ミサトはシンジの大好きなお姉さん ~碇シンジ養育計画~   作:朝陽晴空

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今、別れの時

 シンジやゲンドウ達を送り出したネルフ本部にも、戦略自衛隊を中心とした侵攻部隊が迫っていた。

 ネルフ本社は出入口全てにシャッターが降ろされ、外敵の侵入を拒む意思が見えた。

 

「総員、攻撃開始!」

 

 戦略自衛隊の戦車の砲塔や戦闘機の爆弾がネルフ本社に降り注ぐ。

 しかしネルフ本社はATフィールドのバリアーに覆われており、CS放送受信アンテナ一本折れなかった。

 

「こうなれば、ネルフの電気系統を断ちますか?」

「あれを見ろ!」

 

 戦略自衛隊の隊長はネルフの屋根に設置された太陽光パネルと、風車を指差した。

 以前にネルフを一度停電させてしまったのは失策だった。

 ネルフは送電線を切断されても平気なように自家発電設備を整えていた。

 場合によっては地下で水力発電をしているかもしれない。

 

「巨大な遮光物を広げたら、洗濯物が乾かなくなると第三新東京市の市民の皆さんから苦情が来るだろう。断水も同様だ。そのような手を使わなければネルフを倒せないのかと、内閣の支持率が下がると総理大臣は心配している」

「キール会長が応援演説をすれば支持率は回復するのでは?」

「そのキール会長と連絡が取れないらしい」

「ならば別の作戦をとるしかありませんね」

 

 戦略自衛隊の隊長は、同行した使徒たちにネルフ本社を覆うATフィールドを破らせる指示を出した。

 使徒たちはATフィールドに穴を開けて、戦略自衛隊の部隊が通れるほどの隙間を作った。

 

「よし、全軍突撃!」

 

 戦略自衛隊の戦車隊は喜び勇んでネルフ本社の正面玄関へと向かった。

 しかし正面玄関前の地面には落とし穴が掘られていたのだった。

 使徒アンノと呼ばれていた頃のゲンドウが特殊装甲板を何十枚もぶち破って掘り進んだセントラルドグマまで届く深い深い縦穴だ。

 前進ばかりに気を取られれていた戦車隊は後退する事が出来なかった。

 

「おい、お前ら、押すんじゃない!」

 

 戦いの喧騒に遮られて戦車部隊隊長の声は後ろに届かず、地上戦車部隊はほぼ壊滅した。

 

「航空幕僚長! 機体の制御装置も次々と不具合を起こしています、コントロール不能です!」

 

 戦略自衛隊の航空部隊も編隊を崩していた。

 5G以上の電波が放出されると航空機の航行に悪影響を及ぼすとニュースになった記憶は新しい。

 ネルフ本社からは8G規格を超える電波が放出され、戦闘機同士が衝突する事故が多発していた。

 

「ネルフには赤木リツコと言うマッドサイエンティストが居るとは聞かされていたが、予想外だな」

 

 ヘリコプターによる降下作戦もATフィールドのバリアーに遮られて出来ない。

 ネルフ一社を攻撃するためにNN爆弾を使えばアメリカ大統領の様に数日で内閣総辞職だ。

 適当な事を言って誤魔化してくれるキール会長も居ない。

 しかし戦略自衛隊は世界ではアメリカ軍の次に強いと高いプライドを持っている。

 こんな序盤戦で白旗を上げるわけには行かなかった。

 

「歩兵師団によるネルフ本社の直接占拠を行う」

 

