ハルウララさんじゅういっさい   作:デイジー亭

68 / 69
今までの作品で、一番ひっでぇルビを振った気がする……
まぁこういう作品ですので、諦めてください。


ファル子さんじゅういっさい そのよんじゅうご コーヒーの味

~前回までのあらすじ~

 

 トレーナーの、お姫様起床チャレンジ失敗。

 

 堕ちてゆくは、記憶の中。

 

 深々(しんしん)と、堕ちる先には桜色。

 

 桜過ぎれば灰色が。

 

 最深部すら突き抜けて。

 

 記憶の海は、その底を見せない。

 

 彼が堕ちるのに変わり、一羽の鳥が羽ばたいた。

 

 ツバメはまた飛翔する。

 

 最期の役割を果たすため。

 

 抱えるは、鉛の心臓の片割れ。

 

 彼女が持っていけなかったもの。

 

 ところ変わりて現実世界。

 

 彼女はううんと唸り聞く。

 

 掲示板の作法に則り、土下座ロリに状況を問う。

 

 だいたいわからん三行に、三行半(みくだりはん)のごとき切り捨て。

 

 わからなくても、どうにかなる。

 

 トレピッピを椅子代わりに、焼き土下座の鑑賞会。

 

 怪物じみた猛禽類に、愛しい娘が2匹とその他。

 

 じゅうじゅうと焼き焦げるそれに、ほっこりと頬を緩める。

 

 ママの愛を思い出す。ヤツもやたらと鬼畜だった。

 

 我が家は相当スパルタであり、娘たる自分。

 

 尊敬する母に倣い、躾の機会は見逃すべきではない。

 

 実際肉体は灼けてないようだしセーフ。

 

 バ鹿に目にもの見せるにも、とっても有効。

 

 孝行娘な白髪ロリに、にこやかにエールを送る。

 

 助けを求められるも自分に、完全展開を解くすべはない。

 

 殴り倒して気絶させれば不可能ではないが、さすがに娘はドつけない。

 

 想起するは、キングヘイロー。

 

 彼女が起こしたその奇跡。

 

 自分が初めて完全展開をした日。

 

 ポンコツ天使が自分を助けた時のこと。

 

 あまり、細部は覚えていないが。

 

 確かに彼女に助けられた。

 

 虫食いだらけのストーリー。

 

 気絶していた彼女は知らない。

 

 指輪の砕ける音とともに、一つの恋が終わりを告げ。

 

 一つの狂愛が、産声を上げたことを。

 

 彼女は愛に包まれていた。

 

 その愛のカタチが、例え捻じ曲がり歪んでいたとしても。

 

 硝子のように、溶け崩れて歪んだ愛。

 

 それはとても、美しく無惨な姿を世界に晒していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『Luaaaaaaaaaaaaaaaaaa……』

 

 「ははっ。ファル子ちゃん、かわいい顔を見せておくれ。

 そろそろお前の泣き顔が見たい」

 

 「ウララママって、ほンッ……と。ドSだよね」

 

 「Mならレースに勝ててないだろ。ウマ娘が受け身で許されるのは、ベッドの上ぐらいだよ多分」

 

 「うわぁ、下ネタまで……アフちゃん先輩、わたしたち母親を選び間違えたね」

 

 「通常、親も子も互いを選べぬのである……あっちゅい」

 

 ぐったりとした、褐色ロリ。

 

 だいぶ反省したのであろう。

 

 彼女の下の鉄板は、赤みをだいぶ失っていた。

 

 

 

 「六おじいちゃんと、黒鹿毛は反省した?」

 

 「オレ、絶対悪くないよなぁ……」

 

 「私は愛のために生きています。省みる暇などありません」

 

 「うーん、このクソども」

 

 煌々と光を放つ鉄板の上。

 

 アホなウマ娘たちを育てたトレーナーと、諸悪の元凶は。

 

 じゅうじゅうと精神を灼かれながらも、己の罪に無自覚だった。

 

 

 

 『Laaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa……』

 

 「会長……あなたの、ほンとの声が聴きたいよ」

 

 そして、ユキオーが最後に目を移す先。

 

 じゅうじゅうと溶け堕ちる泥。

 

 少しずつ、小さくなりゆく怪物。

 

 その歌は、濁ったヘドロのようで。

 

 歌姫など、とても名乗れぬ艶姿。

 

