ミサトはシンジの大好きなお姉さん ~碇シンジ養育計画~   作:朝陽晴空

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制止した、暗闇の中で

「次の使徒は、蜘蛛男だと言うんですか?」

「正確には蜘蛛男ではない。『大蜘蛛纏(おおぐも・マトイ)』、彼女は壁に貼り付いて移動し、口からは蜘蛛の糸を吐き出す能力を持っている」

 

 コウゾウの司令室で、ミサトは指名手配された使徒についての説明を受けていた。

 マトイはタワーマンションの高層階の部屋に窓から侵入し、窃盗や蜘蛛の糸を使っての絞殺などを繰り返しているのだと言う。

 

「シンジ君とアスカ君は学校かね?」

「はい、しかし緊急呼び出しの連絡はしてあるので、直に来ると思います」

 

 コウゾウの問い掛けにミサトはそう答えた。

 レイがメンテナンス中の今、シンジとアスカに戦ってもらうしかない。

 

「……停電ですか?」

 

 司令室の照明が消えたのを見て、ミサトはそう呟いた。

 

「また赤木君が電力を使いすぎたな。心配いらん、直ぐにブレーカーが上げられるはずだ」

 

 コウゾウは落ち着いた様子でそう言った。

 

「おかしいですね、電源が落ちたままなんて」

「うむ、予備の電源も用意されているはずだ」

 

 これは事故ではない、人の手による事件だとミサトとコウゾウは察した。

 司令室のドアは防火自動ドアとなっていた。

 火災が起きた時に自動ドアが開いたままだと煙が中へと入って来てしまうからだ。

 さらに司令室では機密情報が話される事もあり、ドアも分厚くなっていた。

 停電でそれが裏目に出てしまった形だ。

 

「司令、こうなっては窓より出るしかありません」

「うむ、仕方が無いな」

 

 ミサトが司令室の窓を開けようとしているのを見て、コウゾウは何か重大な見落としをしていると感じた。

 

「いかん、葛城君、窓を開けるな!」

 

 コウゾウが止めるのは少し遅すぎた。

 ミサトが開けた窓の隙間から、先ほど議題に上がっていた使徒、マトイが司令室へと侵入して来たのだ。

 

 

 

 その頃、シンジとアスカはネルフのエレベータに閉じ込められていた。

 普通の停電ならエレベータは最寄りの階へと移動して停止するはず。

 しかし運の悪い事にこのエレベータは『特務機関ネルフ』へ直通する特別なエレベータだった。

 社員には社長室専用エレベータとして認識されている。

 

「大丈夫、直ぐに停電は復旧するはずだよ」

「リツコが人騒がせな実験をしたのかしら?」

 

 エレベータの中は真っ暗闇だったが、それもしばらくの辛抱だとシンジとアスカは気楽に構えていた。

 

「おかしいな……全然電気が戻る様子が無い」

 

 シンジはそう呟くと、アスカの様子がおかしい事に気が付いた。

 すすり泣くアスカの声と同時に、シンジは自分の手がアスカの涙で濡れた事に気が付いた。

 この前の温泉旅行でやったカードゲームでアスカは暗闇が怖いと言っていたが、これほどだとは思わなかった。

 

「シンジ、『施設』で大人の職員が何度注意しても言う事を聞かない子供にどんな罰を与えるか知ってる? 今みたいに真っ暗な部屋に独りで閉じ込めるの。眠ってしまえば問題無いと思うでしょう? だけど、本当の恐怖は目が覚めてからなのよ……」

 

 アスカはそう言うと、シンジにピタリと身体を寄せて抱き付いて来た。

 

「シンジがミサトの事を好きなのは百も承知。だけど今だけは……アタシに他人の存在を感じさせて。アタシの身体を離さないで……」

 

 いつもと違うしおらしいアスカの様子に、シンジはアスカにもこんなか弱い一面がある事を知った。

 シンジは自然とアスカを安心させるようにアスカの頭をそっと撫でた。

 アスカはとろんとした目付きになり、シンジにそっと囁いた。

 

「ねえシンジ、真っ暗だとその……変な気分になって来ない?」

 

 アスカはそう言うと、シンジに唇を近づけて来た。

 温泉旅行でやったカードゲームでアスカはキスが好きだと言っていた事をシンジは思い出した……。

 

 

 