 陸軍幕僚長によって、武装した歩兵部隊がネルフ本社前に集結する。

 その中には使徒も混じっている。

 これからが双方にとって本番だ。

 お互いに血を流す事になるのはほぼ確実である。

 歩兵部隊の一部は壁伝いに昇って司令室に奇襲をかける作戦に出ようとした。

 しかしそこでも使徒マトイ戦でのネルフの教訓が生きた。

 リツコは本部の壁に良く滑るオイルを塗って、貼り付けないよう対策していたのだ。

 こうなれば戦略自衛隊の部隊は1階から侵入するしかない。

 地下深くのセントラルドグマに落ちた舞台を救助する時間はなかった。

 強固な特殊装甲板で作られたネルフの正面ゲートも、歩兵師団のRPG-7によって破られた。

 ネルフ本社の入口は不気味なほど静まり返っていた。

 どうせ一般企業の区画だ、大した妨害も無いだろうと陸軍幕僚長に率いられた戦略自衛隊の歩兵師団が進むと、足元にワイヤートラップなど、時間稼ぎの罠が仕掛けられていた。

 そこで使徒たちを先頭に進軍する事となった。

 使徒たちがトラップを破壊してしまえば、部隊は安全に進むことが出来る。

 しかしこれもコウゾウの作戦通りだった。

 使徒たちは鬨の声を上げて、ネルフ本部に通じる直通エレベータに乗り込んだ。

 ネルフ本社の天井をぶち破ってネルフ本部へ侵入する方法もあるが、侵攻の目的はMAGIの占拠もある。

 MAGIを破壊してしまうような手荒な方法は使えなかった。

 

 

 

「ふっふっふ、これだけの人数が居れば相手にどれだけ使徒が居ても恐れるに足りず」

 

 使徒アインスは、エレベータの中で敵をのんでかかっていた。彼の他にも、ツヴァイ、ドライ、フィーア、フュンフ、ゼクス、ズィーベン、アハト、ノイン、ツェーン、エルフ、ツヴェルフの12人の使徒がネルフ本部侵攻部隊に投入されている。

 

「お前たち親娘二人だけで、俺たちを止めるつもりか?」

 

 MAGIのある発令所で使徒12人を待ち受けていたのは、ユイとレイだった。

 ゲンドウの意向でユイに似せられて造られたレイは、ユイの娘の様にも見えた。

 使徒であるアインスには、ユイとレイのATフィールドを感じ取る事が出来たのだ。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

 ユイが大きく息を吸い込むと、使徒アインスの身体が白い霧のように変化し、ユイの口へと吸いこまれた。使徒アインスは自分に何が起こったのか理解できないまま、ユイの体内へと封印された。

 他の五人の使徒も、同様にユイへと吸い込まれ、ユイのお腹は妊婦の様に膨れ上がった。

 ユイも六人の使徒を封じ込めるのが限界の様子だった。

 

「ユイ博士、後は私が引き受けます」

 

 ユイは陣痛に苦しむような表情を浮かべて、マヤとリツコに支えられて後ろの席へとさがった。

 ロンギヌスの槍の槍でユイを突き刺せば、封印の確実性は増すのだろうが、今回は時間稼ぎが目的だった。

 マヤは脂汗を流して耐えるユイの額をタオルで拭った。

 リツコは夫のゲンドウの為にここまで尽くせるユイには勝てないと思った。

 

「やっぱり、シンジ君をモノにするしかないのね……」

 

 こんなひっ迫した状況であるのに、リツコはそんな事を考えてしまった。

 発令所の司令席で戦況を見ていたコウゾウは、自分の無力さに憤りを感じていた。

 敵の使徒の数は半分の六体となったとは言え、レイ一人ではまともに戦えないだろう。

 こんな時に自分に適格者の力があればと悔やむコウゾウに、突然力が目覚めたのを感じた!

 

「うぉぉぉぉぉっ!」

 

 コウゾウが使徒たちに向かって両手を伸ばした。

 

「何だ、あの爺さんは気が狂ったのか?」

 

 使徒ノインが司令席に居るコウゾウの方を見上げた時、コウゾウの両手から青白い光線が降り注いだ!

 残っていた使徒六人は白い煙のような形になり、光の渦へと巻きこまれた。

 

「日向君、炊飯ジャーの蓋を開けるんだ!」

 

 コウゾウに言われたマコトは、ネルフ本部に籠城する事になった時に、おむすび用のご飯を炊いた、空になった炊飯ジャーの蓋を開けた。

 炊飯ジャーに六体の使徒たちは吸い込まれ、マコトはしっかりと蓋を閉じた。

 

「凄いですね、冬月司令!」

 

 顔を紅潮させたシゲルが興奮してコウゾウに向かってそう叫ぶが、コウゾウはシゲルの方を向かず、視線は虚空を見つめていた。

 

「碇、私に出来るのはここまでのようだ」

 

