ジン達を一瞬の浮遊感が襲った。
空気が変わったのを感じ、次いで地面に叩きつけられた。
すぐさまジンは立ち上がり、臨戦態勢をとる。
先の魔法陣は転移させるものだったらしい。
ジン達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。
メルド団長は状況を確認すると、階段側へ向かうよう生徒達に指示を出した。
しかし、撤退は叶わなかった。
橋の両サイドに魔法陣が現れ、魔物が出現した。
階段側には数百体の骸骨兵が現れた。
しかし、ジンは通路側に出た魔物がヤバいと判断した。
近い物だとトリケラトプスだろうか。
「まさか……ベヒモス……なのか……」
メルド団長が呟く。
その時、ベヒモスが凄まじい咆哮を上げた。
メルド団長は正気に返り、矢継ぎ早に指示を飛ばす。
生徒達はもはや恐慌状態で騎士のアランの言うことを聞かない。
「荒海に降る神雷!」
ジンは雷雨のごとき突きの雨を降らせ骸骨兵…トラウムソルジャーを倒していく。
(くっ! 混乱が収まらない限りこのままでは……ハジメ!?)
ハジメが光輝達の方向…ベヒモスのいる…に向かっていた。
「怒れる波濤!」
荒れ狂う波濤のごとき突きを繰り出し、トラウムソルジャーを倒しつつ、
ハジメの方に向かうジン。
ハジメの元にたどり着いた時、障壁が破られ、衝撃波が襲ってきた。
その後にはメルド団長と騎士三人が倒れ伏していた。
ハジメ達は無事なようで安堵するジン。
「ハジメ! 撤退しろ!」
「でも……」
「でももクソもない! とにかく……」
ジンの言葉は途中で遮られた。
衝撃波が襲ってきたのだ。
ジンがそちらを見ると、光輝達が動けなくなっていた。
ベヒモスの攻撃を受けたのだ。
どうにか動けるようになったメルド団長が近寄ってきた。
「お前等、動けるか!」
返ってきたのは呻き声だけだ。相当のダメージと推察された。
メルド団長が香織を呼ぼうとして、駈け寄るジン達を見つける。
「二人共、香織と光輝を連れて逃げろ!」
そう言うメルド団長にハジメがある提案をする。
しかし、博打に近い提案だ。
だが、全員生還するにはこれしかない。
メルド団長は決断を下し、ハジメに託した。
「それじゃあ俺も残るか」
「ジン! 何で……」
「俺はいつでも正しき者の味方だ。
それに俺がハジメを担いで逃げた方が早い」
「ジン……」
「俺も攻撃を仕掛ける。そっちは頼んだぞ」
「任せて!」
ハジメが錬成でベヒモスを動けないようにする。
ハジメは必死でベヒモスを押さえつけた。
「四十日四十夜の大洪水!」
ジンは奥の手を出していた。
ジンの動きが速すぎて残像がまるでドームのように見えた。
まさに斬撃の嵐である。だが…。
(くっ! この槍では決定打に欠ける!)
この場合、ミョルニルを出せばいいが、
ジンは皆が見ている前での使用に躊躇していた。
これが後にジンを後悔させることになる。
「皆待って! 南雲君達を助けなきゃ! たった二人であの怪物を抑えてるの!」
香織が皆に向かって叫ぶ。
皆がその方向を見るとベヒモスの上半身が埋まっていた。
そこには確かにハジメがベヒモスを押さえ、ジンが凄まじい攻撃を仕掛けていた。
「ハジメ! 後、どの位押さえられる!」
「もうすぐ魔力が尽きるよ!」
「よし。俺がハジメを担いで離脱する! 合図をくれ!」
「3・2・1・0!」
「撤退するぞ!」
ジンはハジメを担いで離脱する。それと同時にあらゆる属性の攻撃魔法が殺到する。
その間にジン達は安全距離を取っている。
これで大丈夫と思った時、未来視がこちらに向かう攻撃魔法をとらえた。
槍で素早く弾くジン。
その間にベヒモスが突進してきた。
そして未来視でジンは視てしまった。
自分達が奈落に落ちる場面を。
ベヒモスの攻撃により遂に橋は崩落。
ハジメとジンは奈落に向かって落ちていった。
(クソッ! 何としてもハジメは守らなくては!)
ジンは落下しつつも何とかしようともがく。
しかし、そこに横合いから鉄砲水が襲いかかった。
その衝撃でハジメとジンはバラバラになった。
「ハジメ!」
ジンも何とかしようとするが、次々襲いかかる鉄砲水の為、
行動の自由が利かない。
あっという間にハジメは見えなくなった。
「クソッ……!」
ジンは絶望の呻きをもらした。