 スマートファルコンは、未だその正気を取り戻さずにいた。

 

 

 

 「そンでウララママは……oh」

 

 「うーん。いい音色だ。おなかに響く音。結婚式が待ち遠しいね」

 

 パァン! パァン! とパパのケツが鳴り響き。

 

 彼女はドラムソロに興じていた。

 

 一心不乱のその手さばきは、ユキオーの思惑などどこ吹く風。

 

 その精神性に、ユキオーは驚嘆の声を挙げた。

 

 

 

 『どこ吹く風』。ハルウララを象徴するレアスキル。

 

 彼女と共にトレーニングに励んだ者のみが、その片鱗を学ぶことが出来る。

 

 それは、100を超える戦いにおいて『ハルウララ』が獲得した精神性の表出。

 

 レースにおいては、中盤において囲まれた場合持久力を回復させ。

 

 闘争の場においては、あらゆる精神的影響を無効化するスキルである。

 

 彼女はキレる時は、身勝手にキレる。

 

 何者も闘争に励む彼女に対し、負の精神的影響を与えることはできない。

 

 このバ場においても、そのスキルは普段通り機能していた。

 

 

 

 「さてユキちゃん、そろそろだよ」

 

 「へ? そろそろって?」

 

 そんな彼女が、ぐりんとこちらを向いた際。

 

 ユキオーは、わりとガチビビりした。

 

 いつでも彼女は唐突すぎて、自分の理解を超える。

 

 思っていると、ちっちゃなおててで指差すは。

 

 泥に包まれた、愛しいウマ。

 

 

 

 「それ、たぶん繭だよ。あのままじゃ勝てないって思ったんだろうね。

 まったく、何回お色直しするつもりだそいつ。披露宴じゃないんだから」

 

 「繭? 会長は蛾だった……?」

 

 「蝶と表現しないところが、育て方を間違えたところだよなぁ」

 

 「うるさいよジジイ」

 

 「アッツゥイッ!!!」

 

 余計な茶々を入れるジジイを、香ばしく焼き上げる。

 

 わりと制御に慣れてきた。

 

 理不尽な八つ当たりは、ウマ娘の得意分野。

 

 成長しつつある彼女は、少しずつ世界の真理を悟ってきた。

 

 他人に遠慮するヤツは、損をするのがこの世界である。

 

 勝手にきままにわがままに、己の心の赴くままに。

 

 ただ、精一杯生きる。

 

 それが、この世界の理。

 

 それが、三女神の望み。

 

 ウマがウマらしく生きられる世界。

 

 誰もが幸せになれる世界。

 

 競争の勝敗には厳しいが、勝利の形は一つではない。

 

 心から、笑えた者が勝者ならば。

 

 この世界は、きっと勝利に満ち溢れていた。

 

 

 

 「…………………」

 

 「乾いたね、そろそろだ。ユキちゃん、解いて」

 

 「だからッ! ウララママに許して貰わないと! 解けないって言ってンじゃン!!!」

 

 「でもわたし、心の底から誰かを許したこと無いよ?」

 

 「ウララママは、根に持つタイプであるからなぁ」

 

 「ウララはマジで、なんでこうなったんだろうな……」

 

 泥が渇き、ぴしりぴしりと亀裂が入る。

 

 娘に解除を打診するも、彼女の意思では出来ないらしい。

 

 まぁ完全展開は、勝手に開くこともままある。

 

 そういうものかと納得し、ハルウララは言葉を続けた。

 

 

 

 「まぁ、相手に土下座させたままでも闘えるか。

 フェアプレーとか、レース以外では必要ないよね」

 

 「判断が早いッ……! これには天狗も呆然ですッ!」

 

 「軽率な天丼は厳禁だよ、フラッシュちゃん」

 

 「口で言うだけでいいから多分っ! お願いウララママ! 何でもするからッ!」

 

 「ユキオー! ウララに何でもするはマズい! 軽々しく言ったら最後、骨までしゃぶられるぞ!」

 

 「さすが、元トレーナー。しゃぶられた実感が籠っているのである」

 

 「わたしが誰にでもしゃぶりつくみたいに言うの、やめてくれる?

