プレートの一件から二週間が経過した。
ジンは王宮から支給されたアーティファクトの中から、槍を選択した。
そうして訓練場所で基礎動作を繰り返し行っていた。
ハジメは図書館に籠ることが多くなった。
恐らく知識を高めて役に立とうと懸命なのだろう。
ジンはハジメの努力に好感を覚えた。
同時にハジメを守らねばならないとも決意した。
クラスメート達は当てにならないとも。
ジンが自主訓練していると、ハジメが錬成の練習を始めた。
そこに檜山達四人組が絡んできた。
他のクラスメート達は見て見ぬふりをしていた。
そこにジンは割って入った。
檜山に手加減した亜光速ジャブを顔面に叩きつけた。
檜山は思いっきり吹っ飛んでいった。
「お前達、特訓が必要か? なら付き合ってやる」
中野、斎藤、近藤は顔面を蒼白にし、そそくさと立ち去った。
「ハジメ、大丈夫か?」
「うん。ありがとう、ジン」
「自主訓練する時は出来る限り俺といろ。その方が安全だ」
「うん。そうする」
しかし、クラスメートの連中……。
ジンは改めて当てにならないと悟った。
訓練が終わった後、メルド団長からオルクス大迷宮に遠征するとの連絡があった。
オルクス大迷宮。
それは全百層からなる七大迷宮のひとつである。
ジン達はオルクス大迷宮に挑戦するための冒険者の宿場町ホルアドに到着した。
ジンはハジメと相部屋になった。
ハジメがすぐにベッドにダイブするのを見て苦笑するジン。
ハジメが低層階の魔物図鑑を読んでいる間、ジンは明日の準備をしていた。
そして深夜にドアをノックする音が響いた。
檜山達の襲撃かと身構えるジンとハジメ。
だがその心配は杞憂に終わった。
「南雲君、起きてる? ちょっといいかな」
その言葉にドアを開けるハジメ。
ドアを開けた先には香織がいた。
「その…南雲君と少し話したくて。迷惑だったかな?」
「ハジメに話か? 俺は部屋を出た方がいいか?」
「あ、神威君はいてもいいから」
「わかった。紅茶の用意をしよう」
そう言うとジンは人数分の紅茶を準備した。
「それで話しって何かな白崎さん?」
「明日の迷宮だけど、南雲君は町に残ってほしいの。
みんなは私が説得するから!」
そう言われハジメもジンも困惑する。
「白崎さん。理由は何だ?」
ジンが香織に問う。
「凄く嫌な予感がするの。さっき少し眠ったんだけど、南雲君が消えてしまう夢なの」
「それだけでは皆を説得は無理だろう」
「白崎さん。夢は夢だよ。ジンもいるんだ。大丈夫だよ」
「そうだな。それでも不安なら白崎さんがハジメを守ればいい。
治癒師の白崎さんがいるなら大丈夫だろう」
「……変わらないね南雲君は」
「?」
「私は中二の時から南雲君を知ってたよ。
最初に見た時は土下座してたから」
「土下座!?」
「ハジメ。あの時じゃないか? 俺が最終的に不良を退治した……」
「あ、あれか!? お恥ずかしい所を…」
「ううん。私はあれを見て南雲君は凄く強くて優しい人だって思ったの」
「そうだな。ハジメ、普通は他人の為にあんなこと出来ないぞ。
ハジメは心が強くて正しき者だ」
ジンが太鼓判を押す。
それからしばらく雑談した後、香織は帰っていった。
「さて、ハジメ。俺達も寝よう」
「おやすみ、ジン」
まだ陽も昇りきらない頃、ジン達は迷宮の入口に集まっていた。
そして一行は隊列を組みながらぞろぞろと進む。
進んでいると広間に出た。
その時、壁の隙間から毛玉が次々飛び出してきた。
ジンは確かラットマンだと記憶を引っ張り出した。
光輝、雫、龍太郎、ジンが前衛。
香織に中村恵里、谷口鈴が呪文の詠唱に入った。
(遅いな)
ジンはそう思った。間合い内に入ったラットマンを無造作に屠っていく。
そうしている内に呪文詠唱が完了。
ラットマン達を焼き尽くした。
そこからは順調に二十階層まで来た。
一行は二十階層を探索する。
今日はこの階層で終了だ。
その時、先頭を行くメルド団長達が立ち止まった。
「擬態しているぞ! 周囲を注意しろ!」
その声に突如前方の壁が動いた。
「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ!」
メルド団長から注意が飛ぶ。
光輝達が相手をするようだ。
龍太郎の人壁が抜けられないとみたのか、
ロックマウントは固有魔法を使った。
まんまと食らった光輝達前衛組が硬直する。
ロックマウントは岩を放り、後衛組の香織達を狙った。
魔法で迎撃しようとしたが、その岩もロックマウントだった。
思わず魔法を中断してしまった。
「何をやっている」
そう言ってジンは拳でロックマウントを破壊した。
香織達はまだ青い顔をしていた。
これに光輝がキレた。
聖剣を大上段に振りかぶり大技を出した。
ロックマウントはおろか奥の壁まで破壊して止まった。
その後、メルド団長から光輝はお叱りを受けた。
その時、香織は崩れた壁の向こうに何かを見つけた。
グランツ鉱石と呼ばれる宝石である。
「だったら俺らで回収しようぜ」
そう言って突然動き出したのは檜山である。
「!やめろ! トラップだ!」
ジンは未来視で危険を察知。忠告したが遅かった。
魔法陣は瞬く間に輝きを増し、部屋全体に広がった。
メルド団長が撤退を促すも遅かった。