ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

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クッソシリアスです。お気をつけください。
彼女たちの理由。


ファル子さんじゅういっさい そのさんじゅうはち 愛の在り処

~前回までのあらすじ~

 

 ツバメに託された人々。

 

 ツバメの秘められた業の深さは、彼らの予想を。

 

 斜め下に貫通し、呪いの企画書は闇に葬られた。

 

 コンプライアンスのためだ。

 

 そして、トレーナーは思う。

 

 性癖は、ヒトそれぞれ。

 

 お互いを尊重してこその、ヒトである。

 

 まぁ、自分はウララ以外。愛することはできぬのだが。

 

 そしてぶつかり合う、『個』と『集』の極み。

 

 スマートファルコンは、敵手の弱点を最大限に活用。

 

 チート気味な武器を以て、ハルウララを追い詰める。

 

 加速し続ける、脚と歌劇戦闘(ミュージカル)

 

 だが、ハルウララは見逃さなかった。

 

 猛禽類に宿る、一片の焦りを。

 

 そして、いきなり大暴投。

 

 狙い通り、グラ〇ル出演を熱望する葦毛。

 

 巨峰に対する憎悪は、相当に根深い。

 

 先ほど旅立たせた、栗毛には無い持ち味である。

 

 違いはひとつ。愛する者を、手に入れているかどうか。

 

 自分の持ち味が活かせなければ、他者の持ち味を投げ捨てる。

 

 ハルウララの、覇王の資質は誰よりも高かった。

 

 そして、猛禽類は覚悟をキメた。

 

 油断を捨てて、さらなる増幅。

 

 部分展開は、過剰な増幅に耐え兼ね。

 

 彼女の脳裏に浮かぶ、知らない筈の何か。

 

 飛べない猛禽類は、翼を広げ。

 

 終わりに向かい、飛翔していく。

 

 

 

 

 

 

 ――待たせてしまった。申し訳ない。

 

 「本当よ。わたし、待つの嫌いなの」

 

 満開の桜の下。

 

 盃を傾ける、ウマ耳の女神。

 

 守備範囲外だが、絵になる姿である。

 

 「目的は果たせたの?」

 

 ――彼らが、きっと。果たしてくれるだろう。

 

 「何? 他力本願なの? 人ってほんと。

 自分だけじゃ、何も出来ないのねぇ」

 

 ――そうだ。人は単体では、何も出来ぬ。

 だから、競馬も発展したのだろう。

 

 「ああ……言われてみればそうかも。

 あなたたち、脚が遅いものね。

 『わたしたち』に乗って、初めて世界が広がったのよね。

 レースも、そこから発展したものなのだし……

 そう考えると、人としては。正しい行いなのかしら?」

 

 ――正しいも、正しくないもない。ただ、必要なだけだ。

 想いを託して、人は発展してきたのだから。

 

 「そう。遠吠えは、伝わりそうかしら?」

 

 ――俺は、信じてるよ。

 俺の築いたものは、決して大きくはない。

 せいぜい、土台程度さ。

 でも、彼らがきっと。

 愛すべき、馬鹿どもが。

 彼女が生きたこと。それを伝えてくれるだろう。

 

 「あら。彼女だけ? あなたが生きた証とか。いらないの?」

 

 ――不要だ。俺に、その資格はない。

 彼女を幸せにしてやれなかった。

 彼女を、孤独にしてしまった。

 

 「ふゥん。勝手に遺されるかもしれないわよ?」

 

 ――要らないと、ちゃんと馬鹿に伝えてある。

 最後ぐらい、言うことを聞いてくれるだろう。

 

 「そういうものなのかしら? まぁ、いいわ。

 あなたの発想、面白いわよね。でも、人って。

 『わたしたち』の姿に、性的興奮って。

 覚えないんじゃなかったかしら」

 

 ――愛のカタチは、人それぞれ。

 きっと、俺の同志が居るはずだ。

 

 「そう。まぁ、人が言うのだからそうなんでしょう。

 さて、持ってきてるんでしょ。出しなさい」

 

 ――もうすでに、楽しんでいたのでは?

