闇の精霊が幻想入り   作:ジャンヌ

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第三夜 人の皮を被った化け物:前編

−−−おはよーございまーす・・・おはよーございまーす・・・

 

どこか遠方から聞こえてくる少女の声で、俺は3、4時間の睡眠から覚醒した。

 

(・・・目、かいぃ・・・)

 

朝日も昇って間もなくのこと、普段だったら絶対に夢見うつつな時間だ。加えて遅すぎる就寝時間。慣れぬ戦闘(笑)。どうも疲れはそこまで回復しなかったようだ。

 

ヌボォーッ。とベッドに座り続け、ようやく開いた視界が、昨夜とかわらぬ惨状をキャッチした。

 

「やっぱり、夢じゃねーのか」

 

ボソリ、と寂しげに呟く。

日の光を浴びても、かつての自分の家は、廃墟と化していた。

宿の無い今、雨露凌げるだけいいのかもしれないが、なにせ現代日本の誇るパイプラインが軒並通っていないのだ。食料などの物資も調査する必要がある。全く、自分がここに住んでいたとは考えづらくなってしまった。

 

「ま、とりあえず動きますかっと」

 

この姿では特に服を着る必要はないし、着たいとも思わない。案外早く順応し始めている事実に苦笑しつつ、一階の台所へと向かう。

 

「さてと、使えそうな物は・・・」

 

冷蔵庫からは、大量の賞費期限切れの食品、何点かのレトルト、インスタント食品。

調理器具などは比較的良好な状態。皿は半数以上が割れて地面に散らばっている。

正直、ダークライで良かった。マルノームとかになってたら下部がメッチャ怪我してた。

とにかく、水もない以上、一日ももちそうにないことがわかった。重ね重ねいうが、ガスとか水道とか無しで、どうやってカップ麺を食えと?

 

 

 

お次は、リビング。

グッジャグジャ。割れたガラス。破けたカーペット。なにもなし。

 

次。洗面所。風呂場。

変わんない。

 

次、次、次・・・。

 

 

 

「ま、マジでなんもねぇ・・・」

 

昨日の記憶と全く合致しないくらいの荒れようだった。いっそ自分が数百年間眠りこけていたみたいな気分になってくる。泣きたい。

 

 

「で、最後は親の部屋か」

 

二階の最後のゾーンだが、どうせなにもないだろう。昨日見た限りでも、とりあえずおんなじ様に荒らされていたのだ。

精々へそくりでも見つかればいいな、と小さい望みを抱き、足を踏み入れる。

 

・・・今更だが、なぜこれほどの異変に気づかなかったのだろう?爆弾でも落とされたかのような惨状、あまつさえ自身の体さえ弄られているのだ。どんだけマヌケなんだよ、俺。

 

「・・・ん?」

 

ため息をつき、頭を下げた皐の目に、何やら一通の便箋が映った。【私たちの愛する息子へ】、宛名はそう表記されていた。煤けてはいるが、ちょこんと、毛布の上に置かれている様は、人為的なものを感じさせる。

まさか、なにかの手がかりか?

一縷の希望が、ふわりと心に飛び込んできた。勢いのままひっつかみ、手紙を抜き出す。

 

(ん?糊のあとがあるな。開封済みか?)

 

まあ些細なこと。そうかたづけ、文面を食いつくように読み取り始めた。

 

 

【愛する息子へ】

 

最近、世の中物騒を通り越しておかしくなってるけど、そんな中、懸命に活躍している貴方を、私たちは誇りに思っています。

恐らく貴方がここに帰ってくる頃には私たちはここにはいないでしょう。家が残っていればまだいい方ですよね。運任せですが、きっと読んでくれることと思います。

私たちは

 

(破れて読めない)

 

もし何かあったら、押し入れの右の床板を外しなさい。貴方が私たちに預けたものを、そこに入れました。ご免なさい、持ち出しも家の外もダメみたいで・・・

 

時間もないのですが、最後に一つ。

 

自分を信じて、懸命に、真っ直ぐ生きなさい。

 

いつも、貴方を見守っています。

【貴方の母、父より】

 

 

 

「・・・母さんっ、父さんっ・・・!」

 

 

何がどうなったのか、何も分からない。けれど、大事な両親がどうなったのか、漠然と知った。

なぜ、自分はこんな大事なことを忘れているんだッ!

どうしようもなく、胸の焦燥を吐き出したかった。

 

(落ち着け・・・!まずは俺が預けたもの、の確認だ)

 

一目散に押し入れに向かい、ドアをこじ開ける。何もものはなく、確かに右下に、ややずれた床板があった。

 

(やっぱり・・・!既に、ここに立ち入った者がいるのか!?)

