ミーボ改造計画!   作:揚げ玉ねぎを好きになろう!

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大変遅くなって申し訳ありません!
それでは次のお話を。

今更ですがこの物語はキャラにオリジナル要素が入っていますので、無理だという方はブラウザバックをお願いします。


抜き放たれた鞭

数か月にわたり戦闘技術特化の指導教官として務めていると、さすがに愚痴の一つや二つは積もってくる。

 

 

 

「ブレイズ? 彼女は先週からいないわ。サルゴンの件は知っている? テロ集団の攻勢が酷いからって何人かエリートオペレーターが出ていったのよ。ところで『グレースロートはブレイズの全てを知っている』って言ったの誰? ……大丈夫。ひどい目には合わせるわけじゃないから、教えてほしい」

 

 

 

普段、こんなときには飲み仲間と一緒にバーへ行くけど、あいにくとここ数週間あまり都合が合わない時期が多かったわ。

 

 

 

「うーん参ったなぁ。いえいえ! 同僚である貴女のコトですから、もちろん俺もご一緒したいですけど……この間飲みすぎたせいでドーベルマン教官にしごかれたんですよね。『ロドスを指導する立場であるというのを自覚しろ』って。あの時の教官と言ったら……申し訳ないんですが、しばらくは無しでお願いしてくれませんか? あ、もしブレイズの奴に会ったらこう伝言して頂けますか? 『今度やったらロゴス先輩に頼んで二度と酒が飲めない体にしてやるぞ』って」

 

 

 

ロドスに入って飲みに行くほど仲良くなり始めた人たちとも、この時期を境に連絡を付けられなくなったのはとても痛かった。

 

 

「僕も貿易の仕事を抱えてしまっていて。すでにトランスポーターに頼んで荷物をクルビアに預けました。……申し訳ないのですががいつ帰れるかは現時点でお話しできません。ヤーカの兄貴……あ、マッターホルンもシルバーアッシュ様とサルゴンへ向かいましたので料理を振舞うことも出来ません……。本当に、残念ですが」

 

 軒並み伝手も無くなり、技術特化の指導も山場を迎えて、時折ドーベルマンからダメ出しを食らって。こうなったらバーテンダーでも相手に呑もうと思ったわ。カジミエーシュにいた頃にいつも世話になってたマーティンはロドスにはいないけど、ロドスのバーテンダーともそれなりに仲良くしてたから。そんな忙しい時ドクターがそばにいてくれたの。

 

「おはようウィスラッシュ。今日も仕事か? 。……一緒に頑張ろう」

 

 ドクターとは少し交流があった。たまにお買い物の荷物持ちに付き合ってもらったりしてもらったけど、この頃になるまでは余り接触することはなかったわ。

 

「正面いいかな? ……ウィスラッシュ、仕事で何か困ったことがあったらいつでも相談してくれ。仕事以外でも構わないよ……なんちゃって。……あぁ、確かに同じ定食だね。たまにはしっかり栄養のあるものを食べないといけないからね。……なるべく食べるよう善処します。ん? あれドコ見て……時間か。大丈夫だったかな。……貴女には余計なお世話か」

 

 朝の廊下で、ロドスの食堂で。書類を抱えた姿で、フォークを持った姿で。息抜きの時間に会うドクターはやや世話を焼きやすいタイプなのか、よく私に関わってきた。普段はドクターの緩んだところを厳しくしめてるけど、オフの時はオフで別。その言葉も優しいながらも真っ直ぐなもので、それが励みにもなり好ましくもある。気が付いたらいつもの厳しい態度が解けている時もあったわ。

 

「あれ、ウィスラッシュでも医務室に来ることもあるんだね。……ほう、そうか教え子の手当てか……。でもキミのことだからしっかりやってくれてるんだろう。お陰で我々も厳しい状況でも立ち向かえる。いつも感謝してるよ、ありがとう。……? 何故私がここにいるのかって? えーと、アレだ、ドクター機密という奴で……あ! 私の健診表じゃないか! いつの間に!? ……運動不足以外は至って健康なんだからいいだろう! 大丈夫だから返して下さい! お願い! なんでもしますから!」

 

 しばらくするとドクターの傍に居るとき居心地の良いことに気が付いた。きっと人格者のオーラがにじみ出ているのでしょうね。雰囲気から仕草、言葉にただならぬものを感じる。なんと表現すればよいか……しっくりするものではないけれど、一番近いのは「暖かい」かしら。それでもまだ足りないのだけれど。

 

 それにしても不思議。初めて出会った時は「どうしてこんな不審者じみた人にマーガレットは付いていこうと思ったのかしら」とすら思っていたのに! 