 コウゾウはそう呟くと、司令席へと体を埋めて動かなくなった。

 遅れてエレベータからやって来た戦略自衛隊の歩兵部隊は使徒たちの姿が一人残らず消えている事に困惑していた。

 

「次は、私が頑張る番」

 

 レイはそう言って、ATフィールドを展開し、敵へと向かって行った。

 リツコもユイの奮闘に負けまいと、対人トラップを発動させる。

 こうなれば、南極に居るゲンドウ達が帰って来る所を守るために、戦い抜くのみだ。

 

 

 

 ゲンドウやシンジ、ミサトやアスカたちを乗せたAAAヴンダーは、オーストラリアを抜け、南極上空へと迫っていた。

 追撃して来るエヴァ44Aは機銃で適当に撃破している。

 目的地のカルヴァリーベースが見えてくると、AAAヴンダーと同型の戦艦3隻に包囲されてしまった。

 

「葛城艦長、いかがいたしますか!?」

「本艦の目的はカルヴァリーベースへの突入です、現状の針路を維持するように!」

 

 操舵手のスミレの言葉にミサトはそう答えた。

 それはすなわち敵の戦艦3隻の集中砲火を受ける事になってしまう。

 3隻の戦艦はAAAヴンダーと同じく船底に大型のヱヴァンゲリヲンが生贄のように括りつけられていた。

 AAAヴンダーが射程圏内に入ると、砲塔やレールガンなどで火力攻撃を仕掛けて来た。

 初号機に乗っているマリが展開しているAAAヴンダーを覆うATフィールドを突き破り、AAAヴンダーは被弾した。

 

「葛城艦長、強行突破は無茶です!」

「カルヴァリーベースまで持てばそれで良い!」

 

 ミサトが勝負を急いだのは、ネルフ本部の様子も気にかかるからだ。

 一刻も早くキールの『洗脳』を解かなければ、ネルフ本部にどんな激しい猛攻が加えられるか心を砕いていた。

 戦略自衛隊侵攻の第一波を乗り越えたとしても、彼らは増援部隊を日本中、いや世界中から呼ぶことが出来るのだ。

 それを考えると、キールを逃がしてしまう訳にもいかない、一刻も早く決着を着けたい。

 カルヴァリーベースの滑走路が見えて来た。

 敵も戦艦が着陸する場所はこの場所しかないと予想が付いているので、激しい迎撃を受けるだろう。

 それでも着陸を強行するしかなかった。

 陽動などかく乱など言っていられない。

 

「全員、当艦から下船。キールの居る『生命の樹を』目指します」

 

 ATフィールドを持つゲンドウとシンジが先頭になって戦艦を出る。

 カルヴァリーベースを防衛するSOCOMやSASの兵士を蹴散らすその姿は、『親子竜』とAAAヴンダーのクルーたちに称賛された。

 

「真希波大尉は?」

 

 自分が一番最後に下船したと思ったミサトは、マリの姿が見当たらない事に気が付いて疑問の声を上げた。

 まさか、まだ初号機の中に乗り込んだままなのか。

 

「空を飛んでいる三匹の鳥さんは、あたしが引き付けておいてあげるにゃ」

「マリちゃん一人では無茶よ!」

「大丈夫だって、外も中身も作り物のヤツラなんかに、あたしは負けないって」

 

 マリはミサトの言葉にそう答えると、AAAヴンダーを離陸させて飛び立って行ってしまった。

 

「ミサトさん……」

「行きましょう、シンジ君。彼女の行動を無駄にしないためにも」

 

 シンジに声を掛けられたミサトは顔を上げて直ぐに気持ちを切り替えた。

 一刻一秒の遅れが、この作戦に悪影響を及ぼすのだ。

 

 

 

 カルヴァリーベースの中は迷路のようになっており、決められたルートを進まないと通路が壁に塞がれるなどのトラップが仕掛けられているようだ。

 ピッタリとミサトの側を離れなかったシンジは分断されてミサトと二人きりになってしまった。

 キールは基地の至る所に兵士を配置して居るらしく、SOCOMやSAS相手ではミサトとシンジは何度も苦境に立たされた。

 エヴァMark〇〇シリーズとも遭遇し、ミサトが敵の動きを止めてシンジが止めを刺す、連携攻撃のような事もあった。

 