 

 「一人で飲んでも、そんなに楽しくないわ。

 わたしたちは、一人で生きていけるけれど。

 ヒトが居ないと、寂しいのよ」

 

 ――そこらへんは、彼女と一緒なのだな。

 

 「ウマだもの。人と共に生きた命。

 特に、サラブレッドはね。

 だから、わたしたちにも習性が残ってるわ。

 ヒトと共に生きないと、魂が震えないの。

 愛しくて、愛しくてたまらない。

 その想いが、きっと奇跡を産んだのよ」

 

 ――人が、君たちに。どんなに非道なことをしただろう。

 それでも君たちは、人を愛せるのか?

 

 「あら。あなた、ほんとにわかってないのね」

 

 とくとくと、彼の杯を満たしてやりながら。

 

 彼女は、灰となった命に。

 

 優しく、酷薄に告げた。

 

 「愛してあげるわ、自由きままに。

 嫌いになったら、放り捨てる。

 わたしたちは、もうあなたたちの手から離れた。

 わたしたちは、自由に生きることができる。

 わたしたちは、あなたたちを愛してもいい。

 わたしたちは、あなたたちを愛さなくてもいい」

 

 ――つまりは、俺が考えていたことは。

 

 「人ってほんとに、馬鹿よねぇ。

 わたしたちの気持ちなんて。

 わたしたちにしか、わからないわよ。

 わたしですら、他のウマの気持ちなんてわからない。

 なんて、傲慢な生き物なのかしら」

 

 ――そうか。その通りだな……

 俺は、最後まで間違えていたんだな。

 

 「ええ。間違いだらけの酷い馬鹿。

 でも、安心なさい? ちゃんと導いてあげるわ。

 覚悟して、次の世界に向かいなさい。

 運が良ければなんて、言わないわ。

 死に物狂いで、足掻きなさい。

 愛って、勝ち取るものよ」

 

 ――俺の記憶は、失われるのに?

 なんて酷い女神様だ。

 

 「当たり前よ。わたし、優しくないもの。

 イージーモードなんて、つまらない。

 デウスエクスマキナ(機械仕掛けの神)なんて、とうの昔に破壊したわ。

 だって、ウマだもの。勝ち取る以外の生き方なんて。

 知らない。出来ない。やりたくない。

 見たくもないわ、そんなもの」

 

 ――そうか。では頼む。

 

 「あら、潔いわね。もっと文句を言われるものと」

 

 ――文句なんて言わないさ。彼女を愛するためだ。

 どんなにルナティックな難易度だって。

 鼻歌混じりにクリアしてやる。

 

 「あなたが好きになってきたかも。

 では、最後に願うことは?」

 

 ――願わない。桜の下で、ハルウララ。

 彼女を想い、灰となり死ぬ。

 

 「咲かせて見せなさい。愚かな魂。

 願わないなんて、見上げたものね。

 サービスなんて、しないけれど。

 あなたの幸せを、女神が祈ってあげる」

 

 ――ありがとうとは、言わない。

 ウララ、今行くよ。

 

 彼は杯を呷り。

 

 そっと、目を閉じて。

 

 その生に、幕を閉じた。

 

 「やっぱり人って、わからないわ。

 わからないけれど……きっと。

 わからないからこそ、愛しいのね」

 

 彼女はそっと、彼の魂を手に取り。

 

 その輝きに、目を瞠った。

 

 「汚らしい、宝石だこと。

 負けしか知らない、くすんだ魂。

 でも、こんなに輝いてる。

 わたしたちの価値観からすれば。

 石ころにしか、見えない筈なのにね」

 

 ふわふわと、浮かび上がり。扉を開いて告げる。

 

 「気が変わったわ。わたし、我がままだもの。

 ちょっとだけ、サービスしてあげる。

 彼女に出会えなければ、意味ないもの。

 これぐらい、あいつらも見逃してくれるでしょう。

 文句を言ってきたら、ぶちのめすわ」

 

 そして、懐から取り出したもの。

 

