彼女はどのようにして、翼の元へ参じたのか。
細部は、回想にて。
元ネタは、戦姫の絶唱。
~前回までのあらすじ~
ついに姿を現した。
囚われの、猛禽類。
酒瓶抱き、寝言をほざく。
顔にはユキオーとの絆の証。
HENTAI仮面のご登場だ。
動揺する、突入メンバー。
あまりの痴態に、エイシンフラッシュ。
思わずウマスタ用の写真を、連写する。
BANは間違いない痴態。これはバズる。
敵手・ユキオーに対する親近感。
アフガンコウクウショーは、心のつながりを感じ。
自然主義浪漫派の、正しさを再確認する。
はいてないは、正義。
それを否定し、高らかに。違いを告げる白髪ロリ。
その理由は、だいぶイっちゃっていた。
気の狂った悪役は、基本。方向性はちょっとアレだが。
そして始まる、ロリどもの。
下半身が無防備な、限界バトル。
アフちゃん優勢。理由はふざけた神の加護。
しみじみと、キャットファイトを楽しみつつ。
歓談に興じる外野ども。
ジジイのはちみつ授業において。
トレーナーは、領域の段階について。知識を得る。
『ヒト』と『ウマ』の魂は、共振して奇跡を起こす。
そして、不利を悟ったユキオー。
ついに、奥の手を開帳する。
会長への恋により。敵手を地に堕とすのだ。
そして、お歌の時間が始まる……
歌いながら戦うのは、基本である。
「ファル子リヲン! リクエストッ!
領域増幅用アンプ! 出力最大ッ!
範囲ッ! 『ステージ上』ッ!
曲名ッ! †落ちぶれっ☆堕天録!†
……2番ッ!」
アフガンコウクウショーは、にやりと笑った。
スピーカーから2度ほど聞こえてきた、フレーズ。
試してみる、価値はある。
「ファル子リヲンッ! リクエスト!
領域増幅用アンプ! 歌手追加ァッ!」
「なンッ……!?」
顔を蒼ざめさせる、ユキオー。
どうやら正解のようだ。
「駄目元だったが……正解を引いたようである。
この宇宙戦艦、まさかとは思ったが。
ステージ上にさえ立てば。増幅は、対象を選ばんらしいな?」
「チッ。バ鹿の癖に。冴えた手を打ってくれるじゃン?
でも、認証しなきゃいけない可能性もあったよね?
そン時は、どうするつもりだったのさ」
「先輩方に、レギュレーション違反を主張。
土下座して、涙目おねだりをするつもりであった」
「プライド地べたじゃん。堕とす必要すらないわ」
ユキオーは、唸った。
この先輩、あまりにも。
誇りというものを、持ち合わせておらぬ。
そこまで、追い詰められていないのに。
土下座に対し、一切の躊躇いが無い。
だが、流れるイントロ。
こちらの優勢は、変わらない。
「……初めて、あンたが怖いと思ったよ。
だけどね! わたしの有利は変わらンし!
メロディーは、わたしの十八番!
マイクだって、こっちにしか無い!
アカペラで、どこまで食い下がれるかナッ!?」
「怪鳥と、私の絆。舐めてもらっては困るのである。
メイドは、主人の無茶振りに応えるもの。
急に、エルにお歌を求められたときのため。
マイクだって、常に持っているのである。
アカペラでの、褐色ロリメイドいたずらカラオケ。
舐められながら歌うなど。日常茶飯事も、いいところよ」
スカートのポッケから。
誇らしげに、姿を晒すマイク。
アンプ内蔵型だ。
「エルコンドルパサーさん、ウマ生を謳歌しておられますね」
「調子に乗り過ぎでは、ありませんこと?」
「気ままに愛するのは、正義よ」
「ウララにも、是非ともやってみたいものだ」
「あのロリ。恋人の性癖暴露に、余念がねェな」
「ぴよっ」
外野の、感嘆の声。
ひよこも、お昼寝から起きてきたようだ。
もっと褒めて。そう思いつつ。
イントロの終わりを待つ。
あとは実力勝負。
この恋を、語り合おう。
『……ッ! あなたに 伝えたいことがあるの
わたしを絶望から 引き上げてくれた あなた』
『君と空を駆けるよ 何mだって急上昇 性癖のその先へ』
互いに、歌い出しは上々。
フォニックゲインの、高まりを感じる。
