八本指を強化してみた 作:こさっく
「見た目は……幼い少女でした」
スクロールを開き治癒の準備を始めるソリュシャンを傍目に、セバスは腕の断面を力業で止血しながら口を開く。苦々しさを滲ませたそれに反応したのか、ソリュシャンは椅子に座るセバスに対して顔を上げた。
「手持ちでの最高位階です……取りあえずの応急処置となるので、残りの治療はナザリックへ帰還してからになります」
淡々とそう紡ぐソリュシャンを訝しげに見詰め、治癒される右腕を認め一息。傷が塞がるとソリュシャンは扉の付近に移動する。
「……そう言えば、先ほどアインズ様に関して何か仰っておりましたが──」
「セバス様、アインズ様がお見えになられます」
「──は?」
その瞬間、部屋の扉が開かれた。最初に目に入ったのは、頭を下げるソリュシャンと黒い布。
そして姿を現したのは、悠々とした動きで歩みを進める王──アインズであった。
「──あ、アインズ様?! 何故ここに?!!」
慌てて頭を下げようと立ち上がるセバスを手で抑え、アインズはやがてセバスの失われた腕へ視線を止めた。
不自然な沈黙が広がる。その間に部屋へ入ってきたのは、デミウルゴスとコキュートス。
二人は目をセバスの腕があった場所へと視線を留め停止するアインズを傍目に、その後ろへと付く。
そして一拍。ゆっくりとアインズが動き出す。
「……なにがあった。セバス」
──ゾッとするような声音だった。
怒りに染まっている。
その表現がここまで当て嵌まる声もないであろうほど、その音は確かな怒りをひしひしと伝えてきた。その矛先は──恐らくセバス。
一瞬で理解したそれに、自責の念に囚われ、そして焦燥が埋め尽くす。
セバスは緊張の余りに真っ白になりそうな頭をどうにか動かし口を回す。考える間もなく立ち上がり、頭を下げる。
「──申し訳ございません!
それに対し、アインズは諭すように言葉を放つ。だが、その声音はまだ鮮血を思わせるほどの赤色を感じさせた。
「よい、セバス。私はお前を責めているのではない。ただ、誰がお前の片腕を奪ったのか……それを聞きたいのだ」
燃え上がった頭が冷え始める。アインズが今の言葉で何を伝えたいのかは、すぐに理解した。
(……例え私がどのような罪を犯そうとも、それは二の次。先ずは私が知り得た脅威を伝えるのが先決──確かにその通りですね。このような事も分からないほどに動揺しているとは……)
再び自責の念に駆られながらも、それはアインズの意思に反する。粛々と言葉を続ける。
「……承知致しました。ご恩情に感謝致します」
息を吸う。覚悟を決める。そして、ゆっくりと吐き出すように話し始めた。
「……彼女は、名をメストレティア。そして『八本指』と言う犯罪組織の部門長を名乗っていました。
姿は人間の少女で、黒い髪と紫の目をした、小柄な体躯が特徴です」
「なるほど、セバス。つまりは人間ではない、と言うことかな?」
「分かりかねます。ですが、彼女はこう言っておりました──『己は人類の守護者である』と」
「……ふむ」
デミウルゴスがヴィクティムを抱えたまま思案にふける。
「強さは私では測りきれませんでした。ただ、恐らく──百レベルは超えているかと思います」
「……それは、本当かな、セバス? 我々の常識ではレベルは百が最高の筈だが……」
「私もそう思っていました。ですが、そうとしか考えられないのです。一瞬の戦闘でしたが……彼女は私の全てを超えていました」
「ソレハ『武技』ヲ考慮ニ入ズニ、トイウコトカ?」
「……恐らくは」
その言葉が響くと同時、デミウルゴスが呟く。
「……『人類の守護者』──そう名乗っていた国がこの世界にはあったはずですね」
一拍。そして、低い声が響いた。怒りを、抑えられる事ないそれをひしひしと伝えてくる声が響く。
「……法国、か」
その瞬間であった。突然、幼い色を含んだ声が広がる。
「へぇ、面白そうじゃねぇか、その話」
──ズッ、と鈍い音が鳴った。響く声は、セバスとアインズの間。
セバスが弾けるように椅子を蹴飛ばし、後ろへ跳躍する。眼窩の炎を強めたアインズが下がり、その前に刃を握ったコキュートスとヴィクティムを持ったデミウルゴスが立ち並ぶ。滲み出る霧が人に近い形を形成する。
そして最後にソリュシャンが手に武器を持つと、それを待っていたかのように続いて言葉が放たれた
「なぁ、お前様ら。折角だしこの会議、私様も混ぜてくれよ」
そして、捩られた霧が集まり──一人の少女が現れた。
不安点:ソリュシャンの回復魔法って何位階までか忘れたところ。後で確認して部位欠損まで治せたら訂正します。