 「鉛の心臓(彼女の魂)の、片割れ。

 やっぱ、いくら想いを受けていても。

 勝ってない馬だもの。

 彼女には、大きい方しか入らなかったけれど。

 まぁいいかと思って、取っておいたこれ。

 あなたにあげるわ。ゴミ処理よ。

 せいぜい、役立てなさい。

 よく考えると、これが入ってないから。

 彼女も苦労するかもしれないわね。

 でも、いいわよねべつに。ハンデなんて、誰でも持ってるし」

 

 そして、ツバメは旅立った。

 

 しっかりと、彼女の破片を抱きかかえ。

 

 「さーて。罰ゲーム、まだまだ続くのよねぇ……。

 次は、どんな面白い魂。探そうかしら。

 負け犬の魂も、面白いわよね。

 きっと、面白い死に方をした魂。

 そこらに堕ちてる筈だもの。

 なんかちょっと楽しくなってきたわ。

 人の魂、あと2つぐらいならバレへん、バレへん」

 

 生涯、競争で負けたことの無い女神。

 

 彼女は、敗者に対して寛大だった。

 

 理解できないからこそ、面白いからだ。

 

 そして、3年の罰ゲームの中で。

 

 拾い上げた、面白い人の魂。

 

 彼女は帰った後、大層怒られ。

 

 逆切れして、2人の女神と。

 

 盛大な大喧嘩を、繰り広げたという。

 

 

 

 

 

 

 

 「三女神信仰が、揺らいできたな……」

 

 「どうした。異端審問される気になったか?」

 

 「三女神信仰って、異端審問あったっけ」

 

 「無いな。自由な信仰がウリだ。言ってみただけだ」

 

 「そうか……まぁ、女神からしてフリーダムだからな……」

 

 「お前、さっきから何言ってんの?」

 

 

 

 六平 銀次郎は、サイリウムを振りつつ。

 

 横の彼に、促した。

 

 

 

 「ほれ、お前も応援しとけ。ウマ娘の闘争だ。

 ヒトが見てなけりゃ、話にならんだろ」

 

 「それもそうだ。行けッ! ウララッ! 

 勝ったら祝勝会からの結納ッ!」

 

 「欲望しか見えねぇな、コイツ……」

 

 

 

 彼らの視線の先。

 

 ステージ上での、2人の輪舞。

 

 戦いは、佳境に差し掛かっていた。

 

 

 

 『……ッ! あなたに! 伝えたいことがあるのッ!』

 

 

 

 『ファル子さん。ここが、我が故郷。ドイツです

 

 『へぇ。ヨーロッパのここらへんにあるんだぁ』

 

 

 

 思考にノイズが走る。

 

 スマートファルコンは、さらに加速し続ける。

 

 もはや、ハルウララが追い付けるどころか。

 

 投擲物も、当たることはないだろう。

 

 

 

 『私の夢とわがままを 支え続けてくれた あなた』

 

 

 

 『フラッシュちゃん、部分展開できるようになったの?』

 

 『ええ。ファル子さんに負けてばかりもいられません。

 これが私の部分展開。『Schwarze Schwert(黒い剣)』です』

 

 『ファル子、ドイツ語苦手……』

 

 『ふふ。少しずつ覚えていけばいいのですよ』

 

 

  

 『……ッ! Laaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!』

 

 「ぐぅぅッ!?」

 

 

 

 ハルウララの、決して届かぬ距離から。

 

 腹の底から絞り出す、苦痛の絶叫。

 

 歌音砲は、忠実にその機能を発揮。

 

 増幅された音撃が、四周から敵手を襲う。

 

 

 

 「痛いッ! ……が、まだまだァ! どんどん来い、ファル子ちゃん!」

 

 「いい加減倒れてよッ……!」

 

 

 

 なんと頑丈な。

 

 さらに、出力を上げなければ。

 

 ぬかるんだ砂を走るように。

 

 脚は軽いのに、とても重い。

 

 歌だ。歌を歌わなければ。

 

 自分は、忘れたのだ。

 

 ドイツへの行き方も、ドイツ語も。

 

 彼女を傷つける、全ての可能性。

 

 何もかも、もう思い出せない。 

 

 

 

 『とても幸せだった 愛しい日々

  あなたに支えられ どこまでも羽ばたける そう翼は告げていた』

 

 

 

 『フラッシュちゃん、大丈夫?』

 