「あの。すごいバ鹿にされてる気分ですわ」
「シーズン2は、名作だったわね。でもシーズン1の方が好きよ」
「唐突な自己アピール。さすがは栗毛」
アフちゃんの、歌唱力は確かである。
『とても充実していた 学園での日々
出走したら ウハウハ三冠ウマ娘 欲に塗れた翼を広げ』
『フライハイ! 下を見れば エルコン! 高まる恋心
ご奉仕一直線! (目指せ結納)』
ここだ。テンションは既にアゲアゲ。
スカートを地上から、愛するウマに覗かれる快感。
小娘には、わかるまい。
地面を滑るように、奔り。
蹴りでもって、ラヴ注入。
『ぬぁっ!? 歌いながら攻撃ィッ!?』
『奏者として、当然である! 歌いながらの攻撃は!』
『走者じゃないンッ!?』
「アフちゃん、作品間違えてないか?」
「まぁ、歌繋がりでセーフだろ。たぶん」
ユキオーは。必死にマイクで蹴りを捌き、歯噛みした。
この先輩。あまりにも、歌いながらの行為に慣れている。
どんな変態と、愛を育んできたのか。
ご近所さんの視線とか。大丈夫なのだろうか。
『出走レースは どれにしよう 引退後は 何をしよう
夢は広がり あの空へ どこまでも飛翔んでいく この想い』
『エルコン ノらないときは ガッとご奉仕して 挑発ユー
このボディ 愛されたいから……GOHOUSI PARTY!』
スカートを持ち上げ。放たれる、弾幕のような蹴り。
それにしてもこのロリ、ノリノリである。
(でも。システムの理解が甘いッ……!)
ユキオーはマイクを回転させ受け、後方に飛びつつ。ほくそ笑んだ。
歌に不純物……歌詞以外を混ぜると。増幅係数は下がるのだ。
増幅が始まれば、こちらの優位。
このまま好き勝手に跳ね回らせ。
ファル子リヲンの、増幅開始を待つッ……!?
『ロリ同士の戦闘とか大好物。増幅係数を上昇させます』
「「キェェェェェアァァァァァシャベッタァァァァァァァ!!」」
思わず、歌を止めて。ハッピーセットを唱和する。
喋れたのかよ、ファル子リヲン。
「そりゃあ、無機物が喋り出すこともあらぁな……」
「やはり。十代、二十代では対応能力に欠けますね」
「やっぱり、女は三十路からよね」
「この世界の、アホさ加減を無礼てますわ」
「最近思い出したが。やっぱおかしいよなこの世界」
「ぴよぴよ」
外野に動揺は無い。
なんだこいつら。発狂が常態化してやがる。
そう思いつつ、制限解除を理解。
こうなれば。歌いながら戦う他ない。
難易度、上がり過ぎじゃンッ……!?
『そしてあなたに、出会ったの……! ロリポップ・フィストォッ!』
『気持ちいいれす! それそれそこが良い! 蹴って! BILLION KAIKKAN!』
疑似勝負服、ギミック起動。
鋼鉄の籠手が、肩までを覆う。
担ぐような構えから。放たれるロリ鉄拳。
対するは、突き刺すような前蹴り。
ぶつかり合う、お互いの意地と恋。
衝撃に、一瞬意識を手放し。
思い出す。あの日のことを。
『あら。未出走の子?
トレーナーさんは、まだ居ないみたいね』
いきなり現れた、潜水艦。
そこから降り立つ、栗毛のウマ娘。
首を傾げて、一人で納得したように頷き。
こちらに歩んできた。
『……何故、わかるのです?
わたしは、そんなに遅く見えますか』
『遅い、早いじゃないわ。心構え、かな。』
『精神論? あまりにも古い。時代に即しておりません』
『ピンと来るトレーナーさん。見つからなかったでしょう?』
『……ッ!』
何故だ。何故わかる。
この身は、入学前から領域に目覚めていた有望株。
だが、トレーナーたちは。
自分を育てようと、名乗りを上げなかった。
物の道理のわからぬ者が、多すぎるのだ。学園には。
『やっぱりね。あなた、とってもつまらない顔をしてるもの。
走るの、そんなに好きじゃないでしょ?
レースは、目的では無く手段。そんな顔』
『勝つのは、幸せになるための過程!
違うとでも!? 走ることが目的など!
走るだけで、満足するなど!
生物として、あまりにも欠陥!
