ガンダム? そんなことよりスーパーロボットだ! 作:神咲胡桃
「――――作ってもらいたいものがある」
真剣な表情で話した僕に対し、ヒメは腕を組む。
「ふむ。続けてみたまえ」
「まず前提として、お前ガンプラって知ってるか?」
「そりゃあね。生きていればよく聞く単語だ。……まさかとは思うが、私にガンプラを作れと?」
「いや、違う。作ってほしいのはガンプラじゃないんだ」
「……ならなんだ」
眉を顰めるヒメに対し、僕は頭を下げる。
「お前は天才だ」
「そうだな。私は自他ともに認める天才だ。小学生ながら飛び級し、大抵の事なら出来ると自負してる」
「何を当然のことを」とでも言いたげに、俺の言葉に同意するこいつを、一切嫌な奴だとは思わない。
自慢するでもない、悦に浸るでもない、淡々とただそれが事実だと語るヒメは、やっぱりすごい奴なんだと思う。
僕だったら、絶対に自慢気になってしまうだろうし。
そんなヒメだからこそ、僕は……。
「だからお前に作ってもらいたいんだ。
「…………」
ヒメから返って来たのは、沈黙。
やはりダメだったかと悲しい気持ちになって、それがすごく失礼なことだと気づいた。
元々、身勝手な話なのだ。むしろこうなる方が当然だ。
だから僕は、頭を上げてヒメに一言謝ろうと口を開いて――
「良いぞ」
――頭の上から聞こえてきた言葉に、動きが止まった。
「……え?」
「だから、良いと言っているだろう」
「え、いや、ちょ、マジで?」
「ああ。最近は大学の講義ばかりで飽き飽きしていたところだ。馴染みの縁でもあるし、お前の案に乗ってやろう」
そう言ってほほ笑むヒメに、僕は嬉しさのあまり彼女の両手を掴んでお礼を言った。
「本当か!? ありがとう!」
「っ!? ……まあ、せいぜい感謝してくれ」
「ああ。感謝する。メッチャ感謝する!」
その後もしばらく、ひとしきり感謝の言葉を述べて僕はようやく落ち着き、より詳しく話をすることとなった。
「それで、なんでガンプラ以外のプラモデルを作るんだ?」
「そりゃぁ、ロマンがあるから」
「……聞くが、まさか全部私に投げやりというわけではないだろうな?」
「それはない! アイディアならいくらでもある!」
そうだ。前世から知っているロボットアニメのロボットたちは、今でも風化することなく、僕の記憶の奥底にあの頃の感動と興奮を伴って存在してる。
僕の本気度が伝わったのか、ヒメの表情が少しだけ真剣味を帯びる。
「さっきまでの話からして、お前がやりたいことというのは、ガンプラ以外のプラモデルでガンプラバトルをしたい。そういうことか?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ一つ聞くが。ガンプラバトルは、プラフスキー粒子によってガンプラを動かすゲーム。これで合っているな?」
「そうだな」
「なら、ガンプラ以外でもプラフスキー粒子で動くのか?」
「それは……よく分からんが、でも元はプラスチックだ。だったら動く……はず。それに、動かなくても作ることに意味があるしな!」
そうだ。極論動かせなくてもいい。あの前世の感動を、全てとはいかなくても味わいたいんだ。
しかし僕の前世のことなど一つも知らないヒメは、呆れたのかため息をつき、シッシッともう帰れというように手を振る。
「明日は休日だ。一先ず、お前の言う案を用意してこい。話はそれからだ」
「分かった! じゃあまた明日!」
「……ああ」
何はともあれ、これでようやく足がかりが出来た。
忙しくなるぞぉ!