「こうして二人だけで戦っていると、使徒ヒルダと戦っていた頃を思い出すわね」

「あの時より僕、強くなりました? ミサトさんの足手まといになっていませんか?」

「シンちゃんはたくましくなったわよ。背もこんなに伸びたし」

 

 ミサトはそう言って、シンジの頭を寄せて軽くキスをした。

 高校三年生になったシンジの身長はいつの間にかミサトを追い越していた。

 

「キスよ。帰ったら大人の続きをしましょう」

 

 そう言ってミサトは、シンジの手を自分の胸へと押し当てた。

 どんなやり方でも、シンジが生き残るためにやる気を出してくれればそれで良い。

 そんな気持ちからの言葉だった。

 今の所側に敵の気配が無いとはいえ、ここで大人の行為をするわけには行かない。

 ネルフ本部でさえ道に迷ってしまったミサトである。

 他のメンバーとはぐれてしまったのは大きなタイムロスとなった。

 しかしゲンドウたちと再び合流できたのは幸運だった。

 

「この先が『生命の樹』がある『エデンの園』だ。多分キールはそこで俺たちを待ち構えているだろう」

 

 ゲンドウの言葉にシンジやアスカ、AAAヴンダーのクルーたちは緊張感を漂わせた。

 そして鍵のかかったゲートがゲンドウとシンジのダブルATフィールドによって穴を開けられると、キールと、生命の樹、そして腕が四本あるエヴァンゲリオンの姿があった。

 

「碇ゲンドウ。やはり貴様は処刑しておくべきだったな」

「生かしておいて、記憶を書き換えて利用しようとしたのが裏目に出たな、キール」

 

 生命の樹の近くに立つキールの言葉に、ゲンドウはそう答えた。

 

「自分の不始末は自分で着ける。この最高傑作、エヴァンゲリオンMark13で親子共々、息の根を止めてやろう」

「使徒は全てネルフ本部へと行かせたか。他人を信用できないお前らしいな。お前は使徒の反乱を恐れている」

 

 図星を突かれたキールは怒りをあらわにして、エヴァMark13をシンジとゲンドウに向かわせた。

 エヴァMark13は使徒殺しと呼ばれるロンギヌスの槍を四本の腕に四本持っていた。

 

「アタシの事も忘れんじゃないわよ!」

「あたしも頑張ります!」

 

 アスカとコトネもサポートとして戦闘に加わる。

 しかし四本のロンギヌスの槍を振り回すエヴァMark13には近づく事すら出来ず、次第に追い詰められていく。

 ロンギヌスの槍はATフィールドを貫いてダメージを与えるだけではなく、ATフィールドを持たない人間が食らえば、紙切れのように胴体が真っ二つに切断されてしまうのだ。

 AAAヴンダーのクルーたちを助けるためにも、シンジは考えを巡らせた。

 

「止めてよ、カヲル君!」

 

 シンジがそう叫ぶと、エヴァMark13は動きを止めた。

 

「どうした、エヴァMark13! 敵を殲滅しろ!」

 

 キールが怒声を発するが、エヴァMark13は動かなかった。

 

『また会えて良かった。さようなら、シンジ君』

 

 エヴァMark13は自分の身体へと四本のロンギヌスの槍を突き刺した。

 これではエヴァMark13が生きている可能性はない。

 

「シンジ君、どうしてエヴァMark13を動かしているのが渚カヲル君だと分ったの?」

「綾波みたいにエヴァが人工的に造られた使徒ならば、誰かの心が元になっているんじゃないかと思ったんです。加持さんから聞いた話から、カヲル君が『おじさん』と呼んでいたのはキールだと思ったんです。それならキールはカヲル君をベースにしてエヴァを造ったんじゃないのかと思ったんです」

 

 ミサトに尋ねられたシンジがそう答えると、AAAヴンダーのクルーたちから感心した声があがった。

 

「これでアンタをバカシンジと呼べなくなったわね」

 

 アスカにそう言われると、シンジは照れくさそうな顔になった。

 

「あっ、キールが逃げますよ!」

 

 コトネが指摘すると、キールは非常用の出口から逃げようとしていた。

 

「おっと、そうは問屋が卸しませんぜ」

 

