ガンダム? そんなことよりスーパーロボットだ! 作:神咲胡桃
「はぁ……かったるい……」
帰ろうとした直後に、運悪く先生から野暮用を頼まれてしまい、帰るのが遅れてしまった。
一応、学校じゃそれなりに優等生として過ごしているため、断ることもできずに引き受けてしまったわけなんだけど……。
こういう時は、ヒメが羨ましい。小学校どころか大学だけど。しかもアメリカの。あ、やっぱいいですわ。
そんなこんなで先生からの頼みごとを終え、帰ろうと廊下を歩いているとふと、どこからか誰かの声が聞こえた。いや、これ声っていうか……。
「歌、か? ……こっちからか」
普段なら「わーすごいなー」で終わってるというのに、歌に惹かれたかのようにその場所を探していた。
「ここか……?」
やがてたどり着いたのは、音楽室。どうやら歌の主はこの中にいるようだ。
窓から中をそっと覗きこむ。
「―――、――――、――――」
夕日が差し込む音楽室には、一人の女子生徒が居た。
サラリと流れる長い黒髪。スラリとしたスタイル。そして何よりも、聞く者全てを虜にしそうな歌声。
触れてしまえば壊れてしまいそうなほど儚く、だけど聞いた途端に身体を揺さぶるほどの力強さ。
思わず鞄を、正確にはその中にある物に目を向ける。
あの人ならもしかしたら……。
僅かな期待を抱いていると、ふと中にいる女子生徒と目が合った。
やっべ。このままだと完全に怪しい人になる!
どう弁解するか慌てていると、意外なことに手招きされた。入ってこいと言うことか?
この場から逃げるわけにもいかないので、仕方なく音楽室に入る。
「……あら。窓から可愛い顔が覗いていると思ったら、あなた男なのね?」
「グフッ!」
開口一番、コンプレックスを抉られ、膝をつく。
そんな僕がおかしかったのか、目を丸くしていた女子生徒はクスクスと笑う。
やめてくれ、こんな俺を見ないでくれー!
「ごめんなさい。気にしてたのね」
「いえ、大丈夫です。いつもの事ですから」
「そうなのね。それで、あなたはどうして外から覗いていたのかしら?」
「その……とてもきれいな歌が聞こえたので、気になって」
「あら、ありがとう。ああ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私はヒイラギ ミクモ。あなたの一つ上ね」
「え? なんでそんなことが……」
「あなたの鞄から見える教科書、それ去年使っていたもの。懐かしいわね」
見れば、少しだけ開いていた口から教科書が見えていた。ちょっと恥ずかしいな。
「えっと、僕はアイゼン ハルトです。その、ヒイラギ先輩はいつもここで歌ってるんですか?」
「ミクモでいいわ。毎日というわけではないけれど、たまにね。歌うことは好きだから」
いつもは放課後になるとすぐ帰ってたから、気づかなかったわけか……。
それにしても、こうして話していると不思議な先輩である。なんというか、言葉にできない魅力というか、オーラを感じる。ミクモ先輩の周囲だけ、世界が違って見える。
「いつもは一人で歌うのだけど、観客がいるのもたまにはいいわね」
「……あ、あの!」
「あら? どうかしたの?」
「見てもらいたいものがあるんです……」
鞄からノートを取り出し、ミクモ先輩に差し出す。
それはヒメに渡しているロボットたちのアイディア帳ではなく、それとはまた別の事が書かれているもの。
「これは…………歌詞?」
パラパラとノートをめくるミクモ先輩の顔が、驚いたものに変わっていく。
そうだ。このノートに書かれているのは、歌の歌詞。
しかもただの歌詞じゃない。これは、前世で作られたロボットアニメの主題歌や劇中歌の歌詞である。
戦闘シーンや重要なシーンで流れ、ロボットアニメを盛り上げてきた歌の歌詞が、このノートには詰まっている。
さすがに全部というわけにはいかなかったが、覚えている分は全部書いたのでかなりの量がある。
「……いい歌詞ね。それで、私にこれを見せた理由は何かしら?」
「歌ってほしいんです。先輩に」
「あら、素敵な口説き文句ね」
「ふざけて言ってるわけじゃありません! 僕は先輩に……!」
「でもごめんなさい。あなたの願いは叶えられそうにないわね」
目を伏せて申し訳なさそうに言われる。
この結果は……当然だろう。渡したのは歌詞だけ。それに今日初めて会った人間のお願いを、ミクモ先輩が聞く理由はない。
「確かにこの歌詞は良いものだわ。でも……これはあなたが書いたものではないでしょう?」
「っ……!?」
何でそれを知って……!
「歌詞というのは、ただの言葉の羅列ではないの。聞かせたい人へ向けた愛の言葉。さっき、あなたに口説き文句と言ったけれど、それが歌詞であり歌よ。聞いた人全てを歌の虜にする力を持っている。歌が人を魅了するのはね、もちろん歌う人間もそうだけど、一番は歌詞に思いが籠っているから」
開いたノートを掲げ、それを眺めながらミクモ先輩は話を続ける。
「この歌詞からは思いを感じるわ。まるで何かを際立たせるかのように、引き立たせるように。とても好きよ。でも、あなたからはそれを感じない」
それもそうだ。アニメの主題歌は、アニメを意識した歌詞が入ってたりするものだ。
だけどその歌詞を作ったのは、僕じゃない。
「この歌詞をだれが作ったのかは興味ないわ。でも、今のあなたからこの歌を歌ってほしいと言っても、自己満足にしか聞こえないの。ごめんなさい。期待に沿えなくて」
そう言ってミクモ先輩は帰って行った。
僕は、しばらくその場から動けなかった。
戦闘シーンで主題歌流れるロボットアニメって、意外と少ない気がする。
マクロスのイメージが強いからかな?
もちろん、戦闘BGMも好きですよ?
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