ファル子回です。
正直、すまんかった。
元ネタは能楽。わりと創作意欲が刺激されます。
あと某史上最強の弟子とか。
~前回までのあらすじ~
昔の思い出に浸るハルウララ。
愛していたトレーナーのニーズを満たせなかったあの日。
仮面魔法ウマママ少女ライダー。
ケツ。
様々な思い出が駆け巡り、酔いが回った彼女は夢の世界に堕ちていく。
ラスボスに見守られながら、良い夢を見るウララであった。
おねロリ。
「ウララちゃん、あーん」
「あむっ。んー、おいひい……」
「んふ。かわいらしいですわ……! はい、あーん」
「むぐむぐ……」
「はい、ウララちゃん。お顔を洗いましょう!」
「はーい」
「タオルですわ、ウララちゃん!」
「ありがとう、プリンセスちゃん」
「はい、今日も可愛いですわ!
タオルはわたくしが責任持って処理しておきます!」
「うん、お願いー」
「ん? あれどこやったっけ……」
「はい、ウララちゃん!」
「そうそうこれこれ。なんでわかったの?」
「ウララちゃんのことなら何でもわかりますわ!」
「プリンセスちゃんはすごいねー」
「えっへん! ですわー!」
「いってきまーす」
「いってらっしゃい、ウララさん」
「いってらっしゃいですの、ウララちゃん!」
朝。朝ごはんを寝ぼけ眼で幼女に給仕され。
顔を洗い、目を覚まし。
タオルを懐にしまう幼女に首を傾げながら。
服を着替え、探していたヘアピンを貰い。
お見送りを受け、気分良く寄生先を出る。
なんか幼女に凄まじく依存しつつあるが、問題無いだろう。
彼女も成長するにつれ、すぐに飽きるに違いない。
まさか成人するまであのサービス精神は続くまい。
そう思いつつ、通勤経路を歩く。
「あなたは神を信じますか?」
「邪神なら知ってます」
「オーウ……ラヴクラフト!」
宗教勧誘を華麗にあしらい、スタジオへ。
控室に入り、見回してみる。
どうやら自分が最後のようだ。
「おはようございます」
爽やかな挨拶を試みる。
「おはようっ☆ウララちゃん!」
地下アイドルの己の年齢を弁えぬテンション。
落ち着いた自分とは違うな。
「おはよう、ウララ」
ロリコンの冷静さを装ったネットリボイス。
我が家のお姫様に手を出したら去勢する。
「おはようございますー♡ウララちゃん♡」
邪神の甘い囁き。
今日も瞳に秘めた狂気がヤバい。
「うーん、今日もかわいいね! ウララ!
今夜、どう? 大丈夫、変な事はしないから!」
朝から飲みの誘いをかけてくるゆるふわツインテール雑食バイ。
狙いが見え見えで逆に潔い。
同僚たるクズ共だ。
ろくなヤツがいない。
テンションが一瞬で底辺に堕ちるが、なんとか気を取り直す。
ウマ娘は人参のみに生くるにあらず。だが人参が無ければ飢え死にする。
さすがに、家に食費ぐらいは入れぬとまずいのだ。
多分追い出されないが、残った最後のプライドが死ぬ。
さぁ、今日も日銭を稼がねば。
「よいこのみんなー♡クリークママと一緒、始まりますー♡」
いつもの甘く蕩けたタイトルコール。
騙されてはいけないぞ幼児ども。
食虫植物ならぬ、食幼聖母の甘い罠。
迂闊に近づけば、囚われた幼精の性癖が破壊される。
待っているのは悲惨な未来。だが騙される愚者が後を絶たぬ。
まぁ賢い子はこのウララが放り込むのだが。
思いつつ、自分の番だ。コールする。
「ウマのおねえさん、ウララだよっ!」
ぴょんと跳びはね、元気アピール。
31歳児でも、プライドを投げ捨てればこれぐらいはできる。
「歌のお姉さん、ファル子だよっ☆」
手で♡を作る猛禽類。痛々しいが痛仕方なし。
「がろうくんだがおー」
今日も最初は善良面。女児たちから距離を取られている。
「ブルヒヒィィィィン!!!!」
おい。興奮のあまり野生を解放しているぞこの着ぐるみ。
なんだその鳴き声。そんな声の動物は地球上に存在しない。
幼児どもも怯えている。
「ウマ美ちゃん、アウト―♡」
クリークママの目配せ。やれやれ、ご指名のようだ。
「ヒッヒィィィィン!!」
狂乱の舞踏を踊る、ウマ美ちゃんの背後に回り。
ケツに魅惑の脚線美を叩き込む。
ズバァン!
