「まず真面目に一から説明してくれ」
リオは海人の真意を聞くためふざけるなよ、と目で威圧し理詰めで近寄った。
流石に茶化すことはできないと観念したのか小さくリオに訊ねた。。
「俺がずっと調べていたことを覚えているか?」
リオは自分が天川春人だったときの記憶を巡らせた。
そうだ、彼と関わるようになったきっかけは彼が書き綴っていたあの不思議な文字だった。二人で毎日のように図書室へ向かい調べ続けたが答えを見つけられず、都の大きい図書館へも足繁く通った。しかし目ぼしいものは得られなかった。その時間を共有するうちに自然と二人はプライベートや学校でも共に行動することが増えていった。
最初はぶっきらぼうで人見知りな性格だと思っていたのに打ち解けてくると冗談も言うしよく笑うことに気づいた。
――その時まではいいやつだと思っていたのだが、高校に入った瞬間に見た目が派手になったり好みの女の子に声をかけまくったりと有り体に言えばチャラくなっていった。
極めて優秀という評価を受け続けることは彼の幼少期の性格的に窮屈なものであったのかもしれない。周りから好奇の目で見られることを極端に嫌っていた。
タイプの違う二人の仲を周りは不思議がったが幼少の頃からの腐れ縁は大学まで引き繋がれていった。
学部は違ったが空きコマがあれば一緒に勉強したりお互いの課題を手伝ったりとそれなりに充実はしていたように思う。
海人は数学科に入り個人的に例の文字の研究を続けているようだった。小学校低学年の頃は勉強が点でだめではあったが共に調べ物をするうちに彼の地頭がかなりいいと気づくのにそう時間はかからなかった。
高校受験を控えるようになった頃には理数系の科目では全国で上位を取り続けていた。
そして春人は文系、海人は理数系と得意分野が分かれクラスも分かれることになったが結局志望大学が被ったため関係が続くことになったのであった。
「お前、これ読めるか?」
海人は懐からペンを出し持っていた単語帳に走り書きをした。そしてリオの方向に向けて差し出した。
「……私は幼い少女が好きです。……は?」
「え、……春人君、そんな趣味が?!」
「お前が読ませたんだろ……っ!」
バチンっとリオは机の上に投げ捨てるように単語帳を放った。
まあまあと海人は手を上げてリオを宥める。
「なあ、何で読めるんだ?」
――言われてからはっと気づく。
そうだこの文字は今の自分だから読めるものだ。異世界に転生した自分だからこそ読めるのだ。
「これはこの世界の文字なんだろ?俺はこの世界に来てからちゃんと使えるように覚えたんだけどな」
「この世界に来てからってお前いつ来たんだよ」
言葉のことを思案して改めて気づいた。海人は再会してからずっとこの世界の言葉を話しているのである。勇者として転移した彼等たちのように日本語が自動で翻訳されているのではなく彼自身がこの世界の言葉を話している。
「2ヶ月くらい前かなあ」
「……2ヶ月ってお前」
異世界に一人で来て、言葉を覚えることはかなり過酷だ。美春やアキ達はリオが日本語を話すことによってやっと習得できたというのに、相変わらず妙なポテンシャルを秘めたやつである。
「まあ、俺だし?」
頬杖を付きながら投げられた単語帳を手に取りリングに指を通してくるくると回しながらにやっと笑う。
「無駄に器用で良かったな」
「無駄じゃないだろ!お前、会った時から辛辣過ぎない?いい大人の本気の号泣が見たいのか?」
リオは無視して続ける。
「言葉については分かったことにする。けれど根本的な話どうしてこの世界に来れたのかを教えてくれ」
「恥ずかしいから嫌だ」
即答で拒否された。またふざけているのかと思ったら彼は目を逸らしながら耳だけ赤くしていた。
頑固な性格はよく知っている。1度拒否したら絶対にやりたがらないし己を曲げない。それで前世では幾度となく喧嘩をしている。いつも春人の方が最終的に折れる羽目になっていたことを思い出した。解せない。
はあ、とリオは一息ついてしぶしぶ話を変えることにした。
「海人、これからどうする」
「春人に着いてくぜ?」
また間髪入れずに即答し今度はしっかりと目を向けながら意思表示をした。
「……だろうな。」
逆にこれからは異世界で自由に生きていくぜ!とか言われていたら色々な意味で不安になるところだ。
こいつならどこに行っても上手くやれてしまうとは思うのだが。
「やるべきことがあるんだろ?手伝ってやるよ」
この男は本当に何処まで俺『リオ』のことを知っているのだろう。それを問いただしても今はぼかされてしまうのは想像が付く。返事をする代わりに既に冷たくなっている湯呑を手に取り彼の湯呑に軽く小突いた。
海人はリオの反応に喜ぶように無邪気な笑顔を作ると残っていたお茶を一気に飲み干した。
タンッとテーブルに湯呑を置き意気揚々と宣言した。
「まあまあ、心配すんな。俺、結構強いんだぜ?」
「ああ、はいはい」
生返事を返しながらリオは湯呑を片付けるべく立ち上がった。そろそろセリアとアイシアが風呂から戻るかなと思考を切り替えた。
しかし月島海人の言葉の本当の意味をこのときのリオは考えもつかなかった。
さてやっとお風呂上がりの美少女が書けるぜ。
高校デビューって大体が黒歴史ですよね。
こちらのお話とは関係ないのですが野郎二人の会話を書いていたらどうしても推しの話を書きたくなりました。少し大人な※r18内容ですがご興味がありましたらご覧いただけると嬉しいです。