 貞淑なウララちゃんに、何と言うことを」

 

 げしげしと、元トレーナーを老人虐待する。

 

 確かに彼の老後資金を、大胆に切り崩すこととなったこと。

  

 このハルウララにも、責任の一端はあるかもしれない。

 

 だがニホン産の牛肉の醸し出す、確かな味。

 

 それは、自らの体調管理に欠かせぬ物であり。

 

 トレーナーとして、ウマ娘の身体作りは必須事項。

 

 当然のおねだりであった。

 

 

 

 「さて、んじゃあ非常に遺憾だけども。心の底から、言いたくないんだけど……」

 

 「無念と言う言葉を題材にすると、今のウララ先輩の顔になるのである」

 

 「ウララさんは変わりませんねぇ」

 

 「三女神教が覇権握るまで、戦争が終わらなかった理由が理解できるよな」

 

 苦渋の決断である。

 

 だが当時三女神は、神託でこう告げたという。

 

 

 

 『くだらんことやってないで、走れバ鹿ども。お前ら何のために産まれたと思ってんの?』

 

 そのお告げを聞いた、当時のウマ娘たちは。

 

 一切の戦争から手を引くだけに飽きたらず。

 

 

 

 『レースのためだ、致し方ない』

 

 そう言いながら、戦争を主導する者全てを殴り倒したという。

 

 ヒトは、暴力と領域の前では無力であった。

 

 

 

 「はぁー……。許すよ、バ鹿ども」

 

 「クソデカ溜め息。ウララ先輩のどこからこんな風圧が」

 

 「やった、ありがとうウララママ!」

 

 「やれやれ、無辜の罪で灼かれるとは。これには聖ウマ娘もびっくりですよ」

 

 「こいつはもうちょっと、灼いといた方が良かったんじゃねぇかな」

 

 土下座を強要されるという、ハルウララの周りではよくある体験。

 

 そこから解放された彼らは、大きく伸びをした。

 

 ユキオーの完全展開、『焼き土下座(謝罪会見)』。

 

 利根川幸雄が生きた世界と同様に、形だけの謝罪。

 

 そのような結果に終わり、鉄板は無念そうに姿を消した。

 

 

 

 「さーて、起きろファル子ちゃん。入ってますかオラッ」

 

 「抉り込むようなボディ。やはり世界を狙える器……!」

 

 「やっぱり、ウマ娘格闘家を志しておいた方が良かったンじゃない?」

 

 「滅多なことを言うなユキオー。リングの上で相対したら、私は即座に腹を見せるのである。きゃいんきゃいん」

 

 「この負け犬がッ……!」

 

 よく躾けられた、アフちゃんを見て嘆くユキオー。

 

 それを横目にしつつ、乾いた泥の塊に連続ジャブを叩き込むハルウララ。

 

 

 

 「ウラウラウラウラウラウラウラウラウラ……ウラァッ!」

 

 「殺した後に『ブッ殺した』って言いそうですね」

 

 「立派なイタリアンマフィアの鑑に育って、オレは世間様に合わせる顔がねぇよ」

 

 そして、ついに繭が崩れ落ちる。

 

 そこから姿を見せたのは。

 

 

 

 「………………おはよう、ウララちゃん」

 

 「おはようファル子ちゃん。気分はどう?」

 

 「最高だね。空だって飛べちゃいそう」

 

 「ファル子先輩、私のアイデンティティを奪うのはやめて欲しいのである」

 

 「既にサイレンススズカに奪われてるじゃん、アフちゃん先輩」

 

 「ファル子さん……!」

 

 「おいおい、成長期かぁ? こいつはウマ娘学会に発表せんといかんぞ」

 

 ゆっくりと、こちらを睥睨する彼女。

 

 その姿は、変わり果てていた。

 

 

 

 「ウララちゃん、ファル子気づいちゃったんだぁ」

 

 「お前、今まで気づかなすぎじゃない? 赤ちゃんよりも、新発見の連続じゃん」

 

 「くふふっ」

 

 おかしそうに笑う彼女。

 

 そのツインテールは、くるぶしまで伸びており。

 

 

 

 「うわぁ会長、大人の女って感じ。また好きになっちゃうじゃン? 反則だよそれ」

 

 「後でかわいがってやる。楽しみにしていろ駄犬」

 

 「声までセクシー……! 濡れるッ!」

 

 そのすらりと伸びた手足は、同じ栗毛のウマ娘。

 

 タイキシャトル程の、視野の高さを彼女に与え。

 

