俺のナイメアでハンティング! 作:ヤーナムの影
「夢中女子旦落ち着こう、深呼吸だ深呼吸。一度落ち着き、話せばわかる!」
「──オールマイト様、先程私は狩人様の前ではお静かに、と申したはずですが……もしやその耳は飾りでございましょうか? でしたらコレは不要な物ですね、切り取りましょう」
「それ耳じゃなくて髪! 確かに耳みたいに跳ねてるけど髪だから!」
ウッヒョー、ワロスワロス。人形ちゃんにオールマイトが迫られてラァ。てか、筋力でオールマイトに勝ってるしマリアの肉体ってやっぱりゴリラなんだねぁ。
そんなトラブルもありつつなんとか俺が何やかんやキレた人形ちゃんを宥めオールマイトを救った後、俺達はオールマイトの案内の元校舎内を案内されていた。
「いやー助かったよ夢中ベイビー、君のおかげで私はこの髪を保つ事が出来た!」
いえいえ、こちらこそナンバーワンヒーローを救えたと言う実績が付いたのでwin-winですよ。
いやー流石はヒーローの中のヒーロー。ヤーナム住人とは違って心が広いねぇ。ちょっと殺しそうになってもその大きい器で許してくれるんだもん、ほんと助かるわぁ。それと比べてあっちの住人は……ちょっと斬りつけただけで怒るんだもん、理不尽だよな。
「狩人様こちらを、鎮静剤でございます」
ん? 人形ちゃん、俺ってばまだらんらんマラソンしてないから狂気ゲージは溜まってないよ? なんで? まぁ、もらうけど。
鎮静剤を飲みつつ、オールマイトとたわいもない話をしていると突如先を歩いていたオールマイトは立ち止まる。なに、どうしたの?
「……ところで夢中ベイビー」
ハイハイなんでしょ。今使ってるオムツは〇〇社製エンデブァー監修、バーニングオムツですよ。そんでもって明日はマウントレディオススメと話題のグレートオムツを履く予定なのでオールマイト印のオールオッケーパンツを履く予定は……来週以降になりますね。
「いやいやいや、そんな事は聞いて無い。ナンセンスだ、君はおかしいと思わないのかね!」
はて、一体何がでしょう。あ、おしゃぶりなら今度買い揃えておくので許してもらえると────
「私達がごく自然に会話できていると言うこの現状に!」
────ハハッ、そんな事はあるわけ無いじゃありませんか。今だってちゃんと人形ちゃんの通訳を挟んで……るよ、ね? 人形ちゃん。
「いいえ、私は一言も喋ってはいません。狩人様とオールマイト様が大変楽しそうに談笑しているばかりでございます」
……おう、シット。悪夢の辺境で初めてらんらんちゃんと出会った気分だぜ。あのフォルムは最初無理だったなぁ……今では愛らしく感じるけど。
「何故夢中ベイビーの声が私の頭の中に響いているんだ。何かわかるか夢中女子ッ!」
えらく取り乱してるオールマイト。ありゃりゃ、俺とすれ違い通信したことによって啓蒙得ちゃったかな……なるほど俺はボス扱いなのか。
「わかりません。しかし、オールマイト様からは狩人様のような血の意思を感じます。それが原因かと」
「意思を注ぐ……だと!?」
あ、違ってた? うわっ、恥ずかしぃ。そんな驚いた目でこっち見ないで〜、あまりの恥ずかしさに狂気ゲージ溜まっちゃうぅ〜。
オールマイトはそんな驚いたような表情から一変、何かに納得し「そうか、だから校長は……」なんて呟いた後突然大笑いし始めた。ってか、ウルセェ。あと校長って……誰だ?
「ハッハハハハ! なんだそう言う事──ー「お静かにと再三申し上げていたはずですが?」スイマセン」
ヤベェ、教区長のオーラを出したおっさんが見た目少女の人形ちゃんから滲み出る再誕者にも似たオーラに威嚇されてるように見えるぜ。まぁ、ある意味似ている存在ではあるよな。そんな感じで案内され、そしてえらく大きな扉の前に立たされる。何ここ、魔女の家にあった拷問部屋か何か? って事はどっかに目玉があるよな……人形ちゃん見かけたら回収しといて、罠の餌か何かに加工するから。
「承知しました」
「発想が物騒だな君ッ、あと夢中女子はそれでいいのか!?」
オールマイトって今更だけどツッコミキャラだったんだ……画風的にボケキャラだと思ってたのに。
まぁ、それは肉断ちあたりで遠くへ吹っ飛ばしどうでもいいとしてオールマイトさん、ここって何処よ?