 司令室へと侵入した使徒マトイの目的は、ネルフ総司令冬月コウゾウの命だろう。

 金銭目的の泥棒なら他にもマンションはたくさんある。

 大金で雇われてネルフ総司令の襲撃を命じられたのかもしれない。

 今ここで戦えるのは、適格者ではないミサト一人しか居ない。

 

「司令、危ない!」

 

 使徒マトイがコウゾウに向かって吐き出した蜘蛛の糸を、ミサトはリツコ特製の布製メジャーで食い止めた。

 このメジャーはプラグスーツと同じ材質で出来ているため、使徒ヒルダ戦の時と同じように引きちぎられたりはしない。

 しかし厄介だったのは、蜘蛛の糸はムチと違って粘着性があると言う事だった。

 使徒マトイは蜘蛛の糸を振り回し、メジャーを壁に貼り付けてしまった。

 

「邪魔をするな!」

 

 使徒マトイはミサトに向かって蜘蛛の糸を吐き出す。

 ミサトは転がって回避する事で直撃を避けたが、蛇の様にうねる蜘蛛の糸によって、両腕を胴体にグルグル巻きにされて地面へと貼り付けられてしまう。

 動けなくなったミサトを見て、今度こそ邪魔者は居なくなったとほくそ笑む使徒マトイ。

 しかし次の瞬間、ミサトの身体から爆発が起こり、ミサトの身体は地面から離れて跳び上がった。

 

「何が起こったの!?」

 

 驚く使徒マトイに向かって、ミサトは靴底の鉄板に電流が流れるリツコ特製のブーツでキックを食らわせた。

 衝撃を受けた使徒マトイは司令室の窓の隙間から宙へと放り出された。

 このまま地面に落下すれば無事では済まない。

 使徒マトイは口から蜘蛛の糸を吐き出して建物にくっ付け、バンジージャンプの要領で落下衝撃を和らげようとした。

 しかしその蜘蛛の糸も司令室の窓から飛び出したブーメランのようなものに切り裂かれてしまった。

 高層階の窓から落ちた使徒マトイは、虫の息で逮捕、拘束されたのだった……。

 

「葛城君、大丈夫かね!?」

「ええ、赤木博士に作って貰った追加の武器が役に立ってくれました……」

 

 コウゾウに抱き起されたミサトはそう答えた。

 新たな使徒との戦いに備えてミサトは、比較的時間の空いていたリツコに、メジャー以外の武器を作って貰うように頼んでいたのだ。

 敵を吹き飛ばすための小型爆弾で、自分の身体を吹き飛ばすのは大きな賭けだった。

 使徒の吐き出した蜘蛛の糸が強力な耐久性を持っていたら地面から剥がれる事はできない。

 また蜘蛛の糸の耐久度がそれほどでも無かったら、ミサトの身体が爆発でバラバラになっていた。

 紙一重のバランスでミサトは軽傷で済んだのだ。

 

「私も肝を冷やしたよ。老人の寿命を縮めるような事は謹んでくれたまえ」

「了解しました、司令殿」

 

 コウゾウに向かってミサトは笑顔でそう答えた。

 やがてネルフの停電は復旧し、シンジとアスカが司令室へとやって来た。

 

「ごめん、ミサト……」

 

 アスカはミサトに会うなり、エレベータの中でシンジにキスを迫った事を謝った。

 ミサトは事情を理解できたわけではないが、アスカに向かって笑い飛ばした。

 

「あたしだって、シンちゃんとキスした事あるわよ。ねっ」

「でもあれは……」

 

 片目を瞑って茶化すように言うミサトに、シンジは困惑した顔で答えた。

 シンジの両親が死んだ時、何も食べようともしないシンジに、ミサトが口移しで食べさせたのだった。

 

「えっ、アタシの初めてを奪っておきながら、アンタの方は経験済みだったの!?」

「だから、それは違うと言うか……」

 

 アスカとシンジのいつも通りのやり取りを見て、ミサトはフッと笑みを浮かべた。

 しかし喜んでばかりも居られない。

 ネルフの電気設備は厳重に守られている。

 ネルフが停電させられたと言う事は、ネルフの中にスパイが居る可能性があるのだ。

 身内を疑わなければならない事は、ミサトにとっても辛い事だった……。




タイトルが「使徒、侵入」となりそうな感じですが、使徒マトリエル戦に対応しています。

シンジとミサトの関係について

  • R15(?)の現状でいい
  • 姉弟の関係に徹するべきだ
  • アスカやリツコとの三角関係が来い!
  • より激しく!もっと激しく!さらに激しく!
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