「くそっ、こっちのほうが機体ポテンシャルは高いはずなのに!」
紫色に怪しく光る機体が峡谷を縫って敗走する。今日も狩りは捗った。初心者が何人もいたからいつもの半分の時間で目標のポイント数になった。しかしこの対戦相手は違った。自分よりもランクが低いからと侮っていたが自分一人では手に負えない。一対一ではしばらく負けなしだったのにとんだ外れを引いたことを後悔した。
「武器を捨てて投降しろ、マスダイバー!」
いつの間にか先回りされていた。紫のジェスタはすかさずビーム・マシンガンを向け、緑の閃光を乱射する。しかし、大半はよけられた上にわずかなヒットも巨大なシールドに阻まれた。ガンダムウィングEWに登場するアルトロンガンダムの改造機には違いなかったが、カラーリングはもとより武装も全く違っていた。
「大人しく情報を渡し、二度とブレイクデカールを使用しないと約束するならダイバーネームは公表しない!運営にも便宜を図ってやる!」
赤く輝く巨大な槍を向けられる。これ以上進行したら串刺しにされる。そう悟った紫の機体を操るダイバーは靴底のスラスターを逆噴射してその場で耐空行動をとった。赤いカラーリングに巨大な縦と槍、何より生物的な翼が目を引く機体。ここまでの動きをする機体ならどこかで話でも聞きそうなものだが、全く心当たりがなかった。
「黙ってりゃいい気になりやがって!大人しくやられてポイントをよこしやがれ!」
マシンガンを腰のマウント・ジョイントに懸架し、左腕からビーム・サーベルを引き抜き赤い刀身を発振した。目の前の竜のようなガンプラは全く動じずこちらに槍の先端を向けたままだ。
「ブレイクデカールはチートツールだってわかって使ってるんだろ?違法なんだからやめろよ!」
いい子ちゃんぶりやがって。俺の腕じゃ普通にやっても接続料金だって元を取れやしないんだ。勝つためには手段は選べないんだよ。
マスダイバーは左腕を赤いガンプラに向かって振り上げ、シールド裏の煙幕弾を放った。即座に気づいた赤いガンプラのダイバーは東部バルカンで煙幕弾を破壊するが、前方の視界は白い煙に包まれた。その時、後方に熱源反応が現れた。
今まで追っていたガンプラじゃない。
そう気づいた時には真後ろに紫色の光、赤い眼光のフォースインパルスがサーベルを構えている。別で行動していた仲間の位置へ誘い込まれていたのだ。
マスダイバーが孤独だと決めつけて、ソロなら勝てると踏んで挑んできたんだろうが甘かったな。ポイントは折版になるが撃破ペナルティを食らうより何倍もマシだ。
マスダイバー二人の口角が上がった。
「出撃地点から出直しな!」
ジェスタは再びビームマシンガンを構える。撃ち漏らした場合に備えるため。しかしそれは杞憂だった。爆発音とともに煙幕がこちらに流れてくる。続いて衝撃波。マスダイバーになる以前の自分がほとんど味わうことのなかった感覚。フォース内ではいつも先に撃墜されていたしフォースを抜けてからも負け続き。しかし今は違う、あの黒い男にもらった力でのし上がってさらに力をつけて俺を追い出したフォースを見返してやる。ジェスタを操るマスダイバーの視界が晴れる。その時だった。すさまじい衝撃とともにコクピット内が警告音と警告灯で赤く埋め尽くされる。
「なんだ?!」
思わず叫んだ。すでにモニターには何も映っておらず、それが撃墜寸前の状態であることを示唆していた。ダメージ部位を示すコンソールは、胸部に深刻なダメージが与えられたことを伝えている。おそらく槍で貫かれたのだろうがまさに一撃必殺で撃墜まで持っていかれている。ブレイクデカールで機体強度すら強化されたガンプラを一撃で破壊することが可能なのか。赤く染まる視界と警報音の中で爆発の衝撃にコクピットシートが大きく揺れた。それが自機の爆発によるものだと悟った時には、ルーザーペナルティがモニターに表示されていた。操縦用コンソールを強く握りしめる。それは敗北の悔しさと、突如現れた強敵に怒りを燃やした。
「やべ...結局どっちも撃墜しちまった」
戦場では深紅の翼をなびかせ、青い尾を振る竜が投げた槍を回収していた。
次回、"盾の少女"