ミサトはシンジの大好きなお姉さん ~碇シンジ養育計画~ 作:朝陽晴空
日本政府により『特務機関』の権利を剥奪され、犯罪組織とされてしまったネルフ。
シンジたちは正義の執行者であった適格者の地位から一転、人々の敵である使徒と指名手配されてしまった。
「このように多くの人間を操り、ネルフを滅ぼそうとするヤツは一人しかいない。使徒キールだ」
司令室でゲンドウがキールの名前を挙げると、一番驚いたのはコウゾウだった。
「まさか、彼はネルフの一番の理解者だぞ!? スポンサーとしてもネルフを支え続けてくれた」
「使徒キールの恐るべき能力は『人の記憶を書き換える』事だ。冬月先生、残念ながらあなたもキールによって都合の良いように記憶を書き換えられている」
コウゾウはゲンドウの言葉を聞いて考えた。
確かにキールと蜜月の関係にあった記憶がある。
しかしそれが作られたウソの記憶だとしたら?
話はゲンドウの方が筋が通っている。
何よりもゲンドウにはウソまでついてキールを陥れる理由が無い。
キールを信じて取り返しのつかない事をしてしまうより、ゲンドウの味方をする事に決めた。
リツコもキールの能力を聞いて混乱に陥った人間の一人だ。
自分はたくましいゲンドウに憧れていた。
ゲンドウの妻ユイの目を盗んでは、何度も体を重ねていた。
しかし今のゲンドウを見ると、彼は決して不倫などしない人物に思えた。
キールに不倫の秘密をばらさすと脅迫されていたのは、キールの作った記憶の捏造だったのか。
自分は一度もゲンドウに抱かれた事が無いのだとすれば、自分が初めてを捧げた相手は誰なのか。
きっとキールに記憶を書き換えられてしまったのだろう。
リツコはキールに強い殺意を抱いた。
ネルフ本部では決戦に向けた準備が行われていた。
もはや元特務機関ネルフのスタッフであるだけで世界の敵扱いだ。
簡単に殺されてはなるものかと気合を入れていた。
その間、ゲンドウは先ほど話が中断されたセカンドインパクトについての話を再開した。
「そもそもの始まりはミサト君の御父上、葛城博士による南極調査がきっかけだった。その頃は地球温暖化の影響で、シベリアの永久凍土が溶け出し、古代の未知のウイルスが出て来るのではないかと危惧されていた」
葛城博士は南極大陸の永久凍土に興味を示していた。
今では一般的になっている風邪もウイルスが引き起こしているものだ。
中には人に有用なウイルスもある。
人は紀元前から森羅万象のウイルスと共存しているのだ。
「葛城博士は運悪く深い氷の裂け目に落ちてしまった。調査隊の誰もが葛城博士は事故で亡くなったと思っていたが、マッチョマンだった葛城博士は帰って来た」
「えっ!? 普通なら凍死してしまうはずでは?」
ミサトは父親が日頃から体を鍛えている事は知っていたが、ゲンドウの話には驚いた。
「ミサト君、筋肉は人に鋼を与える。だから俺もこの通り鍛えている」
ゲンドウはそう言って服をめくると、割れた腹筋を誇らしげに見せた。
「あなた……話が脱線しかけていますよ」
ユイに咎められ、ゲンドウは話を本題に戻した。
葛城博士は、永久凍土の中に封じ込められた『生命の樹』を見たのだと話した。
研究員たちは葛城博士は嘘をつくような人物ではないとその話を信じた。
もしかしてその『生命の樹』には未知のウイルスがあるのかもしれない。
しかし南極の永久凍土を溶かすなど自分たちに無理な話だ。
葛城博士も手が届かないと諦めた。
だが調査隊の中に野心に燃える男が一人居た。
その男こそがキール・ローレンツ。
彼は当時のアメリカ大統領をそそのかして、戦略核(戦術核より規模の大きい核爆弾)を南極大陸に投下させた。
口封じのために、葛城博士の調査隊が南極を離れる前に。
「それでは父の敵は元アメリカ大統領だと言うんですか!?」
その当時のアメリカ大統領は既に他界している。
ミサトにはどうすることも出来なかった。
彼の子孫に復讐するなど馬鹿げた事をするわけにはいかない。
「でも核爆弾なんか落として、生命の樹が燃えちゃったら本末転倒じゃない」