 

手紙が細工されていたことといい、誰かの介入があったのは間違いない。

 

(いい、それはいい!)

 

優先すべきは、こちらだ。

幸い何もとられていなかったらしく、封印されたままの箱が一つ、スキマを埋めていた。

 

ゴクリ、と唾をのみ、封を開ける。

 

「っ!?」

 

そこにあったのは・・・モンスターボールが6つと、ポケモン図鑑だった。

 

「・・・は?」

 

 

もう一度言おう。6つのモンスターボールとポケモン図鑑。

 パタン、と蓋を閉じる。

 

 

 

 

 

「な、なな、なんじゃこりゃあああああぁぁああ!!」

 

 

 

 思いっきり、ベッドに叩きつけた。

 

 

「なんの冗談だよ!?ふざけてんのか!?」

 

だがまあ、自分もダークライなのである。なんという便乗。主人公がポケモンだからアリだよね☆みたいな。

 

ふざけんな、である。

 

 

はあ、とため息をつき、また箱を拾い上げる。もう一度確認しても、まあ現物など見たことないが、質感といい食玩などとは一線を画する代物みたいである。

 

「ん?これだけ重いな・・・」

 

ずしっと小石程度の重みを感じた皐。まさか、とは思うが。

一昨日見たばっかしのアニメの見よう見まねで、スイッチオン。

 

 

その刹那、パカンと開き、目映いばかりの光の奔流が流れ出た!

 

 

「ま、マジで・・・?」

 

 

自分がダークライだと知った時以来の衝撃だった。

目の前には、確かに。

 

 

【あ、兄貴ぃぃぃぃいい!!】

「ま、まさかゾロアーって痛イ痛イ痛イッ!!」

【もう会えないかと・・・やっぱ生きてたんスねぇぇぇ!!】

「だーっ、もうっ!離れろ!」

 

 

その声で漸く我に帰ったのか、そいつは余りに力強すぎる抱擁を止め、改めて皐の目の前に立ち直した。

 

 しかし、どこからどう見ても、やはりよく知る有名なポケモンにしか見えなかった。

 

 幻影の覇者---ゾロアーク。

 純粋な悪タイプであり、二足歩行の狐のような外見。目は丁度、歌舞伎の隈取を思わせる。映画でもキーキャラとして活躍した、中々に人気が根強い。映画に出演したくらいだからてっきり幻のポケモンだと思い込んでいたが・・・、後にふっつーに草叢から出現するという、ある意味期待を裏切らないポケモンだ。

 

【いやぁ~、お変わりないようで何よりっス!自分、言いつけ通りしっかり警護していたっスよ!あ、でもボールにいたのは不可抗力っスからね!】

 

 映画でのゾロアークは進化前のゾロアを連れた母性溢れる、胸を熱くさせるキャラだった。ゲームでも使い勝手が良かったし、何より特性が固有だからな。貫禄に近いものを感じていた。

 

 だから、こんなチャライ黒ギツネなんて、俺は絶対認めない。

 

【それでっスね、度々雑魚どもが兄貴の両親をヤりに来てたんスけどねぇ、全員返り討ちにしてやったんスよー!・・・ってあれ、どうしたんすか?感動の再会へのコメント無しっすか?】

「・・・いや」

【?】

 

「おまえは、誰だ?」

 

 そういったとたん、相手のゾロアークの表情が消えた。驚くとも違うような、それはまるで不安が的中したかのような、怯えるような・・・。

 ブンブン振っていた両手を降ろし、ボソリ、と呟く。

 

【・・・やっぱ、兄貴、っスよね】

 

 そういい、静かに皐の両手を取り、

 ブンブンブンブンと振り始めた。

 

【それでも自分は兄貴についていくっスよ!!だって兄貴っスから!!どんなになろうが、ミジンコになろうがスポンジになろうが吸血鬼になろうが!!】

「オイそれ褒めてんのかけなしてんのか!?つーか質問に答えろっ!!」

【え?何か言ってましたっけ?】

「言ったわっ!!名前を言え名前をっ!」

 

 ああ、と納得がいったかのように手を打つ。皐はようやく両手が解放されて一息ついた。

 

【じゃあ、改めまして。自分、ゾロアークの”コン”というッス!記憶なくす前の兄貴に名づけられて、パーティの中でも特高隊長張ってたっス!あ、ついでにオスッス】

 

 ようやく得られた情報は、今日一番の爆弾発言であった。

 