 

 

 

 段々仕事が様になり、ロドス号の運行の様に安定してきたある時、ドクターは私に知らせてくれた。

 

「こうなったのは私のせいだね。あぁ……サルゴンの件は知っているだろう? 本当なら私も行くつもりだった。だが……私の盟友に上手くやり込められてしまったよ。『休めるときには休め盟友よ、私を満たしてくれる語らいをする者はこの大地に多くないのだから』……ハハ、そうゆうことだ。もし君が私の立場だったら彼に惚れてしまっただろうね。あれは反則だよ! ……そう思うだろう? フゥ……何故盟友という言葉が友人とは違った響きを持っているのか、それがよく分かったよ」

 

 その頃サルゴンの方では汚染された生物兵器を持ったテロ集団がサルゴンのロングスプリングを脅かしていた。当然そこにあるロドスの事務所もその危機にさらされることになる。もしこの事務所が潰れてしまえばロドスの事業目的の大きな支障となってしまう。そこで業務が忙しいドクターに代わりサルゴン方面の局地的な指揮官補佐としてシルバーアッシュが立てられた。その彼の選抜メンバーの中には私の飲み仲間もたくさんいた。ドクターが話したのはそういう事だったの。

 

「本当に申し訳ない。ただキミにも分かっているだろうけど……伝えておきたくてね」

 

 そんな言葉を聞いたところで、今更不満を抱く材料にもなりはしなかった。ただカランドの盟主の話を聞いてから、もやっとしたものが私の胸に湧いてきた。透明な水槽に黒灰と白の濁った水煙がしたたり落ちてきた様な、その煙がドクターを渦巻いている様な、そんな気分。おもむろにドクターが立ち上がる。

 

「そうだ、今日この後空いているかな? もし良かったら一緒に夕食でもどう?」

 

 彼からディナーの約束を持ちかけられた時にはとても嬉しかった。でもその日は爆発騒ぎがあったとかで自然と立ち消えになってしまったわね。

 

 

 

「キミに渡したいものがあるんだ。これ、銀の腕時計だ。ウィスラッシュは銀のイメージがあるから、似合うと思ったんだが……。そうか良かった」

 

 教導官としての特別スケジュールが峠を越したとき、突然ドクターからプレゼントを渡された。中身は銀色の腕時計。疾走する精悍な馬の意匠が施され、栗色をした本革のベルトが特徴的な時計。

 

(なんで私に?)

 

 メーカーの名前は全く聞き覚えの無いもの。でもこんなタイミングでこんなプレゼントを……何故? 

 

「あれ、覚えてないのか。ロドスに来て半年になるからお祝いにと用意したんだ。このくらいの用意しかできなかったが許してほしい」

 

 半周年祝いの品、ということだろうか。

 

「本当なら数日後に渡したかったんだけど、急な予定が入ってね。……少しサルゴンの方に行く」

 

 ロドスの最高指揮官が盟友と呼ぶ彼も手の付けようのない事態が起こった。そのためにドクターも急遽サルゴンへ向かうこととなったという。

 

「いつ……か。現場を見ないと分からないが……一週間前後はかかるかもしれないな。急なものだから、キミに知らせる必要があった。不意打ちにいなくなったら悲しませてしまうと思ってね。……すまない冗談だ。……ゴホン。つまりそういうことだから、もし相談したいことがあったらいつでも知らせて欲しい」

 

 普段通りを装っていたけれど、この時は確かに寂しかった。ドクターとしばらく離れてしまうことは、あの暖かい感覚が遠ざかってしまうようで少しつらいと思った。だから悲しませるだろうってドクターが言ったことにすぐ反応したんでしょう。ちょっと考えれば普段から聞きなれた軽口のはずだったのに。

 

「大丈夫だ。戻ったらバーでこれまでの労苦を労うことにしよう。その時はこれまでお預けだった仲間たちとだ」

 

 差し出された手を握った時ドクターが痛そうにしていたことはよく覚えている。

 

 

 


 

 

 

(もう、次から次へと……)

 

 

 

 結果からすると、またしても約束が果たされることは無かった。事件の重要性から予想していた期間を3日繰り上げて事態を鎮圧することに成功しサルゴンにおけるロドスの事業は安定を迎えることとなった。代わりに後始末を付けるべく各方面へ手回しをするため追加で1週間は掛かりきりで執務室に籠っていた。サルゴンの鎮圧にかかった日数はトータルで4日延びたことになる。そこに私と飲みに行く約束は後回しにされるのも無理もないことでしょう。

