。
アフガンコウクウショーとやら。
あいつも、領域に入門したばかり。
……と、いうか。練度自体は高いな。
部分展開まで達していない。
こう言った方が適切か」
「部分展開?」
「そっからかよ。
まぁ、ウララしか担当してねぇからな。
完成形しか、知らねぇこともあるか」
やれやれと、サングラスを上げ。
超小型プロジェクターを展開する、ジジイ。
トレーナーの嗜み。彼も未だ、現役を張れる。
「いいか。領域には、大きく分けて三段階ある。
第一段階。ウマソウルの存在を知覚し。
ウマ娘の意志で、力の片鱗を振るえる『開眼』。
これは、目では見えねぇ。一部の例外を除いてな。
力を振るう、本ウマと。それに触れているトレーナー。
その二人だけが、領域の存在を知覚できる」
「ほう。レースで使われるのは、それか?」
「まぁ、使われることもあるな。
ユキオーと、褐色ロリが使ってるのも。この段階だ」
彼女たちのバトルに、目をやり。
ピエロと目が合ったため、逸らして説明を続ける。
一部の例外だ。神の加護は強い。
「なんだよあのピエロ。
アイツ、まだ開眼の筈だろ……
視覚への干渉とか、器用すぎるんだろ。
まぁいい。第二段階。
ウマソウルが、ある条件で励起され。
この世に適合しつつある状態。
夢の一部を現出させる、『部分展開』。
領域の存在を、知覚した……
目覚めたトレーナーなら、幻視できる。
レースでウマ娘が、ルーティン化して使う。
『固有スキル』とも呼ばれるものだ。
マックイーンのお嬢ちゃんの、紅茶とか有名だな」
「ああ、カットインが入るヤツか」
「メタな話はよせ」
「すまない。つい……」
叱責しつつ、続ける。
「そして、第三段階。
ウマソウルの励起が、臨界に達し。
ウマ娘と完全に、同調した状態。
夢で世界を塗り潰す、『完全展開』だ。
こいつは、誰でも見える。
そのウマ娘に、都合の良い世界。
我が儘を、無理やり現世に描き出してるからな」
「ほう。オレは完全展開しか。
目にしたことは無いな」
「珍しいケースだな。
普通は、最初の三年間。
担当ウマ娘と絆を深め、開眼を果たした彼女と。
触れ合ったトレーナーは、見るんだよ。
微睡むウマソウルの、夢の一部を。
『知覚』って、言うんだがな。
完全展開でやったヤツは、初めて見た」
そう。彼は、ハルウララしか。
既に完成したウマ娘しか、担当していない。
それ故、歪んだ知識しか。
実感として、持ってはいない。
「おめえ、よく無事だったな。
事故とかで、トレーナーを引き継いで。
部分展開で、初めて知覚したヤツでも。
魂に掛かる負荷は、相当らしいぜ。
全く覚えの無い知識。見知らぬ風景。
そして。温もりを求める、魂の声。
そいつを急に視て、発狂しかけるヤツも。
過去には居たらしい」
「ああ、とても衝撃的だったよ。
オレは、全てを見たからな。
魂が、揺さぶられたよ」
「ウララとの相性が、余程に良かったんだな。
三女神に感謝しろよ、小僧」
「感謝しているとも。また、出会えた。
ツバメに、チャンスを与えてくれたこと。
オレは、生まれ変わっても忘れぬ」
六平トレーナーは、サングラスの下で。
そっと微笑んだ。
彼女は、いい出会いをしたらしい。
先ほどからの言動を見るに。
この小僧。意味がよくわからない、発言が多い。
まだ、多少混乱しているのだろう。
後遺症としては、軽い方ではあると思うが。
会話を続ける。彼が自分を取り戻す、一助となるだろう。
「小僧。最強の領域とは。何だと思う?」
「決まっている。ウララの領域だ」
「いいね。その答え。すげぇ好みだ。
トレーナーは、そうでなきゃいけねぇ。
だが、不正解。今のは意地悪問題だ」
引退する時、心残りだったのだ。
愛バを最後まで、支えられなかったこと。
ラストラン。万全とはほど遠く。
それでも、壊れかけた身体で。
最後の勝利を掴んだ、彼女。
寄り添えぬ、自分を呪った。
だが、今や心配は無いだろう。
信頼すべき、パートナーを見つけられたことに。
自身も三女神に、感謝を捧げる。
「正解はな、無い。
最強の領域なんてものは、無ェんだよ。
領域には。練度やら、条件。代償。
その他、色々な差があるが……
三女神は、平等だ。残酷な迄にな。
与えられる、力の総量。
こいつだけは、どんなウマ娘でも変わらん」
「なるほど。それが拮抗の理由か」
そう。互いに、レースに役立たぬ領域。
天に昇る、アフターバーナー。
地へ堕とす、フォーリンダウン。
どちらも、開眼しただけの領域。
条件も、緩い。
本領を発揮出来ぬ、今の状態。
差が生まれるわけもない。
「ああ。ユキオーも、開眼は元々してたが。
次のステージに、目覚めさせること。
こいつが、俺たちには出来なかった。
歴戦と自負する、ジジイが六人も居てだぜ?