 

***

 

 

 

【で、ここを押すと手持ちと兄貴のステータスが表示されるッス】

「今更だが、やっぱ俺、ポケモン扱いか・・・」

 

 さて今現在、自室で元手持ちのコンにポケモン図鑑(電池は要らないらしい)の扱い方を教授してもらってる最中である。 

 無論、その前に知っている限りの情報を教えてもらったのだが・・・これがどうして、幻想郷の比ではないくらいに奇天烈であり、未だに自分の中に落とし込めないような内容だった。

 

 まず、この世界にはポケモンが存在している。それも、俺が人間だった頃から。

 

 認知度は極めて低いが、ゲーフリはピカチュウを実際に見てゲーム開発を考え付いたらしいのだ。これだけでも十分胡散臭い。だったら、世間に公表されてもいいはずだし、既にポケモン市場は世界規模になるほど巨大で広く認知されているのだから、メディアがすっぱ抜かないはずがない。それこそ国家規模の話になってしまう。いや、事実そうだったのかも。

 

 第二に、俺のことだ。

 詳しくはコンも知らないが、今の俺はダークライと融合した状態らしい。

 

 ・・・なんで?と聞いても、そのころにはもうはぐれてしまったとか何とかではぐらかされた。

 

 ただ、それ故に人間の部分が半分程度残っているはずであり、完全に人外となったわけではないはず、とのこと。なにそれ曖昧で怖い。

 

 そして、コンは俺が記憶を失っていると断定した。

 言われてみれば、確かに、とは思う。それしか考えられないが、なぜ記憶を失ったかは答えなかった。

 そんで、コンは昔知り合ったと。

 

 まあわかっていた通り、コンはお調子者だ。悪く言えばバカ。適当かつ曖昧な説明で聞いているコッチがイライラしたが、概要を知れただけでも良しとしよう。だが、確実に何か隠しているのは明らかだ。いつか絶対に聞き出す。まだ、大事なことはさっぱりわかっていないのだから。前に進むと決めた以上、俺には真実を知る義務がある。

 

 さてこのポケモン図鑑、エネルギーがいらないだけでも十分オーバーテクノロジーだが、性能はもっと狂っていた。いや、ゲームのころから思っていたけどね?なんでそんな簡単にポケモンの情報を出せるの?って。

 

 で、これが簡単な俺とコンのステータスだ。

 

”サツキ”(人間・妖怪)”ダークライ”(ダークライ)

Lv:6相当

タイプ:悪

特性:ナイトメア

 

 

努力値:なし(リセット中)

 

HP:///

攻撃:///////

防御:///

特攻:////////

特防:///

素早さ://////

 

わざスロット(一部使用不可)

・でんこうせっか

・シャドークロー

・ダークホール(固定)

・つるぎのまい

・?????(固定)

・?????(固定)

・?????(固定)

・?????

 

**********

 

”コン”(ゾロアーク)

Lv:46相当

タイプ:悪

特性:イリュージョン

 

努力値:特攻MAX

    素早さMAX

 

HP://////////

攻撃:////////////////

防御://///////

特攻:////////////////

特防://////////

素早さ:///////////////

 

わざスロットル

・ナイトバースト(固定)

・かえんほうしゃ

・きあいだま

・みがわり

 

 

 

 

「よしいっぺん殴らせろ」

【なんでっスか!?】

 

 なかなかにズケズケと物申すなぁ、このポンコツ。

 エ、誰が6レベだ?あ?いやもっとつえぇだろうが、少なくともこんなおちゃらけた野郎より俺が紙ってどういうことだゴラァッッ!!

 

 ・・・というより、昨日の妖怪は6レベル、いや経験値の問題があるから、下手したら1レベルの奴に負けたのか。

 ・・・うっわ。それでいいのか、妖怪さんよ。

 

 ちなみにステータスはそれぞれの能力の比較に過ぎず、数値化されない仕様らしい。ゲームならいざ知らず、現実世界に即したシステムなんだそうだ。確かに、ゲームの中でさえ種族値の壁を超える事例はざらだからなあ。納得はできる。不便だけど。

 

【ちなみにわざスロットは、兄貴だけは8つ使えるっスよ】

「・・・え?なんで?」

【まあ、二人分だからじゃないスか?】

 

 適当だな。なにその補正。うれしいけど???で隠れているから使えないんだよね嬉しくねぇ。固定ってなんぞ。秘伝技と同じ扱いってことか?