 

 

 「ファル子さんッ! そこでダブルピースッ!」

 

 「…………」

 

 そのたわわに実った果実は、クリークママを想起させる程に。

 

 官能的な、母性に満ち溢れていた。

 

 

 

 「強制的に成長したんだ……! ウララを倒せる年齢までッ!」

 

 「三十路から何歳育てばああなるんだよ。

 成長期来るの遅すぎだろ。……待てよ、わたしにもこれから成長期が?」

 

 「それは無い」

 

 「ありませんね」

 

 「無いと思うのである」

 

 「ウララママ、現実見なよ」

 

 「ウララちゃんは、ちっちゃいからかわいいんだよ?」

 

 「お前らマジでいい加減にしろよ」

 

 あと、ケツもやたらにでかかった。

 

 ハルウララは、三十路からの成長期の実例を見て。

 

 希望にちっちゃなボディを震わせたが、バ鹿どもに全否定。

 

 怒りにその身を震わせた。

 

 先ほど余分な血を抜いておらねば、脳溢血もあり得る血圧の急上昇である。

 

 

 

 「おい、アダルトファル子ちゃん(仮)。成長の秘訣をわたしに教えろ。

 そうすれば、命だけは助けてやる。領域か? 領域なのか? マジで死活問題なんだよ。

 このミニマムボディじゃ、百人はきついんだよ……!」

 

 「ウララ先輩、マジで産む気なのであるな」

 

 「成長してもきついと思うンだけど」

 

 「だからヨルウララを、オレの前で赤裸々に話すのはやめろとあれほど」

 

 「体験談から言わせてもらいますが、一人でも相当きついですよ」

 

 ハルウララは必死だった。

 

 周りのウマ娘たちは、結構育ったというのに。

 

 自分は一向にちっちゃいまま。

 

 このままでは、彼ピッピの愛は受け止めきれぬ。

 

 根性でなんとかしようとは思うが、愛で殺害される危険性すらあるのだ。

 

 ここは信条を曲げて、下手に出てでもコツを聞くべき時である。

 

 

 

 「んふっ。ウララちゃん、別にファル子は大したことしてないよ?

 時計が動き出しただけ。ねぇ、()()()()()()()()()?」

 

 「ファル子さん……!? まさか、記憶が……!?

 ……いいえ、あの時あなたは気を失って居たはず! 覚えている筈が無いッ!」

 

 「全部捨てようとしたけど、逆に全部思い出しちゃった。

 フラッシュちゃんは、頭がいいけどバ鹿だよね。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 「ッ……!」

 

 「『スマートファルコン』が聞いてたよ。馬の言葉なんてわからないけど。

 完全に取り込んだからね。聞いた言葉ぐらいはわかる」

 

 エイシンフラッシュは、愕然と立ち竦んだ。

 

 知られてはいけない物語。

 

 彼女にだけは、教えられなかった。

 

 罪は自分だけが、抱えていればいい。

 

 愛しい彼女(ウマドル)に、傷など背負わせるわけにはいかないから。

 

 

 

 「ああ、勘違いしないでね? ファル子、恨んでないよ。

 二人が私を愛してくれたこと。

 二人が私のために、色々な物を捨てたこと。

 二人が私を想って、私から離れたこと。

 ぜんぶぜんぶ、思い出した。

 大好きだよ、フラッシュちゃん。もう二度と逃がさない」

 

 「ファル子さん……」

 

 「ハッピーエンドだね。でもファル子ちゃん」

 

 ハルウララは、にこやかに告げた。

 

 彼女の全身から立ち上る、ある感情を見て取って。

 

 

 

 「このまま終わらせる気、無いよね?」

 

 「当たり前だよウララちゃん。ハッピーエンドはまだ遠い。

 ウララちゃんはさ、自分を怒らせたヤツを許せる?」

 

 「さっき許したよ。戦いが終わったらシバくけど」

 

 「許せていないのである」

 

 「ウララに怒りを納めさせるには、人身御供かウマ身御供が不可欠だからな」

 

 「怒った時のヤバさが、完全に荒御魂。水害とか疫病でも起こすンかな?」

 

 『憤怒』の化身と言われるウマ娘。

 

 ハルウララが、その怒りを抑えられないように。

 

 

 