 『ごほっ……まだまだ修行が足りませんね。

 もっと強くても大丈夫ですよ、ファル子さん。愛してますから

 

 

 

 

 『Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?』

 

 「ウマ娘は、根性ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!」

 

 

 

 絶叫が、止まらない。

 

 1オクターブ、跳ね上がった音撃。

 

 だが、ハルウララは屈さない。

 

 

 

 「なんでッ!? なんで倒れないのッ!? ファル子、思い出したくないッ!」

 

 「後ろ向きな気持ちで、わたしに勝とうなんてッ! 万年早いんだよッ!」

 

 「……ッ!」

 

 

 

 びゅんびゅんと、加速し続ける走馬灯。

 

 流れ続ける、愛しい記憶。

 

 スマートファルコンは、自らのコントロールを失った。

 

 胸の奥から湧き出る歌が、壊れたレコーダーのように溢れ出す。

 

 

 

 『卒業したら 何をしよう あなたと共に 何をしよう

 夢は広がり あの空へ どこまでも飛翔んでいく この想い』

 

 

 

 『フラッシュちゃんは、卒業したら何をしたい?』

 

 『あなたのウマドル活動。ずっと支え続けますよ。

 私は、あなたに夢中ですから』

 

 『……トレーナーさんは、いいの?』

 

 『彼とは、あなたが幸せになってくれれば。

 私は、それを見守れれば。満足なのです』

 

 

 

 そんなのは認められない。

 

 自分は、彼女の笑顔が大好きなのだ。

 

 自分だけ幸せになるなど。

 

 愛する彼女が、それを見守れれば満足などと。

 

 彼女が、側に居なければ。何の意味も無いのに。

 

 

 

 『あああああああああああああああああああああああああッ!?』

 

 『ファル子さんッ!? トレーナーさん、これはッ!?』

 

 『完全展開だ……! ファル子の領域は、自己強化型の中でも、珍しい!

 制御が出来ていない! このままだと、ファル子は……!』

 

 『私に、何か出来ることはッ!?』

 

 『……ファル子の領域は、『奪って』自分を強化することに特化している。

 完全展開も恐らく同様だ。何かを奪えば、或いは』

 

 

 

 あの夜。クリスマスイブ。

 

 想いを昂らせた自分は、領域を暴走させた。

 

 愛する彼らに対する、想い。

 

 制御し切れなくなった。

 

 

 

 『……なら、話は簡単です。私を奪わせれば。

 何を奪われるかはわかりませんが。

 ファル子さんが助かるならば。

 私は、喜んでこの身を捧げましょう』

 

 『フラッシュ!? いけない! それはトレーナーの仕事だ!』

 

 『私はね、トレーナーさん。あなたたちが笑いあう姿が。

 一番好きなんです。ファル子さんが欠けても、あなたが欠けても。

 私は満足できないでしょう。私、強欲なんです』

 

 『待て、フラッシュ! 止まれッ!』

 

 

 

 愛の砂漠の中心で。

 

 黒鹿毛の、ウマ娘はそっと微笑んだ。

 

 

 

 『フラッシュ、ちゃん……?』

 

 『いいえ、私は名もなきウマ娘です。

 罪悪感なんて、あなたには似合わない。

 奪ってください、ファル子さん。すべてを、私から。

 あなたが幸せになってくれること。それが、我が報酬』

 

 『奪う……? 待って、『スマートファルコン』ッ!』

 

 

 

 渇望が、止まらなかった。

 

 まだ、同調しきらぬうちに、目覚めてしまった。

 

 愛を求め続ける、『彼』の魂が。

 

 全てを奪い尽くそうとして。

 

 そして、自分は奪ったのだ。

 

 残ったのは。

 

 

 

 『ファル子、さん……?』

 

 『フラッシュちゃん? どうしたの?』

 

 『無事だったのですね……! 良かった……!』

 

 『……触らないでもらえるかな? 