「ヒヒィィィィィン♡♡♡」
喘ぎ声が汚い。やり直し。
ドゴォン。
「あひっ……! う、ウララ、それはやばいって……」
がくりと崩れ落ちるウマ美ちゃん。どうやら理性を取り戻したらしい。
さすがに尾てい骨へのヤクザキックは効いたようだ。
クリークママ直伝である。
「スタッフさーん♡そのクズを、座敷牢へ♡」
クリークママの裁定。どうやらまた暗くて狭い地下室へ送られるようだ。
ウマ美ちゃんは登場時こそ、神がかったダーティプレイを魅せたが。
残念ながらここ数日、情欲を持て余しているらしい。
またトウカイテイオー宅から追い出されたのだろう。
一度追い出されると、3日は再寄生は許されぬ。
トウカイテイオーもとんだ甘ちゃんである。
なんやかんやでムーンサルト土下座程度で許してしまうのだから。
あの女はまだ、様々な土下座を隠し持っているというのに。
108式まであるらしい。
「さて♡改めて、良い子のみんなー♡今日は、お歌の時間ですよー♡」
お歌の時間。素晴らしい。腰に負担がかからない。
幼児たちの歓声。彼らも歌のお姉さんの歌声が大好きなのだ。
「ファル子、がんばるねっ☆」
猛禽類のやる気も好調だ。最近はウマ美ちゃんの登場により。
猜疑心を育成するための教育に、クリークママは掛かり切りになっていた。
お歌の時間はその割りを食っていたのだ。
「じゃあ、みんなは、何のお歌が聞きたいかなー?」
ウマのお姉さんとして、幼児どものリクエストを聞く。
何、どうせいつものあの曲だろう。だが、それでいい。
「「「「「にげー!!! らぶー!!!」」」」」
やはり、あの曲か。がろうくんに目配せする。
頷くと、舞台袖に向かうロリコン。大道具の準備も、彼の仕事だ。
「クリークママ、ピアノだがおー」
粛々とピアノを運んでくるがろうくん。
「えらいでちゅねー、がろうくん♡」
むぎゅむぎゅとお褒めの言葉を頂くがろうくん。
彼はロリ以外に興味が無いため、クリークママの抱擁にも耐性がある。
むしろ蕁麻疹が出るそうだ。業の深い男である。
「じゃあ、お歌の時間、始まります―♡」
ポロロン。ピアノの鍵盤を軽く叩き、クリークママが宣言する。
猛禽類と頷きあい、ステージへ。
バックダンサーもウマのお姉さんの仕事である。
「みんなー! 今日はファル子のライブに(ダァァァァン!)ごめんなさいなんでもありません。
許してください。わたくしめは卑しい歌のおねえさんでございます」
調子に乗ってクリークママに、鍵盤鉄槌で威嚇され、睨まれる猛禽類。
徹底謝罪の構えだ。
スキャンダルを起こしたアイドルでも、ここまでの平謝りは見せまい。
路上ライブの癖が抜けていない、懲りない地下アイドルである。
「ファル子ちゃん♡さっさとやれ」
ドスの効いた聖母ボイス。
青褪めた顔色でマイクを持つと、お歌の時間の始まりだ。
多少進行に滞りはあったが、彼女とてプロ。
その歌の技量に疑う余地は無い。
歌のお姉さん。
実を言うと、この番組で最も競争率の高いポジションなのだ。
何故ならば、採用条件は歌の上手いウマ娘。
トゥインクルシリーズを出走したウマ娘ならば、歌の一つなど、出来て当然。
必然、オーディションではクリークママの審美眼も厳しくなる。
そこで採用を勝ち取った彼女。
足を舐めるだけが能の女では、無いのだ。
クリークママの奏でるピアノが、優しい旋律を奏で始める。
『あなたに 伝えたいことがあるの
私を夢の舞台に 連れていってくれた あなた』
まずはしっとりと。この曲のモデルは、彼女自身とそのトレーナー。
彼らの愛を歌い上げる曲である。
『とても幸せだった 夢のような日々
あなたとなら どこまでも羽ばたいていける 砂に塗れた翼広げ』
だんだんとアップテンポへ。2人で築いた栄光の日々。
トゥインクルシリーズ屈指のダートの女王。
短距離以外を制覇した、砂のハヤブサ。
『卒業したら 何をしよう あなたと共に 何をしよう
夢は広がり あの空へ どこまでも飛翔んでいく この想い』
テンションは最高潮に達し、彼女が顔を伏せてバックステップ。
そして溜め。能楽や歌舞伎に見られる、間の美学である。
自身も下がり、がろうくんがサーブしたじゃがいもを受け取る。
クリークママが総身をのけ反らせ、そして。
『だけどあなたは どこかへ消えた……!』
ダァァァァァァァァン!