レースを手段として捉えて、何が悪い!?』
『ウマ娘としては欠陥ね。
わたしたちは、ウマソウルの無念。これを晴らさねばならない。
それが、産まれた意味の一つ。彼らが満足するためには。
一心不乱のレースが必要よ。領域は必須じゃないけど……
でも、その心構えじゃ。ウマソウルは目覚めてくれないわ』
『……これを見ても。その戯言を続けられますか!?』
頭に血が上る。
秘められた力を開帳する。
自分は既に目覚めている。
選ばれた存在なのだ……!
『フォーリン・ダウンッ! 地に伏せろ!』
『あら。使えるのね。でも貧弱』
なんでもないように、領域を打ち払われる。
なんだと……ッ!
『ちょっと驚いたけど。開眼だけね。
その程度なら、まともなトレーナーと絆を育めば。
ジュニアの初期には目覚めるわ。まぁ、それでも少数だけど……
時代を作るには。アドバンテージにはならない』
『時代を、作る……?』
呆然と、俯く。
巨大な力の差。
わかってしまった。通用しない。
だが。どうしろというのか。
説教だけで終わるなら。誰も苦労などしない。
『ええ。わたしたちは、前世を超えなければならない。
その脚で以て、時代を作り。ウマソウルを満足させ。
そして、引退して幸せになるの。まぁ私も、その途中だけどね?』
『呑気に言ってくれる……! 時代を作る!?
ごく少数の、強者しか出来ぬではないか!
敗者は、黙って地を舐めていろと!?』
『当たり前じゃない。弱い方が悪い』
立ち竦む。
なんという傲慢。
だが。この身が馴染めぬ、ウマ娘の論理。
強者のみが総取り。弱肉強食の極致。
それを体現する。残酷なまでに美しい、立ち姿。
見惚れて、しまった。
『私の名前は、スマートファルコン。
ダートの覇者。短距離は除くけどね?』
『あの、砂のサイレンススズカッ!?』
『あら。知ってるのね。あなたのお名前は?』
押し黙る。
名前を告げたら。何かが終わってしまう気がする。
悪魔との契約。その悪寒。
心の中のおじさんが、警鐘を鳴らしている。
『……名前を教えたとして。わたしをどうするつもり?』
『教えてあげるわ。ウマ生の楽しみ方。
あなたは、走るのに向いていない。
学園を辞め、私に仕えなさい。
私の翼の下で、満足できなければ。
学園に戻るといいわ。口利きはしてあげる。
ちょっとした回り道よ。でも、あなたには必要』
『何故、そのように断言できる? 走って見なければ、わからぬ』
『走った時にはもう遅い。メイクデビュー、舐めてない?
闘争本能を持たぬ、ウマ娘など。駄バにも劣る。
練習と、本番は違うのよ。入学は出来てもね。
学園で夢破れ。去るウマ娘の多いこと。
このままだと、そうなる。ファル子が保証、してあげる』
恐ろしいほどの自信。
いや、これは確信だ。そのような表情をしている。
わかっていたのだ。自分が勝てぬことなど。
だって、この身が宿すのは。
(止せッ……! 罠だッ! 後戻りできなくなるぞッ!)
利根川先生。あなた、ウマじゃないもの。
『……ユキオー。トネガワユキオー。それがわたしの名前』
『ユキオーね。わかったわ』
『話聞いてる? トネガワって冠名。言ったよね?』
『贅沢な冠名ねっ☆でも、ファル子の物になったからには。
あなたは今日から、ただのユキオーよっ!
分かったなら、返事をアンサー!』
『くっ……! なんという理外……!
だが……狂気の沙汰こそ、面白い……!』
(ワシ、もう知らん)
そして、恋が始まったのだ。
まだ短いが。確かに、愛を育んだ。
会長の正しさは、この身が今も実感している。
好き勝手に、愛されるってサイコー。
もう、学園とかレースとか。どうでもいいじゃン?
『しめしめ。ウララちゃんの真似してみたら。
なんか、ウマい具合に騙せたね。
いいロリゲット。キープちゃんにしてあげよ。
まぁ、なんかウマっぽくないし!
金に汚そうだし! Win-Winでしょ!』
『ククククク……たまにおぬし。ワシらよりも邪悪では。
そう思う時があるぞ、ファルコンよ』
ユキオー。彼女は思考に没頭すると。
ヒトの話を聞かぬ、悪癖があった。
酔っぱらって、ノリで話していたスマートファルコンと。
にやにやしながら、聞いていたビョードーの。
その後の、クソみたいな会話。
聞き逃していなければ、違うウマ生を歩んでいただろうに。
まぁ、どの道ハッピーエンド。
この小説は、ハッピーエンド至上主義なのだ。
つづかない