 

(確かにそうなのでしょうけれども……)

 

 それにしたって一体ここまで邪魔してくるのはどこの誰なのかしら。今だってこんなみょうちくりんのヘンテコロボットに邪魔されているし、前はサルゴンのテロリストが邪魔をしていたわね。その前は? あの大爆発騒ぎでしょ? 確かとある研究室の爆発から連鎖的にロドス艦内に起こった一通りの爆発騒ぎ。その前も確か……いいえ、ドクターの招集はちょっと違うわね。あれはノーカンよ。

 

 その件を除くにしてもドクターとの飲み約束はことごとく消されてしまった。独りで飲みに行くのでもいいが、やっぱり気の置けない人と飲むのとマスターと飲むのは全く違う。私の気持ちは早いところこの茶番を終わらせて、次こそドクターの頑張りを労ってあげるの。

 

「ミーボたちが先行しているみたいだ」

「うへぇ……。本当にあのメイヤーさんがあのデザインを? 私でもちょっと引くよ……」

「あらあら『ちょっと』なのね~。貴女、さっきまでビクビクしてたのに『ちょっと』なの? もしかして機械マニアにしか分からない美学みたいなものがあるのかしら?」

「うーん……精神攻撃レベルってほどでもないかな? でもあんな見た目でも遠目から分かるくらいメイヤーさんのこだわりは凄いよ。例えば……」

 

 その横ではマリアたちの話が聞こえる。とうとうとあの妙なロボットに対する考察を話しているようだが、少しも機械に詳しくない私はただその思いをよそ行き顔で聞くしかできなかった。そんなことよりも気になることがある。

 

「ねえ、メイヤーはどこ? あのロボットたちと一緒じゃないみたいだけど?」

「先行させているのかも」

「何のために?」

「うーん、今の状況じゃわからないね」

「自律モードに入っているのか。もしスレイブモードならあんな動作はさせない」

「でもわざわざこんなところで遠隔操作というのも変じゃない? もし目的が私たちの不意打ちだったらこんなところで待っているはずないもの」

「でもこれはチャンスじゃないかしら? いまならロボットの不意を付けるわ」

「そうねおばさん! メイヤーさんがこの場にいたら多分もっと苦戦してたと思うよ!」

「ドクターも問題ないかしら~?」

「……大丈夫だ、問題ないだろう」

「ドクター?」

 

 ドクターの返答が少し間を含んでいたところからメイヤーの不在について考えを巡らせているのは明らかだった。こんなものでも完璧を求めようとしているのね。でもそんな考えすぎなところがドクターの良いところで悪いところよ。そんなことは言うまでもなくドクターは私に首肯する。

 

「分かっているさ。……頼んだよウィスラッシュ、ブレミシャイン、グラベル……今のところ相手は三体でこちらに気付いていない。扉に向いているすきに全て倒せ」

「了解ドクター! あ、ミーボが帰っていくよ」

 

 マリアがそう言うと、確かにミーボたちが向こうの方へ行く姿が見えた。誰が言うまでもなく私たちは駆け出す。ドクターから見れば瞬間移動でもしたみたいに思うだろう。そして向こうが気付いた時には私たちは既に攻撃できる位置にいた。

 

一体目はグラベルの双剣が仕留める。奇襲に気付いて対応しようとした頃には装甲の合間から内部を突き刺されていた。急所だったのか特に抵抗もなく沈黙した。だが残りの二体が奇襲に気付くとすぐさま目を赤く光らせ、

 

「逃げた!?」

 

すぐさま奥の通路へと走り去っていった。でも簡単に逃しはしない。

 

「随分としつけがなってないわね!」

 

教鞭用の鞭を抜き放つと素早く繰り出し、先頭を走る一匹の左足に絡ませる。そしてそのまま力一杯に釣り上げた。

 

「いくわよ!マリア!」

「私に任せて!」

 

後を走っていたミーボを巻き添えにして引き戻されると、そのままマリアの構えた盾に頭からぶつかった。より破滅的な微笑みになった機体は地面に弾んだところで光のアーツを纏った剣に切られ、大人しくなった。

 

残った一体はひっくり返っていた胴体を元に戻そうとしたが、足をジタバタさせるだけで上手く起き上がれないようだった。

 