 「ルドルフ会長が、その傲慢を以て頂点に君臨したように。

 ネイチャちゃんが、その嫉妬を以て全てを泥に沈めたように。

 私たちは、その本質から逃れることは出来ない」

 

 「ふぅん。()()()()()なんて、持ち出すとはね。

 学園時代のつまらんあだ名に、何の意味がある?」

 

 この世界では、奇跡を実現する三女神が駆逐したもののひとつ。

 

 細々と残る、とある宗教の名残。

 

 七つの美徳と、七つの大罪。

 

 

 

 「ああ、学生時代聞いたことがあるのである」

 

 「ウララママの世代の、十四人のウマ娘だっけ?」

 

 「ああ、他にも強いウマ娘ばっかりの。一般ウマ娘にとっては、絶望の世代。

 その中でも強すぎる十四人が、そう言われていたな」

 

 『傲慢』のシンボリルドルフ。

 一切の敗北を許容できなかった、誇り高過ぎた皇帝。

 

 『謙譲』のエアグルーヴ。

 身を尽くして、皇帝を支えた影の立役者たる女帝。

 

 『嫉妬』のナイスネイチャ。

 煌めく星に憧れて、全てを堕とす汚い帝王。

 

 『忍耐』のトウカイテイオー。

 度重なる故障にも挫けず、奇跡を起こした光の帝王。

 

 『怠惰』のゴールドシップ。

 彼女にとって価値ある戦いにしか、本気を出さぬ浮沈艦。

 

 『勤勉』のメジロマックイーン。

 貴顕の誇りを胸に抱き、目標に邁進した名優。

 

 『暴食』のオグリキャップとスペシャルウィーク。

 食べ過ぎ注意。

 

 『節制』のスーパークリーク。

 ちょっとは自制して欲しい(願望)。

 

 『色欲』のダイワスカーレット。

 色ボケ。

 

 『純潔』のウオッカ。

 恋愛クソ雑魚。

 

 『憤怒』のハルウララ。

 すぐキレる。

 

 『寛容』のキングヘイロー。

 ぽわぽわしてる。

 

 『分別』のエイシンフラッシュ。

 計画的犯行。

 

 そして。

 

 

 

 「私は、『強欲』のスマートファルコン! 何もかも欲しくてたまらない!」

 

 「絶対考えたやつ、途中でめんどくさくなったのである」

 

 「サイレンススズカとか入ってないし、十五人居るしね。

 願望まで入っちゃってるじゃん。いつもの学園のアホなノリだね」

 

 「うるさいぞ外野」

 

 気を取り直して、スマートファルコンは高らかに告げる。

 

 

 

 「だからさ、ウララちゃん! ファル子の物にしてあげる!

 お友達だもんね? 答えなんて聞いてない!」

 

 「こいつ、本当に厄介だな……! 敵にしても味方にしても、話を聞きやしない!」

 

 「ウララ、世の中には鏡というものが有ってな?」

 

 「うるさいぞジジイ」

 

 「ウボア」

 

 引き続く老人虐待。

 

 オリウマ娘といえど、暴力の対象には出来ぬ。

 

 コンプライアンスに反するからだ。

 

 

 

 「さあ第三ラウンドだよウララちゃん! 今度こそ、ファル子の本気を見せてあげる!」

 

 「はっ。長年溜め込んだアレも失くなったのに。大した自信だね、ファル子ちゃん?」

 

 「ああ、勘違いしてるよウララちゃん」

 

 天頂を指差して、スマートファルコンは告げた。

 

 

 

 「ファル子は現役時代、確かにダート走者だったよ?

 でもね、今は海賊王ッ! 愛は、形を変えても失われないッ!」

 

 ざぁざぁと、降りしきる雨。

 

 それは、悪魔のように黒く。

 

 それは、地獄のように熱く。

 

 それは、天使のように純粋で、

 

 それは、恋のように甘やかに。

 

 砂を溶かすほどの集中豪雨。

 

 呆れるほどに膨大なそれは、いつしか領域に満ち満ちて。

 

 

 

 「作者の書きたかったものなんて、知ったこっちゃないよねぇ!?

 だからファル子が書き換えるッ! わがままだらけの強欲を見よ!

 完全展開、『暴夜物語(えいえんのさばく)』改メッ! 『完全無欠の人魚姫(クスリをキメたアンデルセン)』ッ!」

 

 

 

 

 

 続かない


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。