 

【どうっスか兄貴!自分即戦力になること間違い無しっスよ!】

「あーそうだな。ちょうど即サンドバッグになりそうだ」

【あっ兄貴が拗ねてる理由はってその手を降ろしてくださいッス!?】

 

 

 とりあえずボコッて、ボールに収容した。

 ・・・今更だが、順応しすぎだろう、俺。箸を掴むより簡単にボールをつかったぞ。

 

 さて、大体だが、自分のステータスは知ることができた。これで、自己の強化を行うことができる。昨日はたまたま雑魚だったからよかったものの、きっとあれより強いやつも星の数ほどいることだろう。図鑑を手に入れられたのは、幸運だった。

 ま、それより、飯にしよう。起きてからもう1、2時間は立っている。それからでも遅くはない。浮足立つ気分を抑えないまま、キッチンへと向かいまた物色し始めた。

 

 

 非常に些末なことだが、俺、一個も特殊技持ってないのな。

 

 

 

 

***

 

 

 逃げるという行為。それは、生物ならだれでも持っている本能だ。 

 相性の悪い敵に出会い、術もなく特攻するのは愚の骨頂。たかが蛮勇である。

 無論、戦力的撤退もあるだろう。某杉田ボイスのジョースターさんとか。ポケモンでいえば”バトンタッチ”、”とんぼ返り”などがそうである。むしろ逃げというより攻めに近いが。

 だが、それは、自分の力量が相手と拮抗、もしくは高い場合だけだ。1レベルのヤンヤンマが50レベルのムクホークにとんぼ返りしようとしたって、先に狩られて終わる。

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

 そして、その少女がヤンヤンマであり。

 

「ちょこまかと、面倒ねっ!!」

 

 この巫女が、ムクホークなわけである。

 その手に持つは、かぎづめのごときお札。

 嘴のごときお祓い棒。

 彼女・・・虫の妖怪リグル・ナイトバグが背中を見せて逃げ出しているのも、致し方ないことである。

 

「なんでよぉ!私、なにもしてないのにぃ!」

「仕方ないじゃない。人里の要請なんだもの。最近、獰猛な虫が多いって」

「だから違うってぇぇぇぇぇぇええ!!」

 

 濡れ衣ということは、この巫女にもわかっているのだろう。さっきから十分すぎるほどの手加減がされているのが身に染みて理解していた。それでも苦悶の表情を浮かべてるわけだが。

 博麗の巫女。その立場上、お賽銭の事情も相まって断るわけにはいかなかったのだろう。

 それに、件の虫どもの事も知っている。

 ”虫を操る程度の能力”でも御しきれない存在。正直、リグルも同族といえど、手を余していたのだ。いや、同族というには・・・

 

「封魔針っ!!」

「え、ちょああああああっ!!」

 

 一瞬でも気がそれたためによけきれず、全身に封魔の術式が侵食していく。博麗の特別製だ、弱小妖怪のリグルには抗うことなど不可能。

 

(痛い、痛いよ・・・)

「あっけないわね。悪いけど、少しだけ眠っててくれる?」

 

 無表情のまま、巫女がお札を懐から取り出す。

(なんだっけ、あれ・・・ああ、全身の自由を奪う、とかだっけ・・・あはは、容赦ないなぁ・・・)

 まあ、仕方のないことだ。ここは幻想郷。人は妖怪の餌であり、妖怪は人に殺される。

 そんな奇妙で残酷な依存関係が・・・幻想郷。

 

「ま、いい夢みなさい」

 

 そしてお札が額に張り付いて・・・

 

 

 

 

 

 ふぅっ、と一陣の風が吹いた。

 

 

 

 

(?いまのは・・・っ!?)

 

 ただの風ではなかった。ただ風がそよいだだけなら、私の額に傷を・・・

 お札がビリビリに裂けたりはしない。

 

「・・・よし、なんとか間に合った」

 

 風の通った方向に顔を向ける、そこには、見たことないほど真っ黒で、白髪の妖怪がいた。

 その手は、不気味な、妖力とも違う何かのオーラが揺らめいていた。

 

(あ、あんな妖怪見たことない・・・!?)

「なによ、仕事の邪魔してくれちゃって」

 

 動揺していたのは、博麗の巫女も同じようだった。眉間にしわを寄せ、鬱陶しそうにその妖怪をにらみつけている。

 

「いやいや、流石にイジメは容認できないんでね」

「まあ、そうかもしれないけど。あんた、見たところ新参者かしら」

「ご名答。俺は新庄皐」

「そう。博麗霊夢よ」

「しかし、なんで脇が開いてんだ?」

「いいじゃない、趣味よ」

 

 ・・・なんか、私、空気なんだけど。

 あれ、ここは戦闘開始!とかじゃないの?なに世間話始めてるの?