 キールの進路を塞ぐように現れたのは、リョウジだった。

 リョウジはカルヴァリーベースに先行して潜り込み、スパイ活動をしていたのだ。

 

「くっくっく、ワシの能力を忘れたかね」

 

 キールはそう言うと、バイザーの奥からリョウジを睨みつけた。

 

「俺の記憶を書き換えたところで、ぐああああっ!」

 

 リョウジがそう叫ぶと、左肩が渚カヲルの時のように異形化した。

 

「君に恐怖の記憶を植え付けさせてもらったよ。やっても居ない弟殺しの記憶の味はどうだ?」

 

 キールはそう言って口を歪ませた。

 リョウジはアスカとアメリカのラーソンシティに行った時に【Fearウイルス】に感染した。

 それは完全に体内から消滅したとリョウジは思っていたが、ウイルスの陰性反応はウイルスが零になった事を示しても、ゼロだと確定した訳ではない。

 その事を悟ったアスカは身震いした。

 

「葛城、俺が完全に使徒化する前に、俺を撃ち殺せ。まだ、生命の樹を殲滅させる任務が残っているんだろう?」

 

 リョウジにそう言われたミサトは涙を流しながら素早くリョウジの頭を撃った。

 

「信じられぬ、他人の為に自分の命を捨てるとは……」

「あんたには理解できないでしょうね」

 

 ミサトは涙をすすりながらキールにそう言い放った。

 

「よし、『生命の樹』を破壊するぞ」

「うん、父さん!」

 

 使徒化ウイルスの源なった生命の樹。

 ウイルスが人類全体に広まって変異してしまった今、完全に消滅する事は無いが、キールのように利用しようとする者は居なくなるだろう。

 

「シンジ、ATフィールドの力をもっと上げろ!」

「これが限界だよ、父さん!」

 

 アスカとコトネも加わって、生命の樹に向かってATフィールド攻撃を加えるが、生命の樹を完全に枯らすことは出来ない。

 

「くそっ、後一歩なのに……!」

 

 その時、シンジたちの居るエデンの園の天井がビームによって焼き払われ、大きな穴が開いた。

 

「ワンコ君達、急いでカルヴァリーベースから出て! あたしに生命の樹を燃やしちゃう、良い考えがあるんだ!」

 

 マリがどんな手を使うか見当も付かなかったが、シンジたちはキールの残した非常脱出通路を使ってカルヴァリーベースから脱出した。

 するとマリはAAAヴンダーを急速に生命の樹へと突撃させた。

 

「まさか、自爆する気!?」

 

 ミサトたちの見ている前で、AAAヴンダーは生命の樹に当たるすれすれの地点で急上昇した。

 しかしAAAヴンダーを追いかけていた敵の戦艦3隻は次々と生命の樹にぶつかり大爆発を起こす。

 そして、3隻の戦艦が炎上した爆心地にはクレーターのような窪みができ、生命の樹が根っこまで消失した事を示していた。

 

「AAAヴンダーが爆発しちゃったら、あたしたち、南極から帰れなくなっちゃうじゃん」

 

 陽気なマリの言葉にAAAヴンダークルーから笑い声が上がる。

 シンジたちがカルヴァリーベースに居る間、戦艦3隻と戦っていたマリ。

 彼女もこの戦いの功労者だ。

 

「うぐぐ……」

 

 ミサトとシンジは、ボロボロになりながらも生きているキールを発見して驚いた。

 ATフィールドを全開にして爆発に耐えたが、飛ばされてしまったのだろう。

 キールの胴体の部分はほとんどが機械になっていて、焼き焦げた服からは剥き出しになっていた。

 哀れな野心家の末路の姿に、シンジは同情さえ覚えるのだった。

 

「ミサトさん、どうしましょう?」

「このまま放って置いても壊れそうだけど……シンちゃんってば優しいのね」

 

 キールは法廷で裁かれるべきだあると判断したミサトとシンジは、キールを回収しようと近づいた。

 その時、キールの目がシンジへと向いた。

 

「碇シンジよ、この女は君の両親を自動車事故に見せかけて殺した。君がご両親の敵を取るんだ」

「いけない、シンジ君!」

 