俺たちは、自分が情けねぇよ」
「ご老体。あまり気に病むな。
未勝利バが、G3勝利バと対等に。
キャットファイト出来ている。
それが、あなた方の実力を。
今まさに、証明しているではないか」
「まあ、領域が全てじゃねぇからな。
だがよ。既に開眼してるのに。
部分展開……魂の、共振による励起。
こいつができない理由がわからん。
ウマソウルと、ヒトの魂。
条件は満たしてるはずだ」
彼女の魂が、ジジイとの触れ合いで励起しない理由は。
ウマソウルを、持っていないから。
入っているのは、トネガワソウルである。
彼らが知る由も無いが。
「ちなみに、ウマ娘のトレーナーを見たことが無いが。
それも、領域が原因か?」
「そうだな。ウマソウルの目覚めは。
『ヒト』と『ウマ娘』の、魂の共振。
これによって起きると言われている。
ウマ娘同士だと、波長っていうのかね……
そいつが似通いすぎていて、ソウルが震えないらしい」
「ふむ。……領域を覚醒させることが出来た、ウマ娘トレーナー。
これは、過去に存在しないのか?」
「過去に、やたらと男らしいウマ娘トレーナー。
そんなヤツがいたらしくてな。
そいつは、担当したウマ娘を完全展開まで。
魂を、共振させることができたらしい。
詳しい資料が残っていないから、眉唾もんだがな」
そして、六平 銀次郎は。
会話を打ち切り、視線を戦いに戻した。
彼女の雄姿を、目に焼き付けるため。
己らの、愛しい最後の担当ウマ娘。ユキオーを。
「アフガン旋風脚ッ!」
「あっぶなッ!? オールバックで助かった!」
ユキオーは、旋風脚を屈んで避けつつ。
己のヘアースタイルに感謝した。
前髪があれば、千切り飛ばされていただろう。
モテカワスタイルに、傷がつくところである。
思いつつ、次なる手を考える。
形勢不利。
そもそも、相手はウマレスラー。
上半身の動きだけで、いつまでも捌ききれぬ。
しかも、謎の加護により。
はいてないを気にせずに。
勝手気儘に、跳ね回る。
(これが無けりゃ、既に負けてたね……)
視線を、身に纏う戦闘服に落とす。
擬似勝負服。
おじいちゃんたちの叡智を結集した、この衣装。
真正の物には劣るが、動作サポートは抜群。
「どこを見ているッ!? もっとアラー!!
私の下半身を見て讃えろッ!」
「痴女かよッ!? 下半身を見せびらかすなッ!
なんだよ、そのピエロ! どこから見ても笑顔じゃン!?」
「笑顔が大事ッ! スマイル、スマイル!」
スカートを盛大に捲り上げながら、蹴りを中心に放つ褐色ロリ。
なんとか避けつつ、歯がみする。
あちらと違い。こちらは、脚技が封じられているのだ。
タイトスカートは、ずり上がりやすい。
自業自得といえど。会長以外に、魅せるわけにはいかぬ。
ガイドラインに反するためだ。
「シッ!」
「おっと。往生際が悪い」
牽制の拳を振るい。
相手を少々、退がらせる。
さて。このまま続ければ、敗北は必定。
ならば。チノ=リを活かす……!
「ファル子リヲン! リクエストッ!
領域増幅用アンプ! 出力最大ッ!
範囲ッ! 『ステージ上』ッ!
曲名ッ! †落ちぶれっ☆堕天録!†
……2番ッ!」
さぁ。お歌の時間だ。
恋に堕ちる音を、聞くがいい。
つづかない
もしも、面白いと思っていただければ。
ブクマ・感想・評価などを頂けると。
やる気が走り高跳びします。
正常な方向に跳ねるとは限りませんが。