ガンダム? そんなことよりスーパーロボットだ! 作:神咲胡桃
「ついに完成だ! 新たな機体……アーハン!」
興奮するヒメが、鼻息荒く叫ぶ。
作業机の上に立っているのは、ずんぐりむっくりとした丸みを帯びている一体のプラモデル。白い装甲で覆われてはいるものの、所々その内部のフレームが見える。
そんなこいつの名は『アーハン』。
『楽園追放 -Expelled from Paradise-』という劇場アニメに登場した機動外骨格スーツだ。
主人公のアンジェラ・バルザックと共に前半主人公機として登場するも、登場から僅かで売り払われ、さらには終盤で同型機が敵として登場するという、不遇な期待だ。
ただスーパーロボット大戦Tで初登場した際は、アンジェラの搭乗機として戦闘ムービーが拝める。最初は敵で出て来るけどな。
だけどそのアーハンを見ても、ヒメと違っていまいち気分が盛り上がらなかった。
「……どうした? ナイトメアプラスの時はあんなに騒いでいたじゃないか?」
「嬉しくないわけじゃないんだ。嬉しいんだけどさ……ごめん。これは俺の問題だから」
「ふむ……まあいい。さっそく試しに行くぞ」
「あ、ああ」
そんな訳でゲーセンに赴くと、久しぶりの顔を見かけた。
「ん……また会った」
「あの時の……」
そこに居たのは、ガンプラバトルを初めてした時の相手だった銀髪少女だった。
「久しぶり」
「ああ、久しぶりか。えっと」
「……レン」
「え?」
「コトノハ レン。レンの名前」
そう言えば、お互いの名前は知らなかったな。
「ああ! 僕はアイゼン ハルト。それでこっちは……」
「ハナウミ ヒメだ。よろしく頼むよ」
「ハルトとヒメ。覚えた。それで、二人はガンプラバトル?」
「ああ、そうだけど」
「それなら……」
レンがごそごそと腰のポーチから、一体のガンプラを取り出した。
「私とやろ? この子なら、あのガンプラにも負けない……!」
「ふむ。いいんじゃないか? 知らない人間よりはやりやすいし」
「そうだな。やろうか、レン」
「ん……!」
ちょうどGPベースが開いたので、僕たちは向かい合って準備を始める。ナイトメアプラスの時のバトルを見ていた人が居るのか、少しだけ騒がしくなる。
GPベースが起動し、プラフスキー粒子がプラモデルたちに命を吹き込む。
「……アーハン、出るぞ」
アーハンのブースターを吹かし、空へ飛び立つ。
「……荒野ステージか」
草木一つない地面に巨大な岩が転がっている。
地面に着陸すると、センサーが近づく反応をキャッチした。
反応が現れた方向を見ると、赤い光を散らしながら飛んでくる機体が見えた。
「……ブレイブ。また可変機か。好きだな」
ヒメがポツリとつぶやく。
そして相対するヒメは、困惑した様子を見せる。
『違うガンプラ……?』
「悪いが、今日はこいつだ。手加減無くやらせてもらう」
『少し不満だけど、勝つのはレン』
ガンプラバトルが始まった。
◇◇◇
「先手は貰う……!」
アーハンはブーストし、地面を滑るようにして粒子ビームをかわす。そのまま頭上を通り過ぎていったブレイヴを撃とうと、突撃用マシンガンを向ける。
しかし次の瞬間、アーハンの周辺の地面から次々と土が跳ねた。
「くそっ! 完全に背後を向けていたのに、一体何が……」
歯噛みしながらレバーを引くと、立ち込める土煙からアーハンが出て来る。
「腕部に収納されているGNビームマシンガンだろうねぇ。ブレイヴは後方迎撃が優秀だ」
「正解」
ハルトが上空を見上げると、そこにはブレイブが
「……このまま勝つ!」
「ちぃ!」
サイドバインダーからGNビームサーベルを取り出し、ブレイヴ勢いよく突貫する。
それに対しアーハンは左手に装着されているブレードを振り上げる。
二つの剣がぶつかり、火花が散りながら不快な音が響き渡る。
「なんて出力……!」
「ん……!」
しかし微かにアーハンが押されているようで、踏ん張っている両足が下がる。
その様子をヒメが険しい表情で見ていた。
「(あの程度の鍔迫り合いで押される? そんなはずはない。確かにアーハンはガンプラと比べても比較的小型だが、それでも出力的には負けていないはずだ)」
「ッ!? ブレードが!」
ヒメが考えている間に、状況が動いた。
アーハンのブレードが弾かれ、離れた地面に突き刺さる。その隙を逃さずブレイブが斬りかかるも、アーハンが咄嗟に下がったことで装甲を掠めるにとどまる。
しかしこれも、ヒメにとってはおかしなことだった。
「(やはりおかしい。あの程度の攻撃など簡単に躱せる。それだけの機動力がアーハンの特徴……やはりハルトに何かあるのか)」
このヒメの考察は間違っていなかった。
実際、ハルト自身もこの違和感を疑問に思っていた。
「なんだこれ……どうして……!」
「もらった」
「しまっ!?」
マシンガンで牽制したにも関わらず、易々とブレイヴの接近を許してしまい、構えていた右腕を切り飛ばされる。
そしてそのままGNビームサーベルを振り上げ、アーハンを一刀両断しようとした瞬間の事だった。
◇◇◇
「……え?」
「なに?」
「…………」
目の前で起きていることが、理解できなかった。
結果として、アーハンは斬り飛ばされた右腕以外は無傷だった。
そして、勝敗を伝えるモニターは僕が勝者であることを告げていた。
「なん、で……」
「ん。私が直前で降参したから」
目の前の疑問に答えを提示したのは、ブレイヴを回収したレンだった。
「どうしてそんなことを」
「だって、ハルトの動きが悪かったから。このブレイヴでリベンジがしたかったのに、そんなハルトに勝っても嬉しくない」
「ぁ……」
確かに、今回のガンプラバトルでのアーハンの動きは良くなかった。それはつまり、僕が集中しきれていなかったことを示している。
「何でなのかは聞かないけど。今のハルトとは、戦いたくないかな」
ぼんやりとしたレンの言葉が、重くのしかかる。
レンはリベンジをしたかったと言った。そのためのブレイヴで、だけど僕は集中できてなくて。
罪悪感が、心を蝕む。
「……来週、隣町のゲームセンターで行われるガンプラバトルの大会。レンは出るつもりでいる」
そこで再び戦おうと言うことなのだろうか。そんな資格が、僕にあるのだろうか。
「待ってる。じゃ」
結局その日はそれ以上ガンプラバトルをする気になれず、ヒメに手を引かれて帰った。