八本指を強化してみた   作:こさっく

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逃走の後

 

 「んー……」

 

 メストレティアは思慮深げな顔をして、右手に握る()をマジマジと見据えていた。奇妙な事に、その腕の断面を濃い霧が覆っている。

 それを気にも留めず、メストレティアはそれの観察を続けた。

 

 「人、じゃねぇよなぁ……人だったら可能性残ったんだが……。まぁ、『人類の守護者』って言う台詞に反応なかったし、当たり前か? なら、予定変更になるのも仕方ねぇか。

 ……私様の()()()()の旅はまだまだ続きそうだな」

 

 そうして、最後は小さく呟くと。一人納得するように言葉を垂れ流す。うんうんと頷くと、無理矢理引き千切ったようなその腕をポイと放った。

 ドサリと鈍い音をたて、それは地面へ落ちる。それと同時、霧に覆われた辺り一帯へ声が響いた。

 

 「………メストレティア様」

 

 「ん?」

 

 いつの間にか近くにいた黒装束に、メストレティアは目を向けた。その外套から覗く瞳から垣間見えるのは、強い恐怖。

 震える声を押し殺すように、黒装束は報告をする。

 

 「ターゲットですが……逃走の後、振り切られたようです。申し訳ございません」

 

 それを聞き、メストレティアは目を細めた。それを認め、思わず黒装束は息を止める。

 

 そして、彼女は笑みを形作りながら言った。

 

 「いんや、構わねぇさ。アイツ様は強ぇし、冷静だ。腕をもがれてもそれを逆に利用して逃走する頭もあった。

 アレが五体もいたら、私様でもキツいしな」

 

 「……ご恩情、感謝致します」

 

 ほっ、とつきそうになるため息を押し殺し、黒装束は頭を下げた。

 

 「まぁ、それに囲んでた私様の霧にかからなかった時点でお前らの手には余るのは確定だしな。咎める理由もねぇ」

 

 それはもう、楽しそうにメストレティアは笑う。けらけらと乾いた笑い声をたてる。黒装束はそれを目にし、驚いたように停止した。

 

 「んん?なんだ、私様の顔になんかついてるか?」

 

 「い、いえ……お言葉ですが……ここまで楽しそうなメストレティア様は初めて拝見したもので……」

 

 「あぁよ、そりゃあそうかもしれねぇなあ。これまでなかった波が来てるんだ。私様と張り合える奴らが来た──こんな楽しぃこたぁ、ねぇだろうよ。

 少なくとも、私様はそう信じてるんだぜ?」

 

 「我々には、その、分かりかねる感覚です」

 

 「それは……そうかもしれねぇな」

 

 くくく、と押し殺すような笑い声。そして、広がるのは無言。しん、と静まり返った広場で、メストレティアは体を伸ばした。

 

 「……と、そろそろ時間だな。私様は行くぜ」

 

 「承知致しました。……一応、どこへ行かれるかだけ、お聞かせ願えますか?」

 

 それにピクリと耳を反応させ、数秒考えるように停止すると、すぐに口を開いた。

 

 

 「まぁ、多分──人外魔境だ。楽しそうだろ?」

 

 

 ニヤリと笑むと、メストレティアの体が解けるようにして霧へと代わる。

 瞬きの間に、滲むように彼女の輪郭が消えると、そして世界へ静寂が戻った。




 久し振り過ぎてキャラの性格その他諸々忘れてます。
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