「生命の樹は残った。南極が地獄のような世界になった後も」
アスカの疑問にゲンドウはそう答えた。
「そして俺とユイはキールがアメリカの援助を受けて立ちあげた『研究機関ゲヒルン』に研究者として招かれた。生命の樹には未知のウイルスが存在していたのだ」
ゲヒルンの研究者がウイルスに感染すると、無症状の者も居たが、中にはATフィールドと不思議な能力を持つ人間が現れた。
その不思議な能力を持つ人間が使徒だった。
だからセカンドインパクト前には使徒が居なかったのだ。
ウイルスは接触感染や飛沫感染を通じて人知れず世界各地へと広まって行った。
世界の人類は多かれ少なかれウイルスに感染してしまっているのだ。
使徒となった人間には体に『核(コア)』が現れ、ウイルスの巣のようになっている。
「ウイルスの発生源に近かった俺は精気魔法の能力を得た」
「私は、使徒を体内に封印する能力を使って強力な使徒を閉じ込めていたの」
ゲンドウとユイはそう話した。
「俺たちは使徒ウイルスの発生源である『生命の樹』の殲滅と、ウイルスに抗体を持つワクチンの重要性をキールに説いた。しかしキールは使徒の力を自分の野心のために使い始めていた。俺たちは事故死したとされて、今までキールに捕まって居たのだ……」
「でもおかしいですよ。今のキールは大手メディア、ゼーレのCEOです」
ゲンドウの話に、マコトが口を挟んだ。
「狡猾なキールの考えそうな事だ。自分はウイルス研究とは無縁の場所で黒幕だと言う事を隠し、さらに人々を誘導しやすいマスメディアを支配する。ネルフはいつでも切り捨てられる資金源の一つだったという訳だ。やつは第二のネルフを作る事が出来るのだからな」
コウゾウは眉間に深いしわを寄せてそう話した。
「キール会長はネルフ本部を徹底的に殲滅するつもりなのでしょうか? それだけなら戦略自衛隊だけでも充分すぎる気がします。世界各国の精鋭部隊を呼び寄せている過剰戦力の意味が分りません」
シゲルが自分の疑問を話すと、ミサトたちも同意見だと頷いた。
「それは我々がこれから行う作戦にも影響している。キールは、自分の拠点が攻められる事を恐れているのだ」
キールのアジトはゼーレ本社ではない。
世界各地にキールは隠しアジトを持っているのだ。
「ネルフ本部を守り抜くだけでは不十分だ。我々はこの機にキールを討たなければならない!」
ゲンドウがそう言うと、ネルフのスタッフたちから歓声が上がった。
「しかしどうやってキールの居場所を突き止めるのですか?」
「使徒レーダー。ATフィールドを発していない使徒でも座標が分かるの。捜索範囲は地球全体まで広げられる。私の新発明品よ」
ミサトの質問にリツコが堂々と答えた。
リツコは使徒レーダーを操作して世界中で使徒の反応を捜索した。
「レーダーによれば、キールは『生命の樹』がある南極に居るようです」
「予想できそうな場所ね。レーダーなんか必要なかったんじゃないの?」
アスカが呆れた顔でため息を吐き出した。
「リツコ君、よくやってくれた!」
ゲンドウに褒められたリツコの顔がぱあっと明るくなる。
「アタシのツッコミは無視なの!?」
叫ぶアスカの肩に、シンジが優しく手を置いた。
「ですがどうやってキールの居る南極へ向かうのですか?」
「セントラルドグマとは別の場所、ネルフのターミナルドグマに『NHG計画』で作られた戦艦零号艦ヴーセがある」
「碇、いつの間にそのような物を!?」
ミサトの質問に対して答えたゲンドウの言葉を聞いて、コウゾウは驚きの声を上げた。
「冬月先生はネルフの司令となった時にキールによって記憶を書き換えられてお忘れでしょうが、廃棄となった戦艦がターミナルドグマに放置されていました」
ゲンドウの説明を聞いたリツコが眉をひそめる。
「ですが放置されていた戦艦が、直ぐに動かせるものでしょうか?」
「それは心配ないわ、リッちゃん。整備は済んでいるわ」
突然司令室のモニターに映し出された母親のナオコの姿に、リツコは驚きの声を上げた。