クリークママにのみ許された、その雄大な胸部をも使用した、全鍵盤同時打撃。
ここだ。じゃがいもを彼女の俯いた頭部にシュートする。
彼女が顔を上げ、じゃがいもを掴み取る。
じゃがいもが、常識外の握力により、容易く握り潰される。
このじゃがいもは、後ほどがろうくんにおいしく頂かせる。
食べ物を粗末にするのは、教育番組的にNGだ。
そして彼女は感情を解放した。
『フルルルルルルルルァァァァァァァッシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
上げた顔には血の涙。
逃げられっ☆堕天恋(にげられっ☆フォールンラヴ)。
彼女の代名詞たる名曲だ。
愛するトレーナーを親友に掠め取られた無念。
『私たち、結婚しました』ドイツから届いた手紙。
かわいさ余って憎さ100兆倍。
今では彼女は、ドイツを連想させる物を見ただけで発狂するのだ。
じゃがいももその一つ。二度とはファーストフード店に入れぬ身体。
ポテトの一つもテイクアウト出来ぬ。
狂愛の唄は、スタジオ中に響き渡る。
『あなたに 伝えたいことがあるの
私を夢から 覚ましてくれた あなた』
まずはヘッドバンキング。滂沱の血涙がステージを赤く染める。
この曲のモデルは、彼女自身とその親友。
彼女に対する憎悪を歌い上げる曲である。
『とても苦痛だった 独り身の日々
あなたなら どこまでも憎んでいける 憎悪に塗れた翼広げ』
くるりと廻り、ウィンクを一つ。眼光は猛禽を超え、怪物のそれ。
独りで育んだ憎悪の感情。
同期屈指の喪女の女王。憎悪の海を羽ばたいた、至高のおひとりさま。
『ドイツに渡ったら どうしてくれよう あなたに対し 何をしよう
殺意は広がり あの空へ どこまでも飛翔んでいく この想い』
口元が痙攣し、歪んだ笑顔を作りだす。そう、それはまさに般若。
道成寺、葵上、黒塚。それに続く、第4の演目。4人目の鬼女。
その名こそは、スマートファルコン。
だがその想いは決して成就しない。
『だけどわたしは、飛び立てない……!』
ダァァァァァァァァン!
クリークママによる、再度の全鍵盤同時打撃。
『ドイツ語が、わからねぇえええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
そう。彼女はアホだった。短期のビザさえ取れぬほど。
ドイツ語が壊滅的に苦手だった。
辛うじて理解できるドイツ語は、ビールとソーセージのみ。
何一つわかっていない。
エイシンフラッシュの身の安全は、完全に確保されているのだ。
スマートファルコン。
彼女の役割は、歌のお姉さん。そう。
幼児に対して、歌を通して教えるのだ。
男児には、女の情念の恐ろしさを。
女児には、愛する者を決して逃がしてはならぬという、教訓を。
愛するトレーナーを自らの実力で以て。
有無を言わせず西松屋した、クリークママならではの気遣いである。
留まる所を知らぬ、狂乱のヴォーカル。
自身はブレイクダンスで、ステージ上を壊れたピンボールが如く跳ね続ける。
転げ回る幽鬼。
プンチャック・シラットにおける奥義。
全画面ガー不即死技である。
鬼女を彩るに、これよりも相応しいダンスなど存在しまい。
この柳腰が上げる苦痛の絶叫も、さらに怨念を加速させる。
誰だ。お歌の時間は、腰に負担が掛からないとか言った阿呆は。
サビの合間に、怨霊に追加の燃料を与え。
うっかり何の罪状も明るみに出ていない、がろうくんを八つ当たりにて轢き潰しつつ思う。
なんにせよ、殺ウマ事件が起きずに何より。
燃やそうとした自分の言えることではないが。
こいつ、アホで良かったな……
ウララは思った。
つづかない