そして翌日。
僕はデザイン案という名のノートを手に、再びヒメの元を訪れていた。
「入るぞ、ヒメ……ってなんだこれ!?」
ドアを開けて部屋の中に入ると、異様な光景が広がっていた。
本棚の前には大量の箱が積まれており、昨日まで参考書だとか気難しそうな本ばかりが目立っていた棚には、人型のプラスチックの人形が置かれている。
「これ……もしかしてガンプラか?」
「そうだ。昨日、お前が帰ってから買いに行った」
「俺が作ってほしいのはガンプラ以外のプラモデルなんだけど」
「分かってる。これは研究のためだよ。私は今までプラモデルに触ったことがないからな。手っ取り早くガンプラで試してみた」
話を聞きながら、棚に飾ってあるガンプラの一体を手に取る。
しかし僕もガンダムについては点で知らない。なんとなく眺めていると、積み重なっている箱の一つに、同じ絵が描かれているものを見つけた。
「ガンダム……キュリ、オス……。変形するのか、こいつ」
「ああ。とりあえず目についたものを買ってきたものでね。それで、昨日言っていたアイディアとやらは?」
「それなら、これだ」
ヒメに促されノートを渡す。
このノートは俺が前世の記憶を思い出してから、前世で見たロボットたちを忘れないために、そしていつか作るために書き残していたものだ。
もっとも、記憶というのは段々薄れていくもので、いくらロボットが好きな俺でも細部のデザインやいくつかの設定を忘れていたりするのだ。そこはまあ、どうにかしよう。
そんなノートをパラパラと見ていたヒメは、ノートから顔を上げる。
「ふむ。なかなか興味深いな。ガンプラとは違う、こういう意味か」
「だろう! これを
「(再現……?)しかし、作るのはいいがこれを形にするとなると……もう少し簡単なのはないのかい?」
「簡単……?」
僕が首を傾げると、ヒメはノートを突き付けてくる。
開かれているページには、主にマクロスフロンティアに登場してきたVF-25 メサイアが描かれている。
「言っておくが、いくら私が天才だからと言ってもいきなり何でもできるわけじゃない。このノートによれば、この戦闘機?は3段階に変形するらしいな? まずガンプラでもそこまで変形するものはなかなかない。フルスクラッチの経験があればなんとかなるが……」
「じゃあ、他のやつにするか?」
「……いや、もっと簡単なのはないか? 構造が簡単な奴」
……? なんでマクロスシリーズにこだわって……ははぁん?
「お前、魅了されたな?」
「……何の話だ?」
「いやなんでもない」
分かる。分かるぞぉ。マクロスの機体はハマるやつにはとことんハマる。マクロスだけがそうとは言わないが、僕はマクロスには一目ぼれした口だし。
「もっと簡単なのかぁ。簡単とは言わないが、こいつよりもと言うなら……こいつはどうだ?」
僕が開いたページに書かれているのは、ヒメが魅了されたVFー25 メサイアと同じくマクロスフロンティアに登場したVF-171 ナイトメアプラス。
作中に登場する新統合軍の主力可変戦闘機で、後の作品であるマクロスΔにも登場した。
性能で言えばVF-25の方が良いだろうが、軍の主力ということで多くのVF-171が奇麗に編隊を組んでいるのは、すごくかっこいい。
量産機のかっこよさは、やっぱりこういった徒党を組むところだと思う。
話を戻して
「こいつなら、どうにかならないかな?」
「ふむ……ナイトメアプラス、か」
「頭にVF-171をつけてね」
「随分と細かいところに口を出すな。まあいい。確かにこれくらいならどうにかなるだろうね」
え、マジで? ぶっちゃけこれでもきついかなぁとか思ってたんだけど。変形機構あるし。
「私は天才だ。これくらいなら、どうにかなるさ」
「まじかよ。おまえすげえな」
「それじゃ、出来るまでお前はこれを使え」
「え?」
ヒメから渡されたのは、さっき僕が手に取ったガンダムキュリオス。
「ガンプラバトルやったことないんだろう? 少し練習しておけ」
「気が乗らないんだけど……」
「良いから行け。出来上がったら連絡する」
そう言われ、僕は半ば追い出される形で部屋を後にするのだった。
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