母親はMAGIの完成した日に飛び降り自殺をしたと聞かされていた。
「君には済まない事をした。敵を欺くにはまず味方から、キールの能力を知っていた我々は、決起の日に備えて信頼のおけるネルフのスタッフにターミナルドグマで潜伏生活をさせていたのだ」
ゲンドウがそう言うと、零号艦ヴーセのクルー達がモニターに映し出された。
高雄コウジ・長良スミレ・多摩ヒデキ・北上ミドリ・天城ヒトミと言ったブリッジ要因の他に、赤い眼鏡を掛けたシンジたちと同じ高校生くらいの少女がグイっとモニターの前面に出た。
「どうも初めまして、こにゃにゃちわ。あたしは真希波・マリ・イラストリアス。君たちと同じ適格者だよ。いやあ、出番が無いかと思ってお姉さん、焦っちゃったよ。あっ、ちなみにネルフではミサトさんの次におっぱいが大きいんでヨロシク。待っているよ、ワンコ君」
マリの姿を見て、アスカとレイは警戒心を剥き出しにした。
胸の大きい女をシンジに近づけさせてはいけない。
「私はネルフ本部に残って、時間稼ぎをすればいいのかね?」
「はい、敵はMAGIをなるべく無傷で手に入れるために加減はしてくるでしょう。冬月先生、後は頼みます」
「ああ、ユイ君の事は任せてくれ」
キールはMAGI接収のため、ネルフ本部にもいくらか使徒を差し向けて来る可能性がある。
ゲンドウはネルフ本部の守りを、ユイとレイとコウゾウとリツコ、発令所を使い慣れているマコト、マヤ、シゲルたちに任せた。
「それでは南極に侵攻するメンバーはターミナルドグマへ向かう」
ゲンドウの号令で、シンジとアスカ、ミサトはターミナルドグマに通じるエレベータへ乗り込んだ。
シンジたちがターミナルドグマに到着すると、零号艦ヴーセはカタパルトの上に載せられ、発進準備は整っていた。
鳥のような姿をした戦艦の形に、シンジたちはしばらく見とれてしまった。
「葛城君にこの船の艦長を命じる」
「えっ!? 私がですか!?」
上官命令とあっては逆らえない、ここに葛城艦長が誕生した。
「よっ、葛城艦長。最初の命令は何だい?」
「加持君、あなたね……」
姿を消していたリョウジが現れて、ミサトはあきれた顔を装いながらも安堵の息を漏らした。
「これより、本艦の名前を『AAAヴンダー』に変更します!」
「艦長になって最初の命令が船名変更とはね」
ミサトのネーミングにしては合格点だと、リョウジは笑みをこぼした。
『ヴーセ』はドイツ語で贖罪と言う意味だが、ミサトは気に入らなかった。
戦艦の運用法を考えたミサトは『自律型強襲揚陸艦・Wunder(ドイツ語で奇跡)』と名付けたのだ。
「目的地、南極爆心地・カルヴァリーベース! AAAヴンダー、錨を上げろ!」
葛城艦長の号令により、地上へのハッチが開いた。
「ところで、この船はどうやって動くんですか?」
「ふっふっふ、それはお姉さんが教えてあげよう」
マリはシンジの腕を取ると、自分の胸の間に挟み込んだ。
アスカが厳しい表情でマリを睨みつける。
「この戦艦の船底にはね、『ヱヴァンゲリヲン初号機』と言う巨大人造人間が取り付けてあるんだ。初号機に適格者が乗り込んで、そのATフィールドを推進力にして進むんだよ、分かった?」
「はい、分かりました」
分からなかったと言うとさらにしつこく説明されそうなので、シンジは適当にそう答えた。
「じゃあ、あたしがワンコ君たちを南極まで運んであげるから、大船に乗った気持ちでね!」
マリはシンジの頬に軽くキスをすると、手を振って船底のヱヴァへと続く通路に走り去って行った。
アスカも割って入れないほどの早業だった。
「涼波コトネです。よろしくお願いします、先輩!」
シンジとアスカはAAAヴンダーで適格者のコトネとも対面した。
マナの様に元気なツインテールの彼女は、シンジたちの後輩に当たる中学三年生。
コトネが感激してシンジの手を握ると、アスカはムッとした顔になった。
ヱヴァンゲリヲン初号機にマリが乗り込み、AAAヴンダーのエンジンに火が着くと、あっという間にオーストラリア上空に到着した。