「ん? 手紙に書いてなかったかい? 今日呼んだのはある理由を話し合う為に本当はご両親も含め四者面談する予定だったんだけど」
はへー、初耳。人形ちゃん知ってた?
「はい、狩人様ならば伝えなくても問題と判断した為にお伝えしませんでした」
あぁなるほど、つまりはいつもの、狩人様ならどんな事が来ようと問題ない! 理論が炸裂したわけね。何とまぁ、いつも通りだなぁ。自分が知らなかった事に何故か冷や汗をかきまくってるオールマイトはゴホンと咳払いをした後、いつものあの笑顔で言い放つ。
「まぁ、とりあえずは夢中ベイビー。君に来てもらった理由は他でも無い、君の個性についてだ!」
個性? 個性……あぁー、なるほどね。完全に理解したわ。
「そうか! 理解してくれたか!」
理解出来てない事を理解した。
「えぇ……」
「単純に言葉足らずかと」
その言葉をよりによって君が言うのか……
ガヤガヤと話しながらも扉をオープン。まぁ、パッと見た感じ面接会場と同じですな。オールマイトに促され俺たちは用意された椅子へとin。残りのメンバーを呼んでくるらしくオールマイトは行ってしまう。……ええま、ここで放置プレイかよ。
ガラガラ使って遊ぼうかなぁ〜なんて考えてたら急激な空腹感が……そういえば今日の朝飯、食ってなかったなぁ。
「いつものミルクでよろしいでしょうか?」
オーケーよ、ちゃんと湯煎してね。
人形ちゃんはどこからともなく赤ん坊用脱脂粉乳を取り出すと哺乳類へ入れ、輸血液を流し込み俺専用ミルクを作っていく。あ、今回はヨセフカ産の血液なのね。
さて、ここで問題だ。こんな閉鎖空間でどうやって湯煎したミルクを用意するでしょうか?
「湯煎は難しそうです、直火で行きます」
答えは簡単、爆発金槌を使えばいい。 この世界の火災報知器って常に炎上している人間とかザラにいるから割とガバだから室内で多少の火を使っても感知されないんだぁ。
温度は人肌だよ? わかってる?
「問題ありません。先日、夢の中にて子育てのエキスパート様に指導を受けました。今度は完璧にミルクをご用意してみせます」
し、心配だ。この前作った時はめちゃくちゃ冷たかっただけに心配だ。
ミルク片手に爆発金槌を着火し、ボーボーと燃え続ける撃鉄にて温めて続ける人形ちゃん。その表情は真剣そのもの、まるで俺が初めて栗本チャレンジを行った時のよう。聖職者の獣は強敵でしたね。ミルクはじっくりコトコトと温め続けられやがてはある温度へと達し、完成する。
「完成しました」
……それはミルクであった。真っ白の見た目をした液体であるそれは哺乳瓶に入っており、明らかにしてはいけない、コポコポとまるで沸騰したかの如く変化していた。ってか、これ沸騰してるよね?
「子育てのエキスパート様の体温を参考にしました、何か間違いなどありましたでしょうか?」
何か間違いっていうか間違いだらけだね。一体どの夢に出てきた誰に教鞭を受けたんだよ。
「狩人の夢でございます。確か名前はエンデパーと名乗っていたはずです」
……あちゃー、ナンバー2であるあのが人夢に招待されてたかぁ。
って事は聞いたというより戦闘の中で聞き出したんだね?
「はい、狩人様の言いつけ通り時計塔の最上階にて待機していましたら突然、殴りかかられたので対応しました。その際、その時に考えていた温度について質問したのですが……答えは炎を纏った拳でした」
そして今回はそれを参考にした、と。
「はい、そうです」
ブクブクと沸騰し続けるミルクはまるでアメンドーズが吐く酸性液のよう、とても赤ん坊である俺が飲めるような代物じねぇーぜ。
「如何いたしましょう?」
……とりあえず、冷まそうか。
机にミルクを置かせ、俺たちは再度用意された椅子へと座り込む。静粛に響くカチカチ音を鳴らし続けている時計の針は既にオールマイトが立ち去ってから20分ほど経過している事を知らせていたのだった。