 キールの言葉を聞いたシンジはミサトに強い力でつかみかかった。

 ミサトは機転を利かせて上半身の防寒具と服を脱いで一度はシンジの拘束から逃れる。

 しかし再びシンジに腕を掴まれ脱いだ防寒具の上へと押し倒されてしまった。

 プラグスーツ姿のシンジがミサトのうえに馬乗りになって、ミサトの首を両腕で締める。

 

「止めて……シンジ君」

 

 ミサトはシンジの両腕をつかんで抵抗する。

 シンジはもっと力を込めてミサトの首を絞められる位置へ移動しようと、腰を前進させた。

 すると柔らかい物に触れたと気が付いたシンジは記憶を取り戻した。

 

「ミサト……さん?」

「シンちゃん、気が付いてくれたのね?」

 

 シンジは自分がミサトの胸の上に乗っている事に気が付くと、あわてて飛び退いた。

 

「バカな……」

「キール会長、あなたが操れるのは脳の記憶だけ。体に染みついた感覚までは奪えないと言う事ですよ」

 

 キールは怒りに燃えたシンジによってサッカーボールのように蹴り飛ばされてしまった。

 恐らく完全に壊れてしまっただろう。

 しかしシンジを本気で怒らせるだけの事をした当然の報いだ。

 キールが死んだ事を伝えると、ゲンドウは少し悲し気な表情をした。

 ウイルスには人類にとって有用な物もある。

 キールも最初は純粋に人類の役に立てようと『人類補完計画』を提案していたが、研究を続けて行くうちに野心に染まってしまった。

 

 

 

 こうしてキールの野望が打ち砕かれた後も、特務機関ネルフの戦いは続く。

 使徒化ウイルスは完全に死滅した訳ではなく、誰が発症するか分からない。

 中にはネルフの職員アサヒが感染した「間抜けウイルス」のように、「ま」だけが話せなくなると言った、本人が赤ちゃんパブに行けなくなって困ると嘆いていたレベルのくだらないウイルスもあった。

 シンジとアスカは高校卒業が近づくにつれて適格者の力が弱まり、大学進学と同時にネルフから離職する事が決定した。

 ミサトが一番心配していたのは、アスカに潜む【Fearウイルス】の事だった。

 適格者と言う免疫力が無くなった今、少しの恐怖心でも発症してしまうかもしれない。

 近くで見守ってあげる人間が必要だ。

 

「えっ、僕がアスカと同居するんですか?」

「そう、その方がアスカも安心するでしょう? シンジ君はアスカの気持ち……分かっているだろうし」

 

 ミサトの言葉にシンジは頷いた。

 アスカを支えてくれそうなリョウジも今は居ない。

 いや、同居を続けたり適格者として一緒に戦う間に、アスカの心はリョウジから自分に向いている事は分かっていた。

 自分が学校でレイやマナと仲良くすると嫉妬する事も。

 

「さようなら、シンちゃん」

 

 ミサトは自分からシンジに別れを告げた。

 

「さようなら、大好きなミサトお姉ちゃん」

 

 シンジはそう言ってミサトの部屋から出て行った。

 

「さて、荷造りの準備を始めないとね」

 

 ゲンドウとユイはATフィールドの力を使いすぎた無理がたたって入院中だが、この部屋は碇夫妻の部屋になるのだ。

 元の碇夫妻の部屋は今はアスカが使っている。

 ゴミ捨て場に倒れていたアスカに部屋が無かったから、碇夫妻の部屋を使わせたのだ。

 だからこの部屋はミサトが碇夫妻に引き取られてから10年以上暮らした慣れ親しんだ部屋となる。

 

「今までお世話になりました」

 

 ミサトは部屋に向かって正座して礼儀正しく挨拶をする。

 

「シンちゃん、アスカとご両親と、新しい家族で楽しく暮らすのよ。たまには、元お姉ちゃんがご飯を作りに来てあげるからね」

 

 そう呟いたミサトの目からは涙がとめどなく流れるのだった。




名探偵シンジのお陰で最大のピンチは脱出できました。
このままだとバッドエンドなので、次回を最終回とさせて下さい。

シンジとミサトの関係について

  • R15(?)の現状でいい
  • 姉弟の関係に徹するべきだ
  • アスカやリツコとの三角関係が来い!
  • より激しく!もっと激しく!さらに激しく!
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