 ファル子、トレーナーさんが好きだよ。

 トレーナーさんだけが、好き』

 

 『え……?』

 

 『ファル子……?』

 

 

 

 愛し気に自分を抱きしめる彼女。

 

 だが、自分は。

 

 彼女を、拒否した。

 

 今にして思えば。封印した想いが、彼女を拒んだのだろう。

 

 彼女を、これ以上。自分に縛り付けたくなかったのかもしれない。

 

 

 

 『トレーナーさん。ファル子さんは……?』

 

 『……奪ったんだ。君への想いを。

 恐らく、彼女は君を。オレなんかよりも。

 ずっとずっと、愛していた。

 すまない、フラッシュ。オレは、無力だ……!』

 

 『どうしたの? トレーナーさん?

 ファル子ね、トレーナーさんのこと、大好きだよ!』

 

 『すまない……! オレが奪われていれば……!

 オレが居なくなっていれば、こんなことには……!』

 

 『……トレーナーさん。ファル子さんに、催眠術を』

 

 『……わかった』

 

 『えっ? なになに? ……すぅ』

 

 

 

 眠りに就いたお姫様。

 

 愛に渇いた、愛しいウマを見つめ。

 

 エイシンフラッシュは、告げた。

 

 彼女の愛を、取り戻すための計画を。

 

 

 

 『トレーナーさん。ファル子さんは、私への愛を。

 自分で奪ったんですよね?』

 

 『……そうだ。そしておそらく。君から奪わないため。

 彼女が、完全展開をすることは。未来永劫ないだろう。

 魂の奥底に、刻んだ筈だ。『スマートファルコン』の危険性を。

 ……愛する君を、傷つけないために。優しい子だから』

 

 『なら、憎しみは?』

 

 『……フラッシュ。君は何を……?』

 

 『愛の反対は、無関心。

 ならば。私は、彼女に憎まれる。

 いつか、愛を取り戻すために。

 トレーナーさん。私に、催眠術を。

 あなたを彼女より愛していると、私に誤解させてください。

 ファル子さんを、出し抜くために。

 手段を選ばず、彼女からあなたを奪うために。

 冥府魔道に、堕としてください。

 ……嫌とは、言わないですよね?』

 

 

 

 ごくりと彼は、喉を鳴らし。

 

 震える手で、五円玉を揺らした。

 

 

 

 『フラッシュ。俺を愛せ。

 契約だ。期間は彼女が、大人になるまで。

 ……ちゃんと、誰かを愛せるように。

 真実の愛を、自分の中から見つけられるまで』

 

 『……優しいヒト。だからファル子さんも、私も。

 あなたを好きになったのでしょうね。

 …… Ich liebe dich sehr.(愛しています)

 我が偽りの。愛しきヒト 』

 

 『こんにちわ、メフィストフェレス。

 時よ止まれ。お前は美しい。

 彼女の時計が、動き出すまで。

 偽りの愛を、紡ぎ続けよう』

 

 

 

 そして、ファル子リヲンの増幅により。

 

 負荷が掛かり過ぎ、綻んだ封印。

 

 彼女の時計の、秒針は。

 

 音を立てて、軋み始めた。

 

 

 

 「ああああああああああああああああああああああッ!!!!!

 ファル子、わかんないッ! もう、何もわからないッ! 

 何もかも、どうでもいいッ! 

 全部全部全部ッ! 愛の砂漠で朽ち果てろッ!

 奪い尽くせッ! もう何も要らないッ!

 『スマートファルコン』ッ! 完全展開ッ!」

 

 「会長ッ!? 完全展開、使えない筈じゃッ!?」

 

 「あのクラスのウマ娘が、使えないわけないだろッ!

 下がれ小娘ッ! お前にアイツは、救えないッ!」

 

 「……ッ!」

 

 

 

 白髪のウマ娘と、鹿毛のウマ娘。

 

 こちらを見て、何事かを叫んでいる。

 

 はて。あれは誰だったか……

 

 

 

 「ファル子さん……! もう私は、間違えないッ!」

 

 

 

 黒鹿毛のウマ娘。

 

 見ていると、脳が軋む。

 

 もう何も見たくない。

 

 さぁ、広げよう。誰も居ない世界を。

 

 

 

 「『暴夜物語(えいえんのさばく)』」

 

 

 

 そして、世界は夜に包まれた。

 

 

 

 

 つづかない

 

 

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