「敵性飛行物体を確認、ネーメジスシリーズ『44A』です!」
ブリッジオペレータのミドリがそう告げた。
『44A』は主にアメリカによって大量生産された、小型の飛行型エヴァである。
ATフィールドを持ち、爆弾によりAAAヴンダーに攻撃を仕掛けて来た。
「さすが物量作戦の国、アメリカね。でもね、M4シャーマンがいくら束になっても、ティーガーには勝てないのよ!」
ミサトの言う通り、44Aの爆弾は、AAAヴンダーのATフィールドを破れなかった。
「邪魔な敵機を殲滅して、進路を切り開く。陽電子破城砲、撃てーーっ!」
使徒も打ち抜けると戦略自衛隊が自慢していた陽電子ビームは、44の貧弱なATフィールドを打ち破って破壊した。
エヴァはアメリカ軍が人工的に作った使徒、その最弱のユニットでAAAヴンダーを止められると思っているのか。
いや、これはキールの挑発だとミサトは思った。
「エヴァンゲリオンMark.06、エヴァンゲリオンMark.09、ATフィールドを中和して本艦の甲板に着陸しました」
ブリッジオペレータのヒトミがそう報告した。
ATフィールドを扱えるようにした戦闘用人造人間。
それがエヴァンゲリオンだった。
「アスカ、行こう!」
「待てシンジ、ここは惣流君と涼波君に任せるのだ」
迎撃に出ようとするシンジを、ゲンドウが引き留めた。
「俺とシンジはキールの本拠地、カルヴァリーベースで戦うまで力を温存する。あのような雑魚の相手は二人で十分だ」
エヴァンゲリオンMark.06とエヴァンゲリオンMark.09、アスカとコトネがシンジたちがモニターで見守る前でAAAヴンダーの甲板にて格闘戦となった。
戦闘経験が少しアスカに劣るコトネ。
大振りの攻撃はエヴァMark.06に交わされてしまう。
アスカはエヴァMark.09と互角の戦いを繰り広げていたが、コトネを助けるほどの余裕は無い。
「スミレちゃん、しばらくの間、ヴンダーの制御をお願い」
「葛城艦長!?」
ミサトは操舵手のスミレに任せると、甲板へと出て行ってしまった。
エヴァンゲリオンMark.06はコトネの攻撃を交わすと、隙を突いて襲い掛かろうとした。
そのエヴァMark.06の足をミサトの投げた布製メジャーが絡めとった。
前のめりに転倒したエヴァMark.06の首の骨に、コトネはATフィールドの力を込めたパンチをお見舞いした。
「ごめんね!」
首の骨が砕かれて生きていられる生物は居ない。
エヴァMark.06は完全に沈黙した。
そしてミサトはエヴァMark.09と戦い続けているアスカに声を掛ける。
「アスカ、胴体に攻撃を食らわせ続けても効果は薄いわ。頭を狙って!」
「了解!」
アスカは攻撃をパンチやキックから切り替えて、間合いを離すと、エヴァMark.09の後頭部に跳び蹴りを食らわせた。
エヴァMark.09の動きは格段に遅くなり、アスカもエヴァMark.09の首の骨を砕いて止めを刺した。
「いいかシンジ、使徒ウイルス感染者はATフィールドとコアを持つ強力な存在だが、ゾンビではない。無理に心臓を狙おうとしなくても良い。アメリカのラーソンシティでは使徒の弱点が首であるという情報が無かったため、胴体を狙った警官隊は無駄に弾薬を消耗し、使徒に敗北してしまう事になった。分かったな」
目の前でアスカとコトネが人工使徒であるエヴァを倒す場面を見て、シンジはゲンドウの言葉を理解した。
これからは急所を外して使徒の命を救うと言う甘い事を言ってはいられないのだ。
ネルフ本部に居るレイ、コウゾウ、リツコ、そして母親のユイやマヤたちオペレータの身を案じながらも、シンジは覚悟を決めるのだった。
バトルパートが壮大になってしまったので、最終回は伸ばします、ごめんなさい。
次回「今、別れの時」でサービスさせて頂きます。
絶望的な状況でも、最終的にはミサシンになります。
シンジとミサトの関係について
-
R15(?)の現状でいい
-
姉弟の関係に徹するべきだ
-
アスカやリツコとの三角関係が来い!
-
より激しく!もっと激しく!さらに激しく!