 

「ね、ねえちょっと」

「ん?そうだ大丈夫か・・・って傷があるじゃねぇか!?てめぇ・・・!」

 

 いや、これあんたの爪のせいだから。

 

「あら、あなたにも同じ傷をつけてあげましょうか?」

 

 なにその台詞。なにも決まってないよ。ドヤァ、とかコッチが恥ずかしいよ。

 

「上等だ、俺の真の力を見せてやるっ!」

 

 同類だったぁぁぁぁぁ!!?

 え、なにこれ?なに、コレ?

 二人そろってどっかいっちゃったし・・・。

 ・・・帰ろ。

 

 

***

 

 

 単刀直入に言おう。

 浅はかだった。

 いや、飯食べた後、外に出てコンと一緒に修行してたわけだ。とりあえず”でんこうせっか”と”シャドークロー”は身に着けたな。ダークホールは、正直ピンとこない。体術っぽいものならなんとかイメージできるんだが。

 

【かめ○め派っぽくやるっス!】

 

 と言われてやってみたら、ポン、という破裂音しか鳴らなかった。コンにはべた褒めされたが、何の闇っぽいものもだせてないのよ?

 

 とりあえず保留にして”つるぎのまい”の練習を始めた矢先に、あのイジメ現場を見たわけだ。コンをしまってでんこうせっかで駆けつけ、いつの間にか戦闘になっていた。

 敵は博麗霊夢というらしい。脇の開いた巫女服もどきを着た少女だ。まさかこいつが妖怪なわけはないだろうと見切りをつけ、鷹をくくっていたが。

 

「逃げてばっかりじゃ負けるわよ?」

「くっ・・・!」

 

 なにこいつ。バグってるんだが。

 まず、移動速度は俺のでんこうせっかとほぼ同速。そして高密度の遠隔攻撃。

 この時点で、突破口がなくなった。

 ほんと、なんで特殊技がないのだろうか。

 

(ちっ、頼りたくはなかったが・・・!)

 

 いい機会だ、コンの実力も図ることができる。俺は今朝仲間にしたばかりのチャラ狐を呼び出さんと、ボールのスイッチを押す。

 おっと、もちろん掛け声は鏡の前で何度も練習していたぜ?

 

「来いッ・・・”コン”ッ!」

【さっすが兄貴ィ!こんなに早く自分の魅力に気づくなんてっ!そこに痺れる憧れるっ!】

 

 戻そうかな。

 

「ふぅん・・・式神もちだったのね。それも、妖狐か」

 

 妖狐?ああ、なるほど。やはりこいつにもポケモンの存在は認識できていないらしい。確かに見た目だけなら化け狐だな、コイツ。

 

【さあ兄貴、指示を!】

「そうだな・・・まずは”きあいだま”で」

【了解!】

 

 コンの胸の前に白色の玉が形成されていく。おお、まさにアニメの通りじゃねぇか。コンはそのまま博麗にむかって投げ飛ばした。

 

「・・・」

 

 少しは驚くか、と思ったがそんなことはなく、ガキの野球を見ているかのようにあっけなく避けてしまった。

 

「チッ、なら”かえんほうしゃ”!」

 

 毎度思っていたが、この技、モーションがかっこよすぎる。荒ぶる獣のようにコンは頭を振り上げ、高熱の火焔を吐き出した。

 

「へぇ」

 

 それもつまらなそうに、彼女はお札を構えただけ。

 

「結」

 

 パキィィィィン!!と破砕音がし、火焔はナスすべなく防がれる。

 

【あ、兄貴。コイツは・・・】

「ああ、わかってる」

 

 ヤバい。

 ただの火力勝負にもなりやしない。俺より圧倒的に高い能力を有するコンが、赤子同前とは。

 ・・・待て。そういや、昨日のルーミアの話に”博麗”って・・・!

 

『”博麗大結界”を管理しているのは、歴代の博麗の巫女。今代は博麗霊夢で、彼女は』

 

 

 

 ---人間最強よ。

 

 

 

 

 たらり、と背中に冷や汗が垂れる。

 それを知ってか知らずか、博麗霊夢は、ニヤリ、と笑った。 




*皐の口調
 前二話まではやや暗かったですが、コンにつられて冒頭の感じに戻りました。基本、あいつもおちゃらけものです。

*ダークライ最強は?
 大丈夫です、後にパワーアップするんだよ!

*博麗霊夢
 正直、勝てる気がしねぇ・・・。


 
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