「手伝ってあげるわ」

 

いつの間に追いついたグラベルは両脇に双剣をすっと差し込み上へと投げ上げる。クルクルとされるがまま宙返りしたカワウソは見事に着地した。その様を見て体はすぐさま逃げ出そうとしたが直後にバランスを崩して倒れこんだ。そして二度と動くことはなかった。

 

「見事なものね」

「ありがとう。貴女も随分柔軟な戦い方をするわね~」

 

振り切った剣を下ろすと斬られたトーマスの首が落ちる。

 

「私も鞭を使ってみようかしらね~」

「私もよ~。あなたがその剣をどう扱っているか、た~いへん興味があるわね」

 

(一体目を仕留めるとき、彼女は装甲の隙間から急所を狙った。音に探知して振り向こうとした瞬間で、隙間が余り見えないような角度。それを一突きで。しかもさっきのも随分手慣れた様子だったわね)

 

「あらそう?でも思っているような使い方ではないから心配いらないわよ。ドクターの下に集う同胞としてね」

「二人とも何の話をしてるの?それよりグラベル凄いね!あんな剣捌き初めてだよ!」

「ふふ、褒めてくれてありがとう。でもそんなものでもないわ。そうでしょ、ウィスラッシュ?」

「謙遜のつもりか知らないけれど、腕前はいいと思うわ」

「違うわよ~、こいつらのことよ。奇襲とはいえ動作が明らかに鈍いし、すぐさま逃げようとした。ドクターの話で聞いたものよりも弱いわ」

「確かにそう。でもこれがメイヤーによる罠だとしても、先制しようとしたグラベルを爆発に巻き込むこともしないなんて中途半端すぎね」

「でも予備隊はやられていたよ!医務室で話を聞いたら半分が拒絶反応を起こしたし、アンセルくんはパニックになって私に抱き着いてくるくらいだったし」

「薄暗い工場であの顔を見たらマリアもああなるんじゃないかしら?」

「……そ、それは無いと思うかな~!なんて……」

 

想像してしまったのか突然目が泳ぐマリア。クラミミもペタンと伏せっている。この子は昔っから結構なビビりだから、怖いことがあるとこんな顔になるのよね。

 

「と、とにかく!ミーボたちが逃げようとした先に進んでみようよ!きっとメイヤーさんもいるはずだよ!」

『いや、恐らくそれは無いだろう』

「ドクター!?なんで通信で?」

『みんなが行った後、すぐに臭い人……いやブレナンが私に知らせてきて今向かっている所だ。なのでこうして話している』

「急すぎるわね!あなたが襲われたらどうするのよ!」

『大丈夫だ。今アズリウスから連絡が入ったんだが君たちの進む先に多くのミーボたちが集まっているようだ。どうやらラボ・ルトラへ向かうらしい』

「あらあら、団体様のお付きね。一体何があるというのかしら?」

『現時点では。だがもしかしたらそれも分かるかもしれない』

「ねえ、ドクター。一体どこへ向かっているの?」

『ここの2層下、お遊戯室に向かっている。エンジニアのサイドがそこで……』

「ごめんなさいドクター、先客が来たわ」

 

グラベルの視線が通路の奥に行く。そこからはスリーマンセルを組んだトーマスの群れがこちらへやってくる。全員一律に目を光らせてやってきているのが見えた。

 

「ドクター、また後で知らせて頂戴。私達は連中を足止めさせるわ」

『任せたよウィスラッシュ。頼りにしている』

 

そう言って通信は切れた。改めて教練用の鞭を構える。

 

「マリアは前面に出て彼らをブロック、グラベルは適宜攪乱を。私はマリアのサポートに入るわ!」

「ゾフィアおばさん!」

「マリア、あなたは大丈夫だと思うけど敵はまだ何かあるわ。警戒なさい!」

「ええ!相手は肩回りが弱点だよ!多分おばさんならカバーを避けて駆動部を攻撃できるよ!」

「首元を一撃でも構わないわよ。あそこは人間でも斬られたらひとたまりもないからオススメよ~」

 

それぞれの騎士が武器を構えて待ち構える。防衛線まで残り僅かな所にまでミーボは来ている。

 

「調教の時間よ!」

 

私は素早く鞭を抜き放った。




ふぇぇ。最初はこのくらいで終わる話なのに、書けば書くほど量が増えていくよ

そうだマリア・ニアールも復刻あるんだ。9章H5まだ攻略